国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2009/10/19


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   「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
      平成21年(2009年)10月19日(月曜日)
         通巻2745号 
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 タリバンの聖地=南ワジリスタンへ軍が猛攻を開始
  パキスタン軍の中枢をテロリストに襲われ、ついにタリバン退治を決意?
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  パキスタンの陸軍本部がタリバンに急襲され、軍幹部らが人質に取られたため報復奪還作戦を強行し、犯人たちを射殺した(10月11日)。
軍の中枢が乗っ取られてパキスタン軍はいかにタリバンに同調的とはいえメンツを潰されては立たざるを得ないだろう。

その前にもラワルピンジなどで自爆テロが相次ぎ数十名が犠牲となった。ラホールでは政府ビルが襲撃されて銃撃戦となり十数名が死んだ。ペシャワールでは学校が襲撃を受け、八歳の女の子も犠牲になった。

 パキスタン軍は五月以来、北東部でタリバンの拠点化していたスワット渓谷で猛攻作戦をようやく終え、政府を揺さぶられたテロへの対応のため今度は北西部、南ワジリスタン地区のタリバン拠点に一斉攻撃を開始したのだった。

 この地区には「パキスタン・タリバン運動」(TTP)本部があり、ビンラディンが潜伏している場所とも言われ、また「ウズベキスタン・イスラム運動」(UMI)の亡命本部もあるという。

 10月17日、パキスタン空軍の支援を受け陸軍戦闘部隊二万八千は同地区へ進入した。
 「これは当該地区にすむ部族長からの要請でもある」とマリキ内務大臣は発言している(アルジャジーラ、10月17日付け)。

 TTPは07年12月におよそ四十の武装勢力が反米を旗印に集まって結成された。南ワジリスタン地区にはウズベク人(千名)やチェチェン人などの外国人を含めて、一万ものゲリラが武装して潜伏、アルカイダの政治担当、実力ナンバー2のザワヒリも隠れ住むとされる。


 ▲タリバンの聖地、これでなくなるか

 これまでも無政府地域でパキスタン政府の統治が及んでいない。だからこの無法地帯を根拠にアフガンのタリバンをかくまう「聖域」と化していた。

 過去にもパキスタン軍は南ワジリスタン地区で軍事掃討作戦を展開、しかし三千メートルの山岳地帯だから機動的作戦は困難であり空爆が主だった。地上戦となると、山稜の起伏を活用し、地形を知悉する反政府武装勢力のほうが有利となる。この軍事作戦は長期化するだろう。

 TTPはすでに背後の攪乱、都市ゲリラを各地で実行に移しており、パキスタン国内だけで過去二週間に、テロによる犠牲は160名、難民は二十万を越える。
スワット渓谷掃討作戦でも百万近い難民が出た。

しかしパキスタンの一部には、「南ワジリスタンに軍を集中させるのは危険で、モグラたたきのモグラのようにパンジャブ地区が手薄となる。同時に猛攻を加えなければ効果は限定的である」と分析する専門家もいる。

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 ドイツは歴史認識を変更し、外交の方針をかえて政治大国になった
  様々な意味で日本との比較にもなる現代欧州政治の現場レポート

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三好範英『蘇る「国家」と「歴史」―ポスト冷戦20年の欧州』(芙蓉書房出版)
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 念入りな現場取材と多岐にわたるテーマを重層的に描きながら、冷戦後の欧州政治の実情をヴィヴィドに伝える労作である。
 とくにドイツが東西統一を果たし、通貨統合「ユーロ」を実現させた、そのあとで、明らかに地政学的なポジションを変更し、ものをいう政治大国となっていることが本書の中軸のテーマだ。
 著者の三好さんは読売新聞ベルリン特派員。ドイツの専門家でもある。
 冒頭にエストニアの状況が描かれる。バルト三国の北端、首都はタリン。評者(宮崎)も十数年前に行ったことがあるが、ソ連の特殊部隊が入り、戦車が国道を警備し、独立をもとめる人々へソ連派の弾圧が続いていた。あのころ、盛んに東欧の表情をルポした。
 英雄碑として公園に鎮座ましましたのはソ連の軍人たちだった。ようやくにしてエストニアのナショナリズムが高揚し、撤去運動がおきると、まだ残存するロシア派(露西亜系住民)らが反対運動を展開し、流血の巷となった。
 ―えっ。まだそんなことやっているの?

 ついで本書はポーランドへ飛ぶ。
 東欧の大国だったポーランドがソ連に蹂躙され衛星国家となって人々は圧政に呻吟していた。冷戦崩壊後、ポーランドを真っ先に支援したのはドイツだった。「脱共産化からすぐに、ポーランドはNATOとEU入りを最大の外交目標に掲げた(中略)。ポーランドをドイツの経済圏に組み込む、あるいは、ロシアに対する安全保障上の緩衝地帯としての役割を期待するという計算はあったにせよ」コール時代のドイツはポーランドをかなり熱烈に支援した。
 これまた評者(宮崎)の体験だが、その頃、三度ほどワルシャワやクラコウを歩き、ポーランドの急速な市場経済傾斜を目撃したものだった。
 その両国関係が悪化した。
理由は「端的に『歴史』をめぐってのものだった。ドイツ国内で顕著になってきた歴史認識の変化、つまり、第二次大戦後続いてきた、『加害者』としての贖罪一辺倒の歴史意識から、『被害者』としての側面に光を当てる歴史認識が台頭してきた」のがドイツ、そうした文脈では日本と似ているとも言える。
 細かな論争の経緯、その論点は本書に譲るとして、なるほどポーランドとドイツがまたもや冷たい関係になっている事実は日本にいると分からない。
 シュレーダー前政権は、はっきりと米国と距離をおく政策に切り替え、イラク戦争に反対し、さらにはポーランドの頭越しにロシアへ接近し、ポーランドを通過しないパイプライン建設を推し進める。ややもすればドイツは反米と見られ、しかもイラク戦争反対ではフランスと協調した。
 随分と左旋回するんだ、というのが当時の感想だった。


