国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2009/01/26


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
   平成21年(2009年) 1月26日(月曜日)貳
       通巻第2469号  
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 (シンポジウム『昭和維新再考』の記録を特集)
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(読者の声1)拓殖大学日本文化研究所主催の『昭和維新運動』再考のシンポジウムは、登壇者それぞれの持ち味と切り口が際立っていました。
 そして宮崎さんが読み上げられた三島由紀夫の『英霊の声』により、昭和維新を巻き起こそうと決起した青年将校が登壇者の方々に神降り、あの会場にいたのですから、議論はいやがうえにも盛り上がりました。
昭和維新を巻き起そうと三月事件、十月事件、五.一五事件、神兵隊事件、二.二六事件などに青年将校や志士が決起し,あるいはしようとした背景の一つに、当時の農村部の悲惨な窮状、産業経済に基盤を置く都市部との格差の甚だしさがあったとの指摘がありました。 
大正12年の大震災、昭和2年の金融恐慌、それに続く昭和4年のNY株式大暴落に端を発する昭和恐慌による不景気と生活苦、それに対する政府の無策と失政により、テロが横行し、クゥデタが画策され、失業者があふれ,昭和初期の日本社会は閉塞状況にありました。
それを打開する一策として、「満州」が”日本の生命線”と位置づけられ、日本経済復興の希望の星となりました。
しかしこの「満州」が日本にとってアキレス腱でもあったことに思いを致しますと、返す返すも無念です。

シンポを聴いて思いを馳せた「満州」について、彼の地が日本の支配下に置かれた以降の経緯を辿ってみます。
日露戦争に突入した日本は、旅順・奉天大攻防戦と対馬沖海戦で優勢を得て、米国の仲介で和平交渉に入りました。その日本側代表は小村寿太郎でした。 
米英は、この戦いに臨んだ日本を金銭的にも支え、この両国の後ろ盾が無かったなら日本の勝利は危うかったでしょう。
それを当時の首相桂太郎は、よく分かっていました。 
彼は、桂・タフト秘密協定(比国を米が、韓半島を日本がその支配下に置く)を取り結ぶ手腕と眼力の持ち主でした。
しかしそれが分からず、日本の行く末を狂わせてしまったのは小村寿太郎です。ポーツマス条約で日本が「満洲」に得た権益はロシアが清国から租借していた権益を、清国の承認を得て日本が引き継いだものでした。
そしてこのロシアの「満州」での権益は、期間が限られた使用権であり、その基盤は不安定で脆弱なものでした。
この権益の扱いをめぐる日中間の対立(対華二十一箇条要求の主要項目は、満州権益の租借期間延長でした)が、日中関係を不安定にする最大の要因となり、やがて日中戦争を引き起こし、さらには日米大戦への道を辿ることになりました。

当時のアメリカは、虎視眈々と中国での利権拡大を狙っていました。
米鉄道王ハリマンの要望を受け入れて、そのアメリカを満州開発に取り込み利用してやるくらいの策を日本が構想していれば、中国で伸長していた反日ナショナリズムを反米にも向かわせ、減殺することが出来たでしょう。
アメリカにそのふんだんな資金を満州開発に投下させることができ、蒋介石が入り込む余地はなかったでしょう。
 ポーツマス条約で得た「満州」の権益を日本一国で守ろうとし、それが可能だと踏んだのは明らかに過信でした。日本は、勃興する中国民衆のナショナリズムを真っ向から受け、中国との確執を深め、さらにアメリカと対立するポジションに自らはまり込んでしまいました。
小村寿太郎は日露戦後の対露交渉で、賠償金はゼロ、領土はほとんど得られず、それに日本のマスコミと民衆は非難轟々でした。小村にはポ条約でようよう得たものを手放すようなハリマンからの提案を受け入れられない狭量さがありました。
小村が頑固で意固地にならず、桂がハリマンと合意した満州権益の日米共同経営を決めた協定を反故にせず、桂の意思に従っていたらと思うと、慙愧に堪えません。 
 桂は暗殺計画の情報が流れていた小村の身を案じて、米から帰国した小村をわざわざ新橋駅頭に出迎えて腕を組んで共に外に出る、剛毅と友情を示したのに小村は桂の意を跳ね除けて、ハリマンとの協定を破棄させてしまいました。
その後アメリカは日本を敵国と想定するオレンジ計画を策定しました。あの時から日本と米国は進む路が分たれ、大東亜戦争への破滅の道を辿ることになったのです。
(しなの六文銭)


