国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2009/10/21


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  『三島由紀夫の総合研究』(三島由紀夫研究会 メルマガ会報)
      平成21年(2009)10月21日(水曜日)
          通巻第351号  
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(読者から その1)
『朝日ジャーナル』副編集長時代に
        
『三島由紀夫の総合研究』10月号、川端康成と三島の関係をめぐる西法太郎氏の伝記的エッセイを実に興味深く拝読しました。
これで思い出したことを、いくつか列記させていただきます(川端・三島研究にはぜんぜん役立ちそうにない話ばかりで、おおかたの会員はすでにご存知のことと思いますが)。

(1)昭和五十年(1975年)秋、『朝日ジャーナル』の副編集長だった私は、「没後5年、三島由紀夫は蘇えるか」という、私自身の企画した特集のために京都の「身余堂」を訪れ、保田與重郎とのインタヴューを試みました。保田は「とにかく三島はいい、何ともいえずいい・・・」と、かなり熱のこもった口調で三島を絶讃しました。
しかし、、十数時間にわたる超長時間のインタヴューで、私が三島との個人的な関係や三島文学の評価をしつこくたずねたにもかかわらず、彼はそれらについて具体的なことをほとんど全く口にしませんでした。三島は日本敗戦直後、中国戦線から帰還して故郷桜井で病身を養っていた保田を一度見舞っただけで、その後二人は全く(または、ほとんど?)対面と文通の機会を持たなかったそうですから、保田としては答えようもなかったのでしょう。
    彼は三島の自決についても、具体的な見解を語らず、実を言うと私は少々拍子抜けした気分でした。両者の精神の形は、もともと基本のところで相当違っていて、文学観や歴史観における共通項もきわめて乏しかった、というのが私の見方です。
一例を挙げましょう。怪奇趣味の有無は、物を書く人間(知識人一般といってもいい)の精神の形の違いを計る重要な指標の一つですが、三島がそれを大量に、それもしばしば陰惨に堕しかねぬ形で持ち合わせていたのに対し、保田はそういうものとは全く無縁でした。

(2)このインタヴューで、私は保田に川端のことについても質問の水を向けましたが、彼はまるで関心のなさそうな様子で、ひとことも答えませんでした。

(3)三島の追想記によれば、彼の初期作品の一つ『中世』を読んだ川端は、その末尾に出てくる韋応物の詩句「帰思方(まさ)に悠なる哉」(『聞雁』)を見て(たぶん出典をたずねたうえで)、「学があるんだね」と言ったそうですが、この微妙に焦点のずれた(または故意に焦点をずらした?)川端の評言と、そんな些事を追想記にことさらに書きつけた三島の態度からは、両者の精神の親和ではなくて、そこはかとなき――しかし根は深刻な――乖離が感じ取れます。三島は保田とは本来別の世界に住んでいた。三島と川端は同じ世界の住人だったが、両者の見る風景はまるで違っていた。そう言えるかもしれません。

(4)川端がノーベル賞をもらったあと、大手新聞各社は彼に原稿を求めて争いましたが、彼は各社の執筆要請にイエスともノーともこたえないでハワイへ行き、そこに長期的に滞在しました(大学での講義のため)。朝日新聞東京本社の田代編集局長(のちのテレビ朝日社長、故人)は諦めず、みずから文芸担当の学芸部員とともにハワイへ飛び、1ヶ月近く懇請に懇請を重ねて執筆の約束を取りつけました。やがて届いた原稿は、わずか100行内外(当時は1行15字)、内容も格別に感動を誘うものではありませんでしたが、仄聞したところでは、川端への謝礼に編集局長ら2名のハワイ滞在費を加えた費用は1字当たりでは戦後朝日史上最高、原稿の質を計算に入れれば空前絶後の稿料じゃないかという皮肉っぽい声が、しばらく社内に飛び交っていたと記憶しています。

