国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2007/08/13


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成19年(2007年)  8月13日(月曜日)  
通巻第1892号 
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(旧盆休み、新聞休刊日につき随筆をお届けします)

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随筆「北風抄」

  砂漠のオアシス国家の悲哀
                    宮崎 正弘

 
 まもなくキルギスの首都ビシケクで「上海協力機構」の定例会議が開催される(注 8月16日より)。

 所謂「上海シックス」には中国の胡錦涛主席、ロシアのプーチン大統領ほか中央アジア五カ国(キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、カザフスタン。独立順)の首脳が一堂に揃い、経済協力とテロ対策を話し合う。
 開催地=キルギス(40の部族という意味)は多民族国家、91年までソ連邦の一員だった。
当時の地図を見ると「ソ連」の中の中央アジアと記されるだけ。峻険な天山山脈に囲まれた昔日のシルクロードに位置するオアシスだが、日本からはるかに遠く、いった何が起こっているのか、なかなか日本には届かない。詳細な把握も難しい。


 ▼「キタイ」への歴史的戦慄が残っていた

 そこで現地に飛んでみた。
 清澄な雪解け水をたたえ、濃い緑と草花の匂いに包まれた山岳国家=キルギスがこれほど美しい場所であるとは想像の外だった。
 ビシケクから途中下車と宿泊を重ね、琵琶湖の9倍というイシククル湖を北廻りに、東端の街・カラコルからさらに奥地へ。
山岳遊牧民のテントから中国との国境を眺めた。キルギス人は忍耐強く勤勉な国民性が特徴とされ、日本人とよく似た顔つきをしている。
 十日ほどの滞在のなかで、地元の人に「中国は脅威か?」と水を向けてみると「キタイ」と言った。
キタイとは中国を意味するロシア語だが、表情のなかにかすかな嫌悪感を感じ取ったのは気のせいなのか、どうか。

 キルギス奥地に住む中国系ムスリムは「ドンガン族」と呼ばれる少数民族。19世紀末頃あたりから中国を逃れた回教徒が住みつき、「ドンガン・モスク」を築いた。
百年の間に彼らはキルギス人、ロシア人、カザフ人、タジク人に混じって、共生するようになった。
 ビシケクには大学が17もあって、近隣諸国からの留学生も目立つ。少し通じる英語での会話によれば大学を出ても就職が難しいこと、狂乱物価で庶民は困窮していること。にもかかわらず汚職、賄賂が横行してBMWやベンツが街中を疾駆しているという経済的矛盾があるらしい(注 ビジケクはソ連時代は将軍の名前から「フルンゼ」と言った)。


 ▼あの「チューリップ革命」は何処へ?

 若者たちの間には山々に囲まれた小国キリギスタンで暮らすよりいっそ外国へという憧れが顕著だ。
見たこともない日本などは、さしずめ彼らにとって夢のような外国なのだ。
 人口5百万人。北隣の資源大国カザフスタンの庇護と圧力を受けながら、米軍とロシア軍双方の駐留を認めてバランスをとるしたたかさを併せ持つ。政治は封建的部族が支配。西側寄りと見られたバキエフ現大統領の、一族だけを取り立てて利権を包括してゆくやり方に批判が強まっている。
05年に無血革命でアカーエフ前政権を倒したせっかくの「チューリップ革命」も淡い夢、砂漠の幻想に終ってしまうのか?

 かつて砂漠の王国・カラハン朝の首都・トクマク郊外で見たブラナの塔は草原と砂嵐のなかに朽ち果てて残骸をさらしオアシスが蜃気楼に終った象徴を見るようだった。
 米国は、このキルギスをアフガニスタンおよび近未来のイランの膨張を食い止める最前線と位置づけて重要視している。こうした現実が日本ではほとんど知られていない。

 (この文章は北国新聞「北国抄」、8月6日号からの再録です)

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