国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2008/01/05

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成20年(2008年) 1月5日(土曜日) 
通巻第2045号   新年特大号第3弾
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(((((( 今週の書棚 )))))))


 虚妄の平和主義や似非ナショナリズムが徘徊した時代と戦った知識人
  狷介孤高、反近代の思想家・福田恒存が鮮烈に蘇った

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福田恒存『福田恒存評論集 8』(麗澤大学出版会)
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 福田恒存という思想家は「偉大なる常識家」である。
したがって常識が通用しない時代に重宝されたのは当然だったにしても、ますます常識を失った現代日本において、ますます貴重な存在として輝き続けるのである。
ちょうど評者(宮崎)は学生時代だった。
 本書に収められた評論の数々(ほぼすべての論文が昭和四十年から四十五年)を私は当時、夢中で読んだ記憶がある。学生運動真っ盛りの頃である。
 慶応、早稲田に端を発した大学紛争は、暴力的になって日夜激化し、昭和四十五年に赤軍派ハイジャックと三島事件へといたる。日本が騒然としていた。
 大学は荒廃し、教育が歪曲され、価値紊乱が方々で起きていた。福田は常識の回復を訴えていた。
 夢中で読んで、福田氏に講演に来てもらったことも数度。電話での長話も経験した。最初に講演を依頼したのは昭和四十二年だった。「戦後日本の知的退廃」とかの演題だった。
 感動したのは学生新聞の編集者風情を一個の大人として扱ってくれたことだった。
 このたび福田恒存評論集に改められると、私はどうしてもあの時代の感傷にまず浸ってしまう。
左翼学生運動も論争も激動だった時代が、つい昨日のように脳裏に蘇るからである。

 たとえば昭和四十四年の『諸君!』創刊号に福田氏は次のように書いた。
 「大方の日本人は大東亜戦争の敗北によって『醜の御楯(しこのみたて)』としての生ける目標を失った。が、それを失うより早く手に入れた生き甲斐は戦争犯罪に対する懺悔の心であり、贖罪意識である。(中略)生き甲斐のごとき本質的な事柄において日本人の関心を引くのは、つねに心懸けであって行為ではなく、意であって形ではない」
 「必要なのは心の拠り所であり、それはすべて平和憲法に預けた格好になった。これは二重の皮肉である。第一に罪悪感という消極的な概念に生き甲斐を求めた事であり、第二にそれを積極的に誇りに転用したことである」(本評論集304p)。

 『平和憲法』なるものを後生大事な経典とした知識人は偽者だと皮肉っているのである。

 また福田恒存氏氏はこうも書かれた。
 「私はこの平和という名の武器の威力を信じます。隋って平和主義や中立主義を非現実的な観念論となし、その不可能を説く私を目して現実主義を言うのは当たらない。なるほど私も平和主義や中立主義の非現実性を非難して参りました。しかし、それが実際に非現実的で無効化ならば、わざわざ反対する必要はない」(中略)
 「平和という名の美しい花を咲かせた日本の薔薇造りは、そのヒューマニズムという根がいつの間にかエゴイズムという蟲にやられている事に、果たして気づいているかどうか。そのけちくさい、ちっぽけな個人的エゴイズムに目をふさぎ、今度は同じヒューマニズムの台木にナショナリズムを接木して、平和と二種咲き分けの妙技を発揮しようとしている」
 「ナショナリズムを口にする者が本当に日本民族の自覚を持っているのか」(中略)「ヴェトナムの民族主義を理解し得る様な口吻を進歩的知識人の言動に感じるとき、私は文字通り呆れ返ってものが言えなくなる」(初出は読売新聞、昭和四十年六月八日。本評論集、132p−133p)。

 「べ平連」なる似非知識人と付和雷同の学生らの団体が結成される直前に、はやくも似非平和主義の方向を予知し、批判しているのだ。

 昭和四十年代初頭、論壇は左傾化が激しかったが、その分、保守派文化人も『自由』や『文藝春秋』で健筆を振るっていた。『諸君』も『正論』も『ボイス』も創刊されていなかった。『サピオ』も『月刊日本』も、『WILL』もなかった。
思想界では一方に林房雄、保田與重郎がいた。岡潔がいた。林の『大東亜戦争肯定論』は民族派のバイブルだった。
三島由紀夫が『英霊の声』、『喜びの琴』などを書いて保守陣営に飛び込んできたのも、この時代だった。いきなり福田の大常識を飛び越えた保守論壇に加わってきたのだ。
 体制派御用の論客には猪木正道がいて、高坂正尭が登場したばかりだった。永井陽之助がデビューしてきた。
 保守の伝統的な論客らはミニコミ誌で活躍していた。竹山道雄や会田雄次が大車輪の活躍をする直前であった。福田は保守論壇のチャンピオンとして、その発言が逐一注目されていた。


