国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2009/10/09


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   「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
     平成21年(2009年)10月9日(金曜日)
        通巻第2735号  
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(中国旅行記 読者より)
 屋台を取り締まる警官はちんぴらと変わらない。
  偉大なる中国(国慶節)を目撃した直後の裏町では。。。。。
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 ▲成都と甲府とが姉妹都市はなぜ?

 四川省の成都にいます。午前中、杜甫草堂、そして武侯祠に行ってきました。かなりゆっくりと回り十分に堪能しました。
成都と甲府が友好都市になっているようで、草堂の記念室に銭其シンや楊尚昆らのオートグラフに並んで石和温泉などのパンフレットが並んでいたのには笑ってしまいました。
しかしなぜ甲府なのでしょうか? もしかして盆地つながり? まさか。ともあれ、いにしえの中国人の偉大なる事績に触れた後、宿を取っている春煕路の付近をぶらぶらしました。
 連休も最終日とあって、繁華街は若者たちが多く繰り出してたいへんな賑わいです。そんなところではよく見かける光景ですが露天の物売りが多く店を開いています。串肉を焼きながら売るリヤカーのおばあさん、串飴を背中に担いで歩くおじさん、バッグ類やアクセサリーをボロ布に広げるおばさん、自転車の左右のカゴに果物を満載したおねえさんなどなど。

 その中にいた30前後の女性が三輪自転車の荷台にかけたビニールシートをはずしました。大量の映画DVDが載っています。知らない作品ばかりですがちゃんとパッケージされています。
一瞬、ホンモノかと思いましたが、紙に挟んだだけのパッケージはいわゆる海賊版でしょう。何人かの人が目当ての盤を捜し始めたころ背後から怒鳴り声が聞こえます。黒制服姿の若い警官2人です。彼らはパッケージを20枚ほどわしづかみにしました。
そしてにやにやしながらパラパラとめくって見ています。物売りの女性は手を合わせて返して欲しいと頭を何度も下げようやく返してもらいました。そしてすぐに荷台にカバーをかけて立ち去っていきました。


▲庶民のささやかな屋台も破壊

サボテンや観葉植物をビニールの小鉢で売る自転車のおばさんも警官に呼び止められました。
彼らは、きれいに手入れされたサボテン鉢を数個ばかり地面にたたきつけすぐに立ち去るように命令します。おばさんは半笑いの表情でサボテンを拾い砂をすくっています。
事前に買った人も同情して一緒に砂を拾っています。おばさんはその人に律儀におつりを手渡し、警官の背中をふり返りながらその場から離れていきました。

次に警官は飴売りのおじさんの背中から商品を引き抜いて何かまた怒鳴っています。
警官の手に何本かの串はありますが、3、4本の飴が折れて路上に落ちました。
おじさんは走って路地に逃げ込んで行きました。しばらくすると落ちた飴がなくなっていたのでおじさんが拾ったか誰かが持っていったのでしょう。
警官は路上を取り締まる間、片手に飴を持ったままです。

これはどうみても警官と言うより、地回りのチンピラという印象を受けました。折り目も消えて薄汚れた服装もだらしなく、制帽も身につけていません。おまけに上着のすそから柄ものシャツがはみ出しています。彼らは串飴をもったまま物売りたちを次々に怒鳴り退散させています。

 一方で、同じくゴロツキ風の若者に肩を組まれてなにやら笑顔で話してもいます。
物売りたちは警官の姿が消えるとまたすぐに店を広げます。文字通りいたちごっこを続けていました。

こうした様子は日本からの旅行者の目にはもの珍しいのですが、地元の人たちからすれば日常茶飯なのでしょう。すべて衆人百目の前で起きています。
 権力をカサに着た傲慢非情な警官と苦労しても報われない可哀想な物売りたち。貧民たちの警察に対する怒りはまだまだ蓄積しているように感じました。「偉大なる中国」の事績を見学した直後に目撃した光景だけに印象に残るシーンでした。

 そういえば似たような経験がありました。古代ローマ人の造った壮大で緻密な遺跡群を巡った後、いい加減でその場しのぎな現在ローマ人と接した時です。
 いま中国では建国60年に合わせて公開している映画「建国大業」がたいへんな入りなようです。

