国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2008/10/08


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
    平成20年(2008年)10月8日(水曜日)弐
         通巻第2342号  
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(速報)
 FED、銀行の頭越しに企業のCPを買い取る新機関設立のかまえ
  どうやら米国の金融は、資金繰りがカラッケツの様相だ
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 ベン・バーナンキFBR議長(中央銀行総裁)は、資金不足の陥った米国経済を立て直すため、貸しはがし経営に陥った銀行の頭越しに、直接、企業の発行する短期コマーシャルペーパー(三ヶ月以内)の買いとりをする新機構の設立大胆に動く計画と欧米誌が一斉に報道している。

 要するに欧米企業はたとえ経営に問題がなくとも、銀行の資金不足により日々の運転資金が不如意になっているため、FBRが銀行の役割も演じようとする画期的なプランだ。

 さすが「ヘリコプター・ベン」の異名をとるFRB議長だが、実現にはまだ紆余曲折が予測される。
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 いまの危機は悪化へのスピードが速すぎる
  企業は高金利で短期の資金しか銀行から借りられない惨状
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 ゴールドマンサックスとJPモルガン・チェースが株式共有ホールディング会社を形成し、ゴールドマンサックスが銀行に変身して、この擬似大恐慌を生き延びようとしている。先を見越したウォーレン・バフェットはGSに50億ドルを出資し、優先株を買う。
 S&P(スタンダード・プア社)など恣意的な行為が目立った格付け機関になりかわって、全米最大最強の投資家=ウォーレン・バフェットが“新しい格付け機関”として登場したことになる。

 「大手の金融機関の多くが消え去り、或いは破綻目前で機能不全に陥った現在、一部は国有化された安堵したところもあるが、今後、ゴールドマンサックスにとって、この擬似大恐慌をいかに生き残るかが最大にして喫緊の課題である」(ロスアンジェルスタイムズ、10月7日)。

 戦後わずか250人の従業員で再スタートをきったゴールドマンサックスは、CPを安い手数料で大量に引き受け、次々と顧客を獲得してきた。
 一方、JP・モルガン銀行は当時のウォール街の覇者。「企業は人であり、優秀な活気のある人材をかかえる企業には輸血を」と判断の基準においた。

 ウォール街一番地にでんとかまえたJPモルガンはチェースマッハッタンなどを買収し、大きくなった。投資銀行のモルガンスタンレーは関連企業である。
 「ウォール街」のあたらしい覇者となったGSは、本拠がパークアベニュー50番地。
ロンドンのシティがいわゆる旧街区シティではなくカナル地区に移転したように、コンピュータネットの発達は金融街の地政学もかえていた。

 さてゴールドマンサックスは、むしろ「正確な情報の提供が顧客を増やすうえ、自信と優秀さへの参画を促す」とした経営方針をとった。
 だから競合各社がCDO取引などに熱中していたおりに、ゴールドマンサックスは「住宅担保物件のポジションを減らせ、すべてのポートフォリオを10%下げよ」とする経営路線に切り替え、さらに07年にはCDOの保有を劇的に減らしていた。
 
対照的にシティグループのチャールズ・プリンスCEOは「音楽が鳴りやまない限り、ダンスをやめることはない」と逆の経営方針を示してきた。

 「今回の金融危機と29年大恐慌とが際立って異なるのは事態の悪化が猛烈なスピードで進んでいることである」(ヘラルドトリビューン、10月8日付け)。
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樋泉克夫のコラム
 
【知道中国 190回】                   
   いまこそバーチャルではない“生身の中国人”を知るべき時だ
       『チャイナタウンの女』(デニス・チョン 文春文庫 1998年)

1909年に西大后が没したことをキッカケに“黄昏の清朝”のタガは完全に外れ、急坂を転げ落ちるように崩壊に向かう。
1911年、孫文を指導者に担いだ革命派は辛亥革命を起こして清朝支配に止めを刺したのだが、それだけで世の中が一新されるほど中国社会は単純ではない。
中央政権は名存実亡。軍閥や地主などが各地に跋扈する。
軍閥は外国勢力と手を結び、地主は既得権益を堅持し生き延びんがために私兵を養い、金持ちは高い塀を廻らせた豪壮な屋敷に立てこもり、互いに時に手を結び時に裏切り、殺し尽くし、奪い尽くし、そして焼き尽くし。かくて混迷は増すばかり――これが当時の中国の姿だ。

