国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2007/11/08


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成19年(2007年) 11月8日(木曜日) 
通巻 第1996号  
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 原油100ドル、ゴールド850ドル突破の「新時代」に、日本には備えがない
     新経済学の確立が急がれるときに、いつまで「オザワ騒ぎ」をやっているのか
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 原油は11月7日、一バーレル=98ドルをつけた。週末から来週にかけて一バーレル=100ドルという未曾有の「新記録」をうち立てるだろう。
 市場の勢いをみていると100ドル突破は、もはや避けられまい。
 最後の投資リゾートといわれる「金」も、28年ぶりの高値。近く、大飛躍して一オンス=850ドル(80年の瞬間風速)を抜く気配だ(いや、今晩ロンドン市場で抜くかも)。
昨日すでに金価格は、一オンス=845ドルを超えている。

 「勝ち組」と「負け組」がはやくも鮮明に現れた。
 中国とインドは「負け組」になりつつある。CHINDIA(チャインディア)と騒がれ、経済成長の脅威が続いているが、中国はガソリン・スタンド(GS)に長い長い列ができはじめた。
この異常事態は先月からである。
ガソリンを公示価格で売らなくなり、10%プレミアムが常識。だから安いGSに列が突くのだ。平均90分並ぶそうな(日本のGS、すいてますねぇ)。

 74年石油ショックを思い出されたい。
日本ではタクシーが半日GSに並んだ。長距離客をタクシーは嫌がった。交通事情はGSによる混乱、GSが中心の渋滞となった。

 インフレはトイレット・ペーパーの買い占め、売り惜しみにまで及んだ。
 まったく同じことが中国全土に拡がるのは時間の問題であろう。すでに中国ではキャベツ10倍、レストラン7%前後、豚肉40%値上げと、狂乱物価の足音が聞こえている。

 インドではガソリン値上げに抗議するデモで死傷者がでた。これはイランにつぐ事態だ。
「インドの原油高騰による悪影響は中国より深刻だろう」とNYタイムズが書いている(11月8日付け)。ましてインドには国家による「戦略備蓄」がない。
中国の国家備蓄も目標の半分にも達せず、そもそも備蓄タンクの建設が遅れている。

 
 ▼プーチンの高笑いがまだまだ続く

勝ち組の筆頭はロシア。
 プーチン大統領は保養地=ソチで、2012年のオリンピックを開くと豪語し、そのために200億ドルをポンと投資する。
 旧植民地だったカフカスから中央アジアにかけてのイスラム圏も、またまた「家来」としてなびかせ始めた。
EU諸国は、ガス供給のパイプラインの元締めであり、政治的圧力をかけつづける。ロシアの政治力は格段に上がった。

ロシアの外貨準備は4000億ドルを優に越えている。不足しているのは製造設備などハイテク技術であり、「石油発掘作業員と農民と樵(きこり)しか我が国にはいないのか」というのが、プーチンの嘆きとなった。
 したがってロシアの対日方針がガラリと変更になっていることに留意しなければならない。技術獲得のため、対日アプローチに熱を籠めだしたのがロシアだ。

 勝ち組の二番手は中東産油国だ。
かれらこそ、有り余る余剰資金を面妖なる投機に回し、原油代金をつり上げ、金価格を高騰させた元凶である。
ドバイには世界に唯一の七つ星ホテルを押っ立て、豪華ホテルが林立している。
 オイルダラーは欧米のヘッジファンドに天文学的に投資されている。その金額は、いまや世界相場を動かしているのだ。
シティもゴールドマンもスイス銀行もオイルダラーの意向を伺うのである。
 イスラエル? 米国の最近のエルサレムへの冷たさを見よ!


