国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2008/12/16


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
    平成20年(2008年) 12月16日(火曜日)貳
         通巻第2423号  臨時増刊号
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<< 書評 >>
 

 △古筆学の小松茂美の燃える人生を裂帛の取材で描いた傑作
   近代的な警視庁筆跡鑑定、捜査技術の進歩を古典研究に応用?   


   ♪
吉村克己『満身これ学究』(文藝春秋)
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 読みながら松本清張『或る小倉日記伝』のことがしきりに重なる。
 しかも、これは評伝なのか、小説なのか、筆力もあり、感動的な盛り上げ法を駆使している。
小松茂美は、斯界では大家として知られても、世の中には無名に近い学究である。本書は古筆学の創始者といわれる小松茂美の物語である。
 小松は広島で被爆して死線をさまよい、結局、大学教育も受けないで、のめりこむように学究の徒となり、広島の国鉄マンの身からいきなり上京して池田亀鑑の門をたたき、学閥の妨害や嫉妬をはねのけて独自の世界を構築した。
しかも多くの弟子がついてきた。
 「満身これ学究」と小松を評価したのは井上靖だった。
その出自に深く同情して、小松の活躍を期待したのは吉川英治だった。小松は前人未踏の分野を独特の分析方法による手法を確立し、つぎつぎと学界の定説を覆し、中学しか出ていないが文学博士、学士院賞、朝日賞などを受けた。
この凄まじき人生に評者(宮崎)はなぜか、松本清張のデビュー作を重ねてしまうのである。

さて小松の業績だが、最初は厳島神社で厳重に保管されて門外不出の『平家納経』の写本から始まる。
当時、GHQの占領下、巧みにコネをつかって厳島神社の神官と親しくなり、やがてカメラを持ち込んで古文書をつぎつぎと撮影し、それを読むとくのだ。
読解、筆跡から作者を探り当て、夥しい古文書、関連文書から本人が書いたものか、右筆の作品かどうか、その年代などを膨大なカードにして分類し、三十年かけて『平家納経』を読み解くという難行を成し遂げた。
この間に小松は書道を習い、絵画を習い、古代の作者の身になる努力をする。
小松は家庭を顧みず、いや書籍を購入するためには生活費だけでも足りず、借金に次ぐ借金をして、さらには赤字が予測される出版を引き受けてくれるスポンサーも自分で探す。スッポンという異名もとったが、被爆者の命がけの人生の熱気、狂気がこの冊子にはあふれ出てくる。
厳島神社の平家納経は、「櫛筆」の謎を解明してようやく解けた。平家一門の厳島信仰を実証したばかりか、まぎれもなく平清盛の直筆だった。
『後撰和歌集 稿本と研究』、『平安朝伝来の白氏文集と三蹟の研究』、『利休の手紙』『古筆学大成』など数え切れない業績をあげた。
なるほど、読んでいて警視賞科学捜査班のごとく、あたらしい証拠探しのノウハウがさりげなく展開されていく。

 小松茂美は『浜松中納言物語』にも挑んだ。
『源氏物語』の亜流として、評価する向きは少ないが、全六巻のうち、初巻と最終巻が失われていた。
その最初と最後の巻と見られる「浅野本」が発見され、小松は、写本を集め、古筆学の独自な分析方法で研究史、成果を問うた(校本とは写本を照合して、差違を明示する校合を集める作業)。
 この『浜松中納言物語』は、三島由紀夫がことのほか好んだ。夢の話は『春の雪』にも出てくる。
 本書は五年の歳月をかけて小松本人、夫人、息子から弟子筋にいたるまで関係者を丹念に取材しての労作。
その意気込みたるや、全編に「満身これ熱情裂帛」の気が覆っている。
 評者(宮崎)の師だった林房雄は口癖のように「志は高く、暮らしは低く」と言っていたが、林の書斎は書物で溢れ、応接間には平田篤胤全集があった。古事記伝やウエツフミを集める情熱を語った。

 小松は奇観本ではなく、書物を出版形態する以前の時代の写本、和綴じを廣く収拾し、筆跡を鑑定し、語彙を分類し、頻度を分かるなどして、筆者を特定し、より原本に近いものを探すという書誌学を越えた、大学者を目指したのであろうか?

