国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

全て表示する >

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2009/08/10


◎小誌愛読者14920名! ◎アクセス、スコア・ランキングともに一位!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
      平成21年(2009年)8月11日(火曜日)
          通巻第2683号  (8月10日発行)
△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 李克強(胡錦涛の右腕)にも汚職捜査の手がのびた
  飽くなき権力闘争、「上海派」と「団派」が互いに汚職摘発の神経戦
****************************************

 中国の2008年公式統計で、汚職などによる処分が十五万一千人という数字、このうち党幹部は4960人、あまりの腐敗ぶりに取り締まりの強化が謳われた。
 15億円の収賄事件で死刑判決がでていた李培英(元首都空港集団社長)の死刑が執行されたことが8月7日に判明した。

 その衝撃の余波が去らないうちに胡錦涛の右腕、李克強副首相に汚職疑惑が浮上した。ハルビン市党書記に就任したばかりの蓋如根から李は六千万元(邦貨換算九億円弱)の収賄を受け取って、彼のハルビン市党委員会書記という重要ポストを認めたというのだ(「BOXUN NEWS」、8月2日付け)。

 同紙に拠れば蓋如根は大慶市長時代に政治局中央常務委員会に高額な賄賂をつぎつぎと送りつけ、次の昇進を露骨に画策し、ハルビン副市長、市長代理、そして大慶時代の石油ビジネスにまつわる賄賂で得た蓄財から法外な賄賂を李克強に贈呈していたという。

 汚職摘発は続いている。
 中国核工業集団社長兼党書記の康日新が不正入札および公金流用容疑で逮捕、中央規律検査委員会で尋問されているそうな。

 同集団は中国の原子力産業の中核企業、党書記を兼ねる大物の逮捕は様々な憶測を呼んでいる。同集団傘下で香港に上場されている「中核国際」の株価は09年8月5日の報道直後から16%も暴落した。

 康は江沢民と同じく上海交通大学の出身。核発電関連企業にまつわる不正入札事件の最近の例を挙げると中国技術進出口公司元総裁・?新生、中国広東核電集団公司(中広核集団)副社長・沈如剛らの事件がある。


 ▲家電量販大手「国美電器」創業者を拘束、余波があちこちへ

 中国家電最大手とされた国美電気の創業者=黄光裕とその夫人が不正証券取引をしたとして北京で拘束され、その香港での保有資産207億円相当が差し押さえられていることも判明した。

 この「国美事件」は芋づる式に共産党幹部の逮捕拘束を招来し、家電量販業界の地図を塗り替えたと言われる。
日本のラオックス買収も、この事件の余波と間接的関係があるらしい。
 
このほか四月には広東省政治協商会議主席の陳紹基と浙江省規律検査委員会の王華元書記が汚職の疑いで取り調べを受け、六月には深せん市長の許宗衛も汚職容疑で拘束されており、これら全員が国美電器汚職事件と絡むのだ。
黄光裕は香港での株価操作が一番の容疑。

 死刑判決もじゃかすか乱発されており、四月には故黄菊(前副首相、元上海市長)の秘書だった王維工に死刑判決(ただし執行猶予付き)。
王は失脚した陳良宇(前上海市党書記)の収賄事件にも絡み、陳をデベロッパーに紹介した案件では見返りに一億三千万円相当の賄賂を受け取っていた。

 上海は世界的繁栄を誇る大都市ゆえに建設、開発、株式、商取引にまつわる汚職はつきもの。
そもそも故黄菊夫人の余慧文は夫の現職時代、上海の「上流夫人」らを集めて、「上海慈善事業夫人倶楽部」などと名乗り、デベロッパーと癒着し、数社の企業顧問にも就任していた。
 
当該倶楽部には呉国邦(現全人代委員長)、陳良宇(前上海書記)らの夫人を網羅し、農地の没収などに「辣腕」を発揮した。余慧文は「女帝」の異名があったが、今夏の倶楽部改選で理事にも落選したことが分かった(博訊新聞網、8月10日付け)。
 
こうみてくると団派への突き上げと旧上海派への操作という権力闘争のバランスが作用しながらも、両派が懸命に相手の影響力をそぐ執拗かつ陰湿な闘争を持続させている実態が浮かび上がってこないか。


 ▲司法も汚職にどっぷりと浸かっていた

 青島では裁判官の腐敗が猖獗をきわめ、汚職捜査といって容疑者から多額の賄賂をとり、不起訴としたり減刑したり、脱税容疑を見逃す替わりに賄賂を得たりのやりたい放題が発覚した。

