国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2008/06/04


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
    平成20年(2008年)6月4日(水曜日) 
通巻第2210号 
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ヒラリーは往生際が悪いのか、ひょっとして別の思惑で動いているのか?
  もしヒラリーが独立候補で参戦したら、次期米国大統領は誰に?
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 ▲ヒラリーの目にも涙

 ヒラリー・ローダム・クリントン。米国歴史初の女性大統領が誕生するかもとマスコミも応援し、民主党内のエスタブリシュメントの多くが支持していた。春までは圧勝の勢いだった。
突如、騎虎の勢いをなくした。
オバマに投じている民主党員は、単にチャンジを望んでいるだけとすれば、オバマは第二のカーター化し、世界の安全はがたがたに脅かされる。

その意味ではオバマ vs マケイン となれば多くはマケインの勝利を望む。だが、「そこに最悪のシナリオがあるとき、事態は必ず最悪へぶれる」(マーフィーの法則)。

ヒラリーは四年後を狙って、今回はおそらく次期大統領レースをあきらめるだろう。
 だが、もし独立候補として参戦してきたらどうなる? 明らかに民主党は分裂選挙、その分、共和党が有利になりそうだが、マケインはしかしながら、まだ共和党のコンセンサスを得ていない。
保守本流が、いまだにマケインに懐疑的なのである。

 ともかく次期米国大統領の座に一番近いところにいる一人がジョン・マケイン候補。ベトナム戦争の英雄である。
 マケインはブッシュ大統領のイラク戦争を最初から熱烈に支持してきた。一度もぶれず、一貫して、それも熱狂的に。最近は「もし必要ならば百年でもイラクに駐留する」と吠えている。

 しかしそれだけの発言録を拾ってマケインが戦争好きなタカ派と判定するのは短絡的である。軍人とは、じつは一番戦争を望まない種族であり、安全保障への考え方は正統的かつ保守的である。
 マケインの持つランボーの印象は、弱いアメリカを印象づける民主党候補に比べるとパワフル、だが「戦争屋」を嫌う共和党の保守本流が選挙本番で協力するのか、しないのか、が今後の選挙戦本番までの見所である。


 ▲ネオコンが大挙、マケイン陣営にはせ参じている

 英誌「インデペンダント」(4月7日付け)はマケインの十九歳になる息子のジミーが来年海軍アカデミニーを卒業する前に、すでにイラクへ従軍している事実をすっぱ抜いた。米国マスコミが意図的に報じなかったのは大統領および大統領候補の家族の動向を伝えないという伝統的な協定があるためだ。
 だがこの美談は覆い隠す必要もなく、マケインにとっては追い風となる筈である。
 
さてビジネス優先、そのためにはたとえ北京五輪開会式ボイコットが欧州諸国の首脳の合い言葉になろうとも北京を非難しない現ブッシュ政権を力強く底辺で支えるのは共和党の保守本流である。マケインではない。
 
初期のブッシュ政権を取りまいたネオコンは二期目からどっとはじかれた。
北朝鮮問題に強硬で、日本の拉致家族の力強い味方だったジョン・ボルトンも去り、ウォルフォウィッツ元国務副長官は世銀総裁に横滑りしたが、それも追われていまや冴えないシンクタンク勤め。残っているのはチェイニー副大統領くらい。

 マケインは現在、依然として保守本流の支持を固めておらず、タカ派的イメージをむしろ消すことに躍起。共和党内ではいまもマベリック(異端児)呼ばわりされている。
 
マケインはロシアに対しての強硬姿勢をこれまでの演説から推察できるが、もっとも頻繁に外交政策の助言を請うているのは意外にもヘンリー・キッシンジャー元国務長官だ。
 本心からキッシンジャー理論に傾倒しているのか、ジェスチャーなのかは不明だが。

「昨年だけでもマケインはキッシンジャーならびにシュルツ(レーガン政権下の国務長官)と十五回から二十回、面談したり長電話で会談した」(NYタイムズ、4月10日付け)。