春煕路の映画館でも大入りの様子です。抗日戦争から建国までの指導者群像を描いた作品です。この前のレポートで書いた「解放」と似ています。なにやら172人のスターが登場するらしいのですが、毛沢東役にはもちろん例の唐国強。
ジャッキー・チャン、アンディ・ラウ、ジェット・リー、レオン・ライ、チャン・ツィイーなどの豪華スターも出演しているとか。 

こちらのテレビでは相変わらず国慶節関連の番組をやっています。
成都でも西安でも観光地は、というより人が集まるところはどこも「60」あるいは「国慶」という文字や大きな花飾りが目立ちます。ただ春煕路では国慶セールの方が目立つでしょうか。もちろん30メートルおきに銃を持った公安警察が隠れていますが。
   (NS生、中国旅行中)


(宮崎正弘のコメント)連日、精力的に中国各地を回っているようですが、食あたりに気をつけて下さい。
 さて、成都と甲府が姉妹都市の理由は「盆地」だけではなく、「軍師」です。諸葛孔明と武田信玄(山本勘助)、ともに軍略の英雄ですから。
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◎読者の声 ★どくしゃのこえ ◎DOKUSHA―NO―KOE ▲読者の声○
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(読者の声1)「日本文化チャンネル桜」支援講演会が開催されます。
スローガンは「この国を守る 〜如何に日本を防衛する国民の意識が問われている」
  日時  10月12日(月/体育の日)
18:30〜開場 19:00〜開演
  会場  杉並公会堂(定員1200名/東京都杉並区上荻1の23の15/TEL03-3220-0401/JR中央線・東京メトロ丸の内線「荻窪」駅北口より徒歩7分)
  講師   山田宏さん(杉並区長)、田母神俊雄さん(前・航空幕僚長)
  ゲスト  横田滋さん、横田早紀江さん
  提言   水島総さん(日本文化チャンネル桜社長)
  参加費  千円
  主催   日本文化チャンネル桜首都圏地区協力会(東京城西・城南地区協力会/東京城北・城東地区協力会/神奈川地区/埼玉地区/千葉地区)
  共催   田母神俊雄後援会、はあもにい教育研究会、誇りある日本をつくる会
  後援   杉並区防衛協会、杉並区東倫理法人会、杉並区西倫理法人会、東京都トラック協会杉並支部
  協賛   草莽全国地方議員の会、日本会議東京都本部、モラロジー杉並事務所
  お問い合せ  日本文化チャンネル桜二千人委員会事務局(月〜土/10:00〜18:30)
  ☆お申し込み TEL03-6419-3900 FAX03-3407-2263
  座席は全て自由席となります
 


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(読者の声2)中国は、GDPにおいて、近々日本を抜いて米国に次ぐ世界第二の経済大国にならんとしています。日本にとっても中国向け輸出比率は米国向けを上回っており、中国は無くてはならない存在になっています。
日本の地位は、東アジア経済圏における中国のウェィトが高まってきており、サブ的な国にならんとしています。
このような情勢の中で、日本は、今後、どのように中国と付き合っていけばよいのか?
(結局は、民主新政権も表面は協調態度を見せつつも、結局はつかず離れずの外交政策をとることになるのでしょうか。
−外交面で領土主権も含めて、主張すべき点は主張する必要があるのでと思うのですが。
→リアクションを恐れて結局は、主張できず伏せてしまうのでしょうか。)
   (HT生、千代田区)


(宮崎正弘のコメント)前に書評論で書きましたが田久保忠衛氏の近著にこうあります。
「日米関係は米中関係の従属関数になった」。
 昨今の中国の対日論調の鼻息の荒さからも、それが窺えます。



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(読者の声3)10月8日付貴誌の(読者の声4)に対するコメント,「あの外務大臣の目つき、ご覧になりましたか。あれは「イっている」目ですね」(引用止め)。
には笑ってしまひました.岡田さんは多幸症が昂じていつもオルガスムスを感じてゐるのでせうかね。
  (NN 生,横浜市)