  ▲「正気の狂気」が三島なら、福田は「狷介孤高」の士

 『論語』によれば、知識人には「狂」と「狷」がある。
 「子路第十三」に「子曰く 中行を得て之に与せずんば、必ずや狂狷か。狂者は進みて取り、狷者は為さざる所有るなり」。
 「狷介孤高」の士とは仕事がなかなかしにくく、狂の人は他人がしないことを率先して突っ走るという意味である。要は行動するか、評論に徹するか。
 山県有朋は青年時代を「狂介」と号した。陸奥宗光の号は「六石狂夫」である。
 吉田松陰も西郷隆盛も、そして三島由紀夫も「狂」の部類であろう。
 「狷者」なら岡潔も、板垣退助もそうだろう。そして、私は福田恒存を「狷」のほうに分類してしまう。
 三島事件が起きたときに林房雄は「正気の狂気」と比喩して三島の行為を分析した。
「狷」のほうの福田は「わからない。わからない。私には永遠にわからない」という名文句を吐いて、以後、三島事件に関する論評を一切行わずに沈黙した。
かわりに江藤淳が猪口才なことを言い募ったが、小林秀雄に叱責されたものだった。

 福田恒存の評論集は、一度文藝春秋から出た。
昨年から全十二巻の新装版として、麗澤大学出版会から刊行が始まった。
その第一巻は教育論、国語論、祝祭日、憲法論などが選ばれているが、最後に珍しく「乃木将軍と旅順攻略戦」が挿入されている。
 乃木将軍を無能と断じた司馬遼太郎への鋭角的批判であり、これを書かれたのが三島事件直前であったことも何かを象徴している。
司馬の“乱世史観”なる似非歴史分析を透視して、『合鍵を持った歴史観』と木っ端微塵に打ちのめした。
 いずれの文章も想い出が深く、あの時代と自然に重複してしまう。

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(読者の声1)年末年始にかけて『丸山真男の時代』(中公新書)を読みました。
戦前・戦中から戦後にかけての日本の「知識階級」の有り様を「丸山真男」をピボットにして眺めたものです。丸山に振り回された当時の「知」の脆弱さがあからさまに看て取れる好著です。
丸山と府立一中時代の同級生小田村寅二郎の勇猛果敢ぶり、赤尾敏の活躍も描かれています。戦後の学生運動の合従連衡、四分五裂ぶりが日本共産党との関わりを交えて分かりやすく書かれていて参考になります。
安岡某のような漢学の蘊蓄を交えた託宣を垂れている森田実は共産党員のブント活動家で、樺美智子もブントでした。
感心するのはブントが仕切った全学連が当初盛り上がりに欠けた安保改定阻止運動を大闘争化させた手法です。そこには学ぶものがあります。
放っておいても大反対の声が高まった警職法改正は「オイコラ警察の復活」、「デートも邪魔する警職法」というように庶民に身近な問題でしたが、安保改定阻止運動は反対を唱えた学生たちすら条約内容をよく知らなかったという空騒ぎでした。
ジャーナリズムとアカデミズムの両世界の間で巧みにバランスをとり一時代を画した丸山真男にそんな学生や知識人は席巻されたのでした。
しかし丸山の実相を的確に看て取り、痛烈に批判していた論客がいたことは注目に値します。サイデンステッカー氏は、「(丸山は)むしろその中にあらわされている“丸山教団”や日本知識人とその現在の倒錯を探るために読みたいという強い誘惑をおぼえる」と述べています。
外国人らしい上質で痛烈な皮肉です。

ところで今保守論壇では戦前活躍した蓑田胸喜が熱く語られ始めています。 
タチバナの『天皇と灯台』が蓑田熱の火を点け、佐藤優氏が燎原の火として燃え拡げさせていると思っていましたが、タチバナとは別に竹内洋氏も『丸山真男の時代』を著わす切っ掛けとなる論文「丸山真男と蓑田胸喜」をタチバナとは別の紀尾井坂刷物屋の雑誌に寄せ、蓑田を詳しく取り上げているのです。
蓑田は戦前二十年近くに亘り、二百号になんなんとする「原理日本」を発刊して当時の大学教官・学者(美濃部達吉、河合栄治郎、西田幾多郎、田中耕太郎、末弘厳太郎、一木喜徳郎、矢内原忠雄など)を一方的に激しく攻撃し続けました。
戦後六十年代末にピークアウトした全共闘が林健太郎総長らを吊し上げていたことを思い浮かべると、戦前の蓑田を中心とした運動がその前駆だったように見えます。
戦後しばらくは過激な論客に“現代の蓑田胸喜”というコピーが付せられたりしましたが、もはや完全に無視されたと云うより忘れ去られた存在の蓑田が今復活しつつあります。はてさて“平成の御代の蓑田胸喜”は誰なのでしょう? 
    (しなの六文銭)


