国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2009/05/15

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 「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
     平成21年(2009年)5月15日(金曜日)貳
          通巻第2595号 
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台湾が札幌にも領事館相当のオフィスを増設で合意
   彭栄次・亜東関係協会会長が来日、正式文書を交換
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台湾の亜東関係協会新会長に就任したばかりの彭栄次氏が来日、札幌での弁事処設置に関する正式文書を交換した。

 外交関係がないとはいえ、日本に「台北駐日経済文化代表処」(事実上の台湾大使館)があり、その下部組織として大阪、横浜、福岡、那覇に領事館に相当するオフィスがある。 
最近、台湾から北海道を訪れる観光客が年間約28万人にもなり、札幌に台湾のオフィスを設置する動きが進んでいた。とくに雪のない台湾からは札幌雪祭り、洞爺湖や定山渓温泉に人気が集まる。

13日に東京で開催された歓迎パーティに(小生も出席したが)、自民党の細田博之幹事長を筆頭に古屋圭二、石原伸晃代議士、野党からは亀井久興、藤井孝雄氏ら政界、財界から牛尾治郎氏ら、また学界からは中嶋嶺雄、論壇からは屋山太郎、田久保忠衛、深田祐介氏ら数百名が出席、大盛況だった。

彭栄次・会長は、「日台友好は百年以上の歴史があり、台湾の人々は日本との交流を重視しており、選挙で選ばれた馬英九・総統は対日関係を大変重視している」とされ、馬総統から半年にわたって就任を打診され、断り続けたが、やはり自分の使命だと納得し引き受けたと心境も披露された。氏は李登輝前総統の側近として知られ、これまでは日台間の黒子に徹してこられた。

「日華議員懇談会」の平沼赳夫会長は台湾のWHO加盟に祝意を表し、「これからの課題のひとつは台北市内の松山空港と日本の羽田空港とを結ぶ直航便を前倒しで実現したい」とした。

 石原慎太郎・都知事も祝意を述べた。「(この難しい時期に、しかも国民党の元での就任に)『おめでとう』というより『ありがとう』と言いたい。日本と台湾、韓国はアジアにおける自由民主の国だ」と強調した。
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(お知らせ)

 MXテレビ(東京メトロポリタンTV)
 西部遭ゼミナール
 『中国論』に宮崎正弘が出演しています
 放映日     16日(土曜日) 午前11時
 再放送     17日(日曜日) 午前7時半

 話題は以下のようなテーマです。
◎中国の長期的な政治、軍事、経済そして文化戦略
◎人民元をドルに代替させる基軸通貨にさせようとしているが
◎空母貳隻体制が出来るとアジアに戦雲が

お見逃しになっても御心配ありません。23日よりユーチューブで再録公開されます。

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読者の声 読者の声 読者の声 読者の声 読者の声 読者の声 読者の声 読者の声
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(読者の声1)またまたサーチナで面白い記事がありました。
『中国の「漢服」知らぬ“愛国者”、和服と間違え罵倒の嵐』
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0513&f=national_0513_041.shtml

前略
  漢服を広めようと、“同志”とともに、しばしば着用して街を歩くという女性によ
ると、いつも不思議そうな目で見られるという。「あなた方は、日本人ですか、朝鮮族
ですか」と聞かれることも、しばしばだ。2008年の北京五輪大会を漢服着用で観戦した
折には、会場スタッフが日本人だと思い、丁寧な態度で英語で話しかけてきたという。
 さらにショックだったのは、自分のブログに漢服姿の写真を掲載した時のことだ。
“愛国主義者”による「和服は出て行け!」、「小日本を打倒せよ!」などの罵詈雑言
が殺到したという。
 女性は、「日本人や韓国人が、自民族の衣裳を見間違えることはありえない。とこ
ろが中国では、分かってくれる人の方が少ない」と嘆いた。
  (引用終)

