国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2009/10/23


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   「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
      平成21年(2009年)10月23日(金曜日)
          通巻2748号  (増ページ特大号)
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 注目の新語登場。「ASEAN+1」って何だ?
  小鳩政権の「東アジア共同体」って、もはや時代遅れじゃありませんか?
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 前にも書いたが、鳩山首相がNY国連総会出席のおり、到着してすぐに会ったのが胡錦涛主席だった。予定を一時間ちかくオーバーして、「東シナ海を友愛の海に」とか、美辞麗句を並べた。

とりわけの注目は「東アジア共同体」である。
 鳩山首相の説明を胡は「ふむふむ、聞いておるぞ」とひややか、その日、筆者は中国にいて中国の報道ぶりを見ていたが、東アジア共同体論議は、すでに中国では「終わっている」という印象を抱いたのである。

 おそらく中国は日本の主導権を排斥し、独自のアイディアを抱いているに違いない、と踏んだ。
なにしろ2020年に中国海軍の空母二隻体制となれば、東シナ海と南シナ海は中国が支配し、いずれ半世紀もしないうちにハワイで東西を米中が分かち合う、と中国は本気で考えているのだから。

アジアの海は中国の海、そしてアジアは中国通貨の共同体へ。

 やはりでてきた。
 国際政治に新語が登場したのだ。
 人民日報(10月22日)をご覧あれ。「温家宝首相は『東アジア首脳会議』へ出席」という見出しの下に、こう書いている。
 
 「東アジア諸国と協力基調を保ち、世界金融危機に積極的に対応している(中略)。今後の発展に道を開き、ASEAN(十ケ国)+1,ASEAN+3,および東アジアサミット。。。。。。。。」

 ASEAN+1とは中国のことである。順位は次に「ASEAN+3(日中韓)」と来る。

 衣の下の鎧が見えた。
 ASEANを中国が主導し、域内の経済ヘゲモニーは中国が握り、つぎに日本、韓国も協力させようではないか。アジアは「中華共栄圏」としますよ、という宣言が、しずかに、なされているのである。

 日本のいう東アジア共同体構想に、突如として中国が冷淡になった背景が、透き通るように見えてきた。
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宮崎正弘のホームページ更新 http://miyazaki.xii.jp/travels/index.html
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三島由紀夫研究会「公開講座」(第235回)
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とき  10月28日(水曜日) 午後六時半
ところ 市ヶ谷「アルカディア市ヶ谷」(私学会館)六階「阿蘇(東)」
http://www.arcadia-jp.org/access.htm

講師  高森明勅(神道史家、國學院大學講師、桜チャンネル・キャスター。著作に『天皇と民と大嘗祭』(展転社)など)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%A3%AE%E6%98%8E%E5%8B%85
演題  「三島由紀夫の天皇論」
会費  おひとり2000円(会員&学生1000円)。
    
 三島は女性天皇を容認する発言をしています。天皇論でつねにコントロバーシャルな高森先生をむかえて、徹底的に論じあいます。
終了後、講師を囲んでの懇親会があります。ただし別途会費です。
どなたでも予約なしで御参加いただけます!
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(読者の声1)貴誌、最近とみにアフガニスタンの記事が多いのですが、これまでの中国の鋭角的な分析を期待している者にとって、アフガニスタンはややもすれば遠い関心。なにか心境の変化ですか。それとも重大な意味でも?
  (IY生、茨城)


(宮崎正弘のコメント)相対的にアフガニスタンとパキスタンの記事が多いのは、世界のマスコミがパキスタン、アフガニスタン周辺に焦点を移しているからで、国際政治の中心的イッシューだからです。
たとえばヘラルド・トリビューンをみて見ましょう。一面から六面までの半分もしくは半分近くがアフガニスタン関係で埋め尽くされています。
 世界の情勢の激変に鈍感であっては、ますます日本は孤立するという危惧からも、中国の裏面とか、マスコミが軽視しがちな問題をこれからも取り上げて行きます。



