国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2009/06/30


☆小誌愛読者14700名! 
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 「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
     平成21年(2009年) 7月1日(水曜日)
        通巻第2646号  <6月30日発行>
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 北朝鮮の核保有は生き残り戦略の手段化
  オバマ政権の「無視」スタイルと北京の積極関与への転換と
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 「北朝鮮をめぐって新しい情勢の変化がある。主として日米中韓の外交スタンスの変化より、北朝鮮内部の変化による。また北京にも新思考が生まれ、国連も北朝鮮に新しい考え方となり、したがって今後、五カ国の対応が重要になるだろう」

 北朝鮮専門家のシーラ・スミス女史が講演を始めた(6月29日、アメリカンセンター)。
 シーラ・スミス女史は米外交問題評議会(CFR)の日本担当上級フェロー。前ボストン大学教授。コロンビア大学で博士号。
 以下は女史の講演要旨。

 世界が直面しているのは危機管理。言うまでもなく北朝鮮の核をどうするか、だ。
 いまや地域的難題ではなくグローバルな問題、国連でもトップの問題となった。
 このままでは韓国も核武装にすすむ可能性があり、日本とともに米国の核の傘で安心できるシステムを確立しなければなるまい。そうして転換点にあってオバマ政権は新しい幕開けと見ている。

 これまでの経緯を見ると2004年に在韓米軍は南へ移動して軍の指揮系統主導は韓国軍に移った。クリントンの八年間、北は核開発を凍結した。その後のブッシュ・ドクトリンを、米国は依然有効と考えており、また北は核を小型化しミサイルに搭載する技術を持っていないと認識している。
だが開発プログラムの目的が明確ではない。
 
北朝鮮の政権内部で後継者問題が急浮上し、核保有の野望とともに危機も継続される。核保有の野望は放棄されない。もし放棄するとすれば、北は膨大な代替保障を求めるだろう。

 国連決議は前の1718と比較しても、今回の1874は厳しい内容をともなっている。
 そして米国は国務長官クラスの交渉が今後必要になろうと判断している。
 つまり米国が懸念するのは北朝鮮の崩壊。それはありうることであり、米国は北朝鮮の政権転覆を求めてはいないけれども、転覆が起こりうると考えている。
だからワシントンー東京―北京―ソウルの密接な連絡が必要となり、中国が軸足を(日米よりに)移してきたのだ。
 北朝鮮は後継者問題もからみ、おりからのイラン問題が重なって、北は「イラン要素」を考慮に入れて行動するだろう。


 ▲北朝鮮の動きを「無視」する外交スタイルのオバマ政権だが。。。
 
 シーラ・スミス女史の講演のあと、司会の小此木政夫・慶応大学教授が以下のコメントをした。

 「北は必ず何かを仕掛けてくる。あるいは挑発してくるだろう。それに対応して米国がどう動くのか興味がある。
いまの米国は「ネグレクト政策」をとっていると見ている。あるいは「放置」と置き換えても良いが、北のエスカーレートとネゴシエーションという挑戦に対し、オバマ政権は無視する政策を展開してきた。しかし、これは一時的なのか、あるいは新しいオバマ外交のスタイルなのか」。

 米国の「無視」 vs 北の「挑発」という関係図式が描ける。
 小此木教授が続けた。
 「ともかく北朝鮮の核保有の目的とは(1)抑止力(2)外交力を高めることになり、ここに(3)後継問題が絡み始めた。
NSAの『世界脅威報告』に拠れば、核兵器は外交の手段」と認識されており、外交上、核保有は安全を担保できるうえ、巨大な見返りがとれる。冷戦崩壊後、ソ連・東欧諸国は社会主義をやめ、中国も市場原理に走り、しかしながら北はどちらも選択しなかった。とどのつまり北にとって核とミサイルが生き残りの手段化したのだ。体制維持と核と外交が密接に繋がっているのである」

 引き続きの討論会に筆者は時間の関係で中途退席した。
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◎ブックレビュー◎●BOOK REVIEW◎●書評◎●ブックレビュー◎●
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佐藤秀明『三島由紀夫の文学』(試論社)
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 執念籠めて練り上げられた三島文学論の決定版
    あり得ない現実が詩であるなら三島は文学を愛し、かつ憎んだ