 ▼アンゴラとかスーダンの発言力も高まる

 つぎにチャベス率いるベネズエラや、ナイジェリア、アンゴラ、スーダンという原油輸出国家群が「勝ち組」に加わり始めた。
 まずは反米指導者チャべス(ベネズエラ)大統領が中南米政治地図を大胆に塗り替え、「反米のシンボルはカストロからチャベスへ移った」(拙著『世界新資源戦争』)。

 スーダンは欧米の経済制裁が強化されてから、むしろ成長率7%以上を維持。中国の支援により、世界からのジェノサイド非難をもろともせず、首都のハルツームの豪華ホテルには昼間からプールサイドに寝そべる中国系豪商の姿がある(拙論「資源戦争の内幕」(『諸君』11月号を参照)。
 
さらにアンゴラ。
 国民の7割が一日2ドル以下で暮らしている国で、首都の豪華ホテルは数ヶ月先まで予約がとれないほど盛況を極めている。
アンゴラは貧困、福祉を放棄した汚職政治という意味ではナイジェリアやダイヤモンドで腐敗を続けるリベリアなどの構造に似ている。
いずれも背後に欧米メジャーにかわろうとする中国の影がある。

 勝ち組四番手は意外にドイツである。
 なぜなら勝ち組のロシア、中東に盛んにモノを売っているからだ。米国が制裁を科すイランにも多くの物資を輸出しているのは、ドイツである。メルケル首相は反共の闘士だが、中国へのアプローチも濃厚である。
輸出大国ドイツの面目躍如。


 ▼世界経済の基本に地殻変動が起きている
 
 さて世界経済の基本構造の変化とは何か?
 第一は米ドルが空前の激安時代に突入することである。
投資のポートフォリオとして、ユーロへの比重がたかまり、日本円は孤立し、中国人民元は切り上げを余儀なくされる。

原油代金はドル建てであるがゆえ、産油国はドルの目減りを埋めるために原油代金を値上げする。そのためにOPECは増産に応じないのだ。
日本はいつまでも米国に義理立てして、海外債券をドル建てオンリーをしておく危険を認識すべきだろう。

 第二はユーロがますます強くなる趨勢が世界的規模に拡大して、つづくことである。
 それは株式、金融商品、コモデティなどの「マーケット」の根幹を揺らす事態になるかも知れない。
 EUの原油決済も、ロシアのガス代金も市場はEUであり、ユーロ建て取引が普遍化した。乗り遅れているのは日本だけである。

 第三にゴールド保有を市場に売却して減らしているのが日本。イギリス、スイス、スペインも金価格高騰をこれ幸いとばかりに財政赤字補填のために金を売却した。これを買ったのは中国、印度、産油国だった。
しかし、国家の金備蓄を一オンスも売却していない米国。
 大混乱に陥ったときの金本位制復活も、シナリヲのひとつである。

 日本よ、「オザワ」なるバカ騒ぎから目を覚ませ!

       ○●◎み◎や◎ざ◎き●◎○ま◎さ○ひ◎ろ●◎
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(((( 今週の書棚 ))))

<今週も書籍をたくさん寄贈されました。下記に簡略列記し、機会があれば改めて書評します>。


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櫻井裕子『性教育の暴走』(扶桑社)
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 学校でトんでもない性教育が行われている。
 保守派が聞いたら卒倒するほど、ひどい、非人間的な教育。あたかもフリーセックス礼賛が教師の口をついて出てくるのだ。
小学校六年生の女の子が「家にあるコンドームを授業で使うから、頂戴ね」。そんなことを言わせる学校、ってありか? あるのだ。それは教師が悪いのか、教育行政なのか。
いや、家庭教育の基本がなっていないからではないのか。
現場を取材して、渾身の筆力で問うおかしな日本の教育の実像を暴き、明日の教育の在り方を探る。


