国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2009/09/29


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   「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
      平成21年(2009年)9月30日(水曜日)
         通巻第2725号 
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 世界の金融界は円高より中国の国債に注目している
  これで人民元は本当にハード・カレンシー入りが出来るかどうかの試金石
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 人民元建て中国国債を、しかも香港で売り出した。空前の60億元。
 投資家からどれだけの人気が集まるだろうか?

 中国国債を中国いがいの国や地域で発行するのは初めて。香港は特別行政区とはいえ、独自の行政長官、基本法があり、法律が異なり、表現の自由が残存し、いやなによりも、香港は国際金融センター。
それゆえに中国は香港を大事にしてきた。その香港で、中国は赤字補填のための国債を人民元建てで発行する。

 問題点は次の通り。

一、二年物国債利率は2・25% 三年物が2・7%。いずれも国内より高い金利が設定されている。
(中国本土の利率はそれぞれ、1・82%,2・31%)

 二、「国債」であるからには中国政府が元本保証と思いきや、これは政府保証がつかない(そんなことあり? あるんです。中国ではナンデモアリですから。券面にはこう謳われている。「満腔の誠意と中国政府への信頼とで」。この謳い文句、米ドルの券面を思い出しますね。「IN GOD WE TRUST(神を信ずるのみ)」ですから)。

 80年代前半から中国の地方債を日本の邦銀は3000億円近く引き受けた。地方政府が保証するとばっかりおもって買いまくり、結局デフォルト。地方政府は知らん顔だった。日本の銀行は大損害を被り、爾後、中国の儲け話には基本的に乗らない。

 三、誰が買うのか?
   いまのところ幹事行が中国銀行と中国交通銀行。誰がいくら買ったかは顧客情報だから秘密の上、香港で人民元口座をもつ個人か機関しか購入できない。
結局、いくら売れ、いくら売れ残ったかの公開は10月22日になる。それまでは誰が買っているか、外国の機関投資家がどれだけ買っているかの情報は伝わらない。

 肝要なことは、これは人民元を国際カレンシーの仲間入りになるか、どうかの試金石でもあり、売り切れになれば、いよいよ人民元がアジア全域で通用する時代の幕開けである。
もし売れ残れば(今年二回、中国国債は売れ残った)、表向きの「中国の時代」という勇ましさとは別に、世界からの信頼はまだ薄いという実態を映し出すことになる。
結果の公表が待たれる。

 日本のマスコミは円高のことばかり報じているが、いま世界が注目しているのは人民元の挑戦である。
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 ◆読者の声□  ◎どくしゃのこえ◎  ▲DOKUSHA―NO―KOE▲
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(読者の声1)貴誌2724号。オバマ政権は内憂外患そのものです。
アフガニスタン増派の新案を今週中に発表しないと、優柔不断と烙印を押され致命傷になる。まだ国民や臆病者の集まりである民主党議会も説得する余地がある。
だがイランの公然たる挑戦(CIAにより、新しい地下核施設が公開報告された。パネッタ長官は、CIAを疑う議員(ペロシ)がいるので、公開したと!)はチャンバラならば池田屋騒動。往年の名画シェーンの、ピストルによる決闘ならば「どちらが先に瞬きするか?」という雌雄を分ける瞬間。
ぼくはクリントン時代のペリーの平壌爆撃に賛同していた。「過激ですね」とY紙の国際部記者ら。北朝鮮を滅ぼしていれば、今、イランの脅威もなかったと残念。
優柔不断は国を滅ぼす。
ところで宮崎先生が描くと、チャイナの情景は俄然、面白くなる。
ぼくと先生は現場をエンジョイするので、「まじめでない」とどっかから叱られそう。北京飯店の旧館の、長安街大路に面した部屋のバルコニーから、天安門広場の一角が望見できた。
裏通りに屋台が100は並んでいたけど、何か動物の死体の匂いが満ちていた。鶏を丸湯で煮したかな? 匂いに敏感なウチのが嫌がった。
紫禁城の入り口にスターバックスがあった。コーヒー一杯で3ドル。タクシーの運ちゃんが、「一日、最大6ドル」が稼ぎだと。罪を感じた。
先生、物価は変ったんですかね? ところで北京飯店の中華レストランだけど料金は一人100ドルだが、美味く感じなかった。
ニクソン夫婦やら、キッシンジャー、周恩来の額が飾ってあったけれど嫌いな人種だしね。来年、チベットや、長江の奥へ家内と行く計画です。
(伊勢ルイジアナ)


