国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2008/07/02


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
    平成20年(2008年)7月2日(水曜日)弐
通巻第2238号 
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 モンゴル総選挙、流血と争乱、混乱の巷へ
  鉱物資源が眠るゴビ砂漠開発と外資導入が政策論争の争点だったが。。
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 ウランバートルは砂漠のオアシス。
 行くと衝撃を受ける最初の珍事は、えっ、砂漠の真ん中の交通渋滞である。
 チンギスハーン空港から市内の直前までは羊、牛、ヤクなどが優雅に道路を歩く。
 市内へ入るや、どっと渋滞、ひとつの交差点を越すのに十分、十五分かかる。クルマの洪水、遊牧民は駱駝と馬より、近代文明の利器を選んだ。

 08年6月29日にモンゴル国民大会議(国会、定数76)の選挙が行われ、旧共産主義政党「人民革命党」が大勝したと伝えられた。

 与党=人民革命党は露西亜の影響が強く残存するが、獲得議席数は過半を超えて46,逆に最大野党の民主党(改選前議席23)は現状維持にとどまった模様、選挙管理委員会は7月10日に最終結果を公表する、とした。

 冷戦の終結を機に旧ソ連の楔から解き放たれたモンゴルだが、ガソリンと生鮮食糧品の急騰による猛烈インフレで国民の不満が高まっていた。
 貧民窟には羊肉しかなく、最大のスーパーマーケットには海外のあらゆる贅沢品が揃うが、これは韓国企業経営。その豪華スーパーの隣りに聳える最高級チンギスハーンホテルは五つ星、なかで食事をすると銀座並みの料金。

 貧富の差の激しさ!
 窮地に立った与党・人民革命党は人気の高いバヤル氏を突如、党首に起用し、鉱物資源法の改正案を提出した。

これはモンゴル有数の財産=ゴビ砂漠に眠る銅、石炭、金などの開発と収益の分配を国民に還元するとしたことで与党への支持が拡大していた。
メディアが与党よりなので、「国民へ還元」というスローガンが利いた。
そのうえ、前回(04年)総選挙で両党ともに過半数に届かず政治的混迷が長期化したことを国民が嫌っていた。

  日本で話題となったのは大相撲力士の立候補である。
ウランバートルで野党・民主党から立候補した大相撲元小結の旭鷲山(ダバー・バトバヤル)はトップ当選した。
余談だがウランバートル市内に林立する広告塔は、旭鷲山と白鵬ばかりで、かの横綱・朝青龍のCMは滅多にお目にかかれない。

 旭鷲山は06年に大相撲を引退しモンゴルへ帰国、実業家に転身していた。ウランバートルで評判を聞いたが、特段に良かった。
かれは深刻な貧富の格差、環境汚染に立ち上がって政界進出を決心した。
選挙区は定数4議席に対して、23人が立候補した激戦区だった。抜群の知名度でトップ当選を果たした。


▼ゴビ砂漠の鉱物資源は誰のものか?

さて7月1日時点の、中間集計の段階で野党・民主党党首のエルベグドルジ(元首相)は「ウランバートル市内の二つの選挙区に不正があった」と批判をはじめた。
このため、最大規模の争乱が起きた。

 各地で抗議デモが展開され、ウランバートル市内の与党・人民革命党本部に野党支持者とみられるモブが投石をはじめ、放火した。
 付近に駐車していたクルマが横転させられ放火、手の付けられない状態となって1500名の警官が動員された。

警官隊は催涙ガス、ゴム弾、放水で応じたが負傷者が相次ぎ、日本人ジャーナリストが重傷を負った。
 エンフバヤル大統領は7月1日、非常事態宣言(夜間十時ー五時は戒厳令。民放のテレビ放送を禁止)をだした。

 モンゴルはアラスカほどの広大な領土に人口は僅か五百万。一人あたりのGDPは1500ドルとされる。
 唯一の外貨収入である鉱物資源は、これまでにも外国資本(とくに中国)との黒い噂が絶えず、これが対中国非難に繋がっていた。

 「与党の改正案は鉱区開発への外国資本呼び込みと利益の還元をモンゴル有利にしようとするもの。対して野党は政府が開発費を投じた鉱区はあくまで51%以上を政府が所有するとして譲らなかった」(ワシントン・タイムズ、7月2日付け)。
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(読者の声1)貴誌メルマガ2237号の宮崎先生の下記のコメントで、
 中国では「『改革・開放』以来の変化はと言えば、この三つのピラミッド(皇帝、兵隊、奴隷)の構造に『中間層』が出現し(つまり民間企業と外資系に勤めるエリート層)、支配者側が制御のノウハウを模索しているのが、いまの共産党王朝のジグザグ路線の顕著な特色と言えそうです」
とありました。

