国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2008/12/04


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
    平成20年(2008年) 12月4日(木曜日) 
        通巻第2413号
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 「もう西側金融機関への投資はしない」と楼継偉CIC会長が爆弾発言
    米英銀行への投資は82%の株価陥没。資金は中国経済の内需へ向かう
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 CICとは中国投資公司。外貨準備高から2000億ドル(20兆円)もの巨費をまわして、国富ファンドとして設立されてマスコミの話題をあつめ、世界の金融関係者が衝撃とともに見守ってきた。
 サウジやクエート、シンガポールの国富ファンドと一挙に肩を並べたから、CICが次に何をするか、その一挙手一投足に世界の目があつまった。

 最初にCICは米国のヘッジファンド「ブラックストーン」へ30億ドルを投資し、次いでモルガン・スタンレーへ50億ドル、英国のバークレー銀行にも。
 
 九月、ウォール街の金融危機勃発で、ヘッジファンドの雄「ブラックストーン」は投資活動が頓挫、ちなみにCICが買った時点でのブラックストーンの株価は29ドル60セント。これが08年12月2日の終値で5ドル34セント。実に82%もの株価陥没。
 (ブラックストーンは元商務長官リチャード・リチャードソンらが開設したヘッジファンドの新興勢力で、ヒルトンホテルの買収などで名をはせた政治銘柄でもある)。

 中国のネットの書き込みには「なんという無駄な投資だ」「責任をとれ」「欧米に騙されたのだ」などとすさまじい批判が集中し、当局はこうしてネット掲示板を禁止したほどだった。
 
 12月3日に香港で開催された「クリントン・イニシャティブ会議」の最終日に北京から飛んできたCICの楼継偉会長が演説し「もう我々は西側の金融機関へ投資しない」と言明した。
 外貨準備世界一、GDP世界4位、米国債保有世界一という「金持ち中国」への西側の期待は、これで吹き飛んだ。06年にイタリアを抜いてGDP世界六位、つぎにフランスとイギリスを抜き、いまやドイツに迫ろうとする中国の経済力も、ここではっきりと息切れである。


 ▲世界的危機に協調すると胡錦涛はサミットで口約束したが。。。。

 世界金融危機、システムの破綻という危機を目前に中国は、その中枢のCICのトップが公式の場で、「今後は協力しない」と実際に発言したに等しく、これまで密かに欧米銀行の救済を要請されてきた、その期待感を暴風雨のように吹き飛ばした。

 対照的に中国は国内景気刺激と内需拡大のため5800億ドル(57兆円)を投じると先に発表したが、これらは主に高速道路建設と鉄道網の拡充に投資される。

 楼会長は「パールデルタからの対米輸出が突然の激減に見舞われたのは米国の不況もさることながら、米銀の信用状(LC)の枯渇にある」と批判した。
 つまり米銀の資金不足で米国の輸入業者がLCを米銀から開設できない。資金不足、ドル不足からビジネスが成立せず、「珠江地域(パールデルタ)の輸出基地で工場閉鎖、倒産、失業が広がった」と米国への責任転嫁も忘れなかった。

 楼継偉は清華大学卒業、財務部から国務院副秘書長を経てCIC会長に抜擢。背後に朱容基元首相の影あり、いまは中央委員候補でもある。CIC社長は高西慶(前全国社会保障基金理事長)。

 蛇足だが、冒頭の「クリントン・イニシャティブ会議」とは、言わずと知れたヒラリー次期国務長官の夫=クリントン元大統領が主宰する財団で、産油国から中国を顧客に面妖な資金を集めて「慈善事業をしている」と公言している団体。
 NYタイムズさえ、この活動に批判的だった。

 しかし香港での会議で、クリントンの資金募集活動は最後になると見られる。なぜならヒラリー国務長官就任の条件が、夫の資金活動の中止だったから。
 いずれにしてもヒラリー指名公聴会(一月下旬)で上院共和党は、この面妖なる前大統領の資金ルートに関する質問を繰り出して指名に派手な嫌がらせを仕掛けるだろう。

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(読者の声1) 佐藤優氏は或る雑誌で次のように述べています。
  (引用開始)「不安と恐慌は、同じ現象を別の側面から観察したものである。不安と恐怖は異なる。恐怖には、はっきりした原因がある。目の前にトラやライオンのような猛獣が現れれば、人間は恐怖を感じる。しかし、不安にはこのような明確な原因を特定することができない。ただし、人間の存在を根底から崩してしまう力がある。これが不安の根源だ。・・・。
 人間の不安は、単なる主観的表象ではない。人間はいつしか死ぬ存在だ。普段は、あえて死について意識しないようにしているのだが、死は必ずやってくる。これが人間が不安を感じる根本原因なのである。資本主義経済も、市場原理が機能して、あたかも永続しているように見えるが、あたかも死亡したような麻痺状態に陥る。これが恐慌だ。・・・
最近、不安と恐慌の根源が同一であることを解明した優れた論文に接して魂が震えた。西尾幹二氏の「雑誌ジャーナリズムよ、衰退の根源を直視せよ」だ。
 西尾氏は、今般の金融恐慌と不安の関係についてこう述べている。 

