国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2008/06/21


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
    平成20年(2008年)6月22日(日曜日)
通巻第2227号 日曜版(21日発行) 
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 石原莞爾を遠景において、昭和史の激動を人間模様で描く
  波瀾万丈の歴史を冷徹に冷静に考証学的に叙した傑作
                     (評 宮崎正弘)

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田中秀雄『石原莞爾の時代』(扶桑書房出版)
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 二日がかりで読み終わっての第一印象はと言えば、これを小説にしたら、もし北方謙三あたりがノベライズして近代の『水滸伝』のように日本と中国を股にかけた大陸浪人、東洋のマタハリ、匪賊に強盗団、対照的な満鉄エリート、理論家、国民党、共産党、その間隙をぬうスパイ、悪徳商人。
なんとも波瀾万丈の人生が描かれるのではないかと思ったのは、チト読後感としては不謹慎かも知れない。
 満州浪人を題材にとった活劇的な小説はやまほどあるが、小生が最高傑作と思うのは壇一雄『夕日と拳銃』(伊達順之助がモデル)。また当時の政治社会情勢がビビッドに描かれているのは松本清張の絶筆となった『神々の乱心』(文藝春秋)だ。
 (松本は歴史観が左翼だが、遺作はなかなかの傑作です)。

 さて本書は石原莞爾を主人公と題しながらも、石原は遠景にある。
生き生きと本巻で描かれるのは周辺にいて石原と深く交わった黒龍会の内田良平であり、仏教の碩学・田中智学であり、戦後ベストセラーを書いて参議院議員にもなった辻正信であり、板垣征四郎であり、川島浪速であり、大川周明である。ほかに戦後も活躍した木村武夫もでてくる。岸信介もちょっと顔を出す。
みんなそれぞれが単独で小説の主人公になる一癖二癖の持ち主、佐野真一が書いた甘粕なんて比じゃないって。
 大設計図をもとにして満州の国家経済を設計した影の主役は宮!)正義であり、裏面では中国人コミュニティへ深く関与して誠意と理想のために奔走して死刑になった伊達順之介であり、孫文を助け、最後には孫文に裏切られて散った多くの血気盛んな日本人の物語である。
 それにしても本書に宮!)正義がでてくるとは思わなかった。(宮!)正義に関しては小林英夫『日本株式会社を作った男』<小学館>に詳しい)。
以前、小生が金沢出身と聞いて、「もしかして、宮崎正義さんのお子さん?」と問われることがあった。石原莞爾と小林正義は昭和五年頃に満州で知り合った。宮!)はハルビンに長くあって、ロシア語を苦もなく操ったという。
この昭和を駆け抜けた偉人と小生とは縁もゆかりもない、単に郷土だけが同じという関係だが。。
 そういえば国民党幹部からは二十年ほど前に台湾へ行くたびに、「宮!)滔天先生のご親戚か?」と聞かれて苦笑したこともある。(この宮!)三兄弟とも無縁です)。
 ともかく第一章の主人公は石原でありながら、実際は内田良平のことに収斂されている。

 第二章の「シュンペンター」では、小生まったく知らなかった事実が叙されている。
 シュンペンターと言えば、ケインズとならぶ経済理論の祖にして、ルーズベルト大統領の対日政策に真っ向から反対した大経済学者、若き日に何冊か読んだ記憶があるが、夫人のエリザベスが、満州の経済と産業の研究家であり、しかも満州建国に肯定的であり、ルーズベルトを批判していたとは知らなかった。
 昭和十七年に彼女の編著の翻訳が半分、日本でもでていた。
夫妻の遺言によって戦後、シュンペンター夫妻の膨大な蔵書が、はるばる海を越えて一橋大学に寄贈されていたことも初めて知った。
 ともかく小生にとっては関心のある分野だけに面白かった。田中さん、有り難う。



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柘植久慶『戦いの三六六日』(ランダムハウス講談社)
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 フランスの外人傭兵部隊を皮切りにラオスでも実際の戦争を闘ってきた柘植さんは、帰国後いくつもの戦争を舞台にした小説を書かれてきた。
最近は軍事史学、軍人の戦略、はては軍事郵便などと、主に歴史にジャンルを移されて次々と新分野を開拓されている。
 才人である。
 こんどの書籍は、これまた一風変わっている。というより小生も、こういう本が欲しかった。
一日365日の日記スタイルとなっていて、その日のページをめくると、何が過去に起きたかという凡庸なコラムはどんな新聞にもあり、テレビのもコーナーがある。
 しかし本書のように、その日にどんな「戦争」があったか、その「戦争」の結末はどうなって、どういう軍人がいかなる指揮をしたかを、ダイアリーに纏めているのだ。リーダーシップを問う格言、箴言も毎日のダイアリー冒頭についていて、こんなスタイルの本は初めてではないか。