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(読者の声2)貴誌2747号、2748号でアフガニスタンの分析があります。そういえば、昔の日本の表記はアフガニスタンを「阿富汗」と書いていました。これは阿片、財閥、首長という意味ですから、言ってみれば「麻薬王」と取れるのですが、間違いですか。
(MA生、山梨)


(宮崎正弘のコメント)完全な当て字と思います。もともと「スタン」は人の集まる場所、国家という意味ですから、アフガンにスタンをつけて「アフガニスタン」。パキスタンは「パシュトン人」の国ですから「パキスタン」。以下同様にカザフスタン、キリギスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン。。。。。。
 かくなればインドはヒンズー教徒の国ですから、インドへ行くと「ヒンズースタン」という呼び方がちゃんとあります。ヒンズーの英語訛りがヒンデゥ→インディアですから。
 「カーン」はチンギス・カーンが代表するように首長の意味でもあり、族長でもあり、王様でもあり、しかし未来学者のハーマン・カーンは、ではどうなるのでしょう?
 さてアフガニスタン経済は麻薬で成立しているのは事実ですが、全GDPの5%前後と計測されます。推計アフガンGDPは220億ドル。麻薬ビジネスは10億ドル内外。
 ただし、パキスタンとの国境地帯にプール付きの豪邸、ガレージにメルセデスかBMW。これらは無法地帯に陣取る麻薬財閥たちの住み処です。
 イメージとしては的確な漢字を当てたものですね。ちなみに現代中国語でもアフガニスタンは「阿富汗」と表記しています。



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(読者の声3)先生のHPで更新されたばかりの広州紀行を拝読しました。
 広東省の広州で来年アジア大会が開催されること、まったく知りませんでした。上海万博が開催されることは知っておりますし、日本からのパックツアーの企画も、私の住む山形からも、はやくも計画されていますが、広州のこと、どうして日本のマスコミは重視しないんでしょうか?
http://miyazaki.xii.jp:80/travels/index.html
 先生の紀行を読んで、いささか気になりました。
     (YO生、山形)


(宮崎正弘のコメント)来月一日発売の『正論』十二月号に、そのあたりのことを詳しく書きます。



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(読者の声4)貴誌2746号書評並びに2747号の読者所見ですが、鳩山外交が混乱し、国民は心配しています。
以下「道楽Q」様のご意見に感想です。
 「<引用>(三好範英氏の『蘇る「国家」と「歴史」―ポスト冷戦20年の欧州』(芙蓉書房出版)はいずれ読みたいと思います。しかし、ご多忙なのによく読書の時間がある(笑)。ところで(ニュアンスから伝わる)「ドイツに学べ」という論調ですが、耳にタコでウンザリです。<引用終わり>)。

ドイツに学ぶというのは、「汚い手口を学ぶ」というように理解しています。だから日本人はまだまだです。
建前はとにかく、ドイツ人の生き残る根性は大したものです。「我々は雑草である。今度の戦争には負けるかもしれないが、必ずドイツ民族は復活する」といった第二次大戦末期のドイツ軍人の言葉が印象的です。しかし日本人はどうでしょうか。生まれ変わって平和主義になるなどと寝言を言っているのではないでしょうか。
世界で生きてゆくには偽善が必要悪です。しかし日本人は偽善を嫌います。それは悪党の世界では間抜けということです。
 今回、世界は鳩山の主張する奇妙な友愛主義を聞いて、裏に何か狡猾な罠があると勘ぐったわけです。しかし実は何もないただの妄言とわかって、世界は呆れかえり、百年に一度の好機を逃すなと日本に攻め込んでこようとしています。
すでに入国管理力の衰退で日本の国境は実質突破されています。これから日本国民は大変な苦しみに会うでしょう。とうことで日本がしぶといドイツから学ぶ偽善と狡猾さはまだまだ沢山あると思います。
   (東海子)


