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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

発行日:7/31



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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成19年(2007年) 7月31日(火曜日) 貳
通巻第1871号  
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 マナス空港の米軍駐留は延長が難しい情勢
   キルギスはソ連時代が長すぎて、米国への反感が強すぎる
***************************************

 キルギスの首都ビジケクで8月16日から「上海シックス」(上海協力会議)が開催される。
首都ビシケクは厳戒態勢にあるのか、と言えばそうでもない。ダレているわけでもないが、市内いたるところの警備がゆるんでいた。
 町の繁華街広場では海賊版DVDが堂々と売られている。公設カジノもある。
 町をはしるクルマは圧倒的にドイツ製。それもベンツ、BMW、ワーゲンの順。日本車は三割。

 ビシケクにはロシアからプーチン大統領、中国から胡錦濤、そして参加中央アジア五カ国(キルギス、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン)から首脳すべて、これにイラン、モンゴル、パキスタンからオブザーバーが一堂に会するというのに、テロリスト潜入をそれほど恐れていないのか、まだ先のはなしと高をくくっているのか。
 (小生が滞在したのは7月20日から六日間)。

 空路カザフスタンのアルマトゥ(先日までカザフの首都だった)にはいり、そこからバスで南下してキルギスへ入国した。
 「国境」は、まるで掘っ建て小屋で、急ごしらえ。
「入り鉄砲に出女」かと思いきや、カザフからキルギスへの入国は拍子抜けするほど簡単。むしろ反対側からカザフへの入国の方が難しい。理由は石油リッチのカザフへもぐりこむ不法移民を取り締まる目的。もうひとつは麻薬対策である。
 ただし入管には、コンピュータが整備されており、審査は軍ではなく内務省役人があたる。
日本人はキルギスへビザなしで入国できるため、カザフからでるときに一人五分ほどかかる。写真と実物を見比べたり。

 さて、小生にとって一番興味を抱いてきた問題とは、キルギスのマナス国際空港に駐屯している2000名のアメリカ空軍が、いつまで駐屯延長できるか、どうか。

 ビシケクの宿泊ホテルから35キロの距離というので、タクシーを雇って行ってみたが、拍子抜けである。どえらい田舎の飛行場だ。
空港の警備さえ二、三名しかいない。撮影を咎める軍もいない。
 (どうなっているんだろう?)

 ビシケクの北西部にマナス空港があるが、同時に東部30キロのカントという町にはロシア軍が駐屯している。
 (バランスをとるため?)


 ▼ なんでアメリカの軍隊が居るの?

 キルギスの人々に片っ端から聞いてみた(ただし英語の通じる人のみ)。
 「米軍? なんで外国の軍隊が我が国にいるのか。政府とカネの関係じゃないか」(大学出のインテリ中年)
 「米軍は早くでていって欲しいわよ。ロシア軍の駐留? 当然でしょう。ロシアがいると安心よ」(ロシア人女性。学校の先生)。
 「米軍の役割はアフガニスタンだった。もう役目は終わっている。はやく帰ってくれ」(遊牧民)。
 「中国? 我々が怖いのはもちろん中国だけど、対抗上、米軍が必要とは思えない。ロシアがいてくれるから」(タクシー運転手)。

 たしかにキルギスはソ連崩壊直後、中央アジアで真っ先に独立した。
 ソ連時代の共産党書記が、カザフでもトルクメニスタンでも、即座に権力を握ったが、キルギスだけは「アカデミー」のアカーエフが大統領に選任され、それが改革派を標榜したので、西側はやけに高い評価をキルギスに与えてしまった。

 二年前に「チューリップ革命」がおきた。
 腐敗したアカーエフはモスクワへ逃亡し、かわって「西側寄り」のバキーエフが大統領になった。
 西側は大いに期待したが、バキーエフもまた、一族の利権、一族郎党だけが権力の周りを固め、汚職が横溢した。
「あれはアカーエフ前大統領より悪い」とビジケク市民は言う。
 (アカーエフは北部出身だったのに対して、バキーエフは南部出身。北部に位置するビジケクは南部の人を警戒する)。

 もともと英米はボタンを掛け違えた。
キルギスが「民主国家」などと一方的で過大な評価のあやまりに、どうやら気づいたのだが、その判定タイミングは遅かった。

 長かったソ連時代に情報操作されて、或いはロシア語教育が根付いてしまって、国民はすっかりロシアの文化、語学、教育、安全保障になれてしまったのだ。
 その結果、ロシア軍の駐屯には「安心感」が、米軍の駐屯は「異物」「不信」というメンタリティが育まれていたのである。
 これは現地で始めて体得できた皮膚感覚である。
 
    ○◎み◎○や◎○ざ○◎き◎○ま◎○さ◎◎ひ○◎ろ◎○◎
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    ♪
(読者の声1) 貴台は小田実氏と交流はおありにならなかったと思いますが、いささかの感慨はおありかと存じます。
田舎の中高生時代、小田氏の書き物を目にしていましたが、何の記憶も感動も残っていません。三十年近く前、東京駅丸ノ内南口の改札に立つ長髪、ふてぶてしい面構え、ぎらぎらした鋭い目線で周囲を睥睨していた小田実氏を実見したのが最初で最後でした。
    (HN生、神奈川)


