国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

全て表示する >

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2008/08/14


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
    平成20年(2008年)8月15日(金曜日)
通巻第2287号 (8月14日発行)
△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 グルジア侵攻のロシア、最終目標はグルジアのフィンランド化
   ジェイハン・パイプラインをロシア利権に取り戻る軍事戦術だ
****************************************

 保守主義のコラムニストで全米に人気のあるジョージ・ウィル(ピュリッツァー賞受賞)が久しぶりに激しい論調を掲げている。

 グルジアに侵攻したロシア軍は、いまのところライス国務長官とサルコジ仏大統領の介入を前に、「進軍」を中断したが、撤退の気配はない。制圧したゴリ市は、そもそもスターリンの生まれ故郷である。

プーチンの最終目標は比較的明確である。
オセチア、アブハジアの独立を守るというのはお笑いの類いで、いずれ完璧にロシア領内に編入する腹つもり。かれらをおだててグルジアに対抗させているのは暫定の戦術である。

過日、小誌でも予測しておいたが、ロシアの目の上のたんこぶはグルジアを通過する「ジェイハン」ルートのパイプラインである。
ジェイハン(トルコ南端の港)へいたる石油パイプラインの大動脈は2006年に完成、バクー(アゼルバイジャン)からグルジアを経由してトルコへいたる。西側待望のロシアリスクを排除した運送ルートであり、一日80万バーレルを輸送している。

もしグルジアで親米サアカシビリを転覆させた後にロシア傀儡政権が誕生すれば、ジェイハン・パイプラインはロシアの利権となり、ついでにグルジアをフィンランド化できる。

ロシア軍がいま侵攻を停止している理由は、「ロシアの慈悲」を西側に見せつける演技である、とジョージ・ウィルが言っている(『TOWN HALL』、14日付け)。

プーチンは停戦案に首肯するぶりをしながら最終的にはサルコジ、ライス介入案を蹴るだろう。


▼西側の同盟者サアカシビリ政権を見捨てるのか

つまりサアカシビリ政権とは話し合いをしないというのが基本姿勢なのだ。
BATパイプライン(ジェイハンルート)を『ロシア化』させるには、親米サアカシビリ政権がグルジアで存続することほどロシアにとって邪魔なことはないからである。
プーチンのエネルギー戦略というのは、そこまでの深謀遠慮があるのだ。

 さて西側はどう対応するべきか。
 ジョージ・ウィルは次の四点を上げている。

(1)NATOとロシアの協議機関の場に於いてロシアに「民主主義国家を軍靴で踏みにじることは参加資格を剥奪してもいいほどの背信行為であると明確にメッセージを送り、
(2)ロシアのWTO参加に反対し、
(3)G8のメンバーから閉め出し、
(4)2014年のソチ冬季オリンピックのボイコットを呼びかけよ(ソチはアブハジアから僅か40キロ)

さるにても、ひ弱になったジョージ・ブッシュの米国、いよいよ実力が試される。
     ◎
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
(読者の声1)貴誌2286号「北京の新名所」にでてきた「蕃家園」には五年前の極寒1月に骨董に詳しい大学時代のクラスメイトと出向きました。
ほとんど偽物とガラクタでしたが目利きのできる友人からあれこれ教えてもらいながら筆筒(ひっとう)、文鎮、お猪口などを買いました。
そのすぐ近くに骨董屋の集まったビルがありました。
そこでは硯を手に入れました。友人は宋代の物と云う頭の欠けた小仏像を三日がかりで値切っていました。
出国時空港の通関で「頭がないからか持ち出しはOK」となりました。当時、破壊前の北京市内の故同を友人二人で飽かず歩きめぐりました。
米人が刺し殺された「鼓楼」は宵闇の中でしばし佇まいを眺めあげた記憶があります。今は昔です。
   (しなの六文銭)


(宮!)正弘のコメント)鼓楼は真夜中にタクシーで周囲を通っても薄気味悪いですよ。
 骨董街といえば北京の瑠璃蔽です。先々週、ここにも行ってみましたが驚くほど閑散として観光客なしの日々でしたね。
ときおり国内業者が、古い紙を買いに来るくらい。
     ◎ ◎ ◎
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
樋泉克夫のコラム

【知道中国 179回】                      
   ――ブンカクに踊り、権力に弄ばれた若者たち
            書評:『私の紅衛兵時代』(陳凱歌 講談社現代新書 1990年)

