国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2008/07/01


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
    平成20年(2008年)7月2日(水曜日)
通巻第2237号 (7月1日発行)
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<< 今週の書棚 >>

神秘的な自然と崇高を描いたドイツ浪漫派の奇跡をたどる
 保守の魂は凡庸な“美”を越えて、真実の保守は“崇高”をもとめよ
                      評   宮崎正弘


新保裕司『フリードリヒ 崇高のマリア』(角川学芸出版)
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 本書をいただいて二ヶ月、なにか取っつきにくく、そのまま書棚に飾っていたのも手に取るのが強(こわ)かった。なぜか名状しがたい畏怖が読む前に立ちふさがったのだ。
書籍の題名からだけではない。小生にとっては未踏の領域の美術を論じていると思ったからだ。文藝評論家の論じる美術論は、やっかいという先入観もあった。
 なにしろ新保氏の前作は「海ゆかば」の作曲家、いまは埋もれてしまった愛国浪漫の信時潔を論じた労作であり、こんどのテーマはうんと飛躍して外国の画家だからである。
 旅行に携帯して、先月は温泉で読もうと思惟しつつも、他の急ぎの書評本があって結局、宿で繙かずじまいとなった。
 週末にようやく読んだ。
三時間ほどかかったが、先入観が強すぎて、旨い物を食べなかった学生のような後悔があった。これは美樹論ではなく、保守哲学を絵画の視点から論じているのだ。
 読みながら評者(宮崎)の脳裏に去来したのはアイバン・モリス『高貴なる敗北』だった。
 
 前置きが長くなった。
 フリードリヒはドイツ浪漫派を代表する画家で、代表作が「海の上の月の出」。1822年、ベルリン国立美術館所蔵と解説がある。
 その絵画は夕焼けの海原に船出する二隻の帆船を画面中央の左へ配置し、右より中央に岸辺の岩石に座って夕日の残照のなかに、帆船を見送っている一人の修道僧と二人の女性。
どう見ても寂しい雰囲気ながら高貴な印象が全体に溢れている。この本の表紙にカラーで掲げられている。
 扉を開けると口絵には、これもカラーで「海辺の修道士」。1808年―10年とあり、ベルリン国立美術館所蔵とある。
 画面の上、四分の三が海と雲という奇抜な構図に修道士がひとりだけ、海辺にたって、雲海の彼方にかすかに光る光線を見上げている。
言いようのない崇高さを表現している。

 保守主義の哲学者で、誰もが知っているのはエドモンド・バークだ。
 ところが、バークが28歳の時に美術論を書いていたことを小生は知らなかった。
 『崇高と美の観念の起源に関する哲学的研究』で、新保裕司氏によれば、「この作品が画期的だったのは、崇高という観念を、美と対比して強調したこと」であり、それは「美が均斉、秩序、調和、快などにもとづくのに対して、崇高は、雄大、悲劇、畏怖、高揚などに関係している」とする。
 ようするに「美は人間の尺度の中に収まっているが、崇高は人間を越えたものに起源をもっている」という。

 おそらく本書執筆の動機はつぎの箇所であろう。
 新保氏はこう書いている。
 「崇高を感受する力が、今日の時代にとって重要なものに思われる。現代、保守的な風潮が強まっているが、美というものしか分からない感覚の保守は、ひよわなものである。真の保守主義には、崇高という概念がしっかりと貫かれていなければならない。憲法にしても、教育にしても、さらに靖国問題、皇室問題にしても、この崇高の観念に深く根差さなければ、垂直性をもって立つことはできないからである」(本文21p)。

 さて評者は、幾枚かの挿入されたフリードリヒの絵画のなかで、『雲海を見下ろすさすらい人』(1818年、ハンブルグ美術館所蔵)に感動した。
この絵画には「雄大、悲劇、畏怖、高揚」が説明の必要もなく感動的に描かれているのである。
 この絵には既視感があった。
しばし思い出せなかった。というより美術館めぐりの趣味のない者として過去にルーブルにもオルセーにも、エカテリーナのエミルタージュ美術館にも行っているが、何百もの傑作を一度にみると覚えきれない。
『雲海を見下ろすさすらい人』は、CDジャケットに多用され、欧米の本のカバーにも使われ、日本でもハイデカー『ニーチェ』(上下、平凡社ライブラリー)にも使われているとの解説を読んで、どこかで見たことを思い出した。若き日に精神を揺さぶられた絵画だった。その感動の源泉を咀嚼できないまま歳月を経過したが、新保氏の『掘り起こし』作業を通じて、ようやく原点にいきついた。

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 根性も自力更生の努力もしない中国人社会で
   五輪後も経済成長が持続できると考えるのはおかしくないか
                       評   宮崎正弘


