国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2007/08/14


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成19年(2007年)  8月14日(火曜日)  
通巻第1893号 
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そして資金の「貸し手」が不意に不在となった
  サブプライム融資の収縮による世界同時株式暴落が近い?
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 サブプライム住宅担保ローンの突如の破綻が明らかになるや、欧米中央銀行は、邦貨にして30兆円を市中に投入した。日銀もとりあえず6000億円。それでも納まらず追加投入、結局13日までの営業三日間で日欧米は42兆円を市場に注ぎ込んで、事態の沈静化を図った。
 これは尋常ならざる事態の到来である。

しかし日本の当局は市場の心配をよそに、やや楽観的である。
 「内閣府が13日発表した4―6月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質で前期比0.1%増、年率換算で0.5%増となった。10・四半期連続のプラス成長。設備投資が堅調だったものの、輸出が伸び悩み、成長率は1―3月期(年率3.2%)から鈍化した。ただ、昨年10―12月期からの高成長の反動の面もあり、景気は緩やかな拡大を続けている」(日本経済新聞、8月13日夕刊)。

 米国の失速のほうは、心配がないのか?
 住宅ローンは米国の経済指標をはかる重要な要素で、80年代にエコノミストが注目した指標は「新規住宅着工率」だった。
 有名人やら野球選手が、つぎつぎとローンを組んで住宅を買い、値上がりをまった。
 85年、「ブラック・マンディ」。ウォール街の株価は大崩落を演じた。
 その後、ヒスパニックやらアジア系の移民に狭い一軒家、メゾネット方式のアパートなどを廉価で売却する米国のデベロッパーが増え、金融界も、この需要に応える。米国の不動産業界は甦った。

 昨今話題の「サブプライム」とは、「プライム」の亜流という意味だから、信用力がそれほどない人達に、住宅資金を、かなり良いレートで貸し付けた。
無理がたたって、その不払いが連続し始め、貸し手が窮屈に、いや多くが破産し、ヘッジファンドの倒産が目立った。


▼野村証券もドイツ公的投資会社も巨大損出をだした

日本の野村証券も700億円の実害。ドイツの公的投資機関は一兆円を超す損害をだした(これと関連するか、どうかは別にグリーンスパン前FRB議長はドイツ銀行顧問に就任した)。

 なぜこうなるか。ローンが成立した時点で金融機関がそれを投資家に転売し、それがさらに投機グループやヘッジファンドへ転売されていったからである。
 「大手投資銀行、とくにコンピュータ取引で、このサブプライム転売を展開していたところが大損害を受けた。この点は98年のLTCM(ロシア国債取引で倒産)のパターンに酷似。少額の個人投資家は、したがって殆ど損をしていない」(ヘラルドトリビューン、8月14日付け)。

 だが、騒ぎは収まっていない。市場は世界的な同時性で下げ傾向をみせている。

 「向こう12ヶ月で景気後退に見舞われる可能性は26%。七月調査では23%だった」(優良株分析の専門家、クリスチャン・サイエンス・モニター、8月13日付け)。
この場合、専門家が用いる26%というのは「4分の一以上の可能性」という蓋然性を表現する。かなり高い確立であり、この基本は1929年世界大恐慌前夜にパターンが似ているとみられる。

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(読者の声1) 夏期休暇をふるさとで過ごしています。レストランで古い週刊誌をぱらぱら捲っていたら『週刊朝日』に宮崎さんの連載を発見しました。
 中身そのものより、朝日新聞と先生の関係が想像を越えることだったので、一言。朝日が変わったのか、先生が変わったのか? どちらだろうと考えました。
     (NY生、愛媛)


(宮崎正弘のコメント) そういう風に考えない方が、メディアを左右に図式化するよりも、いまは流動的な世の中ですから。
もし『赤旗』から執筆依頼があれば、断るでしょうけれども、小生儀、その昔、『潮』にも『世界日報』にも、書いたこともありますし、そもそも物書きは「注文生産」で、あらゆる文章はオーダーメイドです。
ところで話は飛躍しますが、朝日が変節する可能性は高いだろうと睨んでいます。
 一夜明ければ「産経新聞」より右に傾いていたりして。



  ♪
(読者の声2) 文春から出ている『オール読物』の今月号のなかに直木賞作家・中村彰彦さんの「台湾新幹線試乗記」が出ており、面白く読みました。
 鉄道ファンとしては宮脇俊三さんと五回、六回も取材の鉄道の旅に同行された中村氏のことですから、新幹線の記述にそれなりの配慮がされていました。
なるほど中村氏の紀行に明示されたように、宮崎正弘さんや花田凱紀、高山正之、堤堯氏らと一緒に行かれた珍道中の様相も浮かび上がりますが、宮崎さんの書かれた紀行(『エルネオス』、台湾新幹線試乗記)と中村氏のそれは感性がちがうのか、それとも興味の対象が異なるのか、同じ旅程をこなされながら、まったく違う視点で台湾を書かれている。
堤氏と高山氏のそれはまだ拝読しておりませんが、中村、宮崎の御両文を比較して興味深く、また是非、台湾の南のほうへ足を伸ばしたい、と思います。
     (台湾ファン)