(宮崎正弘のコメント)丸山真男は、小生にとっては過去の人。読み返す気力はないですね。それより丸山真男一派を「教団」と言ったサイデンステッカー氏は、なんという慧眼でしょうか。
年末に、じつはサイデン氏の御墓参りをしてきました。
文京区白山にある寂園寺。浄土真宗の共同墓地で「寂」という大きな石碑。親鸞聖人の書です。そのお堂のなかに納骨されています。日本を愛し、日本式に墓地も選ばれました。墓地は本人が選んだのではないでしょうが、日本での埋葬は遺言のようです。
 


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(読者の声2) 台湾の総統選挙が近づいてゐますが、日本の国民や政治家の関心は驚くほど低い。
今度の選挙で与党・民進党が勝つか野党・民党が勝つかは、日本にとって安全保障面でも経済面でも極めて重大な意味をもつはずです。
”台湾は日本の生命線”と言ふ言葉は必ずしも誇張ではない。
それなのにこの関心の低さは異常です。まるで地球の果て,と言ふより火星の選挙のやうです。
なぜなのか。愚生はこれには支那の作為を感じざるを得ません。
政治家とマスコミに圧力をかけ,極力、台湾の選挙に触れる言動をしないやうに抑へてゐるのではないか。
これについて長年、支那,台湾をウォッチしてきた貴台のご意見を伺へれば幸甚です。
(NN 生 横浜市)


(宮崎正弘のコメント) おっしゃるとおりの側面があるでしょう。台湾が中国の一部と、北京がほざいている、とだけ認識すればいいのですが、それに「留意」し、「尊重」するというわが国の立場を、あたかも日本のマスコミが、台湾は中国の一部と認めた風に意図的に曲げて報じているからです。マスコミの態度がやはり最悪です。
 台湾総選挙については発売中の『正論』二月号に拙論があります。 
ともかく日本の政治家やマスコミの関心の低さ? のみならず台湾の若者もまるで他人事のように関心が低いですよ。



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(読者の声3) 貴誌のコメントで「政治家と官僚に戦略的思考が欠落している証しだろうか。日本の政治が活力を欠くのは、この即断即決という即時対応能力の希薄さである」とあります。
 あくまで奥床しい貴見の「だろうか」ではなく、「である」と思います。
「何をどうする」の問題意識のないところ、戦略的思考なく、従って「即断即決」も有り得ないと思うのですが。
 そこで以前の貴見にあったように、「ズルズルと」落ち込んでいくのでしょう。
(SJ生)


(宮崎正弘のコメント) 大発会(四日)でも日本株続落、結局、日本の相場を日本人投資家が決められない。是川銀蔵氏が懐かしい。

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((( 宮崎正弘の新刊予告 )))
 『崩壊する中国、逃げ遅れる日本』(KKベストセラーズ。1575円) 
     1月15日発売!
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((( 宮崎正弘のロングセラーズ )))
『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』(徳間書店、1680円)
『2008年 世界大動乱』(改訂最新版、1680円。並木書房)
『世界“新”資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
『中国から日本企業は撤退せよ!』(阪急コミュニケーションズ刊)
『出身地でわかる中国人』(PHP新書)
『三島由紀夫の現場』(並木書房)
   http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
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  • やはりバカばかり2008/01/06

    ここの運営はサイバーエージェントなんだから(大爆笑)

    インチキなんでもアリなんだよ

  • 名無しさん2008/01/05

    12月6日以降突然メルマガが届かなくなった。絶対におかしい!!

  • kanagawa k.s2008/01/05

    昨日NHKで民主主義と言う報道おみた、ロシヤ人は、上からの命令を、待って居る様は、ロシヤ正教の復活と相まって厳しい冬が、国民性に現れていて、プーチンを皇帝にし、強いロシヤを目指して居る、民族性、が良くわかつた、北方四島の返還わこの、民族性からして、非常に厳しいものがあるが、雪国特有の保守性の間々なら、日本の雪国の人々と余り変わらない、と思う、氷の壁に閉じこもるなら、経済的発展は遅れてしまうが、プーチンの頭脳はブュシユより上であろうから、大東亜戦争の卑怯な振る舞い、を装弾し、なおかつ開襟お開いて、説得するしかあるまい。

  • 名無しさん2008/01/05

    多感・果敢さもない日本、ひらべったい平和人類の溜まり場現象が日本に起こって居るようで怖いですね、人事で俺には関係ないと言う感じを最近特に感じます。

    60年間死にも直面しない他動的平和が続くとこうなるのでしょう。