国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2008/09/19

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
    平成20年(2008年)9月20日(土曜日)
         通巻第2324号  (9月19日発行)
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(大不況の足音 その3)

 ジョージ・ソロスの警告はこうだ
   信用の過大な膨張と市場原理主義への信仰が大危機を招いた
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 (承前)
 ソロスは超バブルの世界的爆発の元凶をこう分析してみせる。
 「(ウォール街などで)人々が謝った投資行動を続ける原因になった『支配的なトレンド』と『支配的な誤謬』とが存在した」

 つまり前者は信用の膨張、後者は市場原理主義という自由放任である。
 二つの誤謬は、しかしブラックマンディからITバブル、アジア通貨危機、ロシア国際危機などが国際協力やFRBの素早い措置などでかろうじて処理されてきたために「正しい」と誤解され、皮肉にもかえって強化されてしまった。

 野放図な金融自由主義が大手を振って闊歩したのだ。
 その結果、「超バブルがここまで大きく育つことを許してしまったのである。これ以上の信用膨張がもはや不可能となり、しかも市場原理主義の誤りがあまるところなく暴露されてしまった今回の危機は、歴史の大きな転換点とならざるを得ないだろう」(徳川家廣訳『ソロスは警告する』、講談社)

 信用の膨張というのは、個人の預金もないのにクレジットカードで高級車を買うような行為を周囲のみんながやっていると考えると理解が早道である。
 無職、無収入のひとにも、書類を偽造して収入があるかのように偽装して、住宅ローンを組んだり、いやこれを不動産ブローカーが斡旋したり、その住宅ローンをひとまとめに証券化し『資産担保証券』なんちゃってまんまと転売した。
これをCDO(Collateralized Debt Obligation)と言う。
(中国はこの手法をまねて同じことを大胆におこなった。そのツケはこれからくるが、これは後日)

しかも米国の由緒ある格付け機関が、こういう怪しげなCDOにトリプルAの評価を与え、(ファニーメィとフレディマックの債券は「米国財務省証券より信用がある」などと関係者によって吹聴された)、結局売り手と買い手が、最終的に誰なのか、リスクは低くなるというふれこみは結果的に嘘だった。
金融工学上の仮説は、途中で崩れていたのだ。

だが、ウォール街の老舗名門証券は「手数料が数億ドル」と聞いて目の色を変えて投資家にCDOを売りまくり、機関投資家へ転売、転売。これって、事故米を次々と転売し、いったい末端の被害が天文学的になっていた自体を事件発覚後にわかった農林政策の大ポカに似ていないか?

悪いことにヘッジファンドがCDOビジネスに目をつけ、ソロスの定義を借りると「無許可の保険会社」として、CDOの証券を保証するということで保険手数料を稼ぐ契約を次々と成立させていった。
かくして、これらCDO契約の残高は42・6兆ドル(邦貨換算で4500兆円前後)!


 ▲パラダイムの変更を求められている

「『市場は常に正しい』という考え方は、『市場はファンダメンタルズの反映である』という幻想からくるものだ(中略)、バイアスのかかった期待がループのようにどんどん強化された結果、バイアスのかかった方向にどんどん逸脱していくことにあり、それが行き過ぎるといずれは自己崩壊を起こしてしまう。これがバブルの興亡である」(ソロス前掲書)。

 BRICKs諸国の勃興、新しい富が産油国に集中し、レアメタルの高騰で豪州、カナダ、南アの通貨も膨らみ、米国以外の国々では「ドル離れ」を引き起こし、それがこきまざって、変動相場制度、ドル本位制をも大きく揺らし、結局、世銀IMFという戦後経済体制を根底的に動揺させている。
大不況は世界的規模で同時多発テロのように開始され、これから米国の消費激減とロシア、中国の陥没などが世界的なシステムの変更を否応なく促すだろう。

 そして最後にソロスはモラルハザードの問題を掘り下げる。
 第一は金融技術の革新とテンポは、当局が追いつけない高度な、しかし不健全なレベルに達しており、第二にドル保有意欲の劇的な減退が過度のユーロ高とドル離れを惹起し、第三に銀行は自己資本を損壊させていながら不良債権の裁定を怠り、この三つの元凶がモラルハザードを産み、解決を短時日でなせることはあり得ない。
 
