国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2009/07/31



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  「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
      平成21年(2009年)7月31日(金曜日)

          通巻第2681号

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 はっと気がつけば、中国の軍事力に囲まれていたインド


  バングラデシュの軍事・政治・経済の保護国はインドから中国へ移行していた

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 バングラディッシュにとって1971年独立戦争の折、力強い味方はインド、敵はパキスタンだった。

 バングラディッシュという国名は「ベンガル人の場所」という意味、旧名は「東パキスタン」。パキスタンはパシュトン人の場所、という意味だからベンガル人からみればとんでもない話だ。



バングラディッシュにとって「敵の敵は味方」だからインド、その背後の米国もつよい味方の筈だった。

独立達成から四年間、中国はバングラディッシュを独立国とは認めなかった。



 そして三十八年の歳月が流れた。

 パキスタンは中国と緊密な軍事同盟のままであり続けた。インドは中国との敵対関係を緩和し、経済交流を始めた。

いまやインド商人が大挙して中国に買い付けに行っている。

 

そしてバングラディッシュの首都ダッカには五万人規模のチャイナ・タウンが出来ている。

 バングラディッシュに進出した中国の繊維企業が百万人のバングラ女性をミシン工として雇用している。繊維製品のクォータ(数量制限)を回避するため、アパレル産業はつぎつぎと中国以外の国へ移転するためである。



 さて問題は中国海軍力の突出である。

 ミャンマーの沖合ココ島に中国は軍事レーダー基地を租借し、インド海軍の監視所を設置した。

 同様にバングラディッシュの港に軍事観察基地を租借する思惑がある(ジェイムズ財団発行『チャイナ・ブリーフ』、09年7月22日号)





 ▲海軍力突出は資源戦略のためのシーレーン確保とセット



 1975年に中国はバングラディッシュと国交を開いた。

 矢継ぎ早やの友好条約は経済関係の緊密化、ソフトローンの貸与、文化交流そして、軍事技術供与へと至る。



 同時期にバングラディッシュの新世代の間でマオイストが跳梁跋扈した。

北京は「あのマオイストは中国と関係がない」と言い続けた。ネパールに出現したマオイスト政権、それ以前から武器はバングラディッシュのマオイスト経由でネパールに流れ込んでいると観測されていた(実際に小生もダッカ大学で構内そこら中に毛沢東のポスターを目撃した)。



 2006年、中国はバングラディッシュ軍に大量の武器を供与したが、そのなかには65の対空砲、地対空ミサイル114基。戦車T―69,T−79。さらに兵員用の機関銃。くわえて中国は2012年までに122ミリ砲、155ミリ砲も供与する。

 これらは「友好価格」にて中国から供与される。



 中国海軍とバングラディッシュ海軍との合同演習も行われ、艦発射ミサイル、砲艦、ヘリ搭載駆逐艦などがベンガル湾に勢揃いした。

 チッタゴン港の港湾拡充工事を中国が引き受ける手はずとなった。

パキスタンのグアィダール港は深海、将来は中国の原潜、空母寄港も可能。スリランカのハンバントタ港もしかり。そしてチッタゴンも?

 

 19777年からはバングラディッシュ空軍にジェット戦闘機も供与されはじめ、中国はF7,A5のほか、F−7BG16機を供与した。



 インド軍高官は、バングラディッシュ国内に中国の観察基地が貸与されると、インドの北東部に位置する空軍基地(バグドグダ基地にミグ21。ハジマラ基地にミグ27,テズプール基地にはスホイ30が展開されている)が、レーダーによってたちまち中国軍に掌握される危険性があるという。

 かくなればベンガル湾からアンダマン海にかけては「チャイナ湾」となりうる。



 

