国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2008/08/01

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
    平成20年(2008年)8月2日(土曜日)
通巻第2271号   (8月1日発行)
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 中ロ国境問題は、意外にもロシアの妥協で解決した
   背景にある商業的打算とプーチンの北京五輪開会式出席
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ロシアのラブロフ外相が7月21日に北京を訪問した時、世界のマスコミは大事件とは考えていなかった。

40年に亘っての係争地策定に決着がつき、両国は中ロ国境問題を最終解決させたのである。
ロシアのラブロフ外相は中国の楊潔チ(ようけつち)外相と「国境画定作業に関する協定書」に署名した。

4300キロにも延びる中国とロシアとの国境。
1950年代の中ソ対立時代にはロシア側が70万人の兵士を国境に貼り付け、中国側が100万人の人民解放軍を国境警備に従事させ、実際にダマンスキー島を巡っては武力衝突もあった。

94年にいったんは合意されたものの、最後の線引きがもつれていた。
両国は「相互尊重、互恵、平等」を原則として、アムール川のタラバロフ島と大ウスリー島の西部を、ロシアが中国に引き渡すことで合意した。

合計174平方キロメートルにおよぶ領土をロシアが手放す。
あの強欲な北方の熊が、である。

まさにロシア側の一方的な譲歩と思えるが、モスクワにとっては近未来の国境貿易増大の可能性が、従来の国境へのこだわりより重要ということであり、プーチンが最終的にGOサインを出したのだ。

もっともロシア議会のボルシェビキ党エドワルド・リモノフは、この妥協を「ロシアの恥」とののしり、国民投票にかけて賛否を問うべきだと批判したが、世論は冷たい。
 プーチンはこれをバックに北京五輪開会式に臨み、さらには中国ロシア間のビザ相互免除を話し合うという。

一方でロシア外務省は、日本の中学校社会科の新学習指導要領の解説書に「北方領土はロシアに不法に占拠されている」との記述があることは「当惑しており遺憾である」とした。
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(読者の声1) ESRI(内閣府経済社会総合研究所 http://www.esri.go.jp/index.html
主催の掲題の討論会が北京オリンピックの開会式の日に開かれるそうです。
担当大臣と経済学者との経済政策に関する公開討論とは(全90分間は短いのですが)、今時珍しい企画かと参考までにお知らせするものです。
 小泉内閣以前からの竹中平蔵元経済財政政策担当大臣の経済政策を大筋で引き継いだ大田弘子経済財政政策担当大臣と、積極的な財政政策の推進を訴える宍戸駿太郎(日米・世界モデル研究所所長 元国際大学学長)の金融財政政策をマクロ計量モデル予測値を算出しながら日本国及び国民にとって長期・短期を勘案しいずれがよい政策か検証し、雌雄を決してみようという公開討論会の企画のようです。
この企画の経緯は、どうも本年3月14日の参議院予算委員会で、国民新党の自見庄三郎議員が大田経財相に財政政策発動の必要性について質問。この日の質疑の結果、大田弘子経財相と元国際大学学長宍戸駿太郎氏とによる公開討論開催が決定されたもののようです。
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/library/reference.php?cd=2526

【公開討論会案内】(★:Eメール・FAXによる申込みが必要です。)
http://www.esri.go.jp/jp/forum1/080729/boshu35.html

但し、内閣府当局が当初より開催に消極的で当公開討論企画の消滅を画策してきた経緯があるようで、近々の内閣改造も仄聞され、8月8日の開催延期の可能性もありえますが、くれぐれも公開討論会正式案内を掲載予定の上記ESRIのサイトを確認の上ご参加くださるようお願い致します。(KY生)