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 読書の方法にも様々な遣り方がある。
 二度も三度も読む。行間を読む。書き写す。暗記するほど読む。キィワードだけの拾い読み。速読等々。
 しかし、この著者にとって三島の小説の読み方は「精読」を越えたレベル。精密な調査目的、比較研究、文章心理学というよりも、DNA鑑定のような、或いは血液検査のように、そうそう平塚八兵衛の捜査のように靴をすり減らして歩くがごとく、幾重にも厳重な読み方をしているのである。
 裏からも読み、斜めからも読むと比喩してみたいほどだ。いやはや。本書を読むほうも疲れる。だが、楽しい疲れを覚える。

 三島文学研究の第一人者である佐藤秀明教授は、われわれに替わって、しかもどんな三島ファンの蘊蓄をも越えて精密に創作ノートと未発表の処女作やメモにあたった。全集におさめられた大学ノートの「取材ノート」はホンの一部である。
それらを精密に比較検証して、執筆時点での三島の心理までを想定し、創作ノートとの乖離を探り出し、客観的なうえに重層的な考察を試みた。はたまた多くの謎の真相を抉る作業が進められた。これらに費やされたであろう夥しい時間を推定すると、その研究への凄まじき執念がうかがえる。

 嘗て三島のあらゆる文章を、全集で確定するに際して、田中美代子氏は雑誌発表時、初版、再版以後、そして文庫にそれぞれあたり、初出以後の書き換えまで精密にトレースされた。凄い作業だった。
 なぜなら作家はふつう、文庫収録に当たっては必ず読み直し、若干の字句の訂正をおこなったりするからである。

 ところが、山中湖の三島文学館に遺族から寄贈された膨大なノート、メモ、日記を歳月をかけて、ひとつひとつミステリーのように謎を解きつつ、続けられてきた佐藤教授らの気の遠くなる作業の成果は、従来の三島文学の研究成果を劇的に高め、もっと深めた。
 さきに井上隆史氏の研究の成果により、わたし達は三島の処女作が従来の説とは異なり、少年時代の夥しい詩作の存在も知った。榊山保のペンネームで書かれた切腹小説も三島が書いたと断定された。三年つきあった愛人の実名も知った。
 こんどの佐藤教授の作品は、おなじ研究仲間として、その井上説をふまえている部分も多いが、精密読書の研究成果はほかにも色々と現れた。
 

 ▲聖セバスチャンの絵画は二枚あった

 さて本論に入る。
 すくなくとも評者(宮崎)が佐藤教授の研究を通じてはじめて知った事実がいくつもある。
第一は『仮面の告白』にでてくる聖セバスチャンの絵画だが、じつは二枚存在し、それらは弓矢の位置が違う。えっ、そんなことがあったのかと驚かされた。細江英公のモデルになった薔薇刑は、どちらをモデルとしたか?

第二は、『潮騒』の創作ノートまで、つまりそれ以前の作品の取材に風景描写がすくなく、構想の下書きが主であったこと。観念を越えた取材ノートが躍動しはじめた『潮騒』はやがて商業的にも成功したが、それでも「海の匂いがしない」という酷評があったこと。
 伊藤整がなぜか先輩ぶって三島をかなり軽く評価している事実も、この本の行間から読めた。

 第三は『宴のあと』のモデル事件の後始末のことだ。この都知事選挙と料亭のおかみの艶聞をめぐって、三島が訴えられた裁判も、有田八郎がモデル化されて『宴のあと』が完成したわけだが、閨(ねや)のことを書かれたとして、「プライバシー裁判」となったことはよく知られる。
 ところがノートなどから三島は有田にも取材しており、モデルの了解をえていたこと。閨のことまで詳しく知り得たのは、じつは有田の参謀の小森を通じてであっとこと、これらは裁判では表沙汰にならなかった。

 第四に『奔馬』で飯沼勲が暗殺する、腐敗した財閥・蔵原武人のモデルを池田成彬とする説が定着していたが、佐藤教授は井上準之介の可能性についても言及している。「三島が井上を意識して蔵原を造形したのではないかと思わせる」フシが、あの時代を振り返ると多いとの指摘も頷ける。

 それにしても最後の遺作となった全四巻の『豊饒の海』に関して、三島の最初の構想から、実際の執筆段階での巨大な変容のプロセスを追う作業は圧巻である。
当初から輪廻転生は半信半疑であったのか、途中から輪廻転生が疑わしいストーリィ運びに変えたのか、最終巻で安永透という輪廻転生の「偽物」の登場はいつどこで、想定されていたのか等々、興味津々。