 ▲ミャンマーとの接合も総合的に地政学的に判断



軍事力ばかりではない。

 資源戦略と濃密にからむのが中国の軍事力拠点の拡大とシーレーンの拠点確保という動きに繋がる。



 西側が制裁しているミャンマーへ中国の異常接近は前から指摘されてきた。

 ミャンマー沖合海底に眠るガス田開発はシノペックが応札し、また同海域はバングラディッシュの領海と重なる微妙な区域だけに、両国は中国の調整を望む。



 ガスのパイプラインはミャンマーから2806キロ。年間120億立方メートルのガスを雲南省昆明へ輸送する。2012年完成予定。

 石油パイプラインは1100キロ、日量40万バーレルを運ぶプロジェクトだ。



 昆明からミャンマーへのハイウエィ900キロ。これをバングラディッシュのチッタゴンへと繋ぐ。

 ここまでの動きを地政学的に俯瞰するなら、すでに南アジアは中国の軍事力影響圏に入っていることが分かる。

 はっと気がつけばインドは中国の海軍力に取り囲まれていたのだ。

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(読者の声1) あまりに北京重視の米中戦略対話(7月27−8,ワシントン)でしたが、「日本はどうにでもなる」と、オバマも温家宝も想っているんです。

麻生政権だろうが、鳩山政権だろうが(米国は日本を)FORCE出来るということです。日本は米軍に出て行ってもらって核武装すれば良いだけです。共和党は日本人の味方です。核保有を容認するでしょう。

(伊勢ルイジアナ)





(宮崎正弘のコメント)共和党のネオコンが皮肉にも一番の親日派。共和党主流の穏健派は民主党主流の保守派と同様なほどノンポリですし、共和党のハト派となると始末に負えないですね。







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(読者の声2)森村誠一『悪魔の飽食』ですが、改竄歴史の典型。

 気になったのは、聖路加国際病院の日野原名誉医院長が「731部隊の非人道的なことを知って云々」といっておられたのを聞いていたので、これが本当になかったのかというのが
疑問です。

その後、ミドリ十字となって薬害エイズ事件などに関連した時もその流れの会社だからとかいわれました。きちんと対処しないと、南京虐殺のように嘘が本当のように蔓延するのではないでしょうか。心配です。
  (MI生、福岡)





(宮崎正弘のコメント)この日野原某先生など、典型の『善意の第三者』。サヨクの謀略にとってこれほど利用価値のある存在はないでしょう。専門馬鹿というのは専門分野だけに特化していれば良いのに、たとえば競馬選手の奥さんが社会問題のコメントをしたり、某有名タレントの兄というだけで政治問題にコメントしたり。裁判官が世間に無知なように、昔の大学教授が社会現象に疎かったように、専門家は専門以外のことは何も知らないし、知っていることは全部間違っている。困ったものです。







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(読者の声3)貴誌2680号の書評欄で「書いたメディアの記憶がない」と言われた、宮崎正弘先生の松前紀行ですが、掲載は航空自衛隊の親睦雑誌『翼』です。一昨年あたりですね。

松前から江差にかけて風の強い、ひなびた土地を連想させてくれました。あんなところで新撰組が榎本艦隊と連合して新幕府軍と闘ったのか、と思いました。

先生の紀行文には行間に武士を偲ぶ哀切、滅び行く徳川幕府軍への同情がありました。それで印象が深かったのです。

  (TY生、呉)





(宮崎正弘のコメント)そうでした。そして江差で名物のニシンそばを食べた。それだけが記憶に残るほど美味しかった。江差から函館までのバスは三時間か、四時間かかった。江差は想像を越えた荒涼たる漁村でした。町は観光資源でカラフルなタイルを敷設した観光歩道も充実しているのですが、なにしろ周辺も過疎村ばかり。観光に来る人の少なさ!

 その前日は松前へ行きましたが、函館から途中の木古内までが汽車、それからバスでこれまた往復に六時間以上かかった。

ですから函館に三泊する必要がありました。







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(読者の声4)最近の経済危機の状況をしっかり把握するため、貴書『人民元がドルを駆逐する』(KKベストセラーズ)をはじめ先生の著書を再度読み返しているところです。(一度ではなかなか全体を覚えきれないので)。

先日ご紹介の浜田和幸氏の著書も併せて読ませていただきました、米国、中国、欧州、日本の今回の経済危機の状態、内容、今後の予測など、非常に参考になりました。有難うございます。