 キッシンジャーは共和党タカ派からは蛇蝎のごとく嫌われるハト派、親中派、そして旧ソ連時代の容共派として知られる。対中強硬派から言わせれば「北京の代理人」だという。


 ▲キッシンジャーと異常接近

 「キッシンジャーが次期米国大統領に一番近い男に影響力を与えては危険である」(同NYタイムズ)とばかり、ネオコンが大挙して、マケイン陣営に加わってきた。
 イラク戦争のシナリオを書いたといわれるロバート・ケーガンを筆頭に、前国連大使ジョン・ボルトン、保守イデオローグの長老格ウィリアム・クリストフらである。

 ケーガンは湾岸戦争、イラク戦争以後の米国外交の哲学的論理を構築したネオコンのリーダー格だが、リバイアサン的古典的政治観の持ち主。ボルトンは米国きっての親日派、そしてクリストフは米国版『正論』(『STANDARD』誌)の編集長。息子アービンは歴代政権の安全保障担当補佐官である。

 パパ・ブッシュ政権下で安全保障担当官だったローレンス・イーグルバーガーは「まだ共和党陣営の中で、かつてのコーリン・パウエル・アミティージ連合 vs ネオコン連合の対立という図式はまだ存在しない。
しかもマケインはどちらに傾いているわけでもないが、ネオコンが大量に周辺を固めるとなればハト派が遠のく可能性もあるだろう」としている(パウエルはブッシュ政権第一期の国務長官。黒人)。

 しかしそんなことは選挙で勝利してあとのはなし、いまは民主党予備選でヒラリーの敗北を見極めたあと、オバマ候補に如何に大差で勝つかの選挙ノウハウにエネルギーを集中するべきであろう。

 しからばキッシンジャーは、現代世界をどういう風に分析しているのか。
 かれは現代史を911テロを分水嶺としたり、その前の冷戦の終わりを分岐点としたりする新解釈派に属さず、もっと巨視的に歴史を裁断している。
  ハンチントンの『文明の衝突』やらポール・ケネディの『大国の興亡』的な歴史観とも距離を置いている。
 
以下、キッシンジャー論文を「ヘラルド・トリビューン」(4月8日付け)から要約すると、現代世界は(一)歴史的な大西洋同盟の変質の過渡期にあり、(二)イスラム世界の既存主権国家への再編的な挑戦が渦巻き、(三)大西洋からアジア西太平洋へのパワー・シフトという地殻変動の三つが世界情勢変容の基調の変化とする。


 ▲反日家キッシンジャーの世界観とは?

 「冷戦後、欧州は統合に向かう潮流のなかでNATOの再編の合意を試しているのがアフガニスタンである。意見の不一致が如実に現れ、一方でNATOの新規拡大はロシアの反対に遭っている。米国の従来的覇権主義は欧州の抵抗を受け、NATO憲章とEU憲法はお互いに米国の関与に抵触しており、欧州全体の合意はまだ得られていない。
 他方、中東は二つの大戦の結果によるオスマン・トルコ帝国の解体過程で、言語的宗教的に分断されず主として欧米列強の利益のもとに人工的国民国家が形成された。現在、挑戦をうけているのはこの欧米列強が制定した人工的国境であり、過激イスラム思想はコーランに忠実であり、国境概念は通俗的とするイスラム過激思想の跳梁を前に米国が中東から一方的に撤退するという選択肢はあり得ない。

 アジアならびに西太平洋地域のバランスはこれまで日本、中国、インド、そしてインドネシアは旧宗主国である欧米と、ときに同盟あるいは協力関係をそれぞれが別個に築いてきた。ところが均衡が破れ、中国のパワーが突出した結果、その対策として米中緊密化が生まれたのだ。環境、宇宙、海洋そのほかの方面で、経済のグローバル化が一方では進展しながらも軍事力の不均衡は破壊的にもなり、米中の役割がいや増すだろう」。

 保守論壇の泰斗、エリック・エリックソンは『ワシントン・タイムズ』(4月10日付け)に寄稿して「米国は西側首脳やチェコなどの首脳が呼びかける五輪開会式ボイコットでは物足りない。五輪競技会そのものをボイコットせよ」と主唱している。
 キッシンジャーと対局にある対中タカ派の保守の意見を、このエリックは代弁していると見て良い。

 だが貿易重視の商業主義、市場重視に立脚する共和主流派の考えはブッシュ政権の立場でもあり、キッシンジャーのような実利主義的戦略が好みである。
 したがって彼らには小さな台湾や無力なチベットがどうなろうが、じつは中国さえ付き合って監視しておけば良い、という考え方に走りがちであり、日本軽視の発想に流れやすいことがわかる。