(宮崎正弘のコメント)満州演義に、すこしく左翼的語彙と分析が気になりました(苦笑)。ところで同シンポジウムの記録がメルマガ「三島由紀夫の総合研究」に掲載されましたので、下欄に「付録」として添付しました。ご参照下さい。




(読者の声2)ヒンヅー教徒もオバマ演説には加わっていた。ビックリしました。
インドには 神様はたくさんいるし、インド人の宗教性はアメリカ人などよりはるかに高いものがあります。インドでの実生活から、それはひしひしと感じます。
インド駐在の折、インド人でインドの最高学府を出た理科系の秀才は、「自分の希望はヒンズーの聖山カイラッシュに入って(修行して)解脱することです」と言っていました。
あるネットの仏教とヒンズーとの関係について、
仏教はこのヒンズー教(厳密にいうとバラモン教)から分かれた、いわば新興宗教だと いうわけです。ですから仏教には 元々このヒンズー教(或いはバラモン教)の神様だったのがたくさんいます。
ざっとこんな具合です。

  不動明王(大日如来の化身)……… 破壊と救済の神 シバ神
  梵天 …………………………………宇宙の創造神 ブラフマン
  帝釈天 ………………………………最強の神 インドラ
  毘沙門天(多聞天) …………………クベ−ラ
  吉祥天 ………………………………ラクシミー(毘沙門天の后)
  弁財天 ………………………………サラスバティー(梵天の后)
  大自在天 ……………………………シバ神
  大黒天 ………………………………シバ神の化身
  聖天(歓喜天) ………………………ガネイシャ(象の顔をした神)

即ち、いわゆる密教系の仏さまである <〜明王>や<〜天>は、もともとヒンズー教の神様が仏教に取り入れられたものなんですね
 オバマがヒンズーを入れたのはテロ被害者であるインドに対する配慮だと思います。
   (TK生、世田谷)


(宮崎正弘のコメント)ユダヤ教にとってキリスト教は「ユダヤ教からでた新興宗教」。ヒンズーからみれば、「仏教はヒンズー教からでた新興宗教」という定義になるでしょうね。佐藤優さんの解釈は「オバマがヒンズー教徒も仲間に入れたのはインドを同盟扱いし、アフガニスタン攻撃を本格化する現れ」というものでした。



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(読者の声3)オバマスピーチにある”Non-believers"を無神論者と訳すことには躊躇します。
無神論者を表す言葉には"atheist"というごく一般に日常会話で使用される単語が存在します。
もし無神論者の意味で" Non-believers"を使おうと意図するなら余りにも杜撰で、これだけで品位が数段落ちるスピーチに成り下がります。
全ての宗教を列挙は不可能ですから、前段に挙げた宗教を信じていない人々全般をさしている言葉、つまりこれら以外の宗教を信じている人々全てを”Non-believers”で表現したと考えるのが自然と考えます。
そう考えないと更に後ろで展開されている表現、
"This is the source of our confidence-the knowledge that God calls on us to shape an
uncertain destiny."と自己矛盾をきたします。