 司法の腐敗は指摘するまでもないだろうが、中国では最高裁判所副院長までが逮捕されている。
青島では劉青峰・青島地裁副院長(青島大学教授兼務)ら三名が犯罪に絡み、このうち青島四方区のキュウ衛東裁判長は自殺した。
 
 愛人問題での職務解雇もかなり多い。
 西安市質量技術監督局のトウ宗生局長は、部下の女性を愛人としてきたが愛想のもつれで06年に女がオフィスで服毒自殺した。
三年間、因果関係の調査の結果、「社会主義道徳と倫理に反する」として西安市規律委員会は局長職務を解雇した(多維新聞網、8月10日)
  

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
☆。.:*:。.:*:・☆:*:・'☆*。*:*:☆☆。.:*:。.:*:・☆:*:☆*。*:*:☆
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ♪
<< 今月の拙論 >>
(1)「台湾は『香港化』するのか」(『ボイス』九月号、本日発売)
(2)「ウィグル人と漢族の歴史的対決」(『北国新聞』コラム「北風抄」、8月10日付け)。
(3)「ウィグル騒乱の背景にあるもの」(『共同ウィークリー』、8月12日号)
(4)「中国・韓国の反日記念館とタイの親日記念館」(『BAN』、8月20日発行)
(5)「頭山の金さんと裁判員制度」(『月刊日本』九月号、8月22日発売)
(6)「ロシア極東はこうなっていた」(『エルネオス』九月号、8月31日発行)
      ▲
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ♪
(読者の声1)イベントのご案内です。
「田母神俊雄・山本卓真・金美齢による提言」
■日時:2009年8月15日(土)10:30〜12:20
■会場:靖国神社参道特設テント
  東京都千代田区九段北3-1-1 靖国神社 大村益次郎銅像近辺
  http://www.yasukuni.or.jp/access.html
■参加費:無料
■定員:1,500名
■主催:第23回戦没者追悼中央国民集会
■問い合わせ先:03-6906-8990



  ♪
(読者の声2)読売新聞(7月31日)に磯田道史先生が書かれていましたので、お伝えしたくてメ−ルしたします。以下、抜粋です。
 「人間と犬との付き合い方には狩猟と愛玩の二つがある。狩猟犬は石器時代からあり、縄文人も丁重に葬っている。愛玩犬がいつからいたかは難しい。元来東アジアには犬を喰う風習があり、今でも中国、朝鮮にはその風がある。″日本もそうだった。織田、豊臣から徳川初期のお城を発掘すると犬の骨が出てくる。食べた跡がくっきり残っている。″しかしある時期から東アジアで日本だけが犬を食べなくなった。徳川幕府が犬食を禁じ、五代綱吉の『生類憐れみの令』に至って、犬食の風習は絶たたれた」。
   (YK子)


(宮崎正弘のコメント)「お犬様」以来、ですか。それだけ日本は平和だったという何よりの証拠ですね。その生類憐れみの法の二百数十年前の応仁の乱では餓死者が大量にでて、犬どころか人間も食べ合ったわけですから。徳川の治世は、世界史のなかでも稀な平和の時代!



  ♪
(読者の声3)貴誌にでた金本位制復活シナリオとドルの運命に関して。
 まずユーロダラーは別として、三菱東京UFJ等日本の大手銀行が日本で受け付けているドル預金は、在米のオンショア金融機関と提携して、預金者から円で受け取った預金をドルに替えて提携先のオンショア金融機関にドルで預金しています。
したがって日本人のドル預金は、2つの金融機関の手数料がかかりその分金利が低くなっているかわりに、実質的にオンショアのドルです。
米国政府がオンショアのドルのみ新通貨と交換するとしても全く問題ありません。

つぎに額面の5分の一ないし10分の一の量の金と兌換にするという案は、極く短期間しかもちません。
全く兌換性のない他の通貨との比較でたとえ当初は人気を呼んでも、しばらくすると、兌換対象の金の市場価値までその通貨の価値が下落します。金保有量の不十分さをそんなことでごまかせません。
逆に金価格を十分高くして金保有量の不十分さを補う手もありますが、万一、金価格高騰に一時的に成功しても、価格が上がれば不採算で廃坑になっていた金鉱が開発され金価格は下がります。
1834年のイギリスの銀行法では、金準備の2倍までしかポンド紙幣を作らないということで、兌換性を担保していました。
しかしその紙幣の預金をもとに小切手が切られ、貸し出しによる信用創造で金準備の数十倍から100倍ものポンドが供給されました。
この状態でもイギリス経済および英国陸海軍が健在なうちは、ポンドの価値はたもたれていました。こうした歴史の顰みに学べば、通貨の強さの究極の源泉は、通貨の母国の経済力です。
    (ST生、神奈川)


(宮崎正弘のコメント)理論的にはまさに仰言る通りで、それゆえに米国がドル紙幣の金兌換制度復活に踏み切れないのでしょう。
 あのレーガン政権のときですら、金問題委員会まで設立して、あげくに流産でしたから。
 しかし理論は理論、政局は政局です。米中が共謀して何かを仕掛けるかも知れない。油断大敵!