<<今回の米金融危機に際して、三菱UFJフィナンシャル・グループは、投資銀行モルガン・スタンレーの株式21%を取得、出資額は一兆円にもおよびます。一方、野村ホールディングスは、証券会社リーマン・ブラザーズのアジア太平洋部門、欧州・中東部門を240億円で買収、いずれもリーマンの破綻が表沙汰になってから、一週間ほどのあいだに果断に決定されたものです。三菱、野村の決断については、日本が国際金融の分野に力強く船出していく端緒になるという好意的な評価がある一方、出資額はアメリカに掠め取られるだけで、最終的にはひどい目にあうだろうという悲観的な見方もあります。両社は今,大きな不安を抱えていると思います。先行きはいまだ見えません。・・・ 実行している三菱や野村の人はリアリティに触れているから未来は見えません。不安に耐えています。さも未来がわかっているように語る人はすべて傍観者です。見物人です。イデオローグなのです。だから不安がありません。私がいいたのは、不安が必要だということです。言論人も実行家たれ、ということです。実行家は必ず何かに賭けています。賭けに打って出る用意なくして、安易な言葉を発してはいけないのです。>>

  金融危機に対する経済哲学的分析が必要なのだ。筆者が知る範囲では、西尾氏以外の誰もこの作業を行っていない。西尾氏は今回の金融危機を思想の問題として受け止め、考察している。金融派生商品などという実体経済から著しく乖離した投資対象を作り出せば、そのような経済がいつ崩壊するかという不安を伴うのは当然のことである。金融工学は、存在の根底にある不安の問題に目をつぶり、虚構の世界でマネーゲームを行った。そのツケが現在きている。そのような状況で重要なことは、不安を正面から見据えることだ。 西尾氏は、リアリティに触れている経済人が、「不安に耐えて」いることを正確に見据えている。それは、西尾氏自身が、自己の死を見つめ、不安に耐えているからと思う。この不安に耐えるところから、逆説的に力が生まれてくるのだ」。
(引用止め)
 
「言論人も実行家たれ」と西尾氏が叱咤しても、なかなか三島由紀夫のようにはなれませんが、「賭けに打って出る用意なくして、安易な言葉を発してはいけないのです」との警句は言論人への重い意味がこめられていると思います。

さて以上の佐藤氏の論に接して思うのは、現下の台湾情勢についてです。
台湾前総統の逮捕と混乱ぶりが報道されても、日本国内での反応はほとんどなく、市井の話題にもなりません。
日本人はぼんやり頭で分かっているのですが、警告を発すべきマスコミ、ジャーナリズムはニュース・バリューが無いと見切ってその後については貴誌以外ほとんど知らんぷりしています。

警中の民進党と媚中の国民党間の無益な暗闘は、双方から国民の支持を失わせ、台湾の国力を著しく削ぎつつあります。漂流しだした台湾の実体に日本人はほとんど関心を示さず、それに気付かず、なんの不安も抱いていません。
台湾の変容・溶解は東アジアに多大なインパクトを及ぼします。その変動リスクを日本が最も孕んでいて、日本がその被害を一番蒙るのです。
台湾情勢がなおざりにされている状況下、宮崎さんが現地に飛ばれることは、我々読者の耳目を引き寄せ、日本人に不安を顕在化させる意義があると思料します。一路平安。
(有楽生)

 
(宮崎正弘のコメント)一路平安じゃなくて、一路不穏?
 台湾の問題は小生、メルマガのほかに『正論』『エルネオス』『週刊朝日』などで、それぞれ異なる角度から取り上げます。ご期待下さい。



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(読者の声2)貴誌2412号「読者の声3」の続きです。宮崎先生のご著書や黄文雄先生のご著書、他の中国人の先生のご著書など読ませていただき、書かれていた事が事実であると分かっていても、感覚的に・・まさか・・と理解出来ないのです。
中国の方々はそんな中で生きていかなければならなかったのですね。
私は「ワイルド・スワン」「マオ」を読ませていただいた後、本当に日本人でよかった!と心の底から思いました。
蛇足ですが、或る中国人の先生が「日本に来て10年経ち、日本という国は嘘をつかないでも生きて行ける国だとやっと分かった」と言われたと、どこかで読み、誰なのかしら?と考えていましたらそれが石平先生だった事を今年になって知りました。
石先生のホ−ム・ペ−ジに「日本の書店で、忘れていた中国古典の書物との感激の出会い」など読ませていただき、日本を心から愛して下さって祖国・中国との決別された時は、心の中で随分と悩まれて日本人になられたのでしょう。
石先生の本の題名ではありませんが、なぜこんな幸せな国に生まれた事を感謝せず゛売国奴゛ばかりなのでしょうか? 
悲しくなってしまいます。
   (KY子)


(宮崎正弘のコメント)左翼ジャーナリズムに限らず自民党のなかにいる無定見な議員連中も「愛国者」を「売国奴」と呼びます。
 恵まれた国にいる人、最高に幸せな環境にある人は、そのことを天賦の条件と錯覚して、隣にある災害や戦争の危険性を感知できないのです。
哀れなるかな、鈍感! しかし日本人の鈍感は罪ですね。いまや。
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(休刊のおしらせ)小誌は12月8日―11日、台湾への緊急取材のため休刊となります。
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宮崎正弘の新刊予告
『やはり、ドルは暴落する! 世界と日本はこうなる』(ワック文庫)
(予価933円。12月26日発売予定!)

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┃好┃評┃発┃売┃中┃!┃
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宮崎正弘の最新刊
 『中国がたくらむ台湾沖縄侵攻と日本支配』(KKベストセラーズ 1680円)
 『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ)
               (全332ページ、写真多数、定価1680円)
 『北京五輪後、中国はどうなる』(並木書房、1680円) 
 『世界が仰天する中国人の野蛮』(黄文雄氏との共著。徳間書店、1575円)
 『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』(KKベストセラーズ、1680円)
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  • 名無しさん2008/12/04

    とにかく 感謝感謝です

  • 名無しさん2008/12/04

    鈍感な日本人、ホントの恐怖が判らない人達なのでしょう。

    受け身できた日本人の宿命かも判りません一度の戦争に負けて此のザマですから、日清・日露の英雄まで消してしまう「敏感」な迎合力だけは一人前。