 ▲メルケル鉄血宰相の登場

 メルケルは、反米論戦を修正し、もとの西欧+米国との関係を重視する外交にもどしたが、ポーランドとの関係はもとの鞘には収まらない。ポーランドにカチンスキ政権が発足すると、「ドイツとの間の歴史問題がいくつか表面化し、事態を悪化の方向へと導いていった」。
 両国民の間には越えることの出来ない感情の溝ができたようである。
 さて本書の観察の基軸の対象は現代ドイツである。
 ドイツでは地政学が本格的に復活し、遠交近攻外交を採用し始めている。ロシアをどう扱うか、警戒しつつも、同時に積極的に協力して、一歩一歩着実にドイツは国益を追求している。
ロシアの背後にある中国への肩入れも、イランへの接近も、地政学的視点に立てば、ドイツ中心主義であり、それが分かっているからEUのパートナーだったフランスがときにドイツへ刃向かい、反発し、ロシアードイツ協調態勢に対抗するかのように地中海同盟を提唱し、外交的パフォーマンスで湧かせるのがサルコジである。

とはいえドイツはフランスを重視する。EUの相棒であり、通貨統合=ユーロのパートナーであり、まさにユーロこそは西欧の対米対抗外交の成果ではないのか。
 ともかくもドイツは「ヨーロッパを中心として国際社会で、積極的に外へ向かう主体としての役割とその自覚を強めていること」、それは「国益の主張であり、EU内での主導権の発揮である。その行動の裏付けとして『国家』と『歴史』を再発見している姿」がドイツの現況である、と三好氏は言う。
 さらに三好範英氏は、こう付け加える。
 「これまでの西側同盟路線、とりわけ米国との関係を最重要視する立場からヨーロッパ中心に考える立場、さらに進んで、ロシアとの関係を重視する立場へ徐々に軸足を移している」
 欧州政治のいま、を理解する上でおおいに参考となる。

 ただし、日米同盟を尊重し、中国を地政学上のバランス要素として活用し、東アジア共同体で、EU並みの力を求めようとする日本が、ドイツと同様な「国益」と「歴史認識」を変えているかどうかは議論の分かれるところである。いまの日本に地政学を説いても、そのイロハさえ、小鳩政権の閣僚やブレーンにはちんぷんかんぷんであり、国際社会では『友愛』は宇宙語でしかなく、そもそもドイツは徴兵制があり、アフガニスタンへ4200名の軍隊を送っており、武器を輸出している国であること。日本とは基礎要件が百八十度ことなる。
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◎ブックレビュー◎ ●BOOK REVIEW◎ ●書評◎ ●ブックレビュー◎
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◇休刊のおしらせ☆ 小誌は21日付けが休刊の予定です(講演旅行のため)。
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(読者の声1)貴誌2724号の日本の国際技術レベル論がいろいろな視点で論じられ大変参考になります。ただ国際経済のもう一つのカギは為替です。
為替率の適否の評価は、結果です。今は中共が世界の工場になり、世界中の富が集まり、西側諸国では仕事が奪われつつあります。これは異常であり、人民元の為替交換率が不適正である証拠です。直ちに改めるべきでしょう。
貿易は、賃金など基本条件がある程度同じでなければ成立しません。買うばかりでは早晩カネがなくなるからです。
中共の13億人という人口は、西側先進国の人口を全部合わせてもかないません。この人口が底なしの低賃金でモノづくりを始めると、西側から製造業がなくなります。 まして地球温暖化対策をしないでよい「環境特区国」ですから、さらにコストは下がります。
 このままでは西側は産業が奪われ、諸国民は失業と貧困の塗炭の苦しみを味あうことになるでしょう。それはもう始まっています。
そこで自国に製造産業を取り戻すために、西側諸国は連帯して人民元の国際的な為替管理をすることが必要です。
   (東海子)



(宮崎正弘のコメント)そういう政治課題も大事ですが、為替はマーケットで動きます。金利、経常収支、政治の要素が輻輳し絡まり合って、上下に激しく動く為替を、いかに中国が大金をはたいて介入しようとも、投機資金の暴風雨がやって来れば、お終いになります。そろそろジョージ・ソロスやジムロ・ジャースが登場するのでは?



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(読者の声2)貴誌2744号の「(読者の声1)「円を防るもの」(アシカビヒコ)さんの地政・経学的な意見、傾聴すべきものあり。
「(宮崎正弘のコメント)「国民の高い倫理」というものは既に崩壊したので は?」という辛辣なコメントをどのように受け止めるか、アシカビヒコさん並びに読者諸兄のご意見を拝読したいものです。
(SJ生)


(宮崎正弘のコメント)道徳の実践という意味でも、日本の若者が世界に伍セルとは、とても思えませんが? 電車やバスで年配者に席を譲らないことひとつとっても、アジアのくにぐにの道徳レベルより低いと言わざるを得ませんね。
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創刊日:2001-08-18  
最終発行日:  
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  • 名無しさん2009/10/19

    日本人のモラルの崩壊バス・電車で外出すると良く判ります。昔なら恥ずかしいと感じる筈の動作が若者には常識、怖いことです。

    TPOなんて単語は死語、別に英単語を奨励する訳では有りませんが、矢張り場所をわきまえるべき事は人間としての常識が常識で無く成っていることは深刻な問題。