  ♪
大澤正道『忘れられぬ人々』(論創社)
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 アナキズム運動の生き証人である大沢氏は、恩師のことから、編集者時代にであった人々を同時代史として語る。
 思想史にくわしくない読者にとっては、林達夫、久野収、石川三四郎、大熊信行、埴谷雄高などの名前は分からない。一度か二度、聞いた程度かもしれない。埴谷は戦後一時期、持てはやされて大ベストセラー作家でもあったが。。
 大沢氏は平凡社時代『林達夫全集』を編み、また『大杉栄研究』などの著作もある、政治運動家。戦後思想史研究家。最近は「長屋のご意見番」として世相をじつに辛辣に批評されている。


  ♪
井上豊夫『果たし得ていない約束 三島由紀夫が遺せしもの』(コスモの本)
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 著者は元「楯の会」副班長だった。
若い日々、どうしても三島由紀夫がやっていた「楯の会」に入りたくて、学生時代に三島に手紙を書いた。三島の体験入隊に同道したいがために、地方から出てきて、浪人していた。大学なら東京であれば何処でも佳かった、という。
本書は楯の会の訓練風景や、事件当日の顛末。その後の人生などを内部にいた学生として、三島の思想的薫陶を中軸に淡々と著している。


  ♪
阿羅健一『再検証 南京で本当は何が起こったか』(徳間書店)
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 南京の研究家でもある阿羅氏は、嘗て南京事件の生き証人を全国に訪ね歩いて証言記録を世に問い、読書界に強い衝撃を与えた。
そもそも国民党の宣伝から、外国人ジャーナリストが代理人として籠絡され、ありもしない、でっち上げニュースが連続的に西側に送られた。
「虐殺」なんぞ、現場に見た人はいなく、伝聞というかたちで上海や南京にいた外国人が「人から聞いた」話が、やがて「真実」のように英米マスコミは歪曲していった。嘘が膨らんでいった。国民党宣伝部が真犯人である。
東京裁判で突如、嘘が本当のように持ち込まれた。そのうえに、偽証をつづけた神父らは、なにを動機に、改竄された嘘物語を吹聴し続けたのか。なぜ良心の呵責に平気で耐えることが出来たか。
 淡々と簡潔に歴史を綴りながらも、でっち上げられた物語を否定しなかった戦後の日本人のほうに、なぜか怒りを感じる。


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田中正明『南京事件の総括』(小学館文庫)
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 南京事件の嘘を勇気を持って暴き続け、東京裁判の不当を訴え続けて、昨年、亡くなった田中正明氏の古典的著作に、評論家の水間政憲氏が新しく注を入れ、新装の文庫版として登場した。
この文庫では新たに櫻井よし子氏が解説を書いている。
 南京事件から七十年、いよいよ関連図書も勢揃いしている。

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(読者の声1)貴誌1994号「これで中国株式のバブルは頂点を打った?(略) しかし、『快進撃はこれから』か? これまでか。」(末文節)。
疑問符がいくつもついた上での提起ですが、慎重な貴台が預言した件について、投書がないようなので、あえて投書しておきます。
 今回の重要な問題点の指摘に対して、後日に現実がどうなるのか、興味津々で眺めましょう。
(SJ生)


(宮崎正弘のコメント)頂点を打つと、それから崩壊が始まるに気がつくのは半年から一年はあとになるのが定石です。しばし誤った判断が続くだろう、と思います。



   ♪
(読者の声2)「マスコミの誤報を正す会」のご発足、大儀に存じます。
いまからちょうど40年前の1967年(昭和42年)の2月に、三島由紀夫と安部公房が語らい、三島は日本ペンクラブ前会長の川端康成に、安部は師事した石川淳に呼びかけ4人で、「中国文化大革命」に対する抗議アピールを発表したことを思い出します。
あれは、毛沢東がその前年の1966年に始めた一大権力闘争下での言論統制・弾圧を告発し、抗議の声明を発し、中共政府に言論の自由の回復を求めたものです。
三島がシナに関心を持った数少ない事例で、同氏が言論の自由に敏感であった証左です。
近年ペンを持つ方々による、言論に関わる告発抗議活動は稀ですが、所謂「従軍慰安婦」 問題についてのワシントンポスト紙への「事実広告」掲載に続く快挙と存じます。
今回は自国のマスコミが抗議の相手という慙愧に堪えないものですが、ご健闘ください。
   (HN生、神奈川)