 読後感。誰かが文中で小松を「現代の藤原定家」と表したそうだが、評者はその狷介孤高から「現代の横井小楠」と見た。
 久々の重厚な評伝である。
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(読者の声1) FRBが政策金利を大幅に切り下げ、下げ幅によっては、日本の政策金利より低くなるかもしれないというニュースを読みました。
実現すれば円の対ドル相場は乱高下を繰り返しながら急上昇、1ドル80円など瞬く間に超えて長期デフレの再来となることでしょう。
麻生政権の23兆円景気対策は殆どが財政支出で、金融政策は、政府系金融機関の2兆円CP購入だけです。
日銀がCPを購入するのではなく、政府系金融機関が購入するのでは、遊んでいる資金が稼動する部分を除いてcredit allocationに過ぎません。
これでもないよりましといったところでしょうか。
そこで、あっとびっくりする記事が産経新聞のWebに載っていました。政府が日銀にCP購入を要請したというのです。
やっと気づいたのかという感じです。11月にはCPの金利上昇に嫌気が差したのか、9兆円にまで発行量が減っていました。
ここで、日銀が大量にCPを購入すれば、CPの金利が下がり発行意欲が高まります。その結果CPを発行した大企業の下請業者への支払がよくなります。さらに、大企業の金融機関に対する短期資金需要が減るため、短期の繋ぎ資金が中小企業へまわる余裕ができます。黒字倒産の悲劇を防ぐには最高の方策です。
さらに、政府系金融機関が購入する場合と異なり、日銀が購入すれば、裏で悪さをしない限り、通貨供給量が増加します。その結果、インフレ圧力が生まれ、円高に向う力がそがれます。
政府が日銀に要請するのではなく、立法処置を行い、CP購入量の数値目標を設定することが望ましいのですが、そこまでを現政権に望むのは無理なことなのでしょうが、ここは大死一番、今までの日本の国益を犠牲にして欧米の金融機関に奉仕する日銀という定評を払拭するためにも、超大規模のCP購入をやってもらいたいものです。
かなり心もとないのですが、ちゃんとやってくれることを祈念いたします。
  (ST生、神奈川)


(宮崎正弘のコメント)リチャード・クー氏によれば、歴代のなかで麻生さんの経済政策はもっとも理にかなっている由です(産経、16日付け一面)。
字が読めないという低次元で批判するな、会社経営者としてバランスシートが読めるのが麻生首相だ、という訳です。



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(読者の声2)台湾ががたがたしているようですが、大陸に工場移転した台湾の実業人・産業人たちは中国についていまどう考えているか? 一番関心があります。 知りたいところです。
馬英九当選の時点では台湾の実業人・産業人たちの中国に対する、少なくとも表面的な好意度は最高水準だったと記憶します。
  言うまでもないことですが、台湾と中国の関係は政治問題であると同時に経済問題です。
 小生の台湾の友人で中国大陸大嫌いな中国実業家までが中国に工場を移したことを 『いままで言ってきたこととたいぶ違うではないか」と質したのに対し、「経済事情から中国に行かざるを得ない」といっていました。
一時はほとんどの台湾産業人がそう言っていたでしょう。今はどうなんでしょうね。  かなり Disgusted な気持ちになっているのでしょうかね? 
中国からベトナムなどに再移転の動きはどうなのでしょう?
小生は馬英九がどうの、陳水扁がどうのもさることながら「ゼニ(経済)」で大陸への経済依存度が、台湾人の対中認識を大きく左右する要素だと思います。現代は理念より下部構造の時代ですからね。
  中共も台湾の進出企業に対する対するイジメや踏み絵の試練を与えると思います。
 今回の100年に一度の Big Crisis で台湾人の中国認識もその点では大きく変化していると思います。
 またオリンピックのあとの「上海万博」という話がとんと出てこない。どうなっているのでしょうかね? それどころじゃないのでしょうが・・・・・
  リーマン・ショックで社会不安が高じ、中国共産党が内部分裂をおこすとか、軍部がクーデターを起こすとか、共産党幹部がソ連のゴルバチョフのような理性的な時代認識に移って行くとか・・・・。
そうなればサブプライムも「肉を切らせて骨を斬る」ポジティブな世界史的意味があったということになるのでしょうが・・。
  天安門事件の内幕を見るに、高齢でよれヨレヨレの!)小平にすべての政治的決断を仰いだ当時の党・軍部の主体性のなさを見ると、良くも悪くも!)小平(あるいは胡耀邦)のような人物もおらず、大きな決断もできず、だらだらと不満分子への局地弾圧的な小細工で行かざるを得ないでしょう。
天安門事件のころは政府高官たちも、もし学生が勝ちそうなら国外に逃亡の準備をしていたようなので政府の中堅幹部の精神状況がリトマス試験となりえますが、各地の暴動などがいかに起ころうと現在はまだまだそこまでは いっていないと見ます。ただ ネットの普及や経済の停滞もあって、一党独裁への人民の怨念は 育ってきていることも事実でしょう。その飽和点がいつ来るかです。
それと中国に対する国際的な評価の低下も重要な要素でしょう。
   (TK生、世田谷)