  ♪
(読者の声4)「反戦の朗読の会」とかが現在、各地で開催されています。展示会も。
内容は南京・・原爆・・語り部・・そして平和・・二度とあのような久々な戦争へ子供達を送らないために!・・とこんな感じです。
ある頃から読む詩がどこも(団体)同じ事に気が付きました。主婦の方々が語りの会、朗読の会に入り、初めの意図や想いとは別にいつの間にか、左翼的な運動に巻き込まれているのではないか?
一例を上げますと、昨年あたりから私の住む地域で元教職の方々を中心に「反戦の為の朗読の会」の活動が活発になり、参加する団体も増え、益々規模が大きくなっている傾向があるのです。
それに新日本婦人の会も関係しているようなのです。(実際、知り合いが朗読の会からいつの間にかその会に入会していて、驚きました)。この会を小中学生に聞かせるのです。
これを聞いた子供達は、他国に対する贖罪意識や厭戦感のみが残り、一番大切な日本人としての自尊心は育たない。
一番喜んでいるのは近隣諸国や国内の反日勢力とも知らないで、力を貸しているのです。一生懸命、原爆、反戦の詩を練習して。(・・・「こんな感じで悲惨さは伝わるかしら?」・・・などと言いながら・・)。
或る人には現実問題としてウイグルの方々の話や中国の核実験の悲惨な状態を必死に訴えてもダメなのです、反応が。日本が置かれている状態のほうが、余程すぐにでも取り組まなければならない、明日の日本の問題なのに!
「共産主義とは恐ろしい、強力!一度思いこんだら・・。巧みに形や姿を変え、心の中に入り込む」との思いを強くしました。
  (SS子)


(宮崎正弘のコメント)広島、長崎の反核集会にしても、参加者の大半が弁当付き、バスで全国から動員された左翼、こんなあつまりに首相がでて挨拶するのはいかがなものかと田母神元空幕長が嘆いておられました。
 ▽
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
樋泉克夫のコラム

 (その1)愛国主義教育基地探訪(20)
――彼は“絶滅危惧種”の北京っ子だった


古北口を後に北京に向かって南下し暫く進むと、進行方向右手の道路沿いに魚介料理の店が次々に現れる。
密雲水庫で捕れる新鮮な川魚類を調理して食わせるといった趣向だろう。櫓を組んで水面に張り出した野趣あふれる風情の店も見られるが、肝心の水は遥か遠方に後退し赤土の広大な湖底を無残にむき出したまま。閑古鳥が鳴き、商売になるわけがない。
北京市民の巨大な水ガメの密雲水庫は、極論するなら水たまり程度に縮んでいた。

さらに南下すると、いよいよ北京市内。ともかくも見渡す限りが高層マンション。
建設現場のクレーンも数知れず。いつか知らぬ間に交通ラッシュ。それを抜けると左手に、花火が元で全焼してしまった奇抜なデザインの中央電視台ビルの無残な姿が目に留まる。
やがて右折して車は北京の中央を東西に奔る長安街へ。天安門広場の少し手前を右に折れてホテルへ。と、ホテルの隣は古くから北京の繁華街で知られる王府井に面した中華書店だ。

ホテルでは北京生まれの若い戯迷(しばいくるい)仲間が待っていてくれた。
そこで直ちに腹拵え。王府井の屋台で食べたのが、サソリと蝉のから揚げ。どちらも5匹ほどが竹串に刺されているのだが、先頭のサソリは生きたまま。それを油で揚げてもらって口に。
子供の頃に食べたサナギの味を思い出した。

腹の足しにはならないが、急き立てられるように京劇のメッカで知られる長安大戯院へ。じつは「十大流派 十位新人」と銘打って名優たちの孫世代や至芸の継承者たち――京劇の明日を担う若手の競演の最終日だった。

大戯院の木戸の辺りで、380元の入場券を200元でどうだと、ダフ屋から声を掛けられる。安すぎるからニセかも知れない。
なら、持って行って入ってみろ。じゃあ入れたら後で料金を払うということに・・・無事、舞台から2列目の席に座る。
お茶と菓子がでる。それではと、若き友人がダフ屋への支払いに席を離れる。面子と信用である。