香港の不動産市場はここ3−4ヶ月で、リーマンショック前の相場近くまで、戻しています。

不動産エージェントに聞くとミッドレベル、ピークなど高級物件で、テナントが入っていて、利回りが期待できるものを中心に取引されているそうです。

債権市場不振で、だぶついた資金がとりあえず短期の投資先を求めて入ってきているような感じだと話していました。

ご存知のように築20−40年の建物も多く、日本のマンション市場、ニューヨークの不動産市場を考えるとしぶといですね。  

中国の不動産、株式のリバウンドのことは先生のニュースなどで良く分かりました、この次の暴落の時は中国の銀行の不良債権が増えて、大変な状況になると思いますが時期としてはいつ頃と予測されますか。


 ところでもうひとつ。貴誌2669号で先生の副島・植草両氏への書評ですが、植草氏のレポートは時々読みますが、専門的過ぎて正直読みきれないものがあります、しかしきちんとした理論に添ったものであることは分かります。いろいろなことがあって、民主党よりに、なってしまったのでしょうか、残念な気もします。

副島先生のものは書評の通り内容が過激なものがあり、私どもには判断がつきかねる時がありますので、先生の書評は大変参考になりました。 
    (香港読者)





(宮崎正弘のコメント)不動産と株式に大量の熱銭が入り込みました。バミューダと英領バージン諸島からのファンド筋ですね。香港の不動産は華僑独特のファンドが主体でしょうね。

 このバブルがはじけるのは早ければ今秋、遅くとも上海万博直前あたりではないかと推測しています。過剰投資の反動不況でしょう。









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(読者の声5)貴誌2680号に見る米中経済戦略対話に関連する記事を読み、日本の「反米」について少し考えました。

西部邁氏などは保守本来のあり方として、米国的なるものに対する違和感を持ち続けるような事(つまり原則)を主張する一方で、「それはそれとして」現実外交を行うのにはやぶさかではないとする立場ですが、最近ではヒステリックに米国に従属云々をするなと叫ぶ意見が極左以外に「保守」の中にも多々見られます。

もしそれを言うなら、例えば米軍無しでシーレーンを日本が防衛する事を公言しないのか?

それには現憲法を破棄する事が条件となります。さらに中共支那が空母で同地域を制覇した場合、どう対処するのか?その時に米国が日本側に武器輸出禁止でもしたら?
 ソエジマなんとかは最悪の場合に備える気があるのか? 加えてもし米軍が対日封鎖に出たらどうするつもりなのか?

駄目押しに(想像したくも無いが)米中が連合したら? それはありえない話ではない。 


実際に先の大戦で日本は英米仏蘭ソ中と敵対した。そして、その連合国の名残である「国連安保理事会常任理事」にいまだ米中は席を同じくしている。そして、その影が米中経済戦略対話まで続いている...

不思議な事に戦後生まれの(反米)知識人は無意識に「米国が日本を信用している」という前提に立っている。

だから、彼らは「安心して反米になれ」るのだ。それはいくら少年非行が暴れても父親は息子を信じているような甘えた意識に似ている。だが、1990年のCIAレポートに見れる様に米国はここというところで日本を信用していないのだ。-


http://www.nytimes.com/1991/06/05/news/cia-report-on-japan-economy-creates-furor-at-institute.html



日本は戦後かなりの民主主義国家になったが、他の欧米諸国の様にキリスト教国でも白人国家では無い。

つまりフランスやドイツと日本では米国人の受け取り方が全然違うのだ。もしも、日本がフランス並に米国に楯突けば本当に危ないだろう。でも、米国に思いやり予算を払う日本が英国やイスラエルのように信用されていない?何故?
 英米は二度の大戦で共に戦った。

現在でもイラクでアフガニスタンで国際的批判に晒されても英国は米国の為に血を流した。

イスラエルは冷戦時代から議会に縛られた米軍に替わり南米で共産主義者と闘い汚れ役を引き受けた。

1980年には米国とイランの裏取引に協力。米国軍需産業にイスラエル軍の武器使用データを改良提案と共に渡して貢献してきた。オバマとネタニヤフの間ですら対イラン諜報協力の常任スタッフ設置を決定した。

