国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2007/08/06


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成19年(2007年)  8月6日(月曜日) 貳
通巻第1881号  
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  カザフスタン、キルギス取材日記(下)
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(某月某日) カラコル(キルギスと中国の国境付近)のバザールではキルギス族、カザフ族、ウクライナ族、ウズベク族に混じって中国系「ドンガン族」がいる。
 売られているのは西瓜、メロン、杏子ほか農作物、果物。屋台にはナン(竃でやくパン)。アイスクリームやビールの冷蔵庫は中国製が圧倒的である。中国製の海賊版ヴィデオ、DVD、それからカセットテープも売られていて、ちょっと時代の流行の遅れを感じさせる。
 (こんな世界の果てまで著作権査察団はこないだろうけれど)。
 バイクが少ない町で、ロシア人はなぜかほとんどがクルマに乗っている。60年代の「ラダ」がやけに目立つ町だ。
 しかし、これほどの他民族が共生できる? 色々な物語、それも艱難辛苦の歴史があったに違いない。

 ユーゴスラビアは「連邦」による統一という擬制の政治体制がチトーの死去と共産主義の崩壊ではずれると、忽ちにして、血みどろの内戦となり、民族、宗教が入り乱れて六つの国に別れた。スロベニア、クロアチア、ボスニア、セルビア、マケドニア、モンテネグロ。
それでもたらずコソボをめぐって内紛が続いた。
 カフカスの南ではスーフィズムのチェチェンが叛乱を起こし、アゼルバイジャンとアルメニアが戦争を始め、モルドバも内戦寸前となった。
 (中国がソ連型の崩壊をするとすれば、チベット、蒙古、ウィグルはまずこうなるだろう)。

 なのに、なぜ中央アジアはソ連崩壊後、ソ連が引いた人工的な国境を遵守し、タジキスタンを除いて内戦過程を経過しないで、「独立」し、他民族が多宗教とともに共存できるのか?
 歴史的に堆積された恨みが消えたのか?
 紀元前、スキタイが来て、ソグドが来て、ペルシア、チンギスハーン、チムール。そしてソ連。
 中央アジアの砂漠を幾多の、荒々しい王朝が通過した。
 キルギスには主力のロシア正教会、モスクのほかにカソリック、プロテスタント(ドイツ系がいる)、シナゴーグ(スターリンの強制隔離政策でユダヤ人の村もある)に仏教徒もすこし残る。
 ドイツ系がとびぬけて良い商売をしている、と聞いた。


   ♪
 (某月某日) 首都のビジケクでは、真っ先にマナス空港へ向かった。米軍の駐屯を確認するためである。米軍空軍もしくは海兵隊が2000人駐留している。
 ビシケクの東30キロのカントという町にはロシア軍が駐屯している。バランスを奇妙にとっているか、政治的配慮か。どうか。
 地もとの人は率直に言って「米軍は帰れ」というメンタリティであり、「え。日本に米軍が五万もいる? 日本って独立国じゃないんだっけ」と質問された。
この詳細は『月刊日本』に書く。
 ところでキルギスは電話事情が悪い。ホテルから日本へ電話をすると、60秒で7ドルも取られる。
ちなみに国内は24セント、CIS加盟国は1ドル、トルコが3ドル。ほかの国はすべて7ドル。
 携帯電話は、ようやく普及がはじまったばかりで、デパートで驚いたのは、旧式モデルばかりが並んで、飛ぶように売れている。
 そういえばキルギス唯一のデパートはソ連型。ざっと商品をみたが、十年前の中国の地方都市と同じで流行が十年以上後れている。
キルギスでは消費経済が、いま始まったという印象を受ける。

 歴史博物館は軍事記念館と旧フルンゼ博物館を改造した二つがある。
前者のなかに入って驚いた。レーニン礼賛の博物館ではないか!
中国だって毛沢東像がすこしは減ってきているのに、この時代錯誤!
 ビシケクはソ連時代「フルンゼ」と呼ばれた。フルンゼとはロシアの将軍の名前である。さすがに、その屈辱だけは首都の名前からはずしたが、精神的残滓を克服できていないかのようだ。
 それともキルギス人は「羊のように大人しく、忍耐強い」のか。
 一方で、繁華街の公園のわけにはハイヤットホテルがある。なかで食事をしたが、昼のランチが1500円ほどした。西側のホテルマンのサービスが心地よかった。
 夕方、宿泊したアルケメというホテルへ戻り、プールで泳いだ。