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日下公人・石平『中国の崩壊が始まった!』(ワック)
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 北京五輪後、中国経済ががたがたと崩れるのは、どうみても明らかであるというのが二人の対談の結論。まことに明々白々の未来予測を、中国史と日本史を冷徹な態度で、本質を見透かして論じあっている会心の対談である。
 一週間ほど前にテレビで日下氏と御一緒したおり、「この本、売れてましてね」と嬉しそうに言われた。
読んでみて、「なるほど、これは売れる要素がある」と思った。
 なにかといえば、本来わかりきっていて誰もまじめに説明しなかった事実を、さらりとのべあっている箇所が、おそらく若い世代に受けたからだろう。
 たとえば戦後の中国は、なにで食べてこられたかといえば日本の財産をただで接収したからだが、その後、一度も機械設備のメインテナンスをやらずに改革開放まで突っ走った。
 その後、西側へでた技術者も、旺盛にハイテクを学んで帰ったが、それを公のためには使わず、独立して起業家となった。
そのあとも、改革改良刷新革新を行わず、稼ぐだけ稼いだのも、制度上、償却という発想が無いからだった。
 石氏が言う。
「中国では国有財産を汚職で食いつぶすことによって、この二、三十年間、資本の蓄積が行われてきた」。
 日下氏が補う。
「共産党幹部が経営者になって、自分の親戚をポストに就けて栄耀栄華をむさぼったのが、毛沢東社会主義の第一期。つぎは農村から搾取した。公糧(現物税)というとんでもない農村搾取」。
「人民公社とはシステム搾取」(石)であり、「民間資本を国家がみんな奪った」(日下)
大発展にみえる昨今の中国経済だが、食品を造れば毒入り、工業製品の技術は「中味がない」。
要するに毛沢東以来の「自力更生」というのはかけ声だけで、まったく戦後日本のように廃墟から立ち上がった「自力」がないではないか、と核心を突いている。
だから五輪後、どうあがいても失速が免れない中国だが、「根性」を見せたらどうだ、と日下氏が最後に言っている。
石さんの回答がないが、じつは、この箇所、石さんに通じていないのではないか、と評者(宮崎)は思った。
というのも中国語には「根性」という語彙はないからだ。「根性」って、中国人には理解不可能。ただし「劣根性」という言葉はありますが。。
 すらすら読めて愉しくなる本でもある。

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(読者の声1)早速、『週刊朝日』(7月11日号)を駅で買い求め、真っ先に先生の記事を拝読しました。
 「志士はたとえ殺されても辱めを受けずーー許世楷台湾駐日代表に直撃インタビュー」です。
不本意にも石もて追われるが如く許世楷・駐日台湾大使が台湾国民党の策謀によって日本を去る、という印象がありましたから、宮崎さんの直撃インタビューによって許さんが心情を吐露され、意外に意気軒昂と、しかも親日の態度は揺るぎなく、最後に宮城岩手の地震見舞いを済ませて任地を離れられる由。
感動的な記事でした。有り難う御座いました。
台湾ファンとして一安心です。
     (YH生、岐阜)


(宮崎正弘のコメント)週刊紙としては異例の三ページを割いていただきました。むろん、この紙幅ですべてを語り尽くせるというわけでもありませんが、広く台湾の主張が理解されるのではないか、と思います。
 ご注目有り難う御座いました。



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(読者の声2)貴誌2236号で、宮崎先生のコメントは、中国の新しい「中間層」に注目されています。
旧中国には、あの紅い太陽が無残に絶滅した、土着・頑迷、しかしあるいみで健康な「中間層」があったと思われます。戦後の左翼的史観が中共の受け売りで、「土豪劣紳」と呼んだ社会勢力です。
徳富蘇峰は日露戦争後の明治39年に、シナを旅行して『七十八日遊記』を出しました。蘇峰の大眼力は清末、旧中国の政治の本質をとらえて、こう言っています。
「支那は最悪の役人政治たると同時に又最悪の平民政治たり・・・」と。
なぜならなるほど役人は無暗に威張っているが、それは表面のこと、内輪に立ち入ってみれば、役人どもは常に治下の人気を失わぬ工夫にのみ心を労している。総督とか巡撫とか、至大至強の権力があるようでも、世論をはばかって何事も思い切ったことができない。
たとえば剛直とか潔白とかいう張之洞のごときでさえ、鉄道線路の測量に際してある地方の漁民から不服を唱えられたとしていたずらに迂回した線路を選ぶしかなかった。
支邦では浮言流説は、ややもすれば議会以上の勢力を有する”と。
じつは彼らこそが、旧中国の主人であり、虚喝を主とする皇帝権力、大概でいえばこれは見かけ倒しだったかと。
しかし、比較して現代の中共のシステムは、昔の皇帝など超絶して、恐るべき強大かつ強靭な部分があるのではないのでしょうか?