日本人は日本が本当は米国人に充分には信用されてしないという認識から出発しなければいけないのではないだろうか。

私が外交評論家として活躍する佐藤優氏の発言の中で「おやっ」と思ったのが、「外務省職員は全員親米です。」という発言。「これは凄い」と思いました。大体、どんな機関でも「全員が一致」する事などはありえない。それを公言する訳ですから、さすがに国際的外交的感覚が他の人とは違うなと感服。日本の立場を良く分かっている。

米国とイスラエルの関係を見てもユダヤロビーの強い米国政治家がイスラエルとの友好関係を常に強調する一方で、イスラエルの政治家達が、シャロンが、ペレスが、バラックが、オルメルトが、ネタニヤフが繰り返し繰り返し米国との良好な関係を発言している。そう、言葉としてローリングストーンズのように「We love you」を伝えなければいけないのだ。
http://www.youtube.com/watch?v=TSjnn5fiKlE
 かつて米国との対決を予想した後藤新平はソビエト研究の人材養成の為にハルビン学院を創設。学生に「アカと批判される事を恐れるな」と諭した。立派な人である。

その流れを汲む佐藤優氏はロシアと接近し過ぎて米国から疑われた。小泉政権の時に逮捕されたのは偶然でない。
http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/nn20020519a1.html



佐藤氏の親米国家イスラエルへの接近は、「米国が怖いから」というリスクヘッジの意味があったらしい。

その彼が「外務省職員全員親米です。」というのは迫力がある。その発言は非常に正しい。米国との同盟は、米国に核ミサイルを打ち込まれない為に、海上封鎖されない為に、食糧供給を受け続ける為にこそ必要なのだ。
 中共支那が勃興し、その支那に米国が寄り添う今日に日本がロシアとの関係を改善する事は米中牽制の意味があるのだ。ところで現在シベリアには七百万人弱が住んでいるが北方四島には一万八千人の住民が居る。

イスラエルが2005年にガザ地区から強制撤去したユダヤ人入植者の数が八千人であるから倍以上である。その八千人はいまだに高い失業率と経済的困窮、精神的後遺症に苦しんでいる。

その例に学び四島住民を今後どう扱うのか。

札幌からサハリン経由でイルクーツクまでリニアを引っ張って、その沿線にでも住んで貰うという手も有るのではないか。尻切れになるが、歴史に学ばない、覚悟無き反米にはもううんざりだ。
  (Dora-Q)





(宮崎正弘のコメント)反米小児病? 外務省が100%親米ということはないですが、反米外交官は過疎地に飛ばされます(苦笑)。自衛隊も現場は100%とは言いませんが、基本スタンスは親米です。ですから西部さんなど反米獅子吼組は、或る意味で嫌われるわけですね。西尾幹二氏がいうように「思想反米、外交親米」これが当面の日本が生き延びる智恵でしょう。



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樋泉克夫のコラム



   ――伊藤律先生、北京幽閉二七年・・・辛苦了

『伊藤律回想録 北京幽閉二七年』(伊藤律 文藝春秋 1993年)

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昭和55年9月、成田に降り立った伊藤律の幽鬼のような姿をテレビで見た時、まさに生きた化石としか思えなかった。

北京で生きていたのだ。これが驚かずにおられようか。

「(19)五一年秋、志田が言った。『北京のオヤジ(徳田)が君に来てほしいと言ってきた。行くか否か君自身が決定してよい』。私は熟考の末『行くよ』と答えた」。この瞬間、伊藤は日中両共産党の凄まじい権力闘争、陰々滅々たる主導権争いに巻き込まれることを運命づけられてしまう。

