国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2008/10/21


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
    平成20年(2008年)10月21日(火曜日) 弐
         通巻第2354号  
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 「システミック・リスクの顕現を回避する」だけが目標のG7だったが。。。
   ブレトンウッズ体制がもはや崩壊に直面しているのではないのか?
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 G7ワシントン緊急会議のあと、白川日銀総裁は「システミック・リスクの顕現化を阻止する」と発言した。
 20日にワシントンを訪問したサルコジ大統領を迎え、ブッシュ大統領は大統領選挙が終わった直後にG8を緊急にワシントンで開催し、国際的な金融危機への対応に当たりたいとしたが、日本はG8では不十分であり、インド、ブラジルなど新興工業国家群を招かなければ意義が薄いのではないか、とした。

 とくにインド、中国、露西亜、ブラジルなどを招く必要がある。
 たとえば、ロシアの惨状があまり伝わっていないが、8月8日北京五輪の日にロシア軍はグルジアに侵攻した。直後から欧米投資家がロシア投資を引き上げ、短時日裡に400億ドルがモスクワ市場から消えた。
 その時点でロシアは外貨準備高が5500億ドルあるなどと豪語していたが、次にロシアを襲ったのが株式の急落(というよりウォール街より激しい暴落)。
 
 10月13日にRTS(モスクワ株式指標)はわずか一日で19%の墜落。同月15日にさらに11%下落し、往時の三分の一となった。
 その一方でロシアは海底地下資源への思惑からか、アイスランドの銀行破綻に救急に援助、54億ドルを出して西側の経済同盟の一角にくさびを撃ち込み、存在感を示しはしたが。。。


 ▲「ブレトンウッド体制」は「パート3」へ向かう?

 1944年、第二次世界大戦は戦局が見通せる時期にあった。
 ブレトンウッズに集まったのはジョン・メイナード・ケインズ(英政府代表)とヘンリー・モンゲンソウ(当時の財務長官)らである。
 このとき、はやくも戦後世界体制を構築する「ブレトンウッズ体制」が決められた。ただし、通貨は固定相場制であり、米ドルは金にリンクしていた。

 経済学の権威とされたメイナード・ケインズも、しかし会議の主導権を米国に取られていたことを認識していた。第二次世界大戦は、米国の参戦がなければ英国が確立してきた世界秩序は風前の灯火だったのだから。

 英国ポンドをやがて駆逐し、米ドルがマーシャルプランなどによって欧州へも浸透し、気がつけば米ドルが基軸通貨となっていた。ブレトンウッズ体制は米ドル基軸に変質し、稼働を始めた。

 戦後しばらく米国資本主義はピカピカに輝いていた。ジョンソンは世界一の軍事費支出を世界一の福祉財政を同時に行えると言明し「偉大な社会」の建設が米国のマニフェストだった。
 ベトナム戦争で深く傷つき、米国経済の落ち目が始まった。
 
 1971年8月、ニクソン大統領は唐突に金兌換停止を発表した。
 いわゆるニクソン・ショックと歴史家は定義したが、要は、為替が固定相場制度を離れ、準変動相場制へ移行したことである。米ドルが戦後初めて体験する「落ち目」の始まり。
これは「ブレトンウッズ パート2」である。

 このパーツ2のもとで、インド、ブラジル、露西亜などの通貨は、基本的に米ドルにリンクして、国際決済のシステムは機能してきたのだ。
 だから世界は次の「ブレトンウッズ パート3」に向かっての準備を始めたかに見える。


 ▲“帝国循環”によるドル優位がイラク戦争以後、希釈されてしまった

 だが大音たてて近づく次の事態が米ドル基軸通貨体制の崩壊である。
帝国循環によるドル優位がイラク戦争以後、希釈されている
ドル基軸が維持されたのは米国が世界一強力な軍事力を保有し、圧倒的な優位を確保していたからこそ、そこの通貨への信任がうまれた。
これを吉川元忠・神奈川大学教授は「帝国循環」と定義したが、畢竟するに双子の赤字を増加させても、通貨は米国へ循環する。
日本や中国がいかに輸出でもうけようと、露西亜やインドや日本がどれほどの外貨準備を積み上げようと、アメリカ人が借金漬けになっても消費を旺盛にして貿易赤字が膨大になろうとも、ドルという基軸通貨は、米国へ環流し、米国の赤字を補ってきた。
 帝国循環というのは、世界一の軍事力への信頼であった。