 漢服というのは中国の明代以前の伝統衣装で、テレビドラマや映画でおなじみ。婚礼写真店の貸衣装や観光地の着せ替え写真でもよくあります。和服は日系企業の広告や日本のドラマなどでよく見かけますから普通の中国人なら見間違えることはないと思います。この記事には写真もありますが映画などでよく見る服装で和服と間違えるとは信じがたい。もし本当に和服と漢服の区別がつかずに罵詈雑言を浴びせる「愛国者」が多数いるとしたら、共産党政府の愚民政策がみごとに成功した証しでは。21世紀に伝統的な衣装を着るのは日本人=和服との短絡思考、大日本帝国の幻に囚われ現実の日本を見ようともしない中国のゆとり世代? 東京が中国のどこにあるのか、と聞いてくるような人もいますから驚くほどのこともないのでしょうか。
 漢服で思い出しました。
桜の頃、竹橋から大手町へ向う途中、皇居のお堀沿いに大きな銅像が。観光客や散歩の人たちが集まり、誰なんだろう、中国人みたいだね、などとささやきあっています。銅像の後ろに回ると首相林銑十郎の文字。
それでも銅像が誰なのかわからず周りをよく見渡すと石碑があり、碑文を読むと道鏡事件で有名な和気清麻呂。戦前の皇国史観では皇室を守る忠臣として紀元二千六百年記念に建てられたものでした。
 日比谷のGHQから程近い場所にありながら撤去もされなかったのは和気清麻呂が文人であったことや天皇訴追せずとの対日方針が決まっていたためなのでしょうか。GHQの所在地は皇居を睨んで、当時は有楽町にあった三大新聞からも至近。情報統制しながら日比谷公園でのデモも扇動できる格好の立地ですね。

 貴誌で平泉澄論がいろいろ紹介されておりますが、高校時代が学生運動全盛期だったためか、皇国史観というだけで敬遠しておりました。
最近、戦前の本をいろいろ読んでまさに目からウロコです。平泉澄教授の門下生といっていいのかわかりませんが家永三郎などいつの間にやら皇国史観から左翼史観へ転向し教科書裁判まで起こす始末。
朝日新聞と相性がいいのも頷けます。
 近現代史から最新の世界情勢まで、毎日驚くほど守備範囲の広い貴誌を読んでいると、データの乏しい情緒的な記事や結論ありきの世論誘導記事ばかりの新聞など読む気が失せてしまいそうです。
    (PB生)


(宮崎正弘のコメント)林銑十郎、ですか。懐かしき名前がでてきました。昨年急逝した正慶孝(明星大学教授)は、このあたりが詳しかった。もっとあの時代の事を聞いておくべきでした。



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(読者の声2)貴誌通巻第2593号でIT氏が(読者の声4)で以前私が書いたものに対してコメントされました。私の文章がつたなかったため本意が伝わらなかったようですので、補足させてください。

1.通巻第2579号に掲載された私の書いた「読者の声」で最初に通巻第2576号に掲載された「しなの六文銭」氏の文章を引用して、[(読者の声1)で「しなの六文銭」氏が、江戸時代の将軍家の通貨政策に関して「貨幣改鋳を強く献策した荻原重秀、それを支持した柳沢吉保、断行した将軍綱吉は、ケインズより二百年以上早く貨幣経済を先取りしたと評価しています」とありますが、まさに慧眼の指摘です]と書きました。
私が、「慧眼」と書いたのは「しなの六文銭」氏が、荻原重秀の秀逸さを指摘した点です。ただし、荻原重秀が行ったことは、ケインズの理論とは異なる点で氏の文章は不正確なので、その不正確な部分を補正して「しなの六文銭」氏の本意を全うさせるため書いたのがあの小文です。

荻原重秀が行ったのは、通貨供給量の増加をもたらしました。
結果的に実体経済が拡大しましたが、有効需要の創出を目差したのではありません。そもそも有効需要なる概念は未だにケインジアンとマネタリストの間で意見の一致しないいわば一般相対性理論のようなものです。
あの小文で首尾一貫して通貨供給量と書いて有効需要とは書いていないのはこのためです。しなの六文銭氏は、この両者を混同していましたが、小文で氏の論を補正することを試みました。もう一度読まれれば明快に理解されると考えます。

私の論と軌を一にした議論を19世紀中葉に活躍したイギリス人エコノミストのバジョット氏が当時の英国の金融に関して『ロンバード街―ロンドンの金融市場』(岩波文庫)に書いています。名著です。勿論ケインズ理論や有効需要はでてきません。