(宮崎正弘のコメント) 感慨こそありませんが、中学生のときに読んだ『何でも見てやろう』の衝撃と、大学へ入ったときに、ちょうど彼が「ベ平連」を結成した。あのときの小田実が、同一人物とはとても思えませんでしたね。
 彼が文壇にデビューしたときの、まだ幼さとエネルギーが燃えていた、かの長編小説『アメリカ』や『大地と星輝く天の子』とかなんとか、アテネを舞台にした実験小説を読んだ記憶もあります。
保守親米のスタンスから、マスコミの先端へ突出する世渡りの身軽さ、その思想的軽さに鳥肌がたつ思いを募らせたものです。
ですから、その後は『ガ島』など一切、読んでおりません。かれは処世で売った。けれど文学的レベルは標準以下と言って良いんじゃありませんか?

 そうそう、デモの現場では何回も目撃しました(小生は学生新聞の編集をしておりましたので)。
一度は佐世保(昭和四十三年、エンプラ寄港阻止運動)でも。
ほかに小生が25歳頃のこと、有楽町の交通会館で偶会し、すこし立ち話をした記憶が、いま鮮明に甦りました。小田氏はパスポートの更新にきていたので「今度はどちらへ?」とからかったのです。
 それにしても、「憎まれっ子、世にはばかる」。



    ♪
(読者の声2) 三十日、ジェラルド・カーティスが参院選の結果を評して、一つ目には安倍首相のリーダー・シップの無さ、二つ目には的外れのスローガン“戦後レジームからの脱却”を掲げた失敗、三つ目に本質的には小泉改革を否定する審判が看て取れると勝手な分析をしていました。
現在の民意をきちんと受けとめてくれる受け皿となる政党が不在です。
それに気付いているヴィヴィドな感性を持つ政治家が永田町にいれば、とりあえずのキャビネット・リシャッフル(内閣改造)を与党がやった後、与野党の真性保守政治家が糾合してパーティー・リシャッフル(政党再編)の成り行きになると見立てております。貴見は如何でしょうか? 
(西 法太郎)


(宮崎正弘のコメント) 嗚呼、カーティス教授も老いたり。



    ♪
(読者の声3) 貴著『世界新資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊)の掉尾に近い、レアメタルについての次のくだりに注目しました。
(引用開始)
「レアメタルを使うハイテク製品は全世界需要の30%が日本。それほどのハイテク大国である日本。しかしレアメタル資源はアフリカ諸国に集中している。
 中国にはタングステン、インジウム、アンチモン、レアアースが偏在しており、ロシアがチタンを戦略物資として国家管理しているように、いずれ日本いじめの材料にレアメタル供給ストップなど陰湿な手段を講じてくるだろう。
 なぜなら中国のレアアース生産は世界の93%を占めているばかりか、日本はこの危険な国・中国にその供給源の92%を依拠している。
レアアース金属はハイブリッド・カー、触媒など自動車産業とエレクトロニクス業界にとって死活的な材料だ。 プラスチック、合成繊維に使われるアンチモンも中国が世界生産の94%、日本の依存度は82%。 アナジウムの埋蔵もロシア、中国、南アの三ヵ国だけに偏在しており、ハイテク米国、日本、ドイツにはないというレアメタル、こうなると戦略物資である。
日本が打つ手は戦略物資備蓄体制の強化である。
筆者は1982年に 『もうひとつの資源戦争』 を書いて戦略備蓄とくにレアメタルの国家備蓄を提唱した。
そのとき、じつは日本は戦略的国家備蓄をしておらず、民間の流通在庫が30日間分前後しかなかった。 政府が四品目の備蓄を始めたのは翌83年から、しかし、今でも対象は数品目だけで、備蓄も20日から40日分しかない。 石油とは比べものにならない。
 廃品回収、再利用だけではとても間に合わないのである。 
(引用止め)

タングステンは切削工具や半導体を作るときに超硬工具として使われ、8割は中国から供給されています。
インジウムは液晶やプラズマの電極に使われます。
日本政府は備蓄しているレアメタルを、2004年に5回、国内企業に売却しましたが、その背景を探るとモリブデンについては、2003年の中国遼寧省での鉱山事故による生産休止。バナジウムは2003年12月南アフリカの通貨の高騰による生産減が誘因。
しかし最大の要因は中国の急速な経済成長にあるようでニッケルは、2005年の消費量が1999年と比較して4.2倍となり、2000年から輸入国になりました。
タングステンも1.9倍とレアメタルの消費が拡大しています。

さらに注目しなければならないのが、中国が主要鉱物資源の戦略的備蓄制度を打ち出したことです。
鉄、銅、ボーキサイト、マンガン、クロム、タングステン、ウラニウム、石炭が対象資源。 中国は世界有数の地下資源大国で、レアメタルの輸出量も世界一、二を争いますが、急速な経済成長で、国内でもレアメタルが必要となり、出し惜しみを始めたのです。
北朝鮮はレアメタルの宝庫という観測が強まっています。
石炭や鉄鉱石以外に資源がないとみられがちですが、実は、欧米各