(宮崎正弘のコメント) ついでに思い出して頂きたいのですが、三島,安部、川端、石川の四人の声明と記者会見は、かの『朝日新聞』が一面で大きく報じたものでした。あの頃の、朝日には、まだ一部に「良心」というものが残存していたのではありますまいか。
 声明文全文は、三島由紀夫全集に入っております。中国研究家にとっても、資料的価値が十分にあります。四人の文学者は、それぞれの直感で文革の本質に横たわる、異形なものを発見していたのでしょう。



   ♪
(読者の声3) 貴誌前々号と前号で話題の人、蓑田については、『天皇と東大 大日本帝国の生と死』より、『丸山真男の時代』(竹内洋 中公新書 05年11月)の方が書き込まれているように思います。
ミネルヴァ日本評伝選『平泉澄』(ミネルヴァ書房 若井敏明)にも蓑田への言及があったはず。
それにしてもこの時代、なぜ突如として、蓑田なのか。
     (KH生、愛知県)


(宮崎正弘のコメント) 誰かが仕掛けているという可能性は薄いでしょう。だって、蓑田を思想家として評価してきた人は、これまでにも稀だった。平泉への本格的評論がないように。たまたま、ということでは?



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(読者の声4)玲瓏の秋、虫たちがすだき終え、冬籠りする前に、御仏(みほとけ)であらせられる慈円(じえん)、惠人(えにん)、道元(どうげん)の各ご上人さまに、声を懸け、呼び起こしては、甚だご迷惑でしょう。
 が、仕方ありません。
国政・国体・社稷にあずかる人士たちが、近年道理を弁えず、ただただ右往左往しています。それらに、怒槌(イカヅチ)を振り下ろし、咎(とが)め唆(さと)し善導する理性者がいないのです。
沙石集にあるように、自らの非を率先して認めた係争人に、道理で対処し、減刑した北条泰時。そのような高潔清廉怜悧の裁き人がいないのです。オザワ氏のルーツが岩手にあるなら、伊達家の塵芥集を手に取るなりして、古人(いにしえびと)の道理を考究し、それに帰依し、その理性に想いを致すべきでしょう。
   (中尊寺)


(宮崎正弘のコメント)雷をふりおろす、価値がある?

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(休刊のお知らせ) 小誌は明日11月9日から13日まで休刊します。台湾取材等のため。出発前にもう一号発行の予定です。
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 宮崎正弘の最新刊 
『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』(徳間書店、1680円)
http://ponko.iza.ne.jp/blog/entry/372561
〔↑ 詳しい本の紹介があるブログ〕

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『2008年 世界大動乱』(改訂最新版、1680円。並木書房)
 好評を博した拙著『2008年 世界大動乱の予兆』を大幅に改訂増補。新データを満載。大増ページ普及版。

宮崎正弘のロングセラーズ 
『世界“新”資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊)。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/%8B%7B%8D%E8%90%B3%8DO/list.html
『中国から日本企業は撤退せよ!』(阪急コミュニケーションズ刊)
『出身地でわかる中国人』(PHP新書)
『三島由紀夫の現場』(並木書房)
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 宮崎正弘の比較的入手しやすい本の一覧 ↓
 http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
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宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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http://www.melma.com/backnumber_45206/
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  • 遊撃手2007/11/08

    はじめまして。「或る浪人の手記」さんのブログに紹介されていたので飛んできました。とても世界の情勢がわかりやすかったので、私が常駐している「るいネット」に紹介させてもらいました。

    ありがとうございました。

    ↓↓是非一読ください。

    http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=164881