2.皇統の正統性における三種の神器の役割に関しての井上博士と頭山氏の議論に関して、貴誌2573号(読者の声1)で私が述べたことに対してSJ氏が質問されましたが、それに返事をしたあと、ある国学者にその方のご意見を伺いました。
国学とくに国体論に関しては現在日本で一、二を争う大家ですが、世間に名前を出すことを嫌われるのであえて名前は記しません。
その方のご回答は、
(1)井上博士の見解が正しい。
(2)日本人は元来実質を尊ぶ民族である。憲法で言うように天皇は象徴である、というのは間違いである。象徴とは、天皇陛下の行幸の際先に行く天皇旗のようなものをいうのである。
(3)三種の神器は、天皇を助けるものであって、皇統を担保するものではない。
(4)頼山陽の日本外史に、楠正成がいなくて皇統が絶えたら、三種の神器があってもなんにもならない、と書いてある。まさにそのとおりである。

その方は、もともとご先祖は伊勢の出身で代々国学者であった。数百年前に関東に移られました。非常に優秀かつ人格高潔のかたで、昭和天皇陛下に信頼され、たびたび相談を受けておられた方です。
現在の人たち特に学者は西洋思想や西洋哲学における分析手法に子供の頃から浸りきっているので、知らず知らずに西洋思想の観点から何事も解釈してしまいがちです。三種の神器は、トルキエンの「ロード・オブ・ザ・リング」の指輪やサーサー王伝説の剣のように持つものに魔法の力を与えるものとは違います。
たとえていえば、親が旅立つ子供に与えるお守りのようなものです。親が、お守りの方が子供より大事などとは思いません。しかし、子供は、お守りを与えてくれた親の真心を想い、大切に身に着けていることでしょう。
何より、宮中で北朝が新たに作った三種の神器も大切に南朝から統合時に受け継いだものと同様に保持し続けていることが、このことを明確に示しています。これは、西洋哲学流の観念論で理解しようとしても無理があります。
   (ST生、神奈川)


(宮崎正弘のコメント)皇統の正当性をシンボライズする三種の神器。
さて中国は?
蒋介石が見つけた中国版三種の神器が故宮博物院の宝物です。あの夥しい宝物を北京、上海、南京、重慶と持ち歩き、最後は軍艦十数隻に分載して台湾へ運んだ。中国の正当な歴史の継承者である、というわけでしょう。
 そして台湾の「統一派」や外省人をのぞく、多くの民衆は言います。「あんなもの、北京へ返せ」と。



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(読者の声3)小生の貴誌2598号への投書に対し「SJ氏」から懇切な注意を受け、「東海子」からはまじめな質問を受け、後半部は少し勇み足だったかと思っています。
師匠から「ヒットラー云々・・・・」の話を聞いたとき、あまりにも荒唐無稽と聞き流してしまい、情報源を確かめなかったことは今にして残念に思っています。ST氏に対し通り一遍の反論では馬耳東風だろうなあ、何かパンチの効いたことが書けないかと思いながら偶然思い出した話です。
ただ私の故師匠は実証精神が旺盛で、たとえば出口王仁三郎が有栖川宮の御落胤との巷説を確かめるために、王仁三郎の生母を探し出し直接事情を聞いたことや、松岡洋右氏とは親しい関係で、大島浩駐独大使とも面識があったことなどから、まんざら根も葉もないことではないと今にして思います。
このような話を本気になって調べようとする人は人文科学方面ではほとんどいないと思いますが、より深い真理・神秘を探究し、常識を超えようとする自然科学的精神を持った人には魅力的なテーマではないかと思います。
三種の神器に対して敬意のない人には無縁のことですが・・・。
(IT生 千葉)


(宮崎正弘のコメント)出口翁に関しては!)橋和己も書いた。松本清張の遺作『神々の乱心』も旧満州が舞台の近代史の裏面。モデルはおそらく出口翁でしょう。
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樋泉克夫のコラム

   愛国教育基地探訪(その2)
     ―-「日本人からだけは、シナといわれたくない」


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 さすがに天津は早くから海外に開かれた港湾都市だけのことはある。戦前の地図には市街中心を貫いて流れる海河の右岸に沿って上流から日本、フランス、イギリス、旧ドイツ、対岸には同じく上流から旧オーストリア、イタリア、旧ロシア、旧ベルギーなどの租界が記されている。

かくして旧市街には各国の銀行、商社、教会のみならず、清末の清朝高官や軍閥の邸宅、さらには旧満州国領事館、北京の紫禁城から追い出された溥儀が逼塞の日々を送りつつ満州の地に清朝再興の儚い夢を育んだ静園など――堅固・華麗・豪壮な石造りの建物が数多く残り、往時の繁栄を偲ぶことができる。