(宮崎正弘のコメント)北京飯店裏の屋台街、バラック商店街は全部取り壊され、新しいビルになります。建設中です。屋台街は、北京飯店から一キロほど奥の王府井交差点を西にまがったあたりに移設されていました。
で、貴兄は北京飯店で食事されたんですか。あんなに高いだけでまずいところで? 北京ダックの全聚徳はあちこちに支店をだして以来、味が落ちたと評判でした。小生らは違う店へ行きましたけど。。。。
 日本のことわざにもあります。「名物にうまいものなし」って。
 紫禁城は天安門広場からはいると、登楼は出来ないのですが、その先2キロほどは入場無料です。その先から突然、見物客が減って、有料になり大雄殿などをみる。ただし左右の資料館とか時計館とかも、全部閉鎖中でした。裏門(北門)から景山公園のところまで来ると団体観光客の待ち合わせ場所で混んでいますが、ま、そんなところでしょう。
 物価は上がっていますが、豚肉、鶏卵、キャベツ、大根など。そこで北京当局は地下鉄をどこまで乗っても二元(30円)均一としたうえ、カード(日本のスイカ、メトロカードのたぐい)を買うと割引がある。バスは一元ですが(現金で払うと)、これもカードを買うと、たったの四角(6円)。そうやって民衆の物価高暴動を防いでいます。タクシーもかわいそうに値上げが認められない。



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(読者の声2)貴誌通巻第2724号(読者の声1)でPB氏が「日本の農家はものすごく勉強しておりpH・ヴァイラス(ウイルス)・ppmなど普通の会話に出てくるが中国の農家は果たしてどの程度の知識なのだろう。
日本人が戦後旧満州で広めた畑を黒いビニールで覆うマルチ農法は保温・保湿・雑草抑制に効果絶大、今では中国全土で見られるが、農民は日本の技術が元とは思ってもいないだろう」と書かれました。
今やこれは、農業を主な収入源とする約8万人の日本人農民のさらに一部だけにしか通じない話です。
大部分の農民は、税制上の利点を確保するために、自給分だけかそれ以下しか作っていない兼業農民で、かれらの預金目当てで、農協はそんな不勉強かつ草取りもしない組合員のために環境破壊や近隣の主業農家の邪魔になる大量の農薬を使った農法を指導しています。
ノルマ達成のため主業農家に減反を強制しています。一部の営農活動に一生懸命な農協職員は迫害あるいは疎外されています。
今から20年ほど前、パストラルホテルで開かれた講演会を聴きに行って休憩時間にトイレに行くと、隣の部屋である農業団体の会合から抜け出してきた60歳くらいの人がいました。「日本の農業を悪くしている最大の原因は農業だ」といったところにっこりして、「あんたわかっているね」と言いました。
おそらく、その宴会会場では決して口にできないことだったのでしょう。あれからさらに状況は悪くなっています最近良い本が2冊でましたいずれも廉価です。
「農協の大罪 」(宝島社新書) 山下一仁 著
「日本の農業は成長産業に変えられる」 (洋泉社の新書)大泉一貫 著。
まさに愛国者必読の書です
  (ST生、神奈川)


(宮崎正弘のコメント)そして彼らの一部が小沢の利権話にのっかって自民党を裏切ったのでした。



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(読者の声3)『ローマ亡き後の地中海世界(下)』は、マキャベリの『君主論』から政治の要諦を述べた箇所を引いて、あらまし次のように述べています。
「憎悪されても軽蔑だけはされてはならない、また、愛されるよりも怖れられるほうを選ぶべきだ。なぜなら人間は、自分を愛してくれる人は簡単に捨てるのに、怖れている相手からは容易に離れられないからである」

