国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2008/09/22

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
    平成20年(2008年)9月23日(火曜日)
         通巻第2329号  (9月22日発行)
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 えっ、こんな奥の手があったか! モルガンとゴールドマンサックスが持ち株会社
  それでも金融危機は遠のいたわけではない。一瞬の大事故を避けたに過ぎない
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日本時間、9月22日。またしても驚きのニュース!
米国証券のトップ=ゴールドマンサックスと第弐位のモルガン・スタンレーが持ち株会社に移行するという、ひっくり返るようなニュースがウォール街から飛び込んできた。
これでウォール街の上位五社は、さっぱりと消え去る。
三位のメリルリンチはバンク・オブ・アメリカに買収され、四位のリーマンブラザーズは倒産した。
五位のベアスターンズは、JPモルガン・チェースが救済合併した。

翻って投資銀行としてトップ両社の合併は投資銀行専門から離れて、商業銀行の機能を強化して預金残高を高めるわけで、当然だが今後はFRBの監督が強化される。

まるでグラススティーガル法の復活のごとしだ。
グラススティーガルによって、米国では証券と銀行の垣根を厳密に分けていたが、80年代に規制緩和で垣根がファイア・ウォール(防火壁)程度になり、証券(投資銀行)が大手をふるって、自由な市場に新商品開発という名のデリバティブの博打技術を持ち込んだのだった。

今回の危機はこのようにウォール街にたまっていた膿、累積された危機の爆発でもあった。

ヘンリー・ポールソン財務長官はゴールドマンサックス会長からブッシュ政権入りした。過去に数々の金融新製品を売り出し、猛烈に投資家に売り込んだ実績を誇る即断の人。
中国の四大国有銀行の香港株式市場への上場を熱心に説いたのも、ゴールドマンサックス会長時代のかれである。

決断の締め切りが迫られるという心理圧力環境をこよなく愛し、また大胆な決断が出来る。
鉄火場で心理的に燃えるタイプ、数々の乱気流の嵐を生き延びた。酒もタバコのたしなまず休日には双眼鏡片手にバード・ウォッチングが趣味という変人でもある。
いちど間違えてウォッカを飲んで、真っ赤な顔を数時間も持続させながらそれでも仕事をし続けたという逸話がある。

一方のベン・バーナンキFRB議長は、プリンストン大学で教鞭をとった学窓の理論家、とくに大不況の研究で知られ、29年のウォール街暴落から1933年の大不況にいたる[GREAT DEPRESSION(大不況)]のあいだに政策決定者は何を間違えたかと研究した。

二人ともブッシュ政権入りする前は、まったく住む世界が異なり、お互いに会ったこともなかった。
政権入りしてもしばらくは、バーナンキはレッドソックスのファンで、ポールソンはシカゴカブ・ファンという野球好きだけが共通の話題だった。
政治との距離は近くなく、議会説得も得意ではないが、今回の事態が歴史的に未曾有の経済危機であるという認識では一つとなる。
二人は性格も履歴も異なるが、この危機への認識と即断即決の重要性を知っていた。

ブッシュはこの二人に経済金融政策をゆだねてきた。
9月17日は一日中、二人と電話で連絡をとり、18日の朝も連絡をとった。昼前にコックスSEC委員長も同席して、AIG救済ばかりか大胆な不良債権処理のために公金を投入する必要性を大統領に説いた。


▲7000億ドルの財政出動はこうして決まった

米国歴史始まって以来の大出血プランは、7000億ドルもの新軍資金を調達して、ウォール街の不良債権をワシントンに移管し、金融市場の安定を得るという画期的なものだ。楽観論者は5000億ドルで済むはずだと見積もる。
このために累積赤字の上限を11兆3000億ドルに嵩上げする、そのために議会の承認がいる。

ブッシュは三人の話を聞き終わってから短く言った。
「よし、それでいこう」。
午後に四人でホワイトハウスの中庭で記者会見を行った。

議会の説得にポールソンとバーナンキはともに当たった。標的はナンシー・ペロシ下院議長だった。
ペロシは下院議長、米国憲法にしたがえば、大統領にもしものことがあれば、副大統領(上院議長を兼ねる)の次、という要職である。ペロシは広島の視察から帰国したばかりだった。広島の原爆ドームで大粒の涙を流した。