 変貌の兆しは変動相場制の枠内でドルの価値の目減りだった。
 原油が値上がりして最大の理由は投機筋が乱舞させたカネであったにせよ、米ドルの相対的な価値の目減りによって産油国の実質収入が減ったからであり、ドル価値を相対的に上昇させる思惑の元に、世界各地の投機資金が原油とゴールド、穀物めがけて集中したのだった。


 ▲「ユーロ」いがい、地域ブロック通貨の構想は難しい

 しかし、基本的には米国の軍事力の相対的衰弱である。
 イラクとアフガニスタンの泥沼は戦費7000億ドル。しかも、米軍は、もし、世界のどこかに戦争が起きても、余力がないために介入できず(実際にイランと北朝鮮の核兵器開発を黙認し、グルジアをロシアが侵略しても口批判にとどめ、インドとパキスタンの核武装は不問に付した)。
 帝国の衰弱は世界の投資家をして、富とカネを米国へ環流させることを躊躇うだろう。

 だから投機筋は新しい通貨を求め、EUのユーロを一番先にターゲットとして選び、次に石油と金を狙った。

 とはいえ通貨のブロック化は、ユーロの成功があるとはいえ、これは歴史的経緯を考えれば理解できることであり、それを横目に、世界各地で円滑に進むことは無いだろう。
 アジアでの共通通貨はあり得ないし、産油国が模索している共同通貨構想にしても、経済システム、とくに金融制度の未整備や、特権階級がスイスや米欧に財産を移転させている以上、蜃気楼のような話である。
 反米を掲げる中南米とて、実際に流通しているのは自国通貨ではなく米ドルである。

 ブレトンウッズ パーツ3は、曖昧模糊として未来図はまだ霧の中、同時にいずれ近未来のいずれの日、ドル基軸体制は維持が難しくなっているだろう。
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(読者の声1)貴誌2352号「読者の声1」の船橋洋一氏が“媚中派”ではないかとの疑問に対する宮崎さんのコメントで「船橋洋一氏が中国の暗部をえぐった『内部』は傑作です」とありますが、この本を読んだとき、朝日にもまともなジャーナリストがいるのかと驚いたものです。
船橋氏のその後は社内政治を泳ぎ渡ることで主筆になりましたが、媚中派とはちょっとスタンスが違うのでしょうね。
張超英氏の自伝では船橋洋一氏がアジア各国の支局長を引き連れ台湾に乗り込み李登輝とのインタビューを行い、朝日紙上で報道されるに及んで日本での台湾の評価が大いに上がった、みたいな記述があったように思いますが、船橋氏の政治力の大きさがわかります。
張超英氏を偲ぶ会には船橋氏、宮崎氏とも出席されていたかと思います。
偲ぶ会での船橋氏の「台湾の課題は日本の課題」という発言はこのメルマガの読者には当たり前かもしれませんね。
   (PB生)


(宮崎正弘のコメント)鋭い眼光ですね。「張超英さんを偲ぶ東京の夕べ」という会は日本記者クラブで開催、小生が司会をしておりました。トップバッターは許世楷・台湾大使(当時)、つづいて朝日は船橋氏、産経は社長、PHPも社長にそれぞれご挨拶頂きました。よく思い出して頂きました。乾杯を田久保忠衛さん、日本の保守からリベラルまで勢揃いの珍しい会でした。



   ♪
(読者の声2)9日〜13日までバンコクに行ってきました。
出発前の為替レートは、1万円=3200バーツ前後だったのが、空港に着いたら3333バーツ、翌日には3429バーツ。円高の影響をもろに感じます。
前回(8月)からわずか2ヶ月ですが、またもやバスが値上げ。
2年前に3.5バーツだった公営バスは7→9バーツへ、同じく5バーツだった民営バスは8.5→10バーツ。基本的に交通費など出ないバンコクの労働者にとってはバス代の値上げはかなり堪えるのでは。パートの時給25バーツ前後(70〜80円)だから往復のバス代はかなりの出費。
BTS(高架鉄道)もプリペイドカードでの割引を廃止、一駅で15バーツ、二駅以降は20バーツ〜40バーツ。タイの物価は缶コーヒー12バーツ、ミネラルウォーター14〜19バーツ、屋台飯25〜30バーツだから1バーツ=10円と考えるとちょうどいい。