北米で生活していますと"atheist(無神論者)"はまだまだ極めてネガティブなイメージを含む”神をも恐れぬ野蛮な人々”として認識されています。
日本のビジネスマンが時折”私は余り神を信じていないので無神論者かもしれません。”と米人にしゃべるのは大変危険な物言いです。
キリスト教信者は同根のイスラム教信者のロジックは理解できても(逆も真)神の存在そのものを信じない人々には何をしでかすかわからない恐怖感を感じるのです。
ブーヅー教信者が大統領になる可能性はあっても無神論者がなる可能性は近未来ではほぼゼロに近いでしょう。
無神論を宗教と分類することが許されるならもっとも差別されている宗教が無神論でしょう。
 無神論者で有名なのはオックスフォード大学のリチャード・ドーキンス教授(Richard Dawkins)。
有名な『利己的な遺伝子(Selfish Gene)』を発表して以来、私たちの存在が驚異的な偶然の連鎖の結果であり、そして一瞬のはかないものであることを説き、全能の神を語ることなく人間は生きていけるしむしろその方が私たちの人生はより充実する可能性のあることを主張しています。
彼が各地の大学で講演するスピーチとその後に繰り広げられる学生たちとのやり取りには新鮮な知的刺激を受けることができます。
彼の講演は同氏のHPで視聴可能です。
http://richarddawkins.net/
   (SW生、カナダ)


(宮崎正弘のコメント)昔、アエロフロートで隣に座った青年(『ランボー』のアクション俳優=シルベスタ・スタローンイに似ていた)はアルメニア人だった。ロシア上空を飛行中だった。
「アルメニアにはアルメニア正教があり、深く信じている。あなたの宗教はなにか?」
「仏教徒だが、多くの日本人は無神論だろう」と答えると、
「無神論? 神を信じないでいかなる人生があるのか!」とムキになって議論してきました。無神論者は人間扱いされません。
ましてチェンチェンの戦いに見られたようにムスリムは無神論の共産主義を嫌います。
 サウジはロシアをなかなか信じませんでした。共産主義者は無神論だから。したがってイスラム文明圏が儒教文明圏と反米同盟をつくるなんて『文明の衝突』でハンチントン博士が言い出したとき、おかしな頭脳構造をお持ちの人と、本を手に取る気にもならず。ムスリムが無神論者の中国共産党を信じる訳がありませんからね。
 ですから拙訳箇所では「無宗教のひとびと」にしてあります。
 藤井さんは強烈な比喩を用いて『無神論』と言ったのでしょう。



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(読者の声4)拓殖大学日本文化研究所主催の「昭和維新再考」シンポジウムで、中国は国民国家になれるかとの議論があり、宮崎さんが説明をしていました。
西部邁氏主宰の発言者塾の俊英、経産省官僚の中野剛志氏は近著『経済はナショナリズムで動く』の中で、金融や経済のグローバル化は、アメリカのナショナリズムから起ち起こったと指摘し、この経済ナショナリズムを批判せず肯定的に捉え、経済的繁栄はしっかりした国民国家であってこそグローバル化の中で保たれる。
そうでない国や無国籍化した企業は生き残れず、その荒波に呑み込まれてしまうのだそうです。
宮崎さんが述べられていた通り、中国が国民国家になりえないならば、早晩経済的繁栄の頂から荒波の海底にすってんころりんしてしまうのでしょうね。

閑話休題(ところで)。『諸君』2月号の若泉敬の評伝(243p)に貴著『三島由紀夫「以後」』(並木書房)から若泉についての引用があります。
 先週、外人記者クラブに来た石原慎太郎が、昔、若泉敬に頼んで米軍トップを紹介してもらったと話していました。
訪米した石原はNORADに案内され、そこで「アメリカは日本を核の傘で守れるのか?」と質問したら、そんなの不可能だと言下に否定されビックリしたそうです。アメリカは米本土でさえ中枢部しか核攻撃から守れず、ハワイは無理でいわんや日本をやだって。いまなお、日本は米から差し出された幻の核の傘の下にいる裸の下僕のままですか。
   (有楽生)


(宮崎正弘のコメント)当該書籍、読んでからコメントします。
 『発言塾』というのは、いまの『表現者』につどう論客たちでしょうか? 
『諸君』の引用はともかく、拙著が想定外の空間や場所で読まれていることに意外感あります。