前総理は、マンガ好きをアピールして国民から愛されようとしましたが、逆に軽視され、あまりの漢字熟語の読めなさに、軽蔑、侮蔑され民心の離反を招きました。 
一方、野党から政権与党の幹事長に成りおおせた僭主政治家は、マキャベリの垂れた教訓を守るかのように、憎悪され怖れられることをモットーとしています。これを踏み外し捲った自民党最期の総裁と見事なまでのあざやかな対比です。 
これを個人の問題ではなく国と国の間の問題を扱う外交に敷延してみると、軽視されたり軽蔑されたりすることは実害をもたらすことになり、絶対避けなければならないのです。
日本の外交は、国益を護ろうとする本来の外交ではなく、アメリカ、中国、そして北朝鮮にも、嫌われないようにするだけの社交に過ぎないのです。
独立の気概どころか、その意味さえ見失った国柄ですから、そうなってしまうのでしょう。
他国への隷従を長年よしとしてきた政治は民心を堕落させました。 経済的繁栄を自前の強力な艦隊で維持拡大したヴェネチアより、東洋の片隅の国の繁栄が短くして終わるのは当然です。
すでに『日本亡きあとの東洋』として、国際政治は回りはじめています。それに、茹で蛙状態の日本人はまだ気付いていないのです。
   (有楽生)


(宮崎正弘のコメント)天はみずから助ける者を助ける?
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樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム
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樋泉克夫のコラム

    ――そこが、毛沢東が中国人を《呪縛》に掛けた現場だった
           革命教育基地探訪(28)


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 中央大礼堂の裏口を左手に折れ、道を渡ってしばらく進んだ先に先に中央弁公庁楼がある。
横幅6,7メートル、奥行きが15メートルほどのレンガ作りの平屋の部分が公開されているが、その奥は非公開。階段を数段上って中に入る。
壁に開かれた横1メートル、高さ2メートルほどの窓が右に7つ、左に7つ。合計14個の窓から明るい光が射し込む。
レンガの床が柔らかく照らされ、白い壁が暖かな雰囲気を醸し出し、その場に集う者をなぜか和やかにしてくれる感じ。

だが、1942年5月、ここには和やかさはなかったはずだ。
それというのも、この場所で延安文芸座談会が行われたからだ。参加したのは作家、文芸理論家、劇作家など延安で文芸工作に従事していた100人ほど。
ちっぽけな集会ではあったが、毛沢東が話した「文芸理論」なるものが後の中国を雁字搦めに縛りあげ、社会全体を身動きの取れない金縛り状態に押し留めることになった。

 座談会を主宰した毛沢東は、文芸は人民、わけても革命の担い手である労働者・農民・兵士のためのものであるべきだ。
革命工作に有益に働くものが優れた文芸であり、芸術的観点を基準にした文芸などは枝葉末節の世迷い事に過ぎない。

なによりも政治が最優先されるべきであり、特定の階級や政治路線に尽くすことこそが文芸の役割である。文芸は芸術ではなく政治そのもの。だから文芸は暴露ではなく光明こそを描かねばならない――と力説した。かくて、この集会を機に文芸は毛沢東の考えを宣伝する道具となってゆく。

 当時、蒋介石政権下の腐敗堕落した利権政治を嫌悪し共産党の一員となって社会の変革を図ろうとする都市の学生や知識人は、度重なる妨害や迫害にもめげず憧れの延安を目指す。
彼らは革命の聖地に、階級のない、束縛も搾取もない自由で誰もが平等な社会を思い描いていた。だが現実は違う。階級が厳然と存在し、個人が自由に振る舞うことは許されるはずもない。階級の消滅を至上命題とする共産党が、じつは厳格な階級社会だった。

42年春頃から、共産党統治の暗黒ぶりを暴露する文章が延安発行の『解放日報』に発表される。
延安の生活は「着る物も食事も3等級に分かれている」「親分から手下まで、頭の天辺からつま先まで烏のように真っ黒だ。なにが階級愛だ。ペッ、糞喰らえ。ヤツは他人への愛情なんて一片も持ち合わせていやしない。群衆のための仕事といったところで、ダメになるに決まっている」「大物は非合理極まりない特権を享受し、だから一般人は幹部を別人種だと思っている」(王実味『野百合花』)と告発・糾弾した。

たとえば食事だが、一般兵士は10人1組に小さなどんぶりのおかずが1品。何ヶ月も、冬は紫大根で夏はかぼちゃだけ。一方、最高幹部の政治局員や毛沢東クラスはスープにおかずは4品。この違いは何だ、なにゆえの特権なんだといいたかったのだろう。げに、メシの恨みは恐ろしい。

 共産党批判、風紀の乱れに毛沢東は激怒するが、政敵粛正はさりげなく文芸部門から。「搦め手」は彼の得意技だ。
多くの文芸従事者は彼の権力に沈黙。雪崩をうって自己批判し、我先に人民のための文芸を目指す。建国直前の49年7月の中華全国文学芸術者代表大会で毛沢東の文芸理論が新しい中国の大方針とされ、以後、政治から文芸まで、毛沢東の心の裡にしか存在しない「人民」に、中国は翻弄されることになる。