であるなら、その「中間層」が、もし改革に動けば、それが「ブルジュア革命」ということになりますね。
共産王朝の貴族が新興ブルジュアジーから収奪ばかりしていると、ブルジュア層も「革命に立ち上がる」ということでしょうか。ならば、秤がどちらに振れるかを決めるのは、「軍部」がどちらに立つかということでしょうか。
    (KI生、尼崎市)


(宮崎正弘のコメント)ちょっとニュアンスが異なると思います。
 郷紳は知識人でもあったので、毛沢東は皆殺しを命じた。だから農村には知識人が皆無となった(清朝末期に農村には塾長的な知識人がいて「吏」を補完した。これを「郷紳」と言った)。
蒋介石は台湾でも同じことをしようと有意な知識青年を片っ端から殺しました。
 ところが日本時代の五十年間の蓄積があるため台湾には知識人が多かった。内地と同様の教育をしたのが、日本の統治でしたので、台湾には夥しい知識人の層ができていたため、蒋介石占領軍は途中から方針を変えます。
 台湾に存在するユニークな制度は「里長」です。伝統的「郷紳」でもなく、地区の民生委員的な、町会長のような独自のシステムが作用しており、しかも選挙では、この「里長」が国民党の集票マシーンとなるのです。

 さて毛沢東の文革は大学を十年間閉鎖した。このため文革世代にはまともに漢文も読めない層がかなり存在します。
 ブルジョアとは財産的配分でそうかも知れませんが、西側と決定的に異なるのは「封建社会」を通過していない中国。社会構造が古代のままの基層があって、その上に欧米的中間層がいますが、この層は国家がどちらへ行こうが関係が無いのです。
 自分さえよければ、庶民が飢えて死のうが関わりたくない。というのが中国の知識層の大多数です。
ブルジョア革命?89年に一度失敗し、次に共産党王朝を知識人や民主活動家が転覆させるなどというシナリオは実現性が薄いのではないでしょうか。
 もしあるとすれば、法輪功などの組織力と、抜きんでた指導者の出現に待たなければなりません。
「太平天国」の洪秀全のようなカリスマがでてこない限り、王朝を転覆させる革命には無理があります。
 むしろ曽国蕃のような鎮圧部隊(かれは清朝の権力を太平天国の占領地を復帰させようとした『愛国者』というより、太平天国の反乱を退治したら広東がごっそり貰えるというので、軍事指導者として立ち上がっただけ)が出てくるでしょう。げんにチベットを鎮圧した胡錦濤が国家主席ポストを抑えているように!




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(読者の声2)地方の書店に雑誌が来るのがちょっと遅いのですが、『週刊朝日』(7月11日号)を拝読しました。
 「志士はたとえ殺されても辱めを受けずーー許世楷台湾駐日代表に直撃インタビュー」は感動的でした。宮崎先生の問いに許世楷代表が真摯に信条、信念、台湾への思いを語られ、その篤い心情に心を揺らされました。
 まさに「志士は殺されても辱めを受けず」の言葉、日本人の精神を揺らす迫力がありました。
    (禄無びと、京都) 


(宮崎正弘のコメント)台湾の反日派はきわめて少数派でしかなく、大半が日本とうまくやっていきたいと望んでいます。
とすれば、ときおり尖閣問題で、中華思想組の暴走を黙認する台湾政府の遣り方は、あれは国民党内右派のガス抜き、とみたら良いと思います。
 馬英九は最初から最後まで日和見に徹し、正面に劉兆玄首相をたてて(内外からの批判の)楯とした。あれが当面の馬英九の遣り方とみて間違いないでしょう。
 台湾の権力中枢の内幕は複雑怪奇ですが、そろそろ実情が分かってきましたので近日中に、雑誌に書きます。
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(((((( 提言 )))))

 「西安事件学会」が必要

 私は日本人を近代史の反日宣伝から解放するためには、歴史の見方を個別レベルの南京事件の免罪解明から歴史の転回点である西安事件の謎の究明、そして真の黒幕スターリンの世界戦略の理解と、より大局的な高次の視点に移行してゆく必要があると思っております。
 中共の反日宣伝の最大の弱点は、実に西安事件にあり、これを取り上げると必ず張学良の個人的な反逆として究明を避け、沈黙隠蔽し遁走しようとすることが分かりました。