   ♪
(某月某日) ビジケクから東へ60キロの古都トクマク郊外には古い王朝の残骸が残っている。
三蔵法師がたちよって滞在したというアク・ベシム宮殿の址が掘り返されている。ロシア人の考古学者が、「え、日本からきたのか」と珍しがって近づいてき、掘り出したばかりのコインを見せてくれた。青光りする小さな銭だが、「明銭か、宋銭か?」と問うと、「ニュエット。トンだ」と答えた。唐の時代、三蔵法師が運んだの?
ところで最近の考古学は、このアク・ベシム宮殿は唐王朝の「砕葉城」(スィアーブ)だろう、と推定しているそうな。

 もう一つが「ブラナの塔」と言われるカラハーン王朝の都の址、遺跡の草原にはミナレットが残り、ユーラシア系遊牧民の「石人」といわれるユーモラスな石像が乱立する。
原っぱに宮殿址地が、こんもりと草の台地を形成し、そのちょっと先にすこし傾いた煉瓦の塔がある。これがブラナの塔である。十世紀から十三世紀にさかえたカラハーン王朝のバラサグンという首都の痕跡らしい。
 駱駝の隊商が、ここを通っていったのは、つい昨日のような錯覚が風景のなかで錯綜した。


 ▼ 豪雨、タクシー不在だが、ブランド品のアーケードがある不思議な町


   ♪
(某月某日) 再びバスで二時間揺られ、国境を越えて、さらに三時間。カザフスタンのアルマトゥ市内に戻った。合計270キロ。ふたたび国境の検問を通過した。カザフへの入国はやや厳しい。労働者不足になやむカザフへ不法就労がめだつからといわれる。
連日の驟雨。とうとうアルマトゥは豪雨になる。
 乾期に連日雨がふるというのは中央アジアも異常気象に見舞われている由だった。
 この町は、ところでタクシーがまるで見つからない。市民は白タク利用である。この点は、ウランバートルに似ている。交通渋滞はウランバートルのほうがひどいが。。。
 ともかくタクシーが捕まらないので、歩いて中国大使館へ向かう。首都移転に伴い、表向きは領事館だが、これも緑深い場所にあった。
しかも通りに面していないのだ。
 周辺に中華料理店が軒を競い、辻に洒落たカフェ。歩道に飛び出したテラス。
ここだけは客が中国人だらけである。
なるほど、中国は世界中で派手なプリセンスを示すのに、なぜかキルギスとカザフスタンで、こじんまりと弱々しく存在感をしめるのか、理由がわかった。
 これらは「ソ連」のメンタリティが色濃く残り、名状しがたい反中感情が強いところであり、おとなしく暫く振る舞おうというわけなのだろう。
 
 古い鉄道駅まで一時間ほどぶらぶら歩き、駅構内にはいると、これも二十年まえのソビエト時代とかわらない風景である。
 わずかにキオスクで売られる商品に童話や、ジュースが増えていたくらいか。
 つぎにバザールを冷やかそうと歩いていたら近代的なショッピングモール街にぶつかる。グッチ、バリー、クリスチャンデイオール、ビュトンの名店街に最新の商品が並ぶ。

 資源リッチのカザフスタンの財閥、成金は、こうした贅沢品の市場もつくった。そういえば結婚式につかうベンツのリムジン、十メートル近い。派手派手しい結婚式のスタイルは欧米から、真っ先に中国へ伝えられたが、いやはや、中央アジアのイスラム圏でも、このようなスノビズムが共通であることに、一抹の落胆を覚えた。
 帰りがけ、日本大使館のそば、楽器博物館のとなりにosakaと、こじんまりとした日本料理の看板がでていた。
 「日本人は、アルマトゥにほとんどいませんが、エキゾチックな趣きがあって、日本料理をたべにくる金持ちがおおいのよ」。あとでガイドが教えてくれた。
 カザフ娘は金髪にヘアを染めており、朝鮮族の娘は韓国語が喋れなかった。文化の紊乱が進んでいる側面を垣間見た。

