国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2008/05/14


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
   平成20年(2008年)5月14日(水曜日)
       通巻第2186号  
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 四川省大地震。省都の「成都市」は甲府と姉妹都市
  イトーヨーカ堂は業務を再開、豊田もコベルコも工場を点検中
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(成都には何回か行っておりますが、たまたま過去に雑誌にかいた成都の印象に関しての拙文が見つかりました。下記に再録します)
 
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成都の名所「武候伺」で考えたこと
                       宮崎正弘


 ▲関羽も諸葛も「神様」になった

 成都市内の最大名所は「武侯伺」。ここでで劉備玄徳は神になっていた。
ついでに言えば関羽も「神」。中国各地に関羽廟があって、線香の絶えない日はないが、なんとこの武力の英雄、いまは「商売の神様」として崇められているのだ。
あまつさえ洛陽郊外にある関羽の首塚がその総本山。「首塚」を商売の神様の信仰総本山とする中国人の信教感覚は、日本人とあまりにも異質である。

  武侯伺は、成都の観光の目玉、たまたま筆者が行くと、小学生の修学旅行が来ている。身なりも良く付き添いの先生も上品そうで、おそらくエリートの私学かと思われた。皆が可愛い顔、服装も洒落ている。
 「諸葛孔明を知ってるの?」と私のデジタルカメラに近寄ってきた一人に聞いてみた。
「知らないけどえらい人なんでしょう?」
「三国志は読んだ?」
「ううん。でもテレビで見た」
「関羽は?」
「一番奥に関羽の大きな像があるの。そこへ行くの」
 先生がやってきたので会話を終えたが、小学生の女の子でも三国志の英雄達は憧れの的。

対極的に日本ではこの類の英雄を祭る場所があまりにも少ないことに気がつく。
 乃木神社。千早城跡と楠公像、菅公像。広瀬中尉の神社と記念館(大分県竹田市にある軍神・広瀬記念館を訪れる人数の少なさよ)。
 今の若い人に♪〜「杉野はいずこ」って軍歌を知ってますか?と尋ねてご覧なさい。なにしろ大楠公・小楠公とは?と尋ねたら「オロナイン軟膏の新種」と答えられてしまった経験がある。


 ▲「蜀」なる幻影の国家

「蜀」なる国家は、まるで得体の知れない劉備玄徳が、漢の皇帝の末裔だと名乗り、軍師として諸葛孔明を三顧の礼をもって迎えたところから破天荒の劇が開幕する。
 日本人も例外的に、この血湧き肉踊る活劇が大好きである。
 やがて関羽などの暴れん坊を脇に揃えての国盗り物語、空気のような国家「後漢」が成立してゆくわけだが、あの物語の舞台は四川から江南地域にかけてである。

 三峡クルーズに行かれた人なら、白帝城見学ののち形州のさきに「赤壁の闘い」があったとされる断崖絶壁をご覧になっただろう。しかし赤壁の戦闘そのものが実在したかどうかさえ疑問で、まして「三国志演義」は後世の小説である。
 その世界観はまことに短絡的で劉備玄徳が「善」で、魏の曹操は「悪」という二元論から成立する。曹操の評価があまりに低いのは、我が国なら家康贔屓が少なく、秀吉大好き人間が多いような倒錯現象と似ている。

 あらゆる軍事作戦で奇跡の勝利を演出する諸葛孔明、じつはそれほど嚇嚇たる軍功があったわけでもなく最後の用兵に至っては失敗が暗示されている。
 それでも、諸葛孔明は秀吉天下取りの軍師・竹中半兵衛の神話のように、中国では神となった。
  諸葛孔明も崇められるのだ。

このように歴史的事実と歴史の創造は、中国人と日本人では異なる。日本の歴史教科書に容喙し、書き直しを命じる図太い神経もそうだが、歴史的客観性を中国の民に求めるのは、どだいナンセンスなのである。
 その見本が武侯伺である。
 だからこそ興味がある。どれほど中国は彼らを神格化したのか。しかもいかなる方法で?
 
劉備玄徳の「御陵」は  意外に小さいが、庭園はだだっ広い。全体が歴代皇帝御陵と作りが似ている。こんもりとした林の中の池、石橋、鬱蒼とした竹の藪も整理が行き届いている。ざっと見渡した後、もう一度、私は正面に戻って「或ること」に気がついた。



 ▲歴史に客観性は不要のようだ

 武侯伺は諸葛孔明を祭り、彼のお墓は皇帝の御陵のごとく参道の両側には龍、白馬、麒麟などの石像がならぶ。
 さて劉備のお墓はと言えば、庭園の西の門をくぐると、小高い丘になっている。
 納得がいった。
 諸葛孔明は劉備の家臣であるにも関わらず、この武侯伺では皇帝も家臣も一緒に祭られ、しかも諸葛孔明の歴史的価値が上位に置かれている。中国でもこれほど儒教的秩序を無視して建てられた、その設計思想は珍しいのではないか。

 いや、「後漢」なる国家そのものが諸葛の死後、忽ちにして崩壊したように、蜀は幻影の王朝という印象だけしか残らなくとも、そこに英雄に強く憧れる中国人の心証を満たしてくれるなにものかが存在しているのである。