(宮崎正弘のコメント)岡田克也氏の過去の発言を読むと、日教組チルドランの典型、戦後教育の申し子、敗戦史観の洗脳から一歩も抜け出ていないことに驚きます。



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(読者の声4)ついに家庭内用の直流電器製品を開発するメーカが出てきました。太陽光発電、風力発電等家庭内発電は直流のものが多くなっています。
また家電製品も実際には交流電気を整流した上で内部では直流電気を使用しているものが大部分です。したがって発電も電気の供給も直流にすると直流→交流→直流と変電するときのロスがなくなります。
やっとこの動きが出てきたかと感慨深いものがあります。さらに電力会社等による商業発電や送電も直流に移行する時代が将来やってくることでしょう。
そこで国防をも考慮して以下の提案を行います。
1.南鳥島、沖ノ鳥島、大東島に5キロメートル四方の太陽光発電装置を設置する。一部は島の外にはみ出しますが、日本の領海内です。これで、日本の全電力需要をまかなってあまりあります。
2.日本の主要諸島に超高圧直流送電線で送電する。
3.上記三島に近傍を航海する電動船に電気を販売する。
4.近隣諸国も直流配電に移行したら、電気を輸出する。
5.この日本および日本から電気を輸入する諸国にとって戦略的な重要性を持つ設備の安全を確保するため、自衛隊を発電装置の下部、上部(空中)、周り及び、送電線の経路に配備する。
  (ST生、神奈川)


(宮崎正弘のコメント)ちょっと壮大すぎて、唸りますね。
   ◎
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    ☆☆☆
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(読者の声5)貴誌2734号での貴コメント「老いてもゴジラは衰えず」とは有難くも恐れ入って居りますが、まだ世話にはなっていないとは言え、被介護保険にカバーされている者としては、日々極力「無為」を為さんと心掛けて居ります。
従ってこの地に在っても、よんどころのない頼まれ事でもない限り、能動的には遠出もしないので、最近のハノイやハイフォン等の北部の開発振りは現認していませんが、彼の地には越日双方の友人達も居りますので、彼等との日頃の連絡から大かたの想像はつきます。
また当地ホーチミン市にあっても、夜の巷へは言うに及ばず和食屋にすらも足を運びません。以前と比べて、飲食店の数や種類は大幅に増えたのは確かですが、同時に見るからに如何にも安易不遜な経営の店が増え、仮に飲食に出掛けても期待を裏切られる公算が大と思われるからです。
ドイモイ実施から約20年。進出日系企業も格段に増えましたが、たび重なる不景気の波に洗われる本社からの経費節減モードの下、現地在勤者達の意気はなにかと消沈し、その個人的財布の紐もいよいよ固くなり、もって、往時よく散見された猛者然とした初代や初期の事務所所長達や現法社長達(いずれも如何にもよき時代の日本の高級飲食店での接待等で舌を鍛えられたような)の姿は減り、即ち、所謂食通のうるさ方の数も減ったのが、当地に於ける飲食店の矮小化に (どちらかと言えば内心では客を嘗めているかのような姿勢も)繋がっているような気も致します。
大袈裟に言えば、文化の伝播やその去就の一端を垣間見るような気分にもなります。

ところで、二年前のハノイご訪問では、日本が一番で遅れているのではとのご印象を持たれた由ですが、総じて日本は出遅れている訳ではないと思います。
日本にしてみれば、ODAにしてもベトナムは第二の対象国ですから。
しかし当地国民の殆どは(或いは関係省庁の担当役人以外は)、それに無頓着と言っても過言ではないでしょう。この辺、タイ辺りの民情とはちょっと違います。
誤謬を恐れずに言えば、当地では供与国のどこに拘わらず、ODAを引き出し得た担当省庁の役人達の手柄として喧伝されるからですが、それを凌駕する程の現地での情宣を日本側は遠慮なくすべきでしょう。ODAに限らず。
なお、韓国人の在越者数は6万人とも言われています。対して日本人は5千人足らずと。その内容は兎も角として、プレゼンスに関してはとても太刀打ち出来ません。彼等は個々に会うと言葉も丁寧で紳士然としたのが多いのですが、4-5人も固まると全く別の様相を呈します。
ゴルフ場でも我が物顔です。グリーンはあけたがらないし、後ろから打ち込むのは平気ですから、サンドイッチにでもなったら大変です。面白いのは、ゴルフ場では彼等は男女とも、たった今ゴルフ雑誌やファッション雑誌から抜け出て来たようなケバケバしいウエアを着て、男はスタート前に洗面所に掛け込み、UVケアクリームをたっぷり塗りたくって、テカテカした顔で出て来ることです。
そして大体が尻ポケットからタオルをだらしなくぶら下げている(日本でも昭和30-40年代には似たようなもの?)。
それに対して我が日本男児達は、単身赴任者が多い所為もあってか、仮令、ブランドものであったにしろ、日焼けで色あせた、洗い晒しのウエアが普通ですから、顔を覗かなくても日韓の判別が出来ます。