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(読者の声5)貴誌1月25日(日曜日)「いまの日本円独歩高は、異常事態。金利相場から「信認相場」へ?」を読んで納得しました。
 今の日本円の独歩高、何時まで続くのでしょうか。
石平著「2010年中国が牙をむく」では中国の社会的歪みの捌け口が台湾、朝鮮半島へと向けられるとある。そして日本が存亡の危機にたたされる。
その時、「円の独歩高は限りなく円安へ」向かうのではないでしょうか。その論述が潮匡人著「やがて日本は世界で80番目の国に堕ちる」にあります。それによれば、国力の方程式が
「国力=(人口と領土+経済力+軍事力)x(戦略+実行する意志)」
とあります。
すると、田母神論文を否定した勢力は、国力の式の後半のソフトパワーがゼロに近い見識ですから、国力もゼロに近い値となり、その結果、「円は限りなく円安」に成らざるをえません。先生のご意見をお聞かせ下さい。
  (愛知、TK生)


(宮崎正弘のコメント)その国力方程式の基本特許(?)は、レイ・クライン『WARLD POWER ASSESMENT』ですね? 
1981年に小生が翻訳を斡旋し、防衛研修所のどなたかが訳され、学陽書房から出しました。レイは元CIA副長官、JFK大統領時代、キューバのミサイル危機でJFK大統領の報告した人物です。かれの三冊目の日本語翻訳本は小生が編訳を担当した『ソビエト・コネクション』です。
 ともかく軍事力のないくにの通貨が上昇するのは、それだけの異常事態、短期的なものです。
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 下記は付録です
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  『三島由紀夫の総合研究』  (三島由紀夫研究会 メルマガ会報)
           平成21(2009)年1月26日(月曜日)
               通巻第296号 
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 三島由紀夫『英霊の声』が聞こえた
  シンポジウム「昭和維新再考」、寒風の中、会場は超満員の熱気


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 かねて予告したように拓殖大学日本文化研究所主催の「昭和維新再考」というシンポジウムが都内のホテルで開催され、開会前に会場は満員となった。
 受付ではレジメなどのほかに♪「べきらの淵に騒ぎ、巫山の雲は乱れ飛ぶ」ではじまる『昭和維新の歌』の歌詞コピィも配布された。
 

 ▲青年将校らは革命の成功を計算してはいなかった

 シンポジウムは同所所長の井尻千男教授の司会ではじまり、冒頭に岩田温氏(同大学客員研究員)が基調報告をした。
 岩田氏は、「昭和維新は誤解されているが、とくに酷いのが司馬遼太郎、丸山真男らで、俗説がはびこっている。昭和維新の思想的意義を再発見することは重要であり、とくに経済思想が現代の日本の思想界でなおざりにされている。権藤成卿の社しょく論、橘考三郎の農本主義、北一輝の国家社会主義などを正確に見直すべきである。
 二二六事件に決起した青年将校らは、成功をたくらんでいたわけでもなかった。農政への政策変更への起爆剤、その犠牲であった。
 また同時に経済思想が芽生え、過度の資本主義に対して『統制経済』「皇国経済学」の勃興が見られ、難波田春夫『国家と経済』は廣く読まれた」とした。

 つづいて発言の一番打者は藤井厳喜(政治学者。同客員教授)。
1929年10月24日におきたウォール街の株大暴落と世界恐慌と、今回の金融危機を比べられ、システムの危機は深刻とはいえ、世界恐慌と騒ぐのは悲観的すぎる、と述べた。

 二番目の発言者は佐藤優氏(起訴休職中外務事務官)。
アングロサクソンの金融・経済システムとその普遍性の限界と、その覇権主義。神学を学んだ佐藤氏は、おおきく話題を飛躍させ、憲法は発見するものであり、タカマガハラ、神皇正統記の重要性を演繹された。憲法は不文律でよい、とも発言された。
また「(アメリカ人の定義に)オバマ演説ではクリスチャン、ムスリム、ユダヤ教徒にくわえてヒンズー教徒も入れた。これでオバマはアフガン戦争に本気なことを示した」とした。