 土産コーナーも庭園内のあちこちで営業しているが、劉備の像も掛け軸も少なく、しおりからカレンダー、ミニチア像に至るまで諸葛と関羽の人気が圧倒的なのである。護符も絵馬のまじない品も。
 歴史的事実はここでも時代の解釈とともにねじ曲げられていたのだった。

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(読者の声1)貴誌2185号における宮崎さんのコメントに、
「北京五輪を前にした国家非常事態への対応を注目しておくべきだろう。これは中国の軍隊の機動性、即応戦力の実力が同時に試されているからだ」
とありました。
 貴見ならではの指摘。温首相を現地にとの報を耳にしたとき、小生はミャンマーのサイクロンへの危機管理と仕方と思わず較べていました。
この迅速さは、北京五輪でのありうべからざる悪夢への予行演習にしているとしか思えません。侮りがたいものがあります。
 阪神大震災の際の知事の逡巡による自衛隊受け入れの遅延を思い出させます。それにつけても、台湾は馬さんの支援声明。なかなかなものですね。
(SJ生)


(宮崎正弘のコメント)自衛隊が神戸大震災のとき、県際までついていたのに兵庫県知事は出動要請をためらった。震災から数時間、当時の村山首相は神戸震災を知らなかった。被害が増えて、あとで指弾されたのでしたが。。。
 いち早く横浜や名古屋の港から救援物資を積んで震災現場へ急いだのは民間企業でした。



  ♪
(読者の声2)四川省地震の震源地の近くには、核兵器の研究製造施設である「西北核兵器研究所(第9研究所)」があるのではありませんか。
 もしそれが間違いでなければ、軍の迅速な展開も、震源地から東の割と遠方のところの情報ばかりが伝えられるのも、うなずけるように思うのですが・・・。
 メルマガ 通巻第2185号  速報版 を拝読して、ふと思ったものですから、お出ししました。
    (YK生)
 


(宮崎正弘のコメント)軍の展開の細部が不明です。
 新華社発表は某師団、某連隊と、まったく所属部隊が銘記されておらず、映像はこれすべて軍の救済活動のみですから。



   ♪
(読者の声3)中共の地震犠牲者数の早すぎる集計
この杜撰な国で人数の集計が早すぎるのではないか、と思いました。
これもオリンピック批判をかわす道具にされているのではないでしょうか。端数まで発表されるのは一寸疑問です。
   (MC生)
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(読者の声4) 四川大地震のNHK等の被害者数の報道を鑑みますと、あの「南京事件」の被害者数を思い出しました。当時の中国国民党は様々な、どさくさにまぎれて数 
字操作したのかと。
 もし中共が情報統制しているのならば、四川大地震被害者の真実の数字は如何に?と思います。 
 (D生)


(宮崎正弘のコメント)中国において速報的数字は「多い」という記号ですが、おそらく二万人の死者が出るのではないでしょうか?
 或いは十万を超えているという指摘もあり、軍は核兵器秘密基地を隠すと共に、犠牲者の数もごまかすために出動した?



   ♪
(読者の声5)先日或る勉強会で聴いた講演の中に「G8からロシアを抜きインドとブラジルを入れてG9にする」というずいぶんな大胆な、(或いは荒唐無稽な)一節があり、それが気になり出典がないものかと探してみました。
そうしましたらフォーリン・アフェアーズ11月・12月号に載った米共和党大統領候補ジョン・マケインの論文中に次の件りを見つけました。
 
>>  We need a new Western approach to this revanchist Russia. We should start by ensuring that the G-8, the group of eight highly industrialized states, becomes again a club of leading market democracies: it should include Brazil and India but exclude Russia. 
>>我々は、この失地回復論者ロシアへの新しい西洋の道を必要とする。我々は、G-8(8つの非常に工業化した国家のグループ)が再び、市場民主主義国家を導くクラブになることを確実とすることから始めなければならない。それはブラジルとインドを含まなければならないが、ロシアを除外しなければならない。

ジョン・マケイン候補は、ロシアは自由主義陣営の一員ではないとバッサリ切り捨て、中国は端から数に入れない、洟もかけない潔さを見せています。   

マケイン氏は日本について同論文で次のように言及しています。
   
>>  I welcome Japan's international leadership and emergence as a global power, encourage its admirable "values-based diplomacy," and support its bid for permanent membership in the UN Security Council. 
>>  私は世界的大国として日本の国際的なリーダーシップと出現を歓迎し、その賞賛に値する「価値に基づく外交」を支援し、国連安全保障理事会での常任理事国入りの要求を支持する。

マケイン氏が反日ではないことは幸いに思います。が、本当は我が国にどこまで期待なさっているのかしら!?  
米民主党大統領候補としてヒラリー・クリントンが同雑誌に寄せた論文では日本は無視同然で、アジアではひたすら只只、中国!中国!中国こそ肝心要と主張しています。 
ヒラリーは日本についてかろうじて、中国の環境問題をサポートし解決する面でのノウハウと資金を提供する者程度と言を及ぼしているだけです。
民主党候補はオバマと決まりましたが、オバマは日本についての立場を何ら闡明していません。オバマとマケインなら歩はマケインにあるというのが現時点での大方の予想です。
このマケイン論文は日本より中国やロシアが懸命に読み解く必要があるでしょう・・
   (しなの六文銭)