伊勢丹のある旧ワールドトレードセンター(現セントラルワールドプラザ)、新館もほぼ出来上がり、客の入りも上々。新規出店のレストランはほとんどが日本食系。バンコクでは回転寿司、しゃぶしゃぶ、ラーメン、とんかつ、カレー、定食、などメインのアイテムを中心に昔のデパートの食堂みたいに日本食全般を扱うのが一般的。
日本ではやや苦戦のモスバーガーも店外まで行列が続く。定食屋の大戸屋もバンコクではちょっとおしゃれな日本食レストラン。やよい軒はファストフード系の内装でメインターゲットは高校生〜大学生か。

地場の日本食レストランNo.1のFUJIはご飯茶碗以外は陶器になりグレードアップ。同じくタイ人に圧倒的人気のタイスキの店MKも食器を陶器にグレードアップしたMKゴールドがほぼ満席(タイではレストランといってもメラミン樹脂の食器が普通)。
 タイ人向けの店としては以前からまともな寿司を出していたZENはグレードアップしてランチセットが400〜700バーツのZEN CUCITNA を出しているが、日曜の昼でほぼ満席。日本円にすると寿司セットで1200円〜2000円なら安いだろう。欧米のランチの値段を考えても決して高くはない。だがタイの物価から見るとランチが4000円〜7000円の感覚。こんな店が行列になるのだからタイはほんとに格差社会である。

日本食が人気のバンコクで一番人気はラーメンや緑茶飲料で有名な OISHI が手がけるSHABUSHI(シャブシ) シャブ=タイスキ +寿司 の店。
数年前から旧そごうの近くに店があったが、どうやらタイ人の好みをすっかり把握したらしい。タイ人が大好きな寿司とタイスキのネタがコンベアで流れてくる。カウンターには台湾の一人鍋のようなタイスキ鍋。テーブル席には鍋が二つ置けるから家族でもOK。タイ人の創意工夫もたいしたものだ。東急のあるマーブンクロンでもマレーシア資本の寿司金(SUSHI KING)が撤退し、跡にはSHABUSHIが入り大賑わい。女子高生が床にあぐらで座り込むところなど日本と変わりない。

さてなにかと日本と張り合いたがる韓国ですが、バンコクについていえば勝負あった。
韓国人観光客は激減、セントラルワールドのコリアンレストランも閑古鳥。まあメニューがカラー写真だけとか店の雰囲気も日本食レストランとは比較になりませんが。
 かわりに目立ったのが香港人。どこへ行っても広東語が聞こえてきます。香港の旅行ガイドブックはレストラン紹介のページが多いのが特徴ですが香港人はほんとに休むまもなく食べまくる感じですね。
台湾人は家族旅行だとなんとかわかりますが、個人旅行だと現地人とあまり区別がつかなくて華人系のタイ人も台湾人もあまり区別できません。
中華航空のアテンダントなどタイ名前と中国名の両方持っていましたし。

市内いたるところ4〜6階建ての築40年くらいのビルを取り壊し、コンドミニアムの建設ラッシュ。ちょうど10年ほど前にも建設ラッシュに通貨危機が重なり、当時野ざらしにされていた物件がやっと片付いた矢先の世界金融不安。はたして今回は無事のりきれるのでしょうか。
   (タイ・ファン)


(宮崎正弘のコメント)最新のタイの政情不安と通貨下落ですが、満載の情報を有り難う御座いました。日本人が多いスクンビット通りで、しゃれたパブへ入り、当時、毎日新聞の特派員だったUさんと深夜までアジア情勢を語ったことを思い出しました。
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http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
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『世界“新”資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
『出身地でわかる中国人』(PHP新書)
『三島由紀夫の現場』(並木書房)
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  • 名無しさん2008/10/22

     現在ユーロや新興国通貨に対して、ドル高、超円高です。

  • 名無しさん2008/10/21

    タイに行かれた方の詳細なレポートは、楽しく、読み応えがありました。とくに現地のレストラン事情のあたりなど、わが国おなじみの食堂が海外でも頑張っているのだなぁと嬉しくもあり、なにか健気にも感じられ。

    楽しくテンポの良いレポートを掲載して下さりありがとうございました。