(宮崎正弘のコメント)馬英九(台湾総統)は自分の政治的判断が出来ず、呉越同舟の各派連合とういう国民党のなかで、長老や主流派からこずかれ、典型のジグザグ路線を歩んでいて、嗚呼、やはりこの人には主体的な自分の思想がないと判断せざるを得ない。
十月に、じつは馬は台北の孔子廟へ参拝していますが、蒋介石ですら使わなかった「あかずの門」を開かせて、孔子様に参詣しました。
まさに“皇帝きどり”です。いやこの程度の中華ナショナリズムで、現在の危機を乗り切ろうとしているのか?
 さて台湾独立の大物財界人だった許文龍さんが、大陸に大工場をおったてて、工場長を人質に取られ、台湾独立撤回声明を新聞広告に打たされました。
爾来、政治発言を沈黙していますが、ところで、その許さん率いる奇美実業の経営がふらふらしています。
 大陸投資の先頭を堂々と突っ走った台湾プラスチックの王永慶は先月、天寿を全うされました。
 葬儀が実にユニーク。子供のいない本妻と二号、三号さんが子供を引き連れて参列、そこへ「わたしは二・五号よ」と子供を引き連れて遺産相続争いに名乗り出た女性もいて、台湾中の性豪伝説を塗り替えています。
 経営戦略も個人のリーダーシップに帰する国民性ですから、台湾経済全体がしょげても、個々の企業人は元気な人がいる。その点が日本と違うところで、やっぱり台湾はなんとか、乗り切るでしょう。



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(読者の声4)桜チャンネルよりおしらせ
「闘論!倒論!討論!2008 日本よ、今...」 
   テーマ:「オバマ政権と米中同盟」

放送予定日:
前半 平成20年12月18日(木曜日)19:30〜20:30
後半 平成20年12月19日(金曜日)19:00〜20:30
日本文化チャンネル桜(スカパー!216チャンネル)

パネリスト:(50音順、敬称略)
青木直人(ジャーナリスト)
加瀬英明(外交評論家)
日下公人(評論家・社会貢献支援財団会長)
西尾幹二(評論家)
西部 邁(評論家)
宮崎正弘(作家・評論家)
司会:水島総(日本文化チャンネル桜 代表)



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(読者の声5)12月23日(天長節)ならびに平成21年1月2日(新年)の皇居参賀・日の丸小旗配布奉仕の御案内を申し上げます。
 
☆集合時間 両日とも午前8時20分
 
☆集合場所 本部テント前(馬場先濠堤・行幸通り側)
 ☆晴雨に拘わらず実施致します
 ☆参加希望者は不二歌道會(03-3401-0963)または三澤浩一(090-2622-4242)まで御一報願ひます。

 ☆開閉門ならびにお立ちの時刻は下記の通りです
 【12月23日】[開門―09時30分]
1回目―10時20分
2回目―11時05分[閉門―11時20分]
3回目―11時40分
(以降記帳は12時30分から15時30分まで)
 
【1月2日】[開門―09時30分]
1回目―10時10分
2回目―11時00分
3回目―11時50分
4回目―12時40分
5回目―13時30分
6回目―14時20分[閉門―15時10分]
7回目―15時20分

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(予価933円。12月26日発売予定!)
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一ドルが90円を割り込む未曾有の事態となりました!
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  • 名無しさん2008/12/16

    チャイナの公共投資47兆円ですか?麻生さんのアドバイスではないでしょうか?チャイナは全て日本の明治以降をたどりながら歩いている様な気がします。WITH OUT共産独裁。