(宮崎正弘のコメント)ドイツ人の先祖はゲルマン、狩猟民族ですから八世紀までパンの焼き方も知らなかった。



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(読者の声5)明日、孫子の勉強会があります。
孫子経営塾特別シンポジウム「今、中国で何が起こっているのか」
とき  平成21年10月24日(土)13:00〜19:00(開場12:30)
ところ 国士舘大学世田谷キャンパス 梅ヶ丘校舎3階「B301」教室
    http://www.kokushikan.ac.jp/access/setagaya.html#anc01

◇ 13:10〜 シンポジウム
      「『孫子』を生んだ国、中国と如何に付き合って行くか」
      パネラー:  池田 十吾 国士舘大学教授
            殿岡 昭郎 元東京学芸大学助教授
            濱口 和久 国学院栃木短期大学講師
      コーディネーター: 海上 知明 国士舘大学講師

◇ 15:00〜 平松茂雄先生 杏林大学元教授 特別講演
       「中国の国家戦略――核・宇宙・海洋の三位一体戦略」
◇ 17:00〜 懇親会
● 会費:  孫子経営塾生・・・3000円(シンポジウムのみ1000円)
         一般・・・4000円( 同 1500円)
    国士舘大学学生・・・2000円( 同 無料)
       一般学生・・・2500円( 同 500円)
■交通: 小田急線梅ヶ丘駅下車、徒歩9分 
    東急世田谷線松陰神社前駅または世田谷駅下車、徒歩6分 
    渋谷駅南口バス乗場18番「世田谷区民会館行」バスで終点下車、徒歩1分
    (〒154-8515東京都世田谷区世田谷4-28-1)
【連絡先】 kunojun@amethyst.broba.cc / 090-2933-8598(久野)



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(読者の声6) 先日発売された「ミシュラン・ガイド 京都・大阪」版で三ッ星が6店舗とニューヨークの5店舗を上回ったとか。
ミシュランで思い出したのが、最近読んだ「暴走族だった僕が大統領シェフになるまで」 (山本秀正著、新潮社)です。
 昭和31年(1956年)生れの著者は子供の頃から駄菓子より野菜好き、インスタント・ラーメンの具も毎日考えるほど料理好き。高校の頃のやんちゃな暴走族時代がひっかかり就職できず、イタリアの国立料理学校に修行の旅へ。その後フランスの三ツ星レストランでの下積みを経て六本木〜アメリカでシェフとなる。
 LAでレストランを成功させ、リッツ・カールトン・ワシントンDCの総料理長になったのが28歳。LAでの評価は最高でもナンバー2止まり。ナンバー1は評論家や出資者による宣伝がすごい店。
著者がいうには日本の居酒屋の料理の方がレベルが高いとか。

 1980年代のアメリカのレストランのレベルはものすごく低かったという著者ですが、28歳の日本人を総料理長にすえるリッツ・カールトンもたいしたもの。
日本の1980年代というと回転寿司、焼肉、居酒屋も冷凍食材ばかりで安かろう不味かろうの時代ですが、昼定食の5〜10倍もだせばかなり美味しいものも食べられました。学生時代、J.B.ハリス先生の講義で「ポパイ」はぼろ雑巾のようなホウレン草を無理やり食べさせるために作られた、日本のホウレン草のおひたしに感激した、という話しを覚えています。
その後体験したアメリカの航空会社の機内食はまさにぼろ雑巾のホウレン草。

 著者はリッツ・カールトン・ワシントンDC内ジョッキークラブの昔ながらの雰囲気やメニューは変えずに、「今日のおすすめ」という形で重たいクラシカルなフレンチ(バターたっぷりのソースetc)から素材を重視した軽くさっぱりした料理を増やし、3〜4年かけて自分の望むメニューへ変えていき客層も若返ります。そのリッツ・カールトン・ワシントンDCではレーガン、パパブッシュ、クリントンと3代の大統領の就任パーティーの料理を任され成功させます。著者の各大統領評によると、レーガンは味がわかるが、ブッシュ・クリントンは味にはこだわらない。クリントンはヒラリーの食事制限メニューで食べたいものも食べられず、完全に尻に敷かれています。