 かくて一つの時代が終わり、私たちはパラダイムの変更を余儀なくされる。
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(読者の声1)貴誌のお陰もあって、あの東京裁判史観が南京大虐殺同様、時代遅れとして一蹴されるようになってきたことは喜びにたえません。さらに新歴史観が普及することを望みます。
さて以下の方のご意見に私見を記します。

(引用開始)「(読者の声2)日米戦争もまたルーズベルト政権に潜入したクレムリンのスパイが、本来日米は協力してアジアの反共戦線を組むべきところを日本と戦わせるよう仕向け、アメリカ国民の反戦機運を払拭したかったルーズベルトが様々の謀略をめぐらし、結局、日本が先に手を出すよう仕向けたのも、今や明らかです。」(引用止め)

意見:おおむね賛成ですが以下の点をご参考に追加したいと思います。

1.戦前の米国の親共主義:戦前のルーズベルト米国は1950年以降の米国と違い、頭から親共であったことです。
これは騙されていたのではなく、米国共産主義とソ連の共産主義は同じ平等という目的を達する手段の違いであると、本気で思い込んでいたことがあります。
この源には、米国式民主主義も共産主義も同じユダヤキリスト教の天国思想が社会思想に転化してきた、平等の天国を求める同根の思想であったという問題があります。
ただ米国の民主主義者は平等社会を実現することを望みましたが、ソ連のスターリンは共産主義信奉者を利用して権力を握り、後は私利私欲を満たすという点が違っていました。戦後の冷戦の印象で米国を反共と思いますが、戦前は違っていたことを確認したいと思います。

2.米国の西進アジア殖民地主義:戦前の米国はハワイを武力併合し、フィリピンを武力占領し、英国やオランダと同じ白人植民地主義国家でした。
そして次の標的が混乱を続ける支那満洲だったのです。
だからジョンヘイ長官が「支那機会均等門戸開放」宣言をだしました。そして日本が満州国を建設すると、米国の権利の侵害と見て、スティムソン長官が「満州国否認宣言」を出しました。
そして東京裁判では満洲事変を日本の侵略としましたが、それは米国の潜在権利である満洲を侵略したという意味での告発でした。

だから米国が日本を攻撃したのは、支那満洲への勢力伸張の邪魔であったからです。この大きなアジア西進戦略の上に、日露戦争の講和仲介、日本の満鉄出資拒否に対する反日、その後の支那事変における講和仲介拒否、蒋介石への莫大な軍事援助継続があり、その延長線上に太平洋戦争があります。
戦争は複数の狙いがありますので、ハルノートが欧州戦争への参戦の契機を作るという狙いがあったことは間違いありませんが、それだけではなく、基本的なアジア西進政策の上で日本を追い詰めたのです。

3.米国の失敗:米国は日本を滅ぼした後、蒋介石を傀儡に支那満洲を支配する予定でしたが、この目論見はスターリンに裏をかかれて、戦後満洲が共産化されたため、「取らぬ狸の皮算用」、「トンビに油揚げをさらわれた」に終わったことは、皆様ご承知のとおりです。
これを見てマッカーサーは「支那の喪失は米国太平洋政策100年の最大の失敗であった」と総括しました。太平洋戦争は、日本が目的ではなかったのです
      (MC生)


(宮崎正弘のコメント)中川八洋氏の『近衛文麿とルーズヴェルト ――大東亜戦争の真実』(95年、PHP刊、絶版)にあますところなく書かれています。



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(読者の声2)貴メルマガで、このところ何にでも口出す石原知事の靖国分祀論から、度々靖国問題が論じられていますが、そろそろ終わりにして頂きたい。
この問題を論じるほど論じるほど”天皇そして皇室”を窮地に追い込む。靖国問題などはじめから無いのです。無能な連中によって”作られた論点”でしかないのです。いい加減にやめましょう。

それよりも、現在の世界経済の行く末こそ大問題です。
米国のやりたい放題を黙視して受け入れてきた世界、ハチヤメチャブッシュに一言も文句を言えない世界、これこそ大問題です。

