国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2009/03/02


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 「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
    平成21年(2009年)3月2日(月曜日) 
         通巻第2511号 
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 経済危機に直面した中国のナショナリスト論客が考えることは?
   外貨準備を中国は海外資産の買収に向けよ、と声高に主張する書

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仲大軍『中国は世界恐慌にどこまで耐えられるか』(草思社)
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 中国にはデタラメな新聞、誇大な嘘放送のテレビ、ラジオとそれに基づく官営のシンクタンクが圧倒的だが、民間のシンクタンクも私企業相手のレポート作成で細々と食いつなぐところがある。
 優秀な人材は日米欧の大学や金融機関、シンクタンクに散った。
 とくに日本で“活躍する”北京系の学者の多くが「中国は日本なしでも生きていけるが、日本は中国なしでは生きて行かれまい」と中華思想丸出しのご託宣をのべる手合いが、リーマンショックで株暴落が始まる前まで大勢いた。

 事態は急転した。
 北京系は沈黙した。輸出産業の対米依存で食いつないできた中国が、明日にも倒産しそうな雲行き。失業は公式に2000万、実態はおそらくその五倍以上だろう。
 こんな折に不思議や不思議、中国は海外企業の買収、石油ガス鉱区の買収に熱心。米国債権も売り払うそぶりはない。
 中華ナショナリストの経済学者や論客らは、いったいこの事態を打開するに、どんな主張をしているのか? 興味が湧くのである。

 その回答のひとつが本書。読んで、やはり案の定の感想だった。
 著者の仲大軍は中華思想の持ち主、民間シンクタンクでも、中国の経済ナショナリストの典型と考えられる。
したがって政府への批判は経済政策批判のみである。
 
中国の外貨準備は一兆9500億ドルだが、このうち1兆2000億ドルを中国が米国債、株式、社債などに投じたのは「アメリカによる拉致」だと逆の論理を張るのだ。
 基本的に論理矛盾である。
 第一に中国は貯まる一方だった外貨準備を「有効に投資・運用する」ために米国債権を買い続けた。これは自主的判断であり、拉致ではなく、ましてや米国からの強制も無かった。

 第二に中国はそれでも有り余る外貨を運用するために、2000億ドルを外貨準備から取り崩してCIC(中国投資公司)を設立した。これも中国政府高官の判断であり、欧米マネージャーは内部の決定に関与していない。ブラックストーンなどへの投資の失敗は、自らの見込み外れでしかなく、責任はアメリカにはない。

 第三に外貨準備が急増したのは輸出好調によるものだが、裏で人民元を安くするために、猛烈にドルを買った結果である。
2002年から三年間、日本が円を支えるために猛烈に為替市場に介入した。合計43兆円がドルの買い支えに使われたように中国も為替市場への介入により、ドルが実態貿易のはるかに上回るドルを手にした。


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 だから仲大軍がいう『拉致』とは首を傾げるほどの逆解釈になる。
 もっとも著者はこういう。
 「災難が(米国ウォール街に)突如やってきた時、アメリカは『もし貴国が助けてくれなかったら我々は共倒れになる』と言うだろう。これこそアメリカが中国を『拉致した』という真の意味」、「投入した(中国の)巨額の外貨準備(ドル債権)は回収できなくなる。もしも、アメリカの市場救済に参加すれば、肉団子をなげて狗を追い払うようなもので、新たに投入したお金がもどってくるかどうか」。
 だから「アメリカ企業の株主権を交換せよ」。それころが「中国の海外資産を保全できる」
 つまり、アメリカ企業を片っ端から買収せよ、という過激攘夷主義がでてくる。

 ところが中国国内を見渡せば、アメリカの新自由主義と市場経済万能を説く買弁家と売国奴ばかり、アメリカの『発展モデル』は破綻した。
 仲大軍のアメリカ経済解釈は正鵠を得たものも多い。

 たとえば、「アメリカの債務は政府債務が十兆ドルに、民間の債務は数十兆ドルに、「アメリカはおそらく身上をつぶしても、このような巨額の債務を返済できないであろうし、最終的には借金を踏み倒す結果をなろう。借金踏み倒しの方法は、ドル札を刷り、ドルの価値を大幅に下落させ、超インフレをもたらすことで、その結果、ドルを保有しているすべての国の外国資産が大幅にその価値を減じることになる。中国の保有する二兆ドル近い外貨準備はとうの昔に水のない鉄板の上で水切りをするような無駄な骨折りとなるだろう。その結果は『大きな清算』である」とする。

