国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2009/04/07


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  「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
     平成21年(2009年)4月7日(火曜日) 貳
          通巻第2553号  臨時増刊号 
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 人民元のハードカレンシー化への第一歩は通貨スワップ
  大不況とドルの落ち目に乗じて通貨覇権を模索する中国の野望
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 中国はインドネシア、香港、韓国、マレーシア、ベラルーシ、そしてアルゼンチンとそれぞれ二国間の「通貨スワップ」協定を結んだ。

 かねて筆者は、この動きに注目してきた。
さきのIMF改革,SDR通貨発行提唱など、一連の文脈の中で、これはいずれの日か中国が自国通貨=人民元をハードカレンシー化させる狙いが籠められていると言い続けてきた。
 この仕組みは、たとえばアルゼンチンの中央銀行はアルゼンチン国内の輸入業者に人民元を売り、中国からの輸入決済とさせる。そうやって人民元が外国に拡大蓄積される。

 昨秋以来の米国景気大後退は世界的ドル不足を産んだが、そうした米ドル建て決済を回避できれば貿易金融の拡充にもなると中国は踏んだわけだ。
 秘められた中国の狙いはそうやって人民元を世界中に拡散し、ハードカレンシーとするという大目標である。

 奇しくも同趣旨の分析をRSB( ロイヤルバンク・オブ・スコットランド)の主任エコノミスト、ベン・シンプヘンドォーファーがしている(ウォールストリートジャーナル、4月5日付け)。

シンプヘンドォーファーは人民元が世界的通貨めざして動き出したことをこう分析した。
「具体的な通貨スワップの契約の中味は不透明だが、要するに当該国は中国からの輸入に対して人民元決済するが、そのカネは他国通貨とは交換できない。同時に香港をのぞく当該諸国はFRBとも通貨スワップを締結してバランスをとり、ワンクッションをおいて米ドルとの交換が二段階で可能にしているようだ。
 最大の実践は香港とのあいだですすみ、その長期的野心が一夜で達成されることはないが、世界的通貨の位置を占めるまでのテンポは予測より早まる可能性がある。人民元の信用枠の拡大という、いずれの日かに実現しようとしている人民元ハードカレンシー化への第一歩が開始され、中国はこの百年に一度の危機を、むしろ梃子(レバレッジ)として応用していることに注目すべきだろう」
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(読者の声1) いつも貴重な情報をありがとうございます。
貴コメントの「中国は海外企業の買収、石油ガス鉱区の買収に熱心。米国債権も売り払うそぶりはない」とあります。
ドルの価値が無くなる(もしくは大幅に下落する)前に使っているのでは。
 話は変わりますが、この金融危機を脱出する妙案に気づきました。それは、毎年米国内で浪費される約80兆円の訴訟費用です。実に、国防費の約3倍です。
 例えば、法令で、訴訟関連費用一切を従来の半額にするようにすれば、それだけで、約40兆円のお金が投資や消費に回ると思うのですが
(T.H)


(宮崎正弘のコメント)全米に80万人、ワシントンの環状線のなかだけで六万人もの弁護士、ロビィストをかかえ、弁護法廷が巨大ビジネスである以上、ご指摘のことは基本的に社会構造が違うので無理ではありませんか?



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(読者の声2)書評/仲大軍『中国は世界恐慌にどこまで耐えられるか』(草思社)について。
 同書を読まずに宮崎氏の書評で論じるのは多少抵抗がありますがご容赦。
 時節柄、シナ人の発想法を知るために、貴書評は時宜にかなっていると感服した次第。中国は米国に拉致されたという著者の判断。この倒錯した発想法にこそ彼らの臆面の無さがあり。
 またその前提で企業買収を正当化する思考形態は、彼らの外交戦術にもよく出てきます。
貴書評の短文のうちに、シナ人の独特の思考癖を暴いて感心しました。  
(SJ生)  


(宮崎正弘のコメント)著者は本のキャンペーンを兼ねて来日し、かなりのメディアに露出していました。翻訳したのは知人です。来日期間中、多忙で小生は残念ながら仲さんとは会えませんでした。
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樋泉克夫のコラム