広い中国に人民は毛沢東1人だけ。だから「為人民服務」・・・ガッテンして戴けましたでしょうか。
(この項、続く)
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サイト情報
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「新聞の将来と経済と民主主義への影響」に関する両院経済合同委員会が9月24日に行われ、刺激的な質疑応答を含めた公聴会となった。
(1)The Future of Newspapers: The Impact on the Economy and Democracy、U.S. Congress, Joint Economic Committee、September 24, 2009
http://jec.senate.gov/index.cfm?FuseAction=Hearings.HearingsCalendar&ContentRecord_id=ce03ce4d-5056-8059-76f2-8b02fccb18e3

(2)新聞業界に関する議会調査局報告書
http://www.fas.org/sgp/crs/misc/R40700.pdf
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  ◎資料  ◎講演記録  ◎資料  ◎講演記録  ◎資料  ◎講演記録 
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三島由紀夫と青嵐会
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 9月28日市ヶ谷アルカディアで開かれた三島由紀夫研究会公開講座は講師に、『血の政治 青嵐会という物語』を上梓した元毎日新聞常務取締役の河内孝氏を迎え、補助席を出す盛況さで、質疑応答も活発に行われました。

 政権派閥である田中派へ反旗を翻して昭和48年(1973年)7月結成され、昭和54年(1979年)中川派の結成で自然消滅していった青嵐会は、河内氏にとって記者時代の青春の思い出での由で、同書に目を通すとその想いが伝わってきました。

 河内氏の講演内容に入る前に、昭和48年11月10日浪曼社から出された『青嵐会 血判と憂国の論理』の浪曼出版部による「あとがき」を以下に引用します。
 
 「現代日本の政治に、新しい哲学をもった政策がいま一番必要とされていることは云うまでもなく、しかも新しい文明史観を先取りし、国民に提供して行こうという政策グループ「青嵐会」の出現は国民にとって待望久しいものであったはずである。ところが青嵐会が真摯に訴えようとしていることには一切耳を傾けずに「血盟」という、現代日本では珍しくなったサインの仕方一点だけに的を絞って、アナクロニズムだと評したマスコミの偏向した態度は反省されるべきであろう。この本は、いったい青嵐会が何を考え、何をめざそうとしているのかを、一日も早く国民に知らせ、且つ青嵐会とともに将来の日本を考えて行こうとする意図で編まれたものである。公害、インフレ、土地の問題から、金大中事件、長沼ナイキ訴訟、チリの軍事クーデターなどの時事的な問題、あるいは憲法改正という国家的課題に至る、ありとあらゆる問題に対して、青嵐会を代表する九人が執筆、もしくは語ったものであり、中には相当の「個人的見解」も含まれている。緊急の編集のため、議論の尽くせなかった問題も少し残るが、一応「青嵐会」の全貌をこの本でうかがい知ることができると思う。なお各章の用語(例えば、中共と中国の呼び方)は、各人の特色をそのまま生かしたので不統一なところもある。またインタビューは、小社企画室長の宮崎正弘がこれに当たり、文責は出版部が負うものとする。
 
「青嵐会を代表する九人」とは、石原慎太郎、中尾栄一、中山正暉、藤尾正行、三塚博、渡辺美智雄、玉置和郎、中川一郎です。翌年の1974年浪曼は、『青嵐会からの直言 この国難は乗り切れる』を発刊して、湊徹郎以下八人の主張も世に問うています。
 

 ▲青嵐会は夏の嵐のように過ぎ去ったが、志は残った


 さて河内氏はまずプロジェクターを使い、中川家から借りだして撮影した青嵐会の署名簿を映し出した。
それは中尾栄一により「青嵐会誓詞」と墨書され、青い蔦かずら模様の絹で表装された血判入りのものです。青嵐会と命名したのは石原慎太郎で、「青嵐とは寒冷前線のこと。つまり夏に烈しく夕立ちを降らせて、世の中を爽やかに変えて過ぎる嵐」の意です。この誓詞に「断固血判すべし」と強硬だったのは、石原慎太郎、中尾栄一、浜田幸一の三人でした。