 桶谷秀昭(文藝評論家)氏は、昭和精神史とナショナリズム、その文化的高揚感について述べた。
 憲法問題にも触れ、いまの押しつけ憲法は改正ではなく廃棄すべきものだと強調された。
 
 宮崎正弘氏は昭和維新再考のテーマに沿って、まず三島由紀夫の『英霊の声』の一節を朗読、「などてすめろぎは人となりたまいし」を紹介した後、「義に立ち上がり、義のために死ぬ。こういう政治事件は諸外国では見られない。二二六は農村の貧困に義憤を感じて立ちあがった。あれに近い貧困にあえぐ農民をみながら、中国の軍人はなぜ立ち上がらない? 中国ではわずかに戊戌変法、太平天国などがあるが、前者は体制内革新の失敗、後者はカルトの社会争乱。大塩平八郎の乱とは異なる。そもそも中国に『義』はなく、『偽』のギがある。イタリアには古代ローマに切腹儀式があり、『維新』がわかるかもしれないが、諸外国はRESTORATIONと翻訳しているように、ニュアンスが異なる」とした。
 
ロマノ・ヴィルピッタ(京都産業大学教授)はヨーロッパ事情を簡潔に説明し、イタリアのファシズムと昭和維新の類似、非対称を比較した。
とくに「偉大な革命の精神が軽視されているばかりか、基本的にファシズムへの誤解曲解が多すぎる。世界は1919年、第一次世界大戦の戦後処理に失敗し、ヨーロッパではナチズム、ファシズムが興り、日本は戦争特需バブルが崩壊し、猶存社、玄洋社運動が起きた」という歴史を説明された。


 ▲西郷隆盛はなぜ立ち上がったのか?

 休憩を挟んで討論に移り、
 岩田温氏は「西郷隆盛は維新の理想が達成されずに再決起したが、明治維新は欧米列強の植民地化から祖国を救った。近代の超克はイデオロギーとしては成立しない。思想史的には日本が日本であるための日本の論理が必要である」。

 井尻千男氏も討論に加わり、
 「昭和維新の流れは特攻から三島まで残存していた。東京裁判はまさに{日本的}なるものが裁かれた。誰も憲法学者が指摘しないが、憲法18条の『奴隷的束縛からの自由』なる文節は奇怪である。GHQは日本的共同体、社しょく国家なるものが個人主義を圧迫するもので奴隷的拘束だと捉えた。浅薄な歴史観である。
 米国的な自由主義を保守だと詐称している人々もいるが、アングロの普遍主義しか語れない文明もあるにせよ、米国は固有の歴史から民族国家を作り上げた訳ではない。恐慌はボーダレス、経済の再建は、しかしナショナルな作業であり、その意思と条件の整った国は立ちなおれる。米国はその条件を満たせない。なぜなら米国は(新自由主義とかの)普遍主義しか語れず、また同時にロシアも中国もナショナル・エコノミーを形成しにくい」と明快に分析。

 佐藤優氏は『ロシアは国民国家になりうるか』の設問に、
 「中国が国民国家を目指すというのなら敵が必要であり、日本が目標とされる。ロシアは『帝国』の再興を目指しはじめた。だからベラルーシとウクライナの東半分の奪回が必要で、このためには欧米と対立せざるを得なくなった。この方向性は大東亜共栄圏のアイディアから学んだ。EUも大東亜共演圏をモデルとしたのだろう。
 米国は原罪がなかったことにした。ヒロシマ長崎のホロコーストをそれで逃れた」。

 宮崎正弘氏は「中国が国民国家を目指しているのは北京五輪、宇宙船打ち上げの愛国キャンペーンをみてもわかるが、民族、言語、文化、習俗のことなる五十六もの民族問題をかかえて国民国家を築き上げるのは無理だろう」と補完した。