だが、そのことごとくが、かつては国を挙げて否定して止まなかった帝国主義列強侵略の残滓であり封建軍閥による人民搾取の象徴だったはず。
かりに天津の紅衛兵が精鋭無比で毛沢東思想を忠実に実践し、毛の煽動のままに猪突猛進。これらの施設を徹底しで破壊していたら、おそらく天津旧市街は外国人観光客からは見向きもされない潤いのない殺風景な街並みになっていたはず。であればこそ、いまとなっては貴重な外貨獲得観光資源だ。
 
天津市街を離れ、昭和8年1月に始まった熱河作戦の過程で関東軍と国民政府側軍委員会との間で塘沽(停戦)協定が結ばれた会場に向かった。
黒い煉瓦造りの堅牢な建物はいまや廃墟。窓ガラスは割れたまま。内部を覗き込むとガラクタの山。外壁には、都市再開発のための取り壊しを意味する「折」の字を丸で囲った赤い略号が殴り書きされている。ここなんぞ、まさに民族にとって”屈辱の象徴”のはず。
ならば保存しておいてしかるべきだろうが、いまや無用の長物と化している。
誰も都市再開発には刃向かえないようだ。

かつて「百戦百勝」は毛沢東思想。いまやそれは都市再開発や外国人観光客誘致に取って代わられてしまった。
ゼニ儲けには誰も逆らえないのだ。いやはや彼ら民族の一大特長である無原則という大原則は、ここでも如何なく発揮されている。

 大原則を守ろうとする律儀者はどこにでもいるらしい。
天津を案内してくれたガイドが別れ際に、「日本人からだけはバカにされたくない。シナといわれたくない」と一言。やはり日本人だから気に入らない、ということだろう。
その瞬間、かの林語堂の『中国=文化と思想』(講談社学術文庫)の一節を思い出す。
暇潰しの名人である中国人からするなら、日本人を罵倒することは、「蟹を食べ、お茶を飲み、名泉の水を味わい・・・」と同じく暇潰しの一種だったのだ。彼の一言もまた、暇潰しという大原則に違いない。

 天津から唐山へは北京と沈陽(瀋陽。旧奉天)を結ぶ京沈高速を走る。片側3車線の高速道路は、どこまでも真っ直ぐ。道路の両側に緑地帯が続き、その先は広大な農地だ。

中国最初の高速道路は80年代後半に広東省の広州と深圳とを結んで建設されているが、路面は波打ち貧弱な舗装で素人目にも危険極まりなく思えたもの。
それに較べると京沈高速は格段にリッパにみえる。20数年の時の流れは建設技術を格段に進歩させたということだろうが、あるいは昨年のオリンピックも影響しているのかもしれない。そういえば天津のタクシーは例外なくトヨタの新車。聞けばオリンピックを期しての政府資金援助で新車に交換したとか。
聖火リレーのみならず多々問題の多かった北京オリンピックだが、それなりの効果はあったようだ。中国国内でも、もちろんトヨタにとっても。
(この項、続く)
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(資料)「地雷禁止に続くクラスター爆弾禁止条約承認せず」
       平成21年 5月14日(木)
        衆議院議員      西 村 眞 悟


 去る十二日、クラスター爆弾禁止条約の承認案件が、「全会一致」で衆議院を通過したと報道されている。しかしこれは正確ではないのでこの報道を訂正しておく。
 私西村は、クラスター爆弾禁止条約批准には反対である。従って採決前に議場から退出して反対の意思を表明した。

 十一年前の平成十年九月、対人地雷禁止条約の承認も国会の「全会一致」で為されたと報道されている。
 しかし、その時も、不正確であった。衆議院では私、参議院では田村秀昭議員が反対の意思を表明している。
 この対人地雷禁止に関して、当時、その条約の承認を求める政府からは、対人地雷を禁止してもクラスター爆弾があるから我が国の防衛は大丈夫であるとの説明も為されていた。
 この度は、そのクラスター爆弾も廃止する条約に政府が調印してきたのである。
 対人地雷禁止条約を承認しなかった私としては、クラスター爆弾禁止条約も当然承認しない。昨年一月に亡くなった田村秀昭参議院議員がおられたら、私と同様、承認されるはずがない。