75年4月30日終了のベトナム戦争に対する清瀬一郎氏の話は初めて知りました。然し、当時どれだけの日本人が現地の状況を知り、心情を寄せていたのでしょうか?
無論、マスコミ・映画・写真展からの情報はあったでしょうが。
小生などは、既に海外駐在等で日本を離れていたことが多いので、本邦内のことは判然としません。但し、ベ平連の活動については、あの労組貴族にも似た小田実の顔も言動が気に入りませんでしたから、噴飯ものを見る様に割引して考えていました。
小生などは、当時インドに行くのに、北爆盛んなベトナム上空を横切る訳には行きませんでしたから、羽田=マニラ=シンガポール=バンコック=カルカッタと、まるで今日のアセアンの主要玄関口を軒並み経由して行かざるを得ませんでした。
日本人一般のベトナム戦争観については、ちょっと傍に置かせて貰って、91年以降、当地に関連し、仕舞屋住まいで民情を目の当たりにして来た小生が拭い去れないのは、ベトナム人の勝ち組(北)にとっては、イデオロギーや民族解放の理念もさることながら、ホーチミンによる一種の易姓革命と食糧物資豊富で経済力のある南部の奪取併合だったとも言えるのではないかと言うことです。
戦争は確かに悲惨です。併し、戦後の南の負け組の悲惨さについては誰が検証するのでしょうか。今や全ては既に藪の中であり、「投資や里帰り観光に大枚の外貨を懐にして」来る越僑は大歓迎の世の中になっているのに、今更なにをの空気もあります。

さて、この関連で余り細事に亘ると怖い検閲に引っ掛かる可能性もまだ当地にはあるので、用心してこの辺で打ち止めに致します。
最後に一言、日本の一般観光客の殆どは、当国(=ミニ中国)が共産党の実質独裁の支配であることを知らずに、或いは、それがどんな意味を持っているかには頓着なく来ます。はてさて!
(老いたゴジラ)


(宮崎正弘のコメント)ひとこと。べ平連は偽善者の集まり。ベトコンの民族主義が分からず、ソ連の代理人のことき活動を展開して知識人の顰蹙をかったものでした。開高健は、あの欺瞞にみちた、あの偽善者どもから訣別し、小田実らと別れ、晩年は反共でした。
 ですから『輝ける闇』『夏の闇』の二大傑作はいまも読ませます。



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(読者の声6)オバマのアドバイザーは、ビル・クリントンや、ホルブルック。いずれも、親中。米中二国時代を描いており、いつまで待っても、幼稚な日本を外す。
勿論、カネだけは出させる。その外堀を埋めるために、来月、東京へ来る。在沖縄米軍もインド洋給油もその枠内で強制する。「北朝鮮に戦後保障を出せ」の要求も懐石料理のひとつ。
(伊勢ルイジアナ)


(宮崎正弘のコメント)ホルブロックも評判が悪いようで。現地の兵隊からみれば、この男、特別代表とはいえ、なんの法的淵源があって、現地の実情も知らないで、えらそうなことを言えるのか、って。
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ホームページ更新 http://miyazaki.xii.jp/
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樋泉克夫のコラム
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 ―下がれ下がれッ、毛主席のお墨付きが目に入らぬか・・・
     『大串連』(劉濤主編 知識出版社 1993年)
 

 ▽
毎年春節を前に、都会に働きに出ている農村出身者は大きな荷物と共に里帰りし、千万単位の労働者をギューギューに詰め込んだ列車は都市から農村へと向かう。
民族の大移動だ。
改革・開放に踏み切らず人民公社が解体されなかったら、彼らは生まれ育った農村の外の世界を知ることなく大地に埋もれた一生を送ったはず。都市住民による農山村癒し旅など以ての外。毛沢東時代の中国では公安(警察)が管理する戸口制度によって都市住民と農村住民を截然と区分し、国民が登録居所から一定期間以上離れる時は公安の許可が必要であり、全国民の動静は公安が厳重に取り締まっていた。