ということは西安事件が日本人解放の大きなカギなのです。
そこで日本の近代史研究家が世界史的な観点から西安事件をもっと取り上げ、内外に発信してゆくことを希望しております。
 支那事変の発端は、西安事件において蒋介石の降伏と支那統一放棄、そして対日攻撃方針の合意であり、蒋介石として葉満洲事変が方針転換の原因ではありません。
米国が東京裁判で満洲事変原因論を主張したのは、西進アジア植民地主義により満州を狙っていた米国が日本の満洲帝国建国で潜在利権を奪われたとして日本を滅ぼそうと決意した、即ち本音を白状したものと理解できます。
したがって日本には南京学会に続き「西安事件学会」が必要と思います。
(落合道夫)

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((編集部から))
提言の落合氏に関して下記の書評を再録します。
   (再録)
落合道夫『スターリンの国際戦略から見る大東亜戦争と日本人の課題』(東京近代史研究所)
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 この本は読みやすくわかりやすく、近代史の謎を箇条書き網羅の入門編にもなっている。
 たとえば「西安事件」に関して、みよう。
 あと一歩のところまで、毛沢東ゲリラを追い詰めていた蒋介石が西安郊外の華清池で寝ていると、裏切りにあって、張学良、楊虎城の部隊に襲われた。
 蒋介石は裏山の崖を逃げる。
しかし反乱部隊の計画は周到、結局、蒋介石は反乱分部隊に拘束され、宋美齢が暗躍し、助命され、一転して国民党は共産党と握手し、第二次国共合作は抗日へと向かった。
 以後、蒋介石は張学良を許さず、湖南省の山奥にある鳳凰山へ監禁し、台湾へも同道して監禁し、とうとう最後にハワイへ移住を許した。
事件から半世紀もあとに、産経新聞のインタビューに答えた張学良だが、その回想的証言はどれほどの信憑性があるか?

 評者(宮崎)は、五月に湖南省鳳凰まで足を伸ばしたついでに、さらに山奥の、バスで三時間以上かかったが、鳳凰山に廃寺のように残る鳳凰寺へ行ってみた。
 中国人でさえ滅多に来ない山のなか、急な階段を百段ほど登攀して、朽ち果てそうな山門をくぐると朱のはげ落ちた、廃屋のようなぼろぼろの寺があった。
階段がぎしっと軋む音をたてて、床が抜け落ちそう。二階の一番奥に張学良が寝ていたという寝室があるが、廊下の板が腐りかけ、ぎしぎしと厭な音を立てた。
ここにも張学良は、一年八が月間も幽閉された。なるほど山奥も山奥、これじゃ逃げようという気もうせるほどの辺境だった。
 一方の楊虎城は重慶の歌楽山で処刑された。

 さて西安事件は、結局スターリンの命令で行われ、蒋介石が妥協したのはモスクワに人質に取られていた息子、蒋経国の帰国という条件だった。
 本書はあらゆる事件を時系列に網羅的に、しかし簡潔にすべてを解説し、その背景にあった、想像を絶するほど大胆なスターリンの謀略を傍証する。
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 なお本書は一般書店では売られていない。希望者は送料込み 3440円
 郵便振込み 00140−0−373193 東京近代史研究所
 〒番号、住所、氏名、電話。本の題名を一緒に書き添えて申し込む。
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宮崎正弘の新刊 
『北京五輪後、中国はどうなる』(並木書房、1680円)
重版 7月8日出来
(↓下記アマゾンからも申し込めます。送料無料)
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宮崎正弘・黄文雄共著
『世界が仰天する中国人の野蛮』(徳間書店、1575円)


(( 宮崎正弘のロングセラーズ ))
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』 五刷!(KKベストセラーズ、1680円)

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『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』(徳間書店、1680円)
『世界“新”資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
『出身地でわかる中国人』増刷!(PHP新書)
『三島由紀夫の現場』(並木書房)
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  • 名無しさん2008/07/02

    宮崎さんの骨のある筋の通った論評、いつもありがとうございます。ところで、中国・四川の大地震のその後は、どんなようすでしょうか。一般のマスコミではほとんど見かけません。マスコミ特有の「あいきっぽさ」でしょうか。

    日本の岩手・宮城地震のせいでしょうか。(梅爺、品川)