 1965年は「中華人民共和国が成立して、十六周年の年」に当たる。
この年、13歳だった著者は、「偉大な指導者」によって起こされ、当時は「魂に触れる革命」と讃えられた文化大革命の真っ只中に青春を送っている。
この本は、「革命の子ども」の1人であり真っ正直に「毛沢東の良い子ども」たろうとした著者の青春の記録であり、同時に栄光と蹉跌、歓喜と苦渋に満ちた青春を送らざるをえなかった同世代に向けての鎮魂歌でもある。

「天国 北京の思い出」「第二章 降臨 文革の勃発」「第三章 群仏 街に繰りだす紅衛兵」「第四章 狂灰 いくつもの死と生」「第五章 青山 そして、新生」と続く本書の最終部近く、大人になっていた著者は文革に斃れていった数限りない「毛沢東の良い子ども」に思いを馳せ悼み、「私は、文革が終わってから、恨み言を書き連ねた『知識青年文学』を読むたびに、書いた連中は一人の人間を二度殺しているとつぶやいたものだ。
辛く厳しい生活など、中国の庶民には当たり前のことだ。
私の心を揺さぶるのは、そんなものではない。力強さだ。私は、いつかそう考えるようになっていた」と綴る。

「辛く厳しい生活など、中国の庶民には当たり前」であり、「力強さ」に「心を揺さぶ」られる著者の世代こそが、現在の中国の政治・経済・社会・文化などさまざまな分野の中核を担っている。
だから彼らの青春を知ることは、そのまま中国の“今日と明日”を理解することに繋がるはずだ。
この本を読み進んでいくと、現代の中国を代表する映画監督に成長した著者の“原風景”と“中国人観”が、あちらこちらに顔を覗かせている。
たとえば「にぎやかなのは、廟の縁日だ。のぞきカラクリの旧式なレンズ箱の前に、伸びをするように座り込み、まばたきもしないで飛び去っていく絵を見つめていた。それをいまでもよく覚えている。その絵は、山河や人物、それに神話の中の物語だった。・・・晴れた日には、雛の入った籠を天秤で担いだおじさんが、胡同にはいってくる」。
共産党政権になったとはいえ、北京の下町には長閑でほのぼのとするような庶民の生活があった。
だが、次の件を読むと怒れる庶民の獰猛・残酷極まりない姿が伝わってくるだろう。
「昔から中国では押さえつけられてきた者が、正義を手にしたと思い込むと、もう頭には報復しかなかった。寛容など考えられない。『相手の使った方法で、相手の身を治める』というのだ。そのため弾圧そのものは、子々孫々なくなりはしない。ただ相手が入れ替わるだけだ。では、災禍なぜ起こったのだろう? それは灯明を叩き壊した和尚が寺を呪うようなものだ。自分自身がその原因だったにもかかわらず、個人の責任を問えば、人々は、残酷な政治の圧力や、盲目的な信仰、集団の決定とかを持ち出すだろう。だが、あらゆる人が無実となるとき、本当に無実だった人は、永遠にうち捨てられてしまう」。

「文革とは、恐怖を前提にした愚かな大衆の運動だった」と語る著者は、「大事なのは信じることそのものであって、なにを信じるかではない。
信じることが可能なうちは、まだこの世に希望が残っている。純真さと勇気とを抹殺してしまえば、後の残るのは暴民でしかない」と断言する。
「暴民」という表現に、超格差社会に突入した現在の中国の各地方で権力の横暴に怒りの声を上げる庶民の姿に重なってくる。
恐怖を呼ぶことばだ。
《QED》       
  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ◎◎M◎I◎Y◎A◎Z◎A◎K◎I◎●◎M◎A◎S◎A◎H◎I◎R◎O◎◎
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
宮崎正弘の最新刊
 『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ)
   (全332ページ、写真多数、定価1680円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4484082187/
(上記サイトから申し込めます。送料無料)
 
『北京五輪後、中国はどうなる』(並木書房、1680円) 重版出来!
(↓下記アマゾンから申し込めます。送料無料)
 http://www.amazon.co.jp/dp/4890632298/
  ♪♪
宮崎正弘・黄文雄共著
『世界が仰天する中国人の野蛮』(徳間書店、1575円)
  ♪
 宮崎正弘のロングセラー
http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』(KKベストセラーズ、1680円)
『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』(徳間書店、1680円)
『世界“新”資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
『出身地でわかる中国人』(PHP新書)
『三島由紀夫の現場』(並木書房)
    ◇
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
 ◎小誌の購読(無料)登録は下記サイトから。(過去4年分のバックナンバー閲覧も可能)。
 http://www.melma.com/backnumber_45206/
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2008 ◎転送自由。ただし転載は出典明示。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2001-08-18  
最終発行日:  
発行周期:ほぼ日刊  
Score!: 99 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。