そんな時代、一瞬だが若者に限り、旅費・滞在費・食費免除で好き勝手な全国旅行ができるという幸運が舞い込む。
1966年8月18日、毛沢東は北京の100万人の紅衛兵を天安門広場に集めて接見し、文革の狼煙を上げた。この機会を逃すまいと、共産党中央と国務院(政府)は「文革を参観し、革命の経験交流を」を掲げ、全国の若者(大学・高校の学生と若手教職員)を北京に集めた。

狙いは文革の全国への拡大。大学生は全員、高校生は10人に1人、教員は大学では学生50人、高校では100人当たり1人の割合で北京行きが認められる。
旅費・滞在費・食費は無料。これが「大交流」とも呼ばれた「大串連」だった。だが、とどのつまりは毛沢東から“お墨付き”を与えられての、アゴ・アシ付きの勝手気侭なパック旅行だ。

若者満載の列車で北京へ向かった彼らは文革の経験を交流・・・効果覿面。北京で過激に振る舞うことの正当性を覚え生硬な功名心に駆られた若者は、「保衛毛主席」を心に刻み故郷に戻り、気に入らない大人を文革への敵対・破壊者として厳しく吊るし上げ血祭りだ。

北京や上海の過激派は文革指導のためと称し各地に赴く。
旅の往復の道すがら毛沢東革命を学ぼうと、革命の原点・井岡山、聖地・延安、毛沢東の生家がある韶山などを回り道もした。この本は、そんな体験をした若者たちの回想や当時の日記によって構成されている。

彼らは自分たちで「全国範囲通行証」を謄写版印刷する。
これさえあれば、汽車の旅は全国何処までもタダ。
一般的な旅姿は、男女の別なく軍服で腰の辺りを太い皮ベルトでギュッと締める。軍服はヨレヨレであればあるほどに革命的でカッコよく見えたそうだから、誰もが“ヨレヨレ度“を競う。女の子の髪型は「造反頭」と呼ばれた短髪の変型おかっぱスタイル。これで右手に持った「紅宝書」、つまり『毛主席語録』を胸の中央に抱えて肘を張り胸を反ると、前髪がヒラリと額に掛かる――世界は我が手中に。自己陶酔の極みだ。

「お前らの文革は間違っている」と指導者ヅラをする都市の紅衛兵に対し、「お前らに威張られる筋合いはない」と地方の党幹部・労働者・農民・紅衛兵が反発し混乱を呼ぶ。無賃乗車の若者の輸送を最優先すれば、勢い鉄道による物資輸送は停滞し国家経済に大打撃を与えてしまう。

そこで66年10月からは毛沢東の長征に学べと徒歩旅行が奨励される。
このまま続けたら混乱が拡大し、毛沢東にとっての権力奪取という文革本来の狙いが吹き飛んでしまいかねない。
そこで67年春、毛沢東は大串連中止を打ちだす。若者にとっての夢のようなアナーキーな一瞬は終焉を迎え、若者は大人の政治に翻弄されただけだった。

中学1年で大串連参加の女性は、「個人であれ国家であれ、ある意味で大串連の影響を今もなお、ずっと引きずっています」と綴る。
懐旧、歓喜、悔恨、悪夢、それとも懺悔。
《QED》

(ひいずみかつお氏は愛知県立大学教授。華僑、京劇研究の第一人者)
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  • 名無しさん2009/10/09

    何時もながら読者によるコメントを含めて興味を持って熟読させていただいております。政権奪取の民主党 首相始め閣僚諸氏は積極的にお仕事をされている様子ですが冷静に斜眼で観察すればするほど’何か違和感がある’のを実感します。全員揃って大変な背伸びで背負った諸課題の中で夢中で泳ぎまわっている様な風景なのです。更に、国の存立に関わる国益に関しては極めて薄弱な認識、外交に関しては世界の流れを全く感知しない岡田さん、戦略面での司令塔であるべき管さん資質などなど・・・全員白紙状態で取り組んでいる現状ね暖かいエールを送りますが’各人の持つべき基軸が無い故の迷走’が目立つのは「私だけ」か。