更には、日本の政治家の無能振りがここへきて白日のもとに曝されています。今、この返メール投稿を打っている時に、無能な太田農水大臣が辞任を表明、事務次官に詰め腹を切らされ、出処進退の在り様を教えられたのだろう。
部下に諭されての辞任に等しい。大田大臣には、「やっと気付いたのか」と申し上げよう。この後は、河野議長の政界引退に倣って、政界を引退してもらいたい。
 経済問題を大いに論じていただきたい。衷心より希望します。
    (KS生)


(宮崎正弘のコメント)デリバティブ転売が原型にある事故米転売。官僚たちがうすうす危惧しながらも、綱渡り。太田農林水産大臣の辞任は当然でしょう。
そういえば河野議長の引退。どこからも惜しむ声なし。寂寞たる心境、いかばかりか?
 というわけで、分祀論ですが、あと一回くらいで暫停としましょう。



   ♪
(読者の声3)昨日付けの貴見に「ソロスの所論は、なぜか主要な経済新聞とか『週刊ダイヤモンド』『週刊東洋経済』という雑誌ではなく、言ってみれば経済理論誌とはかけ離れた『週刊現代』に掲載された。つまり返せるか返せないかもわからない人に住宅ローンを貸し付け、最初は低利の魅力だが、いずれ雇用を失ったり、賃金が下がったり、反対に金利があがったりすれば、個人の債務不履行が生じる。景気が右肩上がりの時は、強気でごまかせても、いったん経済が不調になればクレジットカード破産が目立つように住宅ローンは不払いが急増するだろう。」
とあります。

これって経済の素人にはとても当たり前に聞こえる考えなのですが、『週刊ダイヤモンド』『週刊東洋経済』の編集者のように勉強をすると、当たり前のことが分からなくなってしまうのでしょうか。
それとも分かってはならないという保身・経営判断か。日経はいまさら言うまでもないが、両誌、特に東洋経済は信頼性を下げましたね。湛山先生が泣いている。
     (TY生)


(宮崎正弘のコメント)石橋湛山、懐かしい名前を聞きました。高橋亀吉とか、木内信胤とか、あの慧眼なエコノミストの先人たちが、もしいまも健在だったら、今回の事態をどう分析したか、聞きたいものです。
 さてソロス自身、アカデミズムから嫌われていることを自覚しています。
 ま、チャイナウォッチャー業界が北京に傾斜しがちですから、反対のことを言う小生を嫌っているようなものかも(苦笑)。



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(読者の声4)貴誌通巻第2323号の「読者の声4」と宮崎様のコメントを拝読いたしました。
私も株投資に手を染めておりますが,「株投資は自業自得であり,常に冷静であることが肝要」という自覚が投資家には必要と思います.犯罪行為はもちろん糾弾されて然るべきですが,それは結果論であり,そういうリスクも常に含まれている中での自業自得としか言い様がありません。
株投資は確率的なリスクがある以上,いくら理屈を捏ねてみてもバクチの一種であることに変りは無く,同情云々は的外れではないでしょうか。
ギャンブルに腹を立てるなら,ギャンブルをする資格無しです.リーマンも自業自得以外の何物でもないと考えます。
「金融資本主義,ファンド資本主義だからいけないのだ」とする考えがありますが,であるならば,それを抑止することができるのかが問われます。「違法でない」ものを果して抑止できるでしょうか。
私は儲かりそうな企業ではなく,経営姿勢を信頼できる企業にだけ投資してきました。
お陰様で,僅かな額ではありますが,売買で損をした事が一度もありません。
   (OW生、大阪)


(宮崎正弘のコメント)経営姿勢が信頼できる企業というのは倫理性を兼ね備えた会社でもあり、だんだん少なくなってきたのではありませんか?
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宮崎正弘の最新刊予告

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 宮崎正弘のロングセラー
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『世界“新”資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
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『三島由紀夫の現場』(並木書房)
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  • 名無しさん2008/09/20

    以前より、日露戦争以降の歴史をもう一度勉強し直したい、と思っておりました。

    当メルマガ掲載記事や紹介された書籍を参考資料にさせていただこう、と思っております。