(宮崎正弘のコメント) 台湾の交通インフラはますます充実してきています。小生が台湾へ初めて行ったのが1972年、翌73年には加瀬英明氏と行って(これが貳回目でした)、一週間取材し、その年の秋には日本の国会議員百名ほどの随行記者団として行きました。三回目なのに、小生がマスコミ随行団の幹事役でした。
 台北の目抜き通り、中山北路で十二階建ての高層ビルは、国賓大飯店(アンバサダーホテル)しかなく、朝の食堂は静かで横は大臣とか国会議員ばかり、庶民はとても近づけなかった。
 考えてみれば、日華断交直後の政治情勢は緊張していました。
あのときの日本の政治状況は田中・大平外交の誤りを批判し、現職の国会議員が100名も団体で、台湾へ行くほど「アンチ北京」の政治ムードが強くありました。
反共の闘士だった藤尾正行、玉置和郎、中川一郎、佐藤隆ら亡くなった青嵐会の暴れん坊に、浜田幸一、中山正輝らも加わって、バスの中で議論したことを思い出しました。
歓迎会は完成直前の「円山大飯店」でした。

 爾来、35年、毎年最低二回としても通算70回、たぶん100回は台湾へ行っているでしょう。中国へ行った数よりおおい筈です。
 秋には安全保障のシンポジウムに呼ばれており、藤井厳喜氏らと台北へ行きますが、年末の立法委員選挙、来年三月は総統選挙ですから、チャイナウォッチャーの端くれとしては、行かざるを得ないでしょう。
 変化が迅速な国は、中国も同様ですが、常に現場をみておく必要があります。
 そうそう、35年間に亘る台湾との関わりも一冊の本にしたいと考えています。いずれ。



    ♪
(読者の声3) 13日配信の貴誌に、「10日ほどの滞在のなかで、地元の人に「中国は脅威か?」と水を向けてみると「キタイ」と言った。
キタイとは中国を意味するロシア語だが、表情のなかにかすかな嫌悪感を感じ取ったのは気のせいなのか、どうか。」
トとありました。
先月の貴誌貴コメント欄でご教示のありました、芳地隆之氏の『ハルビン学院と満洲国』を手に取りました。
その冒頭にハルビン市街の佇まいが、サボール(ロシア正教会の聖堂)などとともに次のように述べられています。
(引用開始)
「中央大街に行く。ここはかつて「キタイスカヤ」(中国人街)と呼ばれた繁華街である。キタイスカヤとはロシア語。 ハルビンは、19世紀末に帝政ロシアが、極東進出の拠点として建設した都市であった。その際に、多数の中国人労働者が動員され建設資材の輸送路として使われたのが名前の由来である。
(引用止め)
『ハルビン小唄』で東京とパリの間にある町と歌われたハルビンは、20世紀のはじめから1930年代にかけて、当時の日本人にとって最も近いヨーロッパだったようです。この歌の作詞者はハルピン学院7期生でした。

楡のハルビン 緑の都
国際列車が      今日も出る
花の東京と       パリーの空へ
虹のかけ橋      中どころ

同地で20世紀初頭、諜報活動したのが日清・日露戦役に出征した軍人石光真清です。
その手記を追いながら、学院生の苦難の歴史をひも解きます。
ソ連・ロシアの研究を目的としたハルビン学院は、ソ連からはロシア語のできるスパイ養成学校と見られ、大戦後はアメリカから親ソ派の温床と警戒され、卒業生は二重スパイのレッテルを貼られました。
歴史の徒花的な存在となったハルビン学院とその卒業生たち。

ハルビン学院設立を後押しした後藤新平は、学生たちに次のように説きました。
「世間では後藤をアカだという者がいる。しかし赤大根程度のアカは気にすることはない。君たちはソビエトを研究しなければならない。国のために対ソ政策に役立つ人間になりなさい。若者らしく外へ出て大陸の雪を蹴散らすくらいの気概で行きなさい。 ・
 なぜ50万足らずのボリシェヴィキが1億4千万のスラブ人を統一できたのかを研究すべきなのだ。・・・ソ連の経済5ヶ年計画などは、わが国が国家百年の計画を行う上で、おおいに参考にすべきである」。

後藤新平はあふれるエネルギーからくる横紙破り的言辞と行動で、周囲から煙たがられ、その愛玩の対象として東京市を振り与えられたと巷伝されている仁でもありました。
 歴史上、大きな勢力が鬩ぎあい、ぶつかり合う地域は、そこにいる人々を大きな揺籃に淹れられた砂のようにその揺れるままに翻弄します。
大卒初任給の月給が50円から70円の当時、月々55円が給付される学院生になることは魅力がありました。
後藤の鼓舞に背中を押され、経済恐慌・凶作に見舞われていた貧しい地方の家々から10倍以上の試験の難関を潜って各県1名づつ選抜された俊秀たちは、青雲の志を抱いて大陸へ渡っていったのでしょう。
モンゴル族、朝鮮族からも集められた東亜の若者たちは一同に会して、満洲の地で遥かな夢を追い勉学に励みました。