           記
 ESRI 経済政策フォーラム 経済政策とマクロ計量モデルの活用

1.日時 8月8日(金) 13:00〜14:30
2.場所 霞ヶ関ビル東海大学校友会館(33階) (70〜80名程度収容)
    (銀座線虎ノ門駅より徒歩2分 霞ヶ関駅(A13)より徒歩6分)
3.Agenda
 !)開会挨拶 中藤泉 ESRI次長          5分
 !)対論(我国の経済政策をめぐって)        20分
       大田弘子  経済財政政策担当大臣
       宍戸駿太郎 日米・世界モデル研究所所長 
             国際大学・筑波大学名誉教授
    モデレータ 岩田一政 経済社会総合研究所所長
 !)パネルディスカッション              50分
   上記2案の経済政策とマクロ計量モデル比較討議
       大田弘子
       宍戸駿太郎
       斉藤潤   内閣府計量分析室長
    モデレータ 岩田一政
 !)会場聴衆との質疑応答              15分
4.問合せ先
  ESRI-経済政策フォーラム事務局 http://www.esri.go.jp/index.html
  内閣府経済社会総合研究所 情報研究交流部
  電話:03−3581−0457(直通)    FAX:03−3581−1538
  問合せEメール:http://www.iijnet.or.jp/cao/esri/opinion-ecoforum.html

                           
(宮崎正弘のコメント)無策無能としか思えない担当大臣が何を言うか、聴きに行きたい気もしますが、どなたか参加される方の報告を待ちます。



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(読者の声2) 私は一市民としてとても情けない気持ちです。
 竹島問題ですが、米国が韓国に属するなどと言い出した。この事態に対して日本政府は何か物申してくれるのでしょうか。
国は竹島は李承晩ラインを勝手に引かれて盗られたもの、北方領土はソ連が約束を破って一方的に侵略されたものと当たり前のことをなぜ言い続けないのでしょう。
ただ返せ返せでは国民もよく分かっていないと思います。なぜここが日本領なのか、必ず理由を述べながら、説得力を持って訴えるべきだと思うのです。そこがいまいち国民の間で盛り上がらない理由だと思います。
相変わらず宣伝が下手糞な日本国政府ですね。
      (TM生)


(宮崎正弘のコメント)領土問題とは、身も蓋もない言い方をすれば、強盗に盗まれたものを話し合いで返せというのは、おそろしく非現実的です。軍を出して威嚇し交渉のテーブルに乗せるか(中ロ国境紛争)、軍を実際に派遣して取り返すか(フォークランド紛争)、或いは当面棚上げ(中印、中越国境紛争ほか)。
日本は軍隊がありませんから、後者の選択しかない。相手国は図に乗って自国領と言い張り、日本はますますナショナリズムの高揚がある、というわけです。



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(読者の声3) 例年のごとく大東亜戦争の停戦記念日が近づいてきます。
最近、何気なく読んだ本の中に驚くべきことがさりげなく書かれていました。昭和30年にある発行部数の少ない新聞の夕刊に連載された吉田茂元首相の随筆を集めたものです。その中の一話のさらに一節に驚くべきことが書かれていました。
私の不勉強のせいかもしれませんが、それが世間一般で問題ともされず、そのままとなっていることは、あまりの無感覚さに驚きを禁じえません。
それは対米開戦を決める御前会議の少し前に米国政府国務長官コーデル・ハル氏の名前で日本政府に宛てられた書簡、所謂ハルノートの内容についてです。
吉田氏によると実際に日本政府あてで送られてきたハルノートは、米国政府の主張言分と日本政府の主張言分が併記されていたが、ハルノートとして一般に知られているものはその中の米国政府の主張言分だけを取り出したものだそうです。
さらに、「basis for negotiation」(交渉のベース)であり「definitive」(決定的な)ものではないと明記されていたそうです。また左上に「tentative」と書かれていたそうです。このことを知っていた駐日米国大使グルー氏は、まだ米国政府には交渉をする意図があると判断して、旧知の仲の吉田氏を介して東郷外相との会談を求めたが、東郷外相が断ったそうです。
また外務省訳は、原文よりよりきつい内容に書き換えられていたそうです。
両国政府の見解を併記し、「basis for negotiation」(交渉のベース)であり「definitive」(決定的な)ものではないと明記したのは、後に内容が公開された場合のことを考えてのことかもしれないという可能性にも吉田氏は言及しています。
しかし、たとえそうであったとしても両見解を併記したのは譲歩の可能性を認めたということであるとして、それを盾にとって切り込むことができた筈です。
しかしこういった外交的センスが当時の外務省にもまた陸海軍にも欠けていたのではないのでしょうか。
この外交的センスのなさが、またこのことを関係者を説得して理解させる能力と胆力のなさが、日本に大きな災厄を呼んだと思います。