それにしても、7000億ドルとはペンタゴンの年次予算を凌ぎ、イラク戦争の直接戦費より多く、米国民ひとりあたり2000ドルの負担になる。
「なぜ納税者がウォール街の高給取りの失敗の尻ぬぐいをするのか」。国民の怒りの声が聞こえる。

だが、ここで政府が決然と介入しなければ米国金融全体が負った傷口はもっと果てしなく広がり収束はおぼつかなくなるだろう、と大不況の研究家であるベン・バーナンキFRB議長は結論した。
「必要なときに大胆な資金供給が歴史的にも必要だ」というバーナンキのあだ名は{ヘリコプター・ベン}(救援に出動するヘリのごとく)。

鉄火場のその日暮らしの嵐を乗り切る方策を講じることは得意でも大局を判断ができないポールソンを電話で説得したのはバーナンキだった。
「もう、あの会社を助ける、この会社を見放すという議論をしているときではないですよ」。
ともかく、市場の決壊は一時的に避けられた。


▲次にやってくる豪嵐は何か?

当面は資金不足に陥ったウォール街に可能な限り潤沢な資金を供給し続け、自転車操業のペダルを止めさせないことである。
日本は三洋証券―北海道拓殖銀行―山一証券の連続倒産が心理恐慌を引き起こし、ついには金融界の再編と再起に十年を要した。政策の失敗だった。

しかし、次にやってくる危機はヘッジファンドの解約が年末に集中し、いくつかのファンドが精算することになりそうなことである。株式と社債を組み込んだファンドから投資家は資金を引き揚げ、つぎに何に投資するだろう?

もうひとつがサブプライム危機の延長戦で、IOローンといわれる住宅ローンの残高が、およそ8200億ドル。(IOローンはインタレストオンリーの略。毎月金利だけ払い、満期に一括して元本を支払う住宅ローンの博打的一種)。

このIOローンの再設定は、住宅価格の暴落によって円滑に進まないであろうから、いま言われているファニーメイ、フレディマック債券関連の570兆円が整理されたあとにでてくるローン債務の不履行に対応しなければならないことである。

いずれも政策的には次期政権への繰り越しになる可能性が大きいとはいえ、爆弾を抱えている。大統領と財務長官はかわっても、バーナンキFRB議長はひきつづきFRBの職を継続するから、キーパーソンは、そのままバーナンキへの市場の信頼、FRBの監督ぶり、そしてウォール街の再活性化ビジョンの提示である。

不況は大型化し、国際的に広がりを持つから、長期化するだろう。
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<< 書評 >>

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中村信也『日本の救急医療を斬る』(日新報道)
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 米国のテレビ映画シリーズで[ER]という番組があった。いまもあるかもしれないが小生は深夜にたまたま二回ほど見たに過ぎない。
しかしすごく印象的な番組で、緊急医療に取り組む若い医師団をえがいてテンポがはやく、社会正義が表面に出ていた。いまやハリウッドの大スターとなったジョージ・クルーニーも前半シリーズでは熱演していた。
 最近、友人を見舞いにある大病院に行って玄関の看板をみて驚いた。英語で『ER』とあるではないか!
 緊急病院は、しかし日本では圧倒的に数も医者も足りない。
 本書は、東京家政大学教授で医学博士でもある著者が、日本の救急医療現場のおそまつな現実に焦点をあてて、医療政治の現場をダイナミックに描きながら、解決策も提示している意欲作。