 ケネディ家へ出張ケータリングで行った際には大豪邸にもかかわらず満足な食器も碌になく、一人100ドル程度の材料費に毛の生えた程度の請求書に文句を言うケネディ家の祖母。さすがに禁酒法時代に闇で仕入れた酒を倉庫に隠してぼろ儲けしたケネディ家だけのことはあります。
 リッツ・カールトンにアラブの王族などが泊まるとアラブ料理は他店から仕入れたり、王族専用のシェフに調理場を使わせたりするという。一流ホテルでは「できません」という言葉はない。ただしアラブ人が調理場を使うとものすごく汚すので閉口したというのはバンコクのアパートでもよく聞いた話だから頷ける。

 リッツ・カールトン・ワシントンDCは建物のオーナーとリッツ・カールトン側との意見対立である日突然廃業。アメリカ映画などで従業員を解雇するときは警備員の監視のなか私物をすべてまとめてすぐに会社から出て行くよう命令されますが、リッツ・カールトンの撤退はマネジャー以上の本社社員のみに伝えられ、パソコンのフォルダ内のデータはすべて消去するなど現場で働くローカル採用の組合員など蚊帳の外。日本でこんなことをしたら非難轟々だろう。

 著者はその後あちこちのホテルで実績をあげ、マンダリン・オリエンタルにスカウトされる。さて在米生活も20年というところでマンダリン・オリエンタル東京への移動話。ホテルオープンに合わせてのレストラン部門をすべて任され5店舗ものコンセプトの違うレストランを作り上げる。本格広東料理の店では新進気鋭の日本人シェフを雇うが本社サイドからは中国人シェフを雇うよう何度も圧力。オープンしてからも香港から本社の白人たちが文句を言いに来る。本格広東料理ではないと。彼らが言う本格広東とは色や味付けがもっと濃いもの。宮崎氏の著書やメルマガを読んでいると香港料理は中国人観光客の激増で味付けが濃くなったことがわかりますが、香港の本社サイドも広東料理をわかっていない。本社の推すシェフなど三流だと突っぱねるあたり実力・実績がある著者ならでは。マンダリン・オリエンタル・東京では5店舗中広東料理を含む3店舗がミシュランの星を取るほど。その後セントラルキッチン化に嫌気してホテルを去る。

 なんでも欧米のものをありがたがる評論家と違い、欧州の野菜は不味いし豚も日本の方がいろんな味わいの肉質があるという。フランスでミシュラン三ツ星レストランに日本の野菜を作って卸している日本人も欧州の野菜は不味いといっているから事実なのだろう。フランスの蕪(かぶ)は筋っぽくて、日本の柔らかな蕪の足元にも及ばないとか。
衛生面ではアメリカの方が進んでいるし日本のシェフは保守的過ぎる人が多いとも。アメリカのシェフは将来計画がしっかりしており新しい機器や技術にもチャレンジする人が多いという。

 料理人は唯我独尊で調理・ホールスタッフを怒鳴りつける人が多いのは世界共通らしい。レストラン業界でもヘッドハンターが目を光らせるアメリカ、徒弟制度で弟子を影響力のあるレストランに押し込もうとする日本、日米の文化の違いと共通点がとてもよくわかる本でした。
  (PB生)


(宮崎正弘のコメント)一度だけ、リッツ・カールトンで食事をしたことがあります。それも二十年ほど前の香港、昼に飲茶を食しましたが、旨かった。けれども高かった。
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樋泉克夫のコラム
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――やはり毛沢東の一生はナゾだらけ・・・
     『真相:毛沢東史実80問』(田樹徳 中国青年出版社 2002年)
 