ところで私は、60年前の蘇峰の戦後日記を読んでいて、100年前の蘇峰の中国旅行記にたどり着いたのですが、つくづく、かつての日本の骨の太い常識に比べ、われら戦後史学の見当はずれ・不毛を痛感せざるをえません。
これはついでに、同書中から、「孔子学院」を全世界的に展開する温家宝先生に贈りたき、蘇峰の言葉です。
「いささか矯激かもしれぬが、論語を逆さまに読めば支邦人の古今にわたる情態を知るためこんなに格好の本はない。君子は義にさとり、小人は利に悟るの句では、いかに支邦人が利に敏かがわかり、まれに利を言うでは、いかに支邦人が常に利を語るかが分かる。食不語では、いかに食事のとき彼らがおしゃべりか、子不語怪力乱神では支邦人がいつもそれを気にかけていることが。思うに、孔夫子は、その病に応じてその薬を施したものであり、その病は今なお依然としていると存じ候」
温先生、もって如何となす?
(石川県、三猫匹)



(宮崎正弘のコメント)徳富蘇峰しかり、長野朗、内田良平、内藤湘南、などなど。
 シナの本質を見極めて、日本人に警鐘を乱打した論客は夥しくいました。
 戦後、かろうじて合格点を差し上げられるのは、宮!)市定と岡田英弘だろう、と上記に紹介した書籍で日下公人氏が指摘しています。ちなみに氏はつづけて歴史的な中国理解は空海、最澄、菅原道真、賀茂真淵、冨永仲基、内藤湖南の六人を挙げています。




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(読者の声3) 7月20日(日)に許昭栄烈士の追偲会を開催
5月20日に無念の死を選ばれた元日本海軍志願兵、許昭栄烈士の命日にあたる7月20日に下記のように追悼し、偲ぶ会を行います。
台湾に関係のある方々にお集まりいただき、ご冥福を祈ると共に、映像を見ながらその人柄と業績を偲びたいと思います。

■日 時 平成20年7月20日(日)午後1時開場 1時半開会
■場 所 東京九段 靖国会館 偕行の間(靖国神社内)
■会 費 二千円
■連絡先 090-1534-6435(渡邊)FAX:03-3468-6405
■主 催 許昭栄烈士追偲会実行委員会
■協 力 財団法人台湾教会、高座日台交流の会、東京台湾の会、大阪日台交流協会、
     台南会、日本媽祖会、台湾研究フォーラム、日本李登輝友の会、潮音寺管理
     委員会、台湾出身戦歿者慰霊の会、英霊奉賛日台交流会、あけぼの会、アジ
     ア安保フォーラム、日台交流会
     (終了後、懇談会を予定しています)。



(宮崎正弘のコメント)武士道の国から、サムライ精神が消え失せ、台湾に武士道の魂が残っていた。許昭栄烈士は80歳の高齢にかかわらず志のために自死を選ばれたのでした。冥福を祈りたいと思います。小生も参加させていただく予定です。



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(読者の声4)南モンゴルのデモのお知らせです。
 広く志ある有志に呼びかけます。
中国共産党独裁政権による人権侵害および南モンゴル人を含む各民族への文化絶滅政策と 南モンゴル草原への自然破壊政策に抗議するために、人権状況改善の公約違反での北京オリンピック開催に反対するために、日本初の南モンゴルデモ進行を下記のとおり開催いたします。
皆さんの振るってのご参加をお待ちしております。 
              記 
【場所】港区六本木 三河台公園〜笄(こうがい)公園 
【日時】 平成20年7月5日(土) 雨天決行 
     13:00〜13:30   集会 (三河台公園) 
     13:30〜14:30  デモ 
     14:30      笄公園到着 (集会が出来るかどうか未定) 
          ※三河台公園(東京都港区六本木4丁目2番27号)
          東京メトロ日比谷線・都営大江戸線「六本木駅」より徒歩3分

                    南モンゴル民族支援デモ行進実行委員会 
                             モンゴル自由連盟党 



(宮崎正弘のコメント)先の「東トルキスタン」(つまり中国が併呑した「新彊ウィグル自治区」)独立を求める、日本で初めてのデモは、東トルキスタンの国旗が林立し、大成功に終わったと聞いております。こんどは南モンゴル(すなわち中国内蒙古自治区)の独立の気運が盛り上がる機会ですね。
 加油! 
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宮崎正弘の新刊 
『北京五輪後、中国はどうなる』(並木書房、1680円)
重版 7月8日出来
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宮崎正弘・黄文雄共著
『世界が仰天する中国人の野蛮』(徳間書店、1575円)


(( 宮崎正弘のロングセラーズ ))
http://www.bk1.jp/webap/user/SchBibList.do?keyword=%E5%AE%AE%E5%B4%8E%E6%AD%A3%E5%BC%98&genreCd=&initFlag=1&x=46&y=11
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』 五刷!(KKベストセラーズ、1680円)
『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』(徳間書店、1680円)
『世界“新”資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
『出身地でわかる中国人』増刷!(PHP新書)
『三島由紀夫の現場』(並木書房)
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  • 名無しさん2008/07/01

    北京5輪後の・・・購入して読ませて頂きました。本当にその後が大変な事態に成ると予想されます。日本企業はどうするのでしょう。・・今後もお願いします。

  • 名無しさん2008/07/01

    早晩崩壊に向かうであろう中国に対しての防御が何もない日本怖いものが有ります、大陸の人達の思考と日本人には天と地の違いあり、このことが金に眼の眩んだ三流国の政治家には分からないのでしょう。