なんとも面白い取引だ。客席最前列の特等席。右も左も本格的戯迷といった風情。生半可な芸では驚きませんよ、といった顔つきの方々が陣取っている。さぞ、若手役者はやり難いだろうに。

本場の舞台を7時から10時まで堪能して外に出る。家路を急ぐ客が多くてタクシーが拾えない。
と、大戯院横の暗がりにタクシーが1台。中は真っ暗。暫くすると運転手が戻ってきた。そこで乗り込む。聞きもしないのに彼は話し出す。お客さんも京劇の帰りかい。

そうだと応えると、どうっだったい今日の舞台は――ここらあたりから口角泡を飛ばす辛辣な劇評が、機関銃のように彼の口から迸る。
あいつは爺さんには到底及びませんね。こいつの芸は未熟すぎる。だいいち喉がなっちゃあいねえ。いえねッお客さん、商売そっちのけで今度の公演に入れあげた。
そいで連日出かけたって寸法で、水揚げの少ねえこと少ねえこと。こう話しながら左手に握った紙幣をこちらの鼻先へ。おいおい安全運転優先だよと半畳を入れようと思ったが、あまりの剣幕に、出かかった注意も引っ込んでしまう。

車は長安街を西に。「今年の国慶節は久々に軍事パレードが行われるので、いま準備中」と窓の外を指して友人が語る。
運転手の京劇への熱情溢れる大劇評は途切れる様子を微塵もみせない。
やがて車はホテルの前に。友人が支払おうとすると、「細けえのはねえかい」。小銭の持ち合わせがない。
「こっちだけでいいや」と、メーター表示より少ない紙幣だけを掴んで走り去った。今時の北京にも、キップのいい戯迷がまだいたんです。
(この項、続く)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ♪
樋泉克夫のコラム

 (その2)これぞ役者の生きる道
       『梅蘭芳年譜』(王長発・劉華 河南大学出版社 1994年)
 


ある人物の生涯を事細かに記録し、歴史的に位置づけようと年譜は編まれる。中国人は、じつに年譜が好きである。
梅蘭芳(1894年から1961年)といえば誰もが知っている京劇の大看板だが、おそらく日本で中国語音で呼ばれる唯一の中国人だろう。
日本では毛沢東は「モウ・タクトウ」で蒋介石は「ショウ・カイセキ」。胡錦濤は飽くまでも「コ・キントウ」。余程のひねくれ者でもない限り「フー・ジンタオ」とは呼ばない。

ましてや「マオ・ズートン」やら「チアン・チエシー」では、毛沢東や蒋介石が醸しだすイメージにそぐわない。だが梅蘭芳だけは「バイ・ランホウ」ではない。誰が何といおうと、やはり「メイ・ランファン」なのだ。

 この年譜は梅の生涯を「第一階段 清朝時期(1894〜1911)」「第二階段 中華民國時期(1912〜1948)」「第三階段 中華人民共和國時期(1949〜1961)」に分け、詳細に追っている。
だが、ここで興味深いのは1994年に出版されたにもかかわらず、全ページが現行の簡体字ではなく繁体字で通称される正字で記されているということ。
それだけに、記述内容までが落ち着いて見え、年譜に威厳を持たせているようで、なんとも不思議な感じだ。
 
試みに「1949年(己丑)56歳」の頁を開いてみると、「春、上海解放前夕」には共産党は梅が信頼する演劇人に梅の自宅を訪問させ上海で新中国の誕生を迎えるよう説得している。
つまり共産党政権に合流しなさい、という統一戦線工作である。
もちろん梅は「欣然同意」。
じつは国共内戦は戦場で華々しく戦われていただけでなく、一方で中国を代表する人物、いいかえるなら内外に大きな影響力を持つ人物を取り込むための暗闘も展開されていた。

たとえば留学先のアメリカからプラグマティズムを持ち帰り中国に広め新文化運動を起こし、学界の垣根を飛び超え政治・外交にも大きな影響力を発揮することになる胡適は、毛沢東の呼び掛けを振り切るかのように蒋介石と共に台湾へ。
役者ではないが、梅の芸に華やかな改良を加え、梅の至芸を世界に認めさせた最大の功労者の斉如山も台湾へ。
 
だが多くの京劇役者は梅とおなじように共産党の呼び掛けに「欣然同意」した。それが後の文革で自らの不幸を招くことになったのだが・・・。文革はまだまだ先のこと。
 
建国直前の49年7月2日から19日まで、まだ北平と呼ばれていた北京で「中華全國第一次文學藝術工作者代表大会」が開催され、梅は会場で「毛澤東、朱徳、周恩来等領導人」と会見。
共産党からするなら、まさに統一戦線工作の総仕上げ。成功祝賀ということだろう。大会成功を祝って「35個文藝團體」が芝居を演じているが、梅もまた十八番の「覇王別姫」を引っさげて舞台に立つ。祝賀行事に京劇はなくてはならないものだった。