 たとえば、本日(6月21日)の項目を観よう。
 前の日の格言はクラウゼウィッツ。「相当の兵力をかなり長期にわたり、単なる陽動のために用いるのは危険である」。
 1900年の6月21日は義和団が列強に宣戦を布告した日である。

 近年も「愛国無罪」を叫び大使館に投石した某国の若者や、「日本との戦争を辞せず」と無謀なことを言った某国の総理大臣は、義和団とメンタリティが同じなのかも知れない。
 義和団はナショナリズムの高揚をねらった西太后の第五列で、狂信的グループの仕業だが、排外主義攘夷的なメンタリティの過激さは、イトーヨーカ堂を襲い、カルフールを襲撃にシャロン・ストーンに「死ね」と罵詈雑言をはく中国人と共通の瞬発的暴力を伴う。
 義和団は1900年の6月21日から北京駐在の外国人を片っ端から襲いはじめて、以後55日間にわたって、列強の公使館大使館は、攻撃された。
 チャールトン・ヘストン主演『北京の五十五日』という映画にもあったが、柴五郎率いる日本の精鋭部隊の北京突入によって、列強外交団は救助された。
このような狂気の中華ナショナリズムは、情報操作によって人工的に高揚される。

 因みに6月22日は「モラーの戦い」と「八王子の戦い」、「ナポレオンのロシア遠征」「独ソ開戦」といくつかが重なる。
 読みながら、こういうダイアリー風の本は年月をかけなければ作れないだろうと、その執筆の苦労を思い、柘植さんの「あとがき」を読むと、やはり若い時代から日記風にノートを創ってきた由。納得できた。
 


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小林よりのり他『誇りある沖縄へ』(小学館)
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 沖縄人がヤマトンチューにある種のルサンチマンを抱いていることは事実である。
 一方で、小林よしのり氏は、なにか保守論壇に対して一種ルサンチマンを抱いているのではないかというのが通読後の第一印象だった。
基本的には小林よしのりと、その周りに集まった沖縄の論客らの議論には迫力があって話題性にも富み、第一、この本はやけに面白いのだ。
 かなりの部分に賛成できるし、大江健三郎を最悪の偽善者と非難するあたりは賛意を表したい。
ところが最後のあたりへくると、嘗て追い出されたつくる会へのルサンチマンが祟っているのか、保守が告訴人となった、沖縄における大江健三郎被告の思想闘争としての裁判を、返す刀で小林氏が痛烈に批判していて、どうも論理が矛盾しているのである。
 台湾で小林よしのり翻訳漫画本がでたおり、焚書のごとくに路上に積み上げられ、日章旗とともに焼かれ、しかも小林は暫時、台湾への入国禁止となった事件がおきた。数年前だった。
 めげずに闘って、さらには『わしズム』という雑誌も創刊されて、それなりにファンが多いと聞いている。当該雑誌を見たことがないが、題名のとおり、そのゴーマニズムに本書は満ち満ちて、明るいほど楽天的な自己中心主義。小林的な、あまりに小林よしのり的な「わしイズム」で貫徹されている。
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宮崎正弘の新刊
『北京五輪後、中国はどうなる』(並木書房、1680円)
 詳しい内容はここ ↓
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宮崎正弘・黄文雄共著
『世界が仰天する中国人の野蛮』(徳間書店、1575円)


(( 宮崎正弘のロングセラーズ ))
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『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』 五刷!(KKベストセラーズ、1680円)
『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』(徳間書店、1680円)
『世界“新”資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
『出身地でわかる中国人』増刷!(PHP新書)
『三島由紀夫の現場』(並木書房)
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創刊日:2001-08-18  
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  • 名無しさん2008/06/22

    柘植氏の小説家としての才は認めますが、

    彼の経歴は虚偽です。

    外人部隊にいたこともありません。

    ラオスは取材で赴いただけ。

    ただし、氏の作品は説得力があることは確かですね。