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(読者の声1) 貴誌に連載が開始された「カザフ、キルギス旅日記」。ひさしぶりで(某月某日)スタイルの記述は、旅行記・紀行文にぴったりのスタイルですね。
読んでいて楽しいです。
       (HN生、品川)




(読者の声2) 二大政党制なんて今の自民と民主ではどだい無理でしょう。
それに英米と大日本国(おおやまと)は国情、民情が違うのです。選挙区事情で自民に入りたいのに民主に宿借りしている若手は、股間にぶら下がっているものがあるなら、オザワやカンの下から飛び出して第三党をつくるべきです。
そこに自民の有志も合流・糾合するのです。来年は世界の大国や鍵となる国の政治状況が、トップの選挙、入れ替えで動くムービング・イヤーの2008年です。
二大政党制を目指すだなんていって既成政党の枠組みの中で、腐りかけた古井戸やボロ井戸の中に安住して、泥水や汚染水を交ぜているばかりの政治家では大日本国に明日はありません。子々孫々の繁栄はありません。
新しい井戸を掘ろう、そこから真の民意の真水を汲み取ろうと、自ら仕掛けて動かずにいたら、永田町の住人として失格です。
日本国にとっても政治のムービング・イヤーとなるのが来年2008年です。
今回の参院選はそれの始まりです。既存の枠組み、しがらみ、固定観念や発想から抜け出して、大胆な肚、緻密な行動力、躍動する情念、国運を背負っている使命感を以て真性保守政治家には動いてもらいたいものです。
そうしないと世界の1.5等国から2等、3等国へと転落してゆき、再起することはないでしょう。  
(有楽生)


(宮崎正弘のコメント) すでに二等国ではありませんか? 伝統と道徳が廃れ、ほかの国の歴史を教え、国民の精神が失われており、経済だけが突出しているのは奇形でもありますから。

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<< 宮崎正弘のロングセラーズ >>
 『世界新資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊)。
 『2008 世界大動乱の予兆』 (並木書房、1680円)
『中国から日本企業は撤退せよ!』(阪急コミュニケーションズ刊)
 『中国人を黙らせる50の方法』(徳間書店刊)
『出身地でわかる中国人』(PHP新書)
 『拉致』(徳間文庫)
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  • 読者y2007/08/07

    朝一番にこのメールを読むのを楽しみにしている者ですが、8月1日から来なくなり再登録してももう登録済みとなり受付て頂けません。どうすればよろしいでしょうか。

  • 伊勢の小太郎2007/08/06

    初めてのコメントで失礼します。(先ほど焦ってクリックしてしまいました。コメントなしで出てしまいましたはずかしい。失礼。)

    この参院選や米下院の慰安婦決議などでネット上の言論もずいぶんと乱暴になってきたように感じます。“安倍は終わってるんじゃない?”“小泉は良かった”“小沢って何?”“反日中国がどうした!”“・・・このままでは日本は終わるんじゃないの?”それぞれそのとおりだと思いますが、根本は、もう既に“日本じゃない”国になっているということでは。ここ数年やっと“○○は中共のハニーとラップに云々”と言われますが、日本国中色ボケしていてハニートラップ状態。言葉遣いも由緒正しい日本語を操ることあたわず(私もそうですが)。やはり三島先生の危惧は、既に現実のものに。「・・・そこには無表情で、計算高い極東の無表情な島国が・・・。」(私的な言い回しで恐縮ですが)ノーメンキャツラ(てめえのことしか考えない官僚&テレビ大好き国民&俺たちはちょっと違うんだよマスコミ人)によって、japan(中共琉球自治区&中共倭国)が実現してしまっているのでは?これから私たちの子供たちは地下にもぐって行くしかないのか。

    ただ、ウイグル・チベット・モンゴルの若者を見るとなんと・・・言葉を失う。われわれは・・・??!!。

  • 名無しさん2007/08/06

    **【次は米兵捕虜補償 中国系反日組織 ホンダ議員と会談】**ホンダ議員と中国系反日

    団体は、新たな反日決議安を準備しているようです。第二次世界大戦中の米兵捕虜に対す

    る補償問題を新たな対日活動の目標として取り上げるほか、カナダ国会での慰安婦決議案

    採択も急ぐ構え。産経の山本秀也氏が8/5付けで書いています。

    http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070805/usa070805000.htm