その日、白の開襟シャツの毛沢東は客席一階の前から5列目の真ん中の席に座り「興致勃勃」と梅の至芸を堪能した。
芝居が終わると毛は他の客と共に席から立ち上がって拍手に継ぐ拍手。そこで梅は「舞台に出た途端、毛主席を認めました。本当のことをいいますと、この演目を1000回以上も務めていますが、どの舞台も今日ほどは心地よく務められたことはありませんでした」と、一世一代のヨイショ。

強力なパトロンを得た瞬間である。新しい皇帝に恭順の意を示す。新しい時代を生き抜くためには致し方のないことだろう。
時代に翻弄されながらも権力に擦り寄る役者の真骨頂が、行間に顔を覗かせる。
《QED》

     ◎ ◎◎ ◎
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ☆編集後記☆ へんしゅうこうき ☆EDITOR‘S NOTE☆ 編集後記☆
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   ♪
<<<編集後記>>> 某月某日。というわけでロシア極東の取材から帰国。新潟空港からの搭乗のため新幹線で新潟へ。空港への途中、三浦重周烈士のお墓参りをして、旅行の安全を祈願してからウラジオストックとナホトカを回りました。開発ブームに湧くウラジオストックは景気が良い。若い女性らは仕事がはねるとレストランに集まり、ビールとタバコ。着ているものも洗練されてきており、バブルの気配なきにしもあらず、でした。2012年開催予定のAPEC会場となるのがウラジオストック沖合のルースキー島です。急ピッチの突貫工事が進んでいました。
 ナホトカは小樽、舞鶴などの姉妹都市ですが、収容されていた日本人が建てた堅牢な建物はまだ残っていました。ところが日本人墓地は台座が荒らされ、周囲は草ぼうぼう、見る影もナシの惨状でした。
 詳しい報告はいずれ。
   ◆
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(編集部から)小誌、次号発行予定は8月15日です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
最新刊
宮崎正弘『人民元がドルを駆逐する』(KKベストセラーズ、1680円)

 ♪
宮崎正弘のロングセラー 絶賛発売中!
 http://miyazaki.xii.jp:80/saisinkan/index.html

『絶望の大国、中国の真実――日本人は中国人のことを何も分かっていない』
(石平氏との共著、980円。ワック文庫) 
『やはり、ドルは暴落する! 日本と世界はこうなる』(ワック文庫、980円)
『中国がたくらむ台湾・沖縄侵攻と日本支配』(KKベストセラーズ 1680円) 
『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ、1680円)
『北京五輪後、中国はどうなる』(並木書房、1680円) 
『世界が仰天する中国人の野蛮』(黄文雄氏との共著。徳間書店、1575円)
  < 下記サイトから注文できます ↓ >
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-url?%5Fencoding=UTF8&search-type=ss&index=books-jp&field-author=%E5%AE%AE%E5%B4%8E%20%E6%AD%A3%E5%BC%98
        ★★
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ◎小誌の購読(無料)登録は下記サイトから。(過去のバックナンバー閲覧も可能です)。
 http://www.melma.com/backnumber_45206/
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2009 ◎転送自由。ただし転載は出典明示。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2001-08-18  
最終発行日:  
発行周期:ほぼ日刊  
Score!: 99 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • 名無しさん2009/08/10

    NHKも八月は日本軍の悪口と荒さがしに明け暮れます。余程暇なのでしょうか?天下を変ぼうさせるだろう選挙は議論など聞いた事も聞く番組もなし、酒井が麻薬を吸った話で大の男がカメラをぶら下げて待機している姿を見ると実に平和バカの日本?何を考えているのでしょう?と宮崎先生と石平さんの「絶望の大国、中国の真実」を買ってきて読んで居ます。以外にする事がないほど空虚な平和日本。昨日も息子の友人の警部が息子達の夏休み帰国に遊びに来てくれ、中国の人の扱い難さをこぼして居ました。

    日本人と同じ扱いをする訳ですから聞く耳がない。と言ってましたので宮崎先生の本を常時読んでおけと言いましたら「読んでいる」が未だ上がいるなんて嘆いて居ました。

    日清戦争後は中国人が日本を学びに沢山来ましたが、今は観光目当て?逃走目当て?区別が付かない上に素直なのがいないので苦労するそうです。