言い出しっぺは石原で、楯の会の創設メンバーから、三島がその結成時(昭和43年)、会員十人と血判を交わしていたことを密かに聞き知っていたのです。三島が自決してから二年半後に結成された青嵐会は、三島と直接の結びつきはありませんが、青嵐会結成時の興奮と盛り上がりの周囲にいた人々は「三島が放った炎が燃え移ったような」熱気を感じていたのでした。

河内氏は、青嵐会結成に至るまでの戦後政治史を概説して、青嵐会が生まれた時代背景を説き明かし、その一つのルーツに三島由紀夫の割腹があると述べました。ほかの二つは、「戦後抑圧された健全なナショナリズムの発露」と「農本主義の情念」です。青嵐会のメンバーで石原と中山を除くほとんどは農漁村地域からの選出議員で、一区(県庁所在地)出身者はいませんでした。世襲は31人中3人だけで、官僚はおらず、東大卒は一人だけという、たたき上中心で構成されていました。

日本国内では1960年代から1980年代にかけて、15から24歳を中心とする総人口の10%、一千万人以上が、農漁村部から都市部へ大移動していました。その激動する状況下、社会不安や戦前の2.26事件のような深刻な分裂が起こらなかったのは、地方出身の議員たちが中央から地方へカネをブン撒いていたからでした。地方に住む者は都市部への怨念を抱えていましたが、それを地方出身の政治家たちが米価政策や、公共事業などのばら撒き政治を行って慰撫していたのです。地方出身者は田舎に帰るたびに、実家の茅葺の屋根が瓦になり、耕運機や軽自動車を持つ、豊かな暮らし向きになっている姿を見ていました。


▲日本の旗が焼かれたが。。。。


青嵐会は結成から半年後の昭和49年(1974年)1月26日武道館で国民集会を開催しました。名古屋からは二村化学工業の二村社長が二千人を引き連れ参加し、韓国在日の民団にも「朝鮮服は着ないで出席せよ」との動員令がかかり、ステージ真下の床に直に座ってもらうほどの満杯になり、二万人が集まりました。青嵐会は当日全国紙に次の文言の意見広告を張り出しました。
 
 首相が訪ねたアジアの国で 日本の心 日の丸が 焼かれた その日を忘れない 道義をなくし 思想なき 日本をかれらは 許さない 自由の台湾切り捨て 共産主義の中国に おもねる日本を許さない エコノミックなアニマルと 怒る心が 日の丸焼いた 青嵐会こそ 日の丸を 力の限り 守り抜く 風のまにまに 目先をかえる 魂忘れた 政治なら 青嵐会は許さない・・・。

 青嵐会の主張で際立っていたのは、自主独立の憲法制定、国家道義の高揚、教育正常化などでした。そして結成時の血判と、自民党総務会での大暴れなどの烈しいパフォーマンスでした。マスコミは後者を報道し、世間の目もそれらにだけ集中しました。

 主張した政策は賛否分かれるものでしたが、彼らの論理は分かりやすく、行動原理はいたって明快で、人々の心を惹きつけるものでした。今日政党が「改革」をさけび、ホームページに口当たりのいい政策を並べても、人々の血を騒がせた青嵐会が持っていた「何か」が欠け、シラけているのです。

 ありていに言えば、青嵐会は面白かったのです。中川一郎夫人は「毎日が震度5のような日々で」「誰もが人間をむき出しにして、ドタン、バタンと烈しくぶつかりあっていた」と述懐し、「そこにいくと今の方々は息子(中川昭一)もふくめて主人たちより頭もいいし、勉強もするけれど、まあ迫力というか、熱さはないわね」とチクリと刺しています。


▲モラルがなくなった現代日本に

 戦前の「修身」を廃して、戦後どう生きたらいいかを学校も親も教えなくなった日本。それがモラルの喪失と精神の亀裂をもたらしました。単位人口当たりの自殺者は、リトアニア、ベラルーシ、ロシア、スロベニア、ハンガリー、カザフスタン、ラトビアに次いで、日本は八番目です。物質的に豊かな生活を享受している先進国の中で日本の自殺者が一番多いのです。

 政権を取った民主党の、国民に只で高速道路を利用させ、一律にばら撒く子供手当などの政策は究極の金権体質だと、河内氏は指摘していました。
この講演を聴いていて、日本の政治にかつてあった、「何か」が戻らないまま、世界の中で埋没してゆく不安にとらわれました。
                       (西法太郎)
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