▲『海に行っても海がない』のが三島文学

佐藤は創作ノートと実作との乖離にその謎を求め、とくに最初の構想ではなかった印度ベナレスへの旅行が、輪廻転生のプロットつくりの原案と実際の原稿とのあいだに巨大な影を落とした事実を突き止める。

 そして佐藤は言うのである。
 「三島由紀夫の文学は現実の許容しない詩」だが、それは「たとえ海に行っても海がない」ように、三島は強くたくましく「文学を愛しながら文学を憎んでさえいた」と大胆に言う。

 その結語に至る佐藤の論考は「詩」である。
 「『天人五衰』には、自分を絶世の美女だと思いこんだ醜い狂人絹江が登場する。絹江には『醜い』という現実は存在しないから、彼女は<詩>を生き続ける。そういう絹江の<現実>は、誰の保証も必要としないが、毀すことのできるただひとりの透は、彼女を美しい女として恭しく扱い、(透が自ら)失明することで絹江の一部になってしまう。こうして絹江の<詩>はしたたかに生き延びる。(中略)<現実が許容しない詩>が<現実>であるという堅固な一元性しかない」

 これと酷似した比喩を三島は『春の雪』で月修寺の門跡が語った法話として挿入させていたと佐藤は指摘する。
それは次の箇所である。

 「名山高岳に仏道をたずねて歩くうち、たまたま日が暮れて、塚のあいだに野宿した。夜中に目を覚ましたところ、ひどく咽喉が渇いていたので、手をさしのべて、傍らの穴のなかの水を掬(むす)んで飲んだ。こんなに清らかで、冷たくて、甘い水はなかった。又寝込んで、朝になって目が覚めたとき、あけぼのの光りが夜中に飲んだ水の在所を照らし出した。それは思いがけなくも、髑髏の中に溜まった水だったので、元暁(僧の名前)は嘔気を催して吐(もど)してしまった」

 この場面を解説して佐藤は言う。

 「元暁は清水という<現実が許容しない詩>を生きたのだが、髑髏の中の水という現実の前に、<詩>はあえなく潰える。本多の興味は『悟ったあとの元暁が、ふたたび同じ水を、心から清く美味しく飲むことが出来たろうか』という点に拡がる。これを美味しく飲めば、現実を知りつつ、<現実が許容しない詩>を生きることになる」
 『美しい星』の暁子も、『天人五衰』の絹江も<詩>を生きた。
 そして「それもこころごころですさかい」と最後の場面で門跡は松枝清顕の存在さえを否定する。

 かくて佐藤秀明氏はこう書くのだ。
 「三島由紀夫の小説は、<詩>への批評から始まった。三島は少年時代の詩を否定し、しかし<詩>は生き延び、背理である<詩>こそが現実であるという小説も書かれ、『豊饒の海』に至った」
                          
          (佐藤秀明『三島由紀夫の文学』は試論社刊、4500円)
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(読者の声1)前号の貴論「オバマ大統領は世界情勢に無知と思ってきましたが、周囲のブレーンが良いので、大がかりな外交的仕掛けを考え始めたフシが方方にあります」。
このコメントを拝読して、先日の講演会が思い出されました。
「今なぜ渋沢栄一が注目されるのか」という演題で、「渋沢栄一記念財団研究部」の木村昌人氏の講演ですが、その中で、渋沢とオバマの共通点を挙げて、
1理想を掲げ、それに向って邁進
2歴史への憧憬(オバマは建国以来のアメリカの歴史をよく勉強している)
3確固たる哲学を持っている
4リーダーシップを持っている(アメリカの選挙は前哨戦が一年もあるが、その間にオバマ陣営から不協和音が聞こえてこなかった)
5ライバルを重要ポストにつける度量
余談、渋沢のライバルは、岩崎弥太郎だったが、その後の代になって姻戚関係が出来た。
6演説が得意(説得するまで何時間でも演説し続ける)
7他人の向上心を上手く引き出す(人使いが上手?)
8粘り強さ、(渋沢に関して言えば、これが国家にとって必要と思えば何年でもその企業を応援し続ける)
  アメリカの凄さは、この40歳そこそこの青年に国を任せるという度量の広さ、、と講師は仰いました。
    (TF子、小平)


(宮崎正弘のコメント)オバマ信者のドグマ化かも知れませんが、冒頭に紹介した対北朝鮮外交に関しても、なかなかしたたかな側面が出てきましたね。
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 ●宮崎正弘●MIYAZAKI MASAHIRO●みやざき まさひろ●宮崎正弘●
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