    川端のその文章は、私見によれば、痛ましくも彼の筆力の衰弱をなんとなく感じさせるもので、かれが新聞各社の執筆要請に応えなかったのは、この筆力衰弱のゆえかもしれないと私は思いました。
その後ほどなく、彼は絶筆となったエッセイを月刊『文藝春秋』に書きましたが、それは『梁塵秘抄』の「仏は常にゐませども・・・」という最もよく知られた歌謡を引いて、ひたすら人間存在の哀しみを語ったもので、これまた私見によれば、彼の心理活性の低下は覆うべくもありませんでした。
 これらの川端の文章――要するにノーベル賞以後の川端の公的発言――には、三島の人と作品に触れた文言は皆無だった用に思います。
一方、村松剛によれば、三島は彼にノーベル賞候補としての推薦を要求した川端に対し、またその川端の要求を容れざるをえなかった自分自身に対し、憤懣抑えがたい心理状態にあったとのことです。
三島がノーベル賞候補に擬せられていることは、本人はもとより川端も知っていたからです。三島のその憤懣が川端にわからなかったはずはなく、彼は三島の自決によって深刻な心理的動揺を免れなかったと考えても、さして見当違いではなさそうです(自責の念などという単純なものではなかったでしょうけれども)。私は月刊文春の上記エッセイの行間から、その心理的動揺の産物ともいうべき密かな憂悶の気配を感じ取りました。
            (井川一久)
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(いかわかずひさ氏は元「朝日新聞」ベトナム特派員、『朝日ジャーナル』副編集長などを歴任。ベトナムの最高文学といわれるバオ・ニン『戦争の悲しみ』の訳者。現在は「憂国忌」発起人。評論家)。
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(事務局だより)下記の方々、郵便物が「転居先不明」などの事由で戻りました。新しい住所をおしらせ下さい(順不同、敬称略)。
 
 大西啓吾(神戸市)
 沢田佳奈(熊本市)
 藤井 聡(杉並区)
 荒木正則(河内長野市)
小寺忠雄(冨士見市)
小林太郎(岡山県)
関野祐一郎(藤沢市)
田中尚志(川崎市)
 渡辺俊幸(静岡県)
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三島由紀夫研究会「公開講座」(第235回)

とき  10月28日(月曜) 午後六時半
ところ 市ヶ谷「アルカディア市ヶ谷」(私学会館)四階会議室
http://www.arcadia-jp.org/access.htm

講師  高森明勅(神道史家、國學院大學講師、桜チャンネル・キャスター)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%A3%AE%E6%98%8E%E5%8B%85
代表作に『天皇と民と大嘗祭』(展転社)

演題  「三島由紀夫と天皇論」
会費  おひとり2000円(会員&学生1000円)。
    
三島は女性天皇を容認する発言をしています。天皇論でつねにコントロバーシャルな高森先生をむかえて、徹底的に論じあいます。
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MMMMMMMMM 三島 MMMMMMMMMMMMMM 三島 MMMMMMMMM
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(編集部から)小誌は「三島由紀夫研究会」(昭和四十六年創設)の会員だけに限定せずに、三島研究の論文、エッセイをつねに募集しております。比較文学論(たとえば「吉本隆明と三島」とか)、作品論(たとえば『仮面の告白』に新解釈)、読後感、政治論、芸術論。まるで分野を問いません。三島さん自身、古典から前衛まで、映画からシャンソンまで万能の人でしたから。
 「憂国忌」への御感想、御希望でも構いません。皆さんからの御投稿を広くお待ちします。原則として実名。簡単な肩書きをつけて下さい。ただし三島文学批判も構いませんが、明らかな誹謗中傷のたぐいの投稿は採用しません。ゲスト寄稿者コーナーも常設しております。一部の原稿は年二回以上発行のメルマガ合本に掲載することがあります。    
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  三島由紀夫研究会 HP URL http://mishima.xii.jp/
      メール  yukokuki@hotmail.com
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(C)三島由紀夫研究会 2009  ◎転送自由
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創刊日:2001-08-18  
最終発行日:  
発行周期:ほぼ日刊  
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