 本書の訳文は平明で、こなれているうえ、原文になり訳注が随所に施され、難しい論議をわかりやすくしている。坂井臣之助ほか訳。
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(読者の声1)日本での報道によると、米シティが“政府管理”になったとか。
“国有化”ではなく“政府管理”。
素人の私にはよくわかりませんが、リベラル勢力というのは、とっても“きわどい”ことをするのがお好きなようですね。もっとも、NY株式市場では株価が下落したようですが…。
   (T.T)


(宮崎正弘のコメント)シティの36%の株式を政府が代替。つまり国有と同義語です。シティグループ陥落。次は?
 今日、おそらく東京市場、7000円台を割り込む恐れが高い。



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(読者の声2) 「ハルビン学院と満州国」は、タイトルに惹かれ読んでみたい..と思った一冊です。
タイムリーな記事に感謝しております。 
      (VV生)
 
 
 
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(読者の声3) 日本人の危機感の欠除は著しいものです。現状のアジアを見て居るだけで危機を感じるのですが政治家は世界の人は皆「良い人」とばかりに国内で水をかき回している状況を見ていると中国・韓国をはじめ反日国は本当に喜んでいるでしょう。
 「他人のフリ見て我がフリ直せ」なんて格言が何処かに飛んで行って仕舞い、日本は正に「お花畑」状態。気力を無くした政治家には愛想が尽きそうです。
 しかし愛想を尽かすと終り、何とか優秀な人材を今からでも遅いと云う事は何もないのですから教育の「柱」を示し、日本のやりたい事を世界に堂々と意見の云える体制を整えて欲しいと願って居ます。 
  (CC生)
 
 
(宮崎正弘のコメント)『正論』の今月号で田村秀男氏は(1)政府紙幣の発行(2)相続税免除の替わりに無利子国債(3)米国にはサムライ債(つまり円建て)を発行させると提唱しています。基本的にこの三つは賛成です。
加えて防衛産業への大々的テコ入れ。これで決定的な内需拡大。道路も鉄道も、こういう米中の景気刺激策は、とうに日本で終わって居るわけですから。



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(読者の声4)貴誌前号の貴見「四川省大地震における災害派遣にしても、軍の出動要請は温家宝首相から、胡錦涛主席(軍事委員会主席でもある)につたわり、胡が軍に出動を命令したが、総参謀本部高官らは、依然として江沢民派が多数を占め、そのトップだった前の部長(つまり梁光烈)の顔色を窺うため、指揮命令系統に時間差が生じた、という(博訊新聞網、2月27日)。梁がことあるごとに妨害するのも、陳徳丙とは僅か一歳しから年齢が違わず、人事に不満を抱いているのが原因という。梁は67歳、引退にはまだ早いと言うわけだ」
とありました。

 なるほど。中共党にだけ忠誠を誓う人民解放軍は、近代的な意味での法治の存在ではないということですな。所詮、人治の世界であるという。ならば、日本にはいくらでも対抗する手だてはあるということがわかりました。中国政府が歴史認識で満洲事変を論うことのいい加減さも。
(SJ生)


(宮崎正弘のコメント)かの国の軍隊は出動命令の書類が必要。いざ戦争となると、司令官がまっさきに逃げ出す“伝統”があることもお忘れなく。
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宮崎正弘の新刊 
 http://miyazaki.xii.jp:80/saisinkan/index.html
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宮崎正弘のロングセラー
『やはり、ドルは暴落する!』(ワック文庫。980円)
『出身地でわかる中国人』(PHP新書、861円)
『中国がたくらむ台湾・沖縄侵攻と日本支配』(KKベストセラーズ)
『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ)
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  • 名無しさん2009/03/02

    勉強になりました。

  • 名無しさん2009/03/02

    (読者の声3)へのコメントに共感致します。防衛産業はEUでもロシアでもインドでも中国でも産業の重要な柱の一つです。アメリカにおいては言うまでもありません。

    日本は武器輸出に関する自主規制を緩和して、友好国への輸出を解禁にすべきでしょう。