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(読者の声1)貴誌に以下の読者の方のご発言がありましたのでコメントします。
貴誌「今後は日本からのODA援助は無償援助のみとし、実際に使われる末端まで監視できる体制を確立した上、日本の官僚の利権としないメカニズムの確率が緊要と考えます。 (ST生、神奈川)」。(引用終わり)。

日本人は途上国援助というと写真に移る末端の国民に日本の金や物が届くと思うが、実際は権力者集団と家族で分配されベンツに化けてしまうのが現実である。
有償にすると多少管理が可能になるがそれでも債務不履行が横行する。
日本人が債務を管理しようとすれば内政干渉として拒否される。
また援助を有難がるか、というとそうでもない。というのは、彼らは敏いので日本政府側に何か政治的な利益があるのだろうと勘繰るのだ。
ということで援助は結局政権への賄賂になってしまう。その点中共ははっきり割り切っているので、話も早いし、効果も出るのである。
途上国への援助問題は、日本人の「人助け」という国内的発想の延長にはないということである。しかしそれが理解出来なければこの問題には縁がないのである。
     (MC生)


(宮崎正弘のコメント)四川省地震の被災地で最悪の問題とは何か? 現場を軍が仕切っていることです。人殺しの専門家が救援のエキスパートを差配しているのはポンチ絵ではないでしょうか。



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(読者の声2)佐藤優氏がタダ者でないことは、『私のマルクス』を手に取るとよく判ります。浦和高校時代に社青同に入り解放派に属していたと謂いますから思想的に早熟であったことは確かです。
同志社大学の神学部生になって社青同から抜けますが、受洗して神学徒系ノンセクトラジカル路線をひた走ります。これは私の命名。(笑)。
神学部の集会を掻き回し粉砕し民コロ(同書では民青と記述)と暴力沙汰に及んだりして終には神学部のみならず同志社大学の学生運動の台風の目になって行きます。 
対立する敵である学友会の委員長とも友誼を結んでしまいます。天性の大変なオルガナイザーです。その時代の神学部の同志が513日に及んだ収監中の佐藤氏をしっかり支えました。学生時代彼らと始めた学習会で佐藤氏が択び抜いた神学書や左翼思想書を読み耽り議論を交わした濃く深い交流は余人に得難いものでしょう。
 その佐藤氏にとり日本の保守論壇は赤子の手を捻るようなものでしょう。日本の右翼と左翼を乗り越えることは容易いことでしょう。
なぜなら佐藤氏の人生の大テーマは神とマルクスを乗り越えることにあり、つまり神の存在を信じる自分と高校時代から惹かれて止まない無神論のマルクス理論を融合させ解脱することにあるからです。
それが可能であると佐藤氏は信じ確信しています。これはひとつの甚だ興味深いドグマです。

佐藤優氏の気宇壮大な哲学的思索、あるいは精神的実験とも呼べる試みは大いに注目されます。
その大思索の一里塚が『日本正統記』の北畠親房、蓑田胸喜、大川周明、権藤成卿らであり、宇野弘蔵、柄谷行人らなのでしょう。佐藤氏は現存保守論壇や保守派の有する知識知見を以て容易に相対し得ないものを持っています。佐藤氏の登場が日本の保守の僥倖か否かは早々に判断出来ません。
しかしまことに刺激的で興味深い御仁で、吸収する処、多とします。 
     (しなの六文銭)


(宮崎正弘のコメント)思想、哲学に言及するコメントは短文ではこなせません。佐藤氏と福田和也氏とを比較するのも一考かと思いますね。両氏共に博覧強記。人間技とは、とても考えられない連載執筆の量。年齢と体型も似ている。
 大川周明や権藤成卿まで論じちゃう大胆さも。
          ◎◎
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(三島研究会、国防研究会合同「公開講座」のご案内)
6月17日、高山正之氏の公開講座は下記。
http://mishima.xii.jp/koza/index.html
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  宮崎正弘・黄文雄共著
 『世界が仰天する中国人の野蛮』(徳間書店、1500円プラス税)
  http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
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宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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