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著者は「自序」で「私は毛沢東とその思想研究の専門家ではない」と断ったうえで、1982年から湖南人民出版社で編輯の仕事を続け「毛沢東に関連する原稿を日常的に処理するなかで」、毛沢東に関する“事実”に多くの異論があることに気づかされたそうだ。

たとえば毛沢東の生家の経済状況についても、貧農、中農、富農と定説がない。毛沢東自身は『中国の赤い星』(エドガー・スノー 筑摩書房 1971年)でスノーに向って「私の父親は貧農」だったが「注意深く節約し、小商売とその他の事業で小金をこしらえ、やっとのことで自分の土地を買いもどし」て「中農」となり、ついには「一家は『富』農の地位を得」たと語っているが、ここにも毛沢東の巧まざる演出と演技が隠されているように思える。

つまり貧農だったといえばウソになる。
だが正直に富農だったといってしまったら、地主打倒を掲げる革命家の出身環境としては些か、いや大いにヨロシクない。
そこで毛沢東の生家は貧農から中農を経て富農へとホップ・ステップ・ジャンプと3段階を経たとする。

すべては父親である毛貽昌の不断の努力と並外れた才覚の結果、つまり自力更生がもたらしたものということにすれば万事が目出度く解決する。それというのも自力更生こそ毛沢東が全人民に要求した理想の生き方だったはず、だから。

毛沢東の最初の結婚は8歳とも14歳ともいわれているが、相手の名前も楊氏、李氏、羅氏と諸説紛々。江青との結婚日時についても曖昧模糊としたまま。
いったい一生のうちに何人の女性を妻としたのかも必ずしも明らかにされてはいない。ところが『中国の赤い星』において毛沢東は「正真正銘の一夫一婦論者」ということになっている。「正真正銘の一夫一婦論者」が繰り返す結婚・離婚という振る舞いを、さて、どのように解釈すべきか。

このように毛沢東の生涯にまつわる諸説紛々として定まらない問題を80ほど取り上げ、著者は多くの研究書、回想録、記録などを比較考証しながら結論を導いてゆく。

たとえばアメリカの某研究者は「71年秋、毛沢東は宿とした上海の邸宅で戦闘機の機銃掃射を受けた」とする。
もちろん、この見解の前提には林彪らによる毛沢東暗殺計画がある。
毛の乗った専用列車は71年9月10日18時10分に上海に到着し翌日13時12分に南京に向って出発したが、郊外の虹橋空港への引き込み線に専用列車を停車させ要人と面談していたとの“記録”を挙げ、機銃掃射説をありえない妄説と退ける。

 癌の末期症状に苦しむ周恩来を見舞い励ますことすらしなかった点を挙げ、毛沢東の冷酷非情ぶりを指弾する声がある一方、いや毛沢東は危篤状態に陥った周恩来を秘かに見舞い別れのことばを交わしたとの説もある。

この両説について、周は76年1月7日に昏睡状態に陥り9日の午後9時に永眠。10、11日には朱徳、!)小平以下の党幹部など1万人ほどが病院で遺体に別れを告げ、15日午後には人民大会堂で厳かな追悼式典が行われている。
そのどれにも毛沢東は参加していないとし、著者は毛沢東の警護官の回想を基に、すでに毛は歩行困難であり流動食を鼻から注入する状態で周を見舞うことなど不可能と断定する。

著者は従来の“定説”を糾し数多くのナゾを解き明かそうとするが、ナゾを生むばかり。だが多くのナゾも、毛沢東が革命家としての自らの生涯を演じ切るための小道具と考えるなら、演出が巧みなだけナゾが多いのも道理。世間は毛に翻弄されるがままだ。
《QED》

(ひいずみかつお氏は愛知県立大学教授。このコラムは小誌に独占的に連載されます)
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(休刊のおしらせ)小誌、取材旅行のため10月25−26日を休刊します。
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