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(サイト情報)米国国際開発庁(USAID)のフォア長官とキーティング太平洋軍司令官は5月12日、ビルマのサイクロン被災者への最初の支援物資輸送航空機に同乗、さらに2回の輸送が13日に予定されている。
(1)ビルマのサイクロン被害支援について米国国際開発庁のウェブサイト 
 http://www.usaid.gov/locations/asia/countries/burma/cyclone_nargis/ 
(2)プレスリリース 
USAID Administrator Visits Southeast Asia to Support Relief Efforts in Burma 、USAID. May 11, 2008 
http://www.usaid.gov/press/releases/2008/pr080511.html 
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< 宮崎正弘の新刊予告 >
 四川省大地震発生などにより発行が十日ずれます!
『北京五輪後、中国はどうなる?』(6月10日発売。並木書房、予価1680円)。
  下旬に予約特典の募集をおこないます
(1)著者サイン入り、(2)送料無料、(3)振り込み手数料無料。(4)発売前日までに到着の四大特典。
応募要領は「並木書房」から本欄に月末に告示されます。

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(( 最新刊 ))
  宮崎正弘・黄文雄共著
 『世界が仰天する中国人の野蛮』(徳間書店、1500円プラス税)
  http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
    
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  四川省大地震を予測した
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』 (KKベストセラーズ、1680円)


((( 宮崎正弘のロングセラーズ )))
http://www.amazon.co.jp/s/ref=sr_st?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&rs=465610&page=1&rh=n%3A465610%2Cp_27%3A%8B%7B%8D%E8+%90%B3%8DO&sort=-pubdate
『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』 (徳間書店、1680円)
『世界“新”資源戦争』 阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
『出身地でわかる中国人』 (PHP新書)
『三島由紀夫の現場』 (並木書房)
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 宮崎正弘 全著作一覧 (これまでの128冊の著作リストを閲覧できます)
 http://miyazaki.xii.jp/tyosyo/index.html
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  • 名無しさん2008/05/14

    重箱の隅をつつくようですみませんが、劉備の「漢」は通常日本では「蜀漢」。「後漢」というとその滅亡が三国志時代の始まりとなる、光武帝が再建した漢帝国(東漢)か、三国志時代より後の五代十国時代の王朝を呼ぶのが普通だと思いますが、何か理由があっての表記でしょうか。

  • 名無しさん2008/05/14

    今回の「ダムが原因である可能性が充分にある」大震災における支那軍の動きと「西北核兵器研究所(第9研究所)」に関する動向を是非ともお伝え頂けます様お願い致します。

    国内報道機関はこのレベルになると全く報道が出来ないようですので。

    (産経に期待だけはしているのですが)

    また、先生の疑問を元に少し調べてみました。

    「人間が起こした地震、人間でも地震の引き金を引けるときがあるのです」

    http://shima3.fc2web.com/sekou9701damzisin.htm

    によると、

    『そのほか、高さ105メートルの中国広東省にある新豊江ダムでも1959年にダムの

    貯水が始まったあと地震が増え、1962年にマグニチュード6.1の 地震が起きた。この地震では幸いダムは壊れなかったものの、ダムの補強が必要になったほどの被害があった。

    この地震後も小さな地震は活発に起きていて、地 震後10年で地震の数は25万回にも達した。

    中国ではこのほかのダムでも地震が起きており、いま作られている巨大ダム、

    三峡ダムでも地震の発生を心配して いる地震学者も多い。』

    とのことです。

    また、

    http://jp.epochtimes.com/jp/2006/11/html/d33576.html

    にも

    『 情報センターは、消息筋の判断からして、これから将来の三年

    以内に、三峡ダム地区で強烈な地震が発生し、マグニチュードは6・5

    程度であるとみている。

    専門家の指摘では、60年代からすでに大型ダムが誘発した地震事件

    は12件あり、死亡者数千人を出している。現在の三峡ダムの貯水量

    は、393億立方メートルに達しており、地区の地質が複雑であるため、

    発生する地震規模も巨大であるとみられている。』

    独裁政党の言う「高度の秘密」のせいで罪のない何万もの人名が失われたのですよね?



    私は今回の地震は完全な人災だと思っております。

    支那人が支那共産党に牙を剥く日が待ち遠しいです。

  • 名無しさん2008/05/14

    2186号に失望。橘中佐と並ぶ広瀬中佐が中尉に降格されてしまうし、関羽が暴れん坊と評価されている。彼は高潔な紳士であったとされており、これでは張飛と混同されるのではないか。歴史の客観性の難しさは古今東西の史家の悩みであるが、私は「事実は一つだが、真実は無数。朝日新聞の考える真実、ギボンが真実とする真実と様々です」と考えています。 

     終戦時の真実を伝えんとするHT生