しかし戦中蒙・鮮・満人(満洲の漢人)以外の卒業生と在学中の日本人学生は出征し多くは帰らぬ人となり、戦後全卒業生の二割近くはソ連軍にシベリアやモンゴルへ拉致され強制労働に就かされるなど 多くの学院生は数奇な運命を辿ることになりました。
戦前の作家・里村欣三の作品 「放浪病者の手記」に、冒頭で触れたサボールについて「深い木立の森に蔽はれて、露西亜寺院の金の十字架が、青い屋根の尖塔に麗かな陽ざしを浴びて、燦然と輝いてゐた」とあります。
日本の貧窮した地方の田舎からハルビンに降り立った俊秀たちは、赤レンガの日露協会学校(ハルビン学院)の建物に通い、パリの街に譬えられた町並みの中で、あの時代の青春を燃やしたのです。
   (有楽生)


(宮崎正弘のコメント) そうそう。今月末にまたハルビンへ行ってきます。
 キタイスカヤは、いつ歩いても異国情緒たっぷりの町並み、小生が好きなのは、この通りの真ん中あたりにあるロシア料理。この「キタイ」の中国、いまの満州地域からモンゴルを治め、遠くタシケントあたりまで進出したキタイ帝国から名前を取ったのでしょう。
 アメリカ西部劇にでてくるような、場末のバアやら、パリのカフェのような洒落た店もありますよ。すこし離れた場所にはシャングリア・ホテルも開業していて、この店はなぜか支配人がドイツ系ですが。。。
 当該のハルビン学院の書籍は、たしか『自由』に連載されたものではありませんか。

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((((((( 「立ち上がれ!日本」ネットワーク )))))))
 http://www.tachiagare-nippon.org/
       緊急シンポジウムのご案内
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(1)テーマ 逆流のなかで「保守」は何を為すべきか
  自民敗北の参院選をどう総括するのか。この「逆風」のなかで、われわれは何を考え、いかに行動すべきなのか。「草の根保守」がいま為すべきことを論じます。
(2)講師  高山正之(ジャーナリスト)
       大原康男(國學院大學教授)
       花岡信昭(産経新聞客員編集委員)
       伊藤哲夫(日本政策研究センター所長)
(3)日 時 8月31日(金)午後6時30分〜午後9時
(4)会 場 ベルサール九段4階(ルーム4)
       東京都千代田区九段北1-8-10 住友不動産九段ビル
       「九段下」駅「5番出口」徒歩5分(半蔵門線・新宿線)
       「九段下」駅「7番出口」徒歩3分(東西線)
       「神保町」駅「A2出口」徒歩6分(半蔵門線・新宿線・三田線)
       「水道橋」駅「西口」徒歩8分(JR線・三田線)
  (会場地図は下記)
  http://www.sumitomo-rd.co.jp/building/kaigishitsu/bs_kudan/event/access.html
(5)参加費 資料代として500円
(6)申し込み方法 参加ご希望の方は、お名前と「シンポジウム参加希望」とお書きの上、下記のメールもしくはFAXにお送りください。
   メール:kokaikoza@tachiagare-nippon.org
   FAX:03(5211)6310
   お申し込みいただいた方には、事務局より確認のメール(もしくはFAX)を差し上げます。以上。 「立ち上がれ!日本」ネットワーク 事務局
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『世界“新”資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊)。
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『2008 世界大動乱の予兆』(並木書房刊)
 (九月に全面改訂版がでます)

『中国から日本企業は撤退せよ!』(阪急コミュニケーションズ刊)
『中国人を黙らせる50の方法』(徳間書店刊)
 『出身地でわかる中国人』(PHP新書)
 『拉致』(徳間文庫)
 『三島由紀夫の現場』(並木書房刊)
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  • 名無しさん2007/08/16

    楽しみに拝読しています。

     8月14日号に朝日新聞が>一夜明ければ「産経新聞」より右に傾いていたりして。<とあります。

    戦前さんざ戦意高揚を謳い、軍部の弱腰を時に非難したのに、戦後あっさり手の平返しをした朝日ですから驚くに当たりませんが、近々、手の平返しの何か兆候をつかんでいらっしゃいますか?

     もう一つお聞きします。世界の原子力発電所建設が実質的に日本のほぼ独占になっているようですが、どんな裏があるのでしょうか?ババゆえのGE,WH売却と思えます。古くは捕鯨船の日本への売却、新しくはIBMのPC部門の中国への売却等あります。よろしくお願いします。