 ロマノ・ヴィルピッタ教授には快著『ムッソリーニ』(中央公論社)があるが、
 「2002年イラク戦争勃発でドル高にぶれるべきところが、ユーロ高に移行した。世界大不況の危機の発信は米国なのに、今度はユーロが急激に下落した。根本問題はユーロで通貨が統一されたとはいえ、EUのユーロ加盟国は経済政策がぱらばら、調整のプロセスにあるとはいえ時間がかかりすぎ。ナショナル・エコノミーによる再建とはいっても、各国という単位ではなく共同体のなかの弱肉強食状況だ」
と欧州の現状を分析した。
 
 藤井厳喜客員教授は、
 「オバマの経済政策(追加8250億ドル)を完全に実施したとしても、失業率は7・2%から7・0%になるに過ぎず、カーター政権下で起こったスタグフレーションの再来となるだろう。オバマが就任演説にヒンズー教徒と無宗教の人々も加えたので、米国の『国体』は、ますます喪われていくだろう」とした。


 ▲農本主義の思想を見直そう

 桶谷秀昭氏には『草花の匂う国家』(文藝春秋)という作品もある。
「農本主義の基本は食糧自給、その根幹になるのは米である。これは日本の歴史に根ざした文明観、人生観でもあり、吉田松陰はその『留魂録』に「安心を得た」と表現した箇所は、米をたべた、という意味であって、稲の生育過程を人生に喩えた。
 戦後、日本人が『数え年』をやめ、満年齢で表現するのは、滑稽であり、全員が新しい米で新年を迎えたという伝来の日本人の人生観が反映されない。農本主義は文明的な視野に立って解釈されるべきであり保田輿重郎は、米つくって貿易をしない鎖国をやればいいと比喩した。
 日本人が自立できる根拠は精神的な要素。過去に理想をもとめ、うまく思い出すのが重要である。五一五、二二六は革命としては失敗だが、動機はくみ取るべきものがある」
と分析された。

 最後に宮崎正弘氏は『現代維新の可能性』を問われて、
 「維新を政治的・思想的にしゃべり出すと時間がないので、経済政策上の維新の可能性について。桶谷先生が日露戦争まで日本は半分列強の植民地だったと比喩されたのは関税自主権がなかったから。
同様に戦後日本の経済政策は自主権がない。金利を日銀は専管事項であるにもかかわらず財務省の顔色と米国の思惑を伺い、米国の圧力で金利を決めている。通貨発行量も為替もそうだが、大店法などまるで米国の法律植民地ではないか。これによって各地で文化的な商店街が壊れ、じじばばストアが消滅した。日本の文化が消えたのだ。為替も通貨発行も金利も日本の国益のため日本自身できめるべき。同様に百年に一度の危機はチャンスでもあり、日本は円圏の拡大を図り、貿易の決済を円に、サムライ債を発行して米国債権を買い、ODAはすべて円に拠るものとするべきではないか」。

 時間は一時から五時を予定したが、議論が沸騰して結局、五時半に閉会となった。
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(編集部注 この記事は『三島由紀夫研究会』メルマガからの転載です)
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  • 名無しさん2009/01/26

    臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前



    優れた論客がマスゴミを駆逐しますように

  • 名無しさん2009/01/26

    現代維新の可能性について、今の日本現状において政治や経済はもちろんのこと今後の日本問題。介護、年金、環境問題に重点をおきたい。まず介護・年金は政府、官僚にお任せする?(現状できないが・・・)日本の環境問題が全てに繋がるように私は思う。Co2の排出削減にとりくむべく「クリーンに」。農業主義政策を取り上げていたが、日本の食料自給率の低下は著しい。米を機軸に、小麦・大豆と現状は40%と以下が現状である。さかんに「エコ・ファーム」が取り上げられているが、自給率UPに期待したい。



    日本の現代維新に日本の円圏拡大とあったが、米国との歴史的背景また日本の平和主義を考えると、米国に迎合していく日本の姿は仕方があるまい。