 では、何故、対人地雷とクラスター爆弾禁止に反対なのか。
 それは、こと国政の最重要課題である我が国の国防に関しては、対人地雷とクラスター爆弾が果たす効果に対する認識、それが無い状態での防衛、その各々に関する綿密な点検が為されないまま、国際的なムードに流され「平和を愛する諸国民」にただ同調する安易な、つまり、無責任なことは許されないと思うからである。
 また、我が国を取り巻く、米、中、露、北朝鮮、韓国は、共に対人地雷もクラスター爆弾も、廃棄せず保持し続ける。
一体、政府と廃止論者は、我が国を取り巻くこの情況のなかで、我が国の国防というものを真剣に考えたことがあるのだろうか。
 
 そもそも如何なる兵器も、というより、如何なる道具も、使い方を誤れば人に害を与える。
 例えば、自動車を例にとればこのことは自明のことであろう。残留地雷やクラスター爆弾の残留子爆弾の爆発によって腕を吹き飛ばされた子供達の数を遙かに超える膨大な数の民間人が毎年自動車事故により亡くなっている。
 だからといって、我が国は自動車禁止条約ができれば署名して、人力車の時代に戻るのであろうか。まっとうな方策は、それには署名せず、運転手が、自動車をその目的に沿って安全に運転できるように周知徹底を図るということではないか。

 海岸線が長く、離島が多い我が国の国土と、そこを少数の部隊で防衛しなければならないという条件を考慮すれば、我が国の防衛には、対人地雷とクラスター爆弾は必要である。
 例えば、南北約八十キロ余の細長い対馬でも海岸線の延長は九百キロを越えるのである。これが我が国国土の条件である。我が国が地雷とクラスター爆弾をもっておるというだけで、敵の上陸に対する抑止効果がある。
 それをこの度、二つとも我が国には無いということが公表されるのであるから、敵さんから看て、我が国の海岸線ほど安全で安心して上陸できる場所はないということになる。
 これでいいのか。
 私は、よくないという判断をしているので、二つの条約承認に反対した次第である。

 ここで、地雷禁止条約調印時(国会承認時ではない)の内閣総理大臣の未だに忘れ得ない発言を記しておきたい。
(日本の長い海岸線を地雷なしに如何にして守るのか、と記者に問われて)「君ーぃ、日本の海岸には海水浴客がいるんだよ。地雷なんか撒けるはずがないだろう」
 この総理は、加山雄三さんと同じような幸せそうなイケメンだった。海岸線と聞かれて、とっさに青春の湘南海岸が瞼に浮かんだのだろうか。

 道具はそれを使う者の目的次第でハサミも凶器になるのであるから、純然たる兵器である地雷もクラスター爆弾も、邪悪な目的でむちゃくちゃに使えば、多くの民間人を殺傷する。当たり前だ。そして、世界には、兵器をむちゃくちゃに使う国やテロ組織があり、その国や組織に兵器を売り渡す道義無き国がある。カンボジアの残留地雷はメイド・イン・チャイナである。
 しかし、だからといって、我が国に必要なものを放棄することはない。自動車を自爆テロの道具に使うやつがいるからといって、我が国が自動車の生産を止めよと謂われる筋合いはない、というのと同じである。

 なお我が国が保有しているクラスター爆弾を廃棄する為の予算が本年度に二億円計上されている。
 我が国の国防にとって有用なものを棄てる費用が本年度に二億円だ。これこそ、正真正銘、無駄なカネだ。国費の無駄遣い、これほどの甚だしきはない。終電車の後まで残業して、タクシーで家に帰った官僚のタクシー代支払いを無駄だとなじった議員の面々は何故出てこないのか。 
            (了)
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MIYAZAKI MASAHIRO 宮崎正弘 MIYAZAKI MASAHIRO
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  • 名無しさん2009/05/15

    クラスター爆弾高性能の奴を作る事が前提なら許せますが只のパフォーマンスじゃ日本国民は安心して居れません。核が駄目なら核に代わる「武器」を作る気力?位は持って欲しいものです。

    海賊退治が日本国軍の仕事ではないことぐらい一市民でも判る。如何に日本の政治家のレベルが酷いものかを実感する出来事が続いている日本、もう少し真面目に「生活の安心」根本から考えてほしいものです。