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塚本三郎『劇場政治の因果』(21世紀経済懇話会)
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 ご存じ元衆議院議員で民社党書記長、委員長を十六年も勤めた塚本さんは、いまも毎週のように健筆をふるって憂国の至情あふれるコラムを書き続けている。本書はそれらのなかから吉田忠雄明治大学名誉教授が逸品を編集し直された。
 八十数歳になられたはずだが、塚本委員長、いつお目にかかっても若々しい。
 氏は日本がこれほど情けない政治、つまらない社会に転落した原因をいろいろと探求されながら、自衛の戦争すらを禁じられた国家の悲劇。その占領軍の洗脳が、戦後の日本人を卑屈にして、民族の力を去勢したのだ、と説かれる。
 現代世界政治はいまなお謀略が渦巻いており、歴史の裏を日本人は学ばなければいけない。たとえば左翼が陰謀説に基づいて言う日中十五年戦争とか、満州事変はどう歴史を検証しても日本の侵略ではなかった。
軍隊がいらないという議論は「刑務所をなくせば犯罪が無くなる」という馬鹿げた屁理屈に似ていないか。もっとも危険な隣人は中国である、などなど、その筆にいささかの衰えもない。

なお本書は非売品。問い合わせFAXは、(052)614−2323 塚本事務所
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(読者の声1)2326号にでた読者の声「SI生」さんへ一言。
「分祀とは「コピー」するようなもの」と書いたものです。SI生さんはとても神道についても勉強されているようですが、あまり、難しいことをいっても一般の人は分かりません。
左のプロパガンダのうまさは、大衆に分かりやすく、繰り返し唱えることです。
 神道について、少しかじれば、ご意見のようなことは簡単に分かると思いますが、それでは大半の人々には理解できません。
 私は靖国神社のような神聖な場所を速やかにくだらない政争の場所から外し上げることを目標としております。民族の叡智である魂と魂を祭るところを、他の民族から土足で踏みにじられることに我慢が出来ないのです。
自分の知識をひけらかして、満足される方だとは思いません。其の知識を活かして、不届き者から、私達の大切な英霊を守ることを考えてはいかがでしょうか?
 コピーのようなもので、分祀をしても意味がない。と云うことが浸透すれば、彼らの論点を一つ潰すことが出来ます。どんなに攻撃されても、守るべきところです。内輪もめしても意味がありません。要は、相手を論破し、二度と出てこれなられなくする事が、重要だと思います。
 分祀論の有用性を崩せば、相手はどんな次の手を仕掛けてくるのかを考え、それに対処しましょう。
 とにかく神道や歴史に対して知識のある人が、きちんと反論できるように論点を組み立ててあげることが、必要です。
 さらに宗教的なことは憲法や其の時代の小さかしい知恵で縛ることの出来ない不可侵のものですから、我々の祖先の叡智と気高い魂を法的な根拠などという愚かしいことはやめましょう。民度の高い民族ほど、欧米法体系にはそぐいません。
 日本民族には、日本民族たる根拠で十分でしょう。
    (MI生、福岡)

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(休刊のおしらせ)小誌は海外取材のため9月25日―30日を休刊の予定です。
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((((( 編集後記 )))))
 ☆前号で、田村能里子画伯の展覧会のことを書きました。すると開催場所の問い合わせが多数ありました。日本橋高島屋八階です。展示絵、屏風絵のカタログも販売しています。
http://www.brightonhotels.co.jp/tateshina/blog/2008/08/post_186.html
 29日まで。22日には皇后陛下が鑑賞におみえになったそうです。
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宮崎正弘の最新刊予告

『中国がたくらむ台湾・沖縄侵攻と日本支配』(KKベストセラーズ)
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 25日ごろ、主要書店に並びます。1680円。256頁、上製本
 (予約は下記アマゾンのページから)
http://www.amazon.co.jp/dp/4584131007/

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好評発売中!
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 宮崎正弘『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ)
      (全332ページ、写真多数、定価1680円)
宮崎正弘『北京五輪後、中国はどうなる』(並木書房、1680円) 
宮崎正弘・黄文雄共著『世界が仰天する中国人の野蛮』(徳間書店、1575円)
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 宮崎正弘のロングセラー
http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』(KKベストセラーズ、1680円)
『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』(徳間書店、1680円)
『世界“新”資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
『出身地でわかる中国人』(PHP新書)
『三島由紀夫の現場』(並木書房)
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宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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  • 名無しさん2008/09/22

    常に分かり易い解説で感謝しています。

    今回のゴールドマンとモルガンが持ち株会社となる事が、即合併を意味することまで、小生理解できませんでした。