そんな時代である。貧乏人にできることといえば、顔を顰め時代を恨みながら運命に身を委ねるか、自分の肉体と度胸と才覚を武器に故郷を飛びだして一旗挙げるか・・・。
広東の田舎に生まれた陳三は、父親に倣って「国を出て飢えと希望のうずきをいやし、祖国で失われた安定を求め」て北米に渡る。
当時、行き着いて働きさえすれば大金を手に入れることができると無邪気にも信じ込んでいた広東人は、アメリカをカネの山と思い込み「金山(カムサン)」と呼んだ。
「故郷に錦を飾りな」と父親の親戚筋の老婦が餞別代りに貸してくれた700ドルを元手に、「一生懸命働いて銭ためて、家の入用分を賄えるだけの仕送りをするでよ」と妻の杏宝にいい含め、陳三はカムサンを目指し故郷を後にした。
苦労に苦労を重ねた陳三は、念願かなって「故郷に錦を飾る」。
跡継ぎ息子が欲しくなった彼は、故郷で第二夫人の梁美英を娶った。
「待望の息子を中国ではなく、カナダで生むことにした」彼女は身重の体でカナダに。だが期待に違えて生まれた子どもは娘。故郷に戻ろうとする傷心の陳三を前に、美英は「子供はこちらに残し、あんた一人で帰ったら、としぶった」。その日から、美英母娘のカナダでの悪戦苦闘が始まる。

それから長い年月が過ぎた1987年のこと。美英がカナダで生んだ馨(ウイニー)とその娘のデニスは、半世紀ほどの昔に陳三が故郷に建てた家で、デニスにとっては母親の馨の「姉の屏伯母と腹違いの弟、源叔父に初めて会った」。
やがてデニスは太平洋を隔てたカナダと中国という2つの国の激動の時代を生きた陳一家の苦闘の歴史を綴ろうと思い立つ。
彼らは中国とは全く異質の海外社会でも飽くまでも中国人として生きようとし、生き抜く。
もはや祖国は国家としての権威も機能も失い、列強のなすがまま。19世紀半ばから1世紀ほどの間は、彼らに救いの手を差し伸べる余裕も能力も意欲もなかった。

だが、“現在の祖国”は国家戦略の一環として「走出去(飛び出せ)」のスローガンを掲げ、中国人の海外進出を強く奨励する。
であればこそ多くが中国を飛びだし世界の都市に押し寄せ、中国人として振る舞いを押し通し生活圏を拡大してゆく。かくて世界は生身の――毛沢東流に表現するなら「メシを喰いクソを垂れる」中国人に初めて接し、訝しがり、戸惑い、恐れ、遠避け、身構える。それというのも、世界が生身の中国人を知らなすぎたからだろう。
疾風怒濤の近現代に彼らがどう立ち向かい、荒れ狂う時代の波濤が彼らをどう呑み込んでいったのか。
海外に移り住んだ中国人である華僑とも華人とも呼ばれる彼らの生き様と死に様を振り返り、したたかに生き抜く生活術の“奥義”を覘き、これまで身近にしたことのなかった「メシを喰いクソを垂れる」中国人を知ることが、いまや急務なのだ。
《QED》
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(読者の声1) ウォール街の錬金術、米銀幹部のあまりに馬鹿げた報酬ぶりに胡散臭さを感じて数年間。日本でも真似物が出るに及んで最終章に入ったと思っていました。わかりやすい説明と筋立て、読み物になっていて家人にも読ませています。続きがあるようなので楽しみです。
ところで前号の編集後記にでてきた、高山正之さんの新刊祝賀会の様子、会場に同席してるかのように感じながら読みました。
先生の企画進行の腕前と人脈の広さにつくづく感心します。行けなくてまさに残念でした。
      (HS生、愛知県)


(宮崎正弘のコメント)産経新聞(10月8日付け社会面コラム)で特集がありましたが、これもまた毒入り辛辣なコラムでした。

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(((((((( 編集後記 ))))))))
●俳優の緒方拳さんが亡くなった。小誌の読者には意外かも知れないが、じつは緒方拳さんと接点があった。映画を余り見ないけれども若いときに「復讐するは我にあり」だったかの映画をみた。しかし鮮烈な記憶はコッポラの映画「ミシマ」で、緒方が三島由紀夫を演じたことである。三島文学を理解した演技に感心したのだった。アメリカ人に、この映画を感心して見た人が多いので、よく話題にもなった。「憂国忌」の発起人を頼もうとしたこともあった。
●緒方拳は大黒屋光太夫も演じた。原作は井上靖の『おろしや国酔夢譚』。91年だったと記憶するが、モスクワからサンクトペテルブルグ(当時はまだレニングラードと呼んでいたっけ)へ向かう飛行機で緒方と偶然、一緒だったのだ。「エカテリーナ宮殿へロケに行くのです」とサンクトペテルブルグ行きの理由を言っていた。なくなった個性派俳優の川谷拓三らも一緒、しかも同じ飛行機には当時スケート選手だった橋本聖子さんも乗っていた。
●もうひとつ、接点があった。やはり二十年ほど前だが、麻布に友人がいて、毎週のように麻布十番で食べて飲んだ。その一軒がNというレストランで、店主が緒方拳の知り合いとかで緒方のおおきな書を飾っていた。雄渾な筆致だった。ときおり、彼がひとりで来て静かに飲んで行くと言っていた。合掌。
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  • 名無しさん2008/10/08

    最近の世界経済状況は、宮崎さんのコメントが最も当たっている。私も無錫に工場を持っているので中国経済が心配だ。TM