私が思うに当時、米国に巣くっていた反日派によって昭和16年はじめに日本の外務省と米国の国務省の間でできかかっていた妥協点を、大きく退歩させる強行案で入れ替えさせられた良識派が、ハルノートに仕込んだ一縷の和解への可能性であったのではないのでしょうか。
翻って考えてみると、現在の日本の外務省職員また政治の延長としての国防をつかさどる防衛省の軍務職員にも事務職員にもこのようなことを見抜く外交センスが欠けているのではないでしょうか。
また見抜いたとしても、自身の保身のため、自説は隠して、大勢に迎合してしまうのではないのでしょうか。
これは日本が世界のリーダーとして人類を危機から救っていくためには必須の能力と考えます。
宮崎さんのメルマガがそのための一助となることを期待いたします。
    (ST生、神奈川)


(宮崎正弘のコメント)ハルノートの問題点を抉ったあと、最後の落ちが良いですね。
 日本の官僚から「お国のために」「天下為公」の発想が希薄になりました。防衛庁スキャンダルも外務省スキャンダルも大分県教育委員会も、みんな同列です。背景にあるのは、日本人の劣化でしょうけれど。。。



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(読者の声4) 北京五輪に対するウイグル独立組織の「犯行声明」ですが、7月26日付けの「産経新聞」がワシントン=山本秀也特派員報道として次のように伝えました。

「中国雲南省の昆明市内で路線バスが連続爆破された事件で、米バージニア州のテロ情報収集・分析企業、インテルセンター社は25日、新疆ウイグル自治区の中国からの分離・独立を叫ぶ「トルキスタン・イスラム党(TIP)」が犯行への関与を認めるビデオ声明を出したと発表した。声明は五輪関係施設に対する新たなテロ攻撃を予告する内容となっている。声明は事件2日後の23日付で、「雲南におけるわが聖なるジハード(聖戦)」と題されている。声明でTIPのセイフラ司令官は、「五輪開催の停止を求めるわが党の警告を中国当局は無視した」と、犯行の動機を説明した。

 その上で、「われわれの目的は五輪関連の最も重要な施設を標的とすることだ。これまでにない新たな戦術で、中国中央部の数都市に対する攻撃を試みる」と、新たなテロ攻撃を予告した。これまでの犯行として、声明は昆明など雲南省内での路線バス爆破のほか、上海でのバス炎上(5月)▽浙江省温州での対警察テロ(7月)▽広東省広州でのプラスチック工場爆破(同月)−を「TIPの志願者」による犯行として挙げた。
 TIPは、米中両政府がテロ組織として認定している新疆ウイグル自治区の組織「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」と同一組織とされ、今年5月に中国支配への闘争を挑む「聖戦」の宣言が情報機関に入手されていた。
 ビデオ声明の真偽を確認する他の情報はこれまで伝えられていない。在米のウイグル人組織「ウイグル・アメリカン協会」(UAC)では、こうした「テロ情報」を理由に、「中国の治安当局が同自治区での弾圧を強めている」として、非難する声明を今月に入り発表している」。

 と以上が産経報道全文です。
北京から帰られてばかりの宮崎正弘先生、北京ではこの報道はどのように受け止められていますか?
        (KY生、愛媛)


(宮崎正弘のコメント)この犯行声明が本物かどうか、すなわち、本当にバス爆破を、この組織がやったのかどうかを含めて、真偽のほどを確定できないとする評価が多かったですね。
 偶発事故も、他派セクトの行動も、宣伝に用いる派閥がありますから。
 なにしろウィグル独立運動は大きく概括して二つの流れがあり、「東トルキスタン独立」の過激派、穏健派。くわえて東トルキスタンではなく、「ウィグルスタン」としての独立を主張するグループなど、西側情報機関の解析では十五派があり、一説には60セクトがうごめいており、とてもとても抜きんでた指導者が出ない限り、運動の統一は難しいというのが現実です。
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