遂に“日本の魯迅”になれなかった男の詠嘆と悲哀   
               『魯迅』(竹内好 春秋社 1961年)


 ▲
 魯迅は「論争を通じて、何物かを得ていったのである。あるいは、何物かを捨てていたのである」。
「彼は、苦しみの表白のために、論争の相手を求めたのである」。「彼は旧時代を攻撃しただけではなく、新時代をも恕さなかったのである。嘲罵の多くは、彼の愛した同時代以後の青年から受けている。それに対して彼は、身を退くことを知らない」。

魯迅は「学匪、堕落文人、偽善者、反動分子、封建遺物、毒舌家、変節者、ドン・キホオテ、雑文屋、買弁、虚無主義者」と悪罵を浴びせられるが、「これらの、専ら魯迅をきめつけるために案出された嘲罵の数々は、・・・その多彩さによって、論争の激しさを暗示して」いる。
かくて著者は、「論争は魯迅にとって『生涯の道の草』であったろう」と呟く。ここに、この本に込められた著者の願いがあるように思えてならない。

 著者も「旧時代を攻撃しただけではなく、新時代をも恕さなかったのである」。著者は「彼の愛した同時代以後の青年から」の嘲罵を望んでいた。
「学匪、堕落文人、偽善者、反動分子、封建遺物、毒舌家、変節者、ドン・キホオテ、雑文屋、買弁、虚無主義者」と罵られることを覚悟するだけではなく、大いに心待ちにしていただろう。
だから「身を退く」なんぞ思いもよらなかったはず。若造ドモ、さあ来い、とばかりに筆を手に腕撫していたに違いない。“日本の魯迅”を目指して・・・。だが、その思いは虚しく裏切られる。

「彼の愛した同時代以後の青年」は嘲罵に代えて讃辞を並べたてた。
「学匪、堕落文人、偽善者、反動分子、封建遺物、毒舌家、変節者、ドン・キホオテ、雑文屋、買弁、虚無主義者」と口汚く罵るのではなく、「独自の中国認識実践」(久野収)とか「権威主義を心底から嫌う/知識人の精神の脆弱さを糾弾」(市井三郎)とか、「生き方で示す道義」(加藤周一)とか、歯の浮くような讃辞で、その死を送った。
死を前にした著者は、俺も魯迅のように論争を「生涯の道の草」にしたかったんだと慨嘆したのではなかったか。

「彼の愛した同時代以後の青年から」のゴマスリやオベンチャラは、著者にとっては“屁”の役に立たないばかりか嘲笑以下の嘲笑、いや屈辱だったに違いない。
60年安保に際し岸内閣に反対して公務員たる東京都立大教授を辞めた時、誰もが硬骨漢ぶりを讃えた。不惑の年でスキーをはじめれば、「足腰が達者だ」「がんばりがすごい」と持ち上げるのみ。そこまで俺をバカにするのかとの詠嘆、いや苛立ちが、この本の行間から間欠泉のように湧き出す。

著者は生涯を閉じる5年ほど前の昭和47年暮には「原則として中国問題はなくなった」と語り、長く続けていた小雑誌の『中国』を休刊し、マスコミとの接触を絶った。遂に論争を「生涯の道の草」となしえなかった己の不甲斐なさと同時代知識人に対する絶望が垣間見える。
オベンチャラは軽蔑、ヨイショは無視なんぞより酷薄。悔恨の人生だったろう。

著者は旧制高校時代には日本浪漫派の保田与重郎の近くに在り、この本の原型である「魯迅」を脱稿した後の昭和18年に応召し、復員後に魯迅研究をテコに道学者臭の強い中国研究の克服に努める一方、モノ言う知識人として戦後論壇に特異な位置を占めた。

「真の文学は、政治に反対せず、ただ政治によって自己を支える文学を唾棄するのである」と語る著者は、「(魯迅の)この一人合点ということは、総じて彼の文章の特徴で、むしろ気質的なものと思う」のだが、良くも悪くも、著者もまた「一人合点」だった。
《QED》

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