なんたって共産党では、権力闘争至上主義者だけが生き残れる。



当時、「人民中国の首都北京西郊にある日本共産党在外代表部(俗称「北京機関」)」は、「四つの二階建てビルが約五○メートル間隔で並び、周囲は鉄条網を張った高い塀で、門はひとつ。公安部兵隊が守備してい」た。そこには、徳田球一をトップに、徳田を追い落として委員長になりながら最後はスパイ容疑で除名処分を受けることになる野坂参三、徳田の女婿だが結果として徳田を裏切り野坂に加担することになる西沢隆二、朝日新聞労組出身の聴濤克己、かの高倉テルなどで構成された日本共産党地下司令部が置かれていた。



1952年12月24日、入院中の徳田に代わって組織を指揮する野坂の「向こう(モスクワ)から重要なことを言ってきた。緊急会議を開く」との指令で、徳田を除く幹部がここに集まる。

その席には中国共産党の対外交渉部門の中連部から副部長の李初梨も参加するが、野坂は「問題が重要なので、中共中央を代表して李初梨さんに同席してもらう」と断った上で、「野坂は一枚の紙片を取り出しながら言った。『これはソ共中央のわが党への勧告で、中共中央の同意を得たものだ。名目は勧告だが実際は指令である。違反はできない』。ソ共中央とは明らかにスターリンを意味した。そして野坂は手にした紙片をちらりと見てから宣告した。『伊藤律は節操のない人間であり、政治局はその証拠をもっているはずである。直ちにいっさいの職務から切り放し、問題を処理せよ』」。



かくて伊藤は日共・ソ共・中共から晴れてスパイと“公認”され、「北京幽閉二七年」がはじまる。オ目出度い限りだ。

 じつは日本共産党の指導をめぐって徳田と野坂・宮本の間で激しい暗闘が繰り返されていた。

もちろん伊藤は徳田派。これに中共党内の権力闘争が重なったことで、この派閥対立は複雑さを増す。



「おれはここでは孤立だ。中連部の連中は野坂・宮本好みだから。だが、毛さんら首脳はおれを支持してくれているから」と徳田が伊藤にいって聞かせているように、毛沢東(徳田・伊藤)対中連部(野坂・宮本)という図式だったらしい。

中連部のトップが、長征という名の逃避行において毛沢東が軍指導権を奪還したとされる遵義会議で毛沢東支持に寝返った元ソ連留学生の王稼祥。



どうやら徳田・伊藤対野坂・宮本の戦いは、毛沢東対王稼祥の代理戦争ということになる。

ならば日共は、戦後の出発時からソ共中央と中共中央の“操り人形”にすぎなかった。いや、マッカーサーの日本占領を「解放」と歓迎した点を加えるなら、米・ソ・中のポチだったのだ。「自主独立」が聞いて呆れる。



 伊藤は北京の権力闘争、日中両共産党の対立の余波に直撃されながら、悲惨極まりない「秘密監禁」の27年を生き抜く。

北京は伊藤を生かしたまま日本に返す。伊藤が戦前・戦後の日共の恥部・暗部を知り尽していただけに、宮本の牛耳る代々木への無言の圧力となっただろう。それにしても伊藤は貧乏クジを引いた。ハテ、自業自得というものか。

《QED》





(ひいずみかつお氏は愛知県立大学教授。京劇、華僑研究では第一人者。このコラムは小誌に独占的に連載されております)

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  • 名無しさん2009/08/05

    いつも貴重な情報をありがとうございます。

    最近、インターネットで米国の一般大衆の動きを観察していて気づいたのですが、constitutionistと呼ばれる人たちの活動が活発になっているようです。

    彼らは超保守的な人たちで、建国当時の理想の共和主義や孤立主義に戻したいようですね。

    グローバリズムが大嫌いのようです。

    憲法に違反する制度がたくさんあるので(たとえば連邦準備銀行)、それらをすべて廃止することを主張しています。

    代表的な政治家はテキサス出身のロン・ポール氏ですね。

    彼の人気はすごいです。

    次の大統領選挙にまた立候補するようですね。

    大統領になれる可能性はほとんどないのでしょうが、私はむしろ彼らに好感を持っています。

    古き良きアメリカ人を見ているようです。

    ウォールストリートで働いているアメリカ人とはまったく価値観の違う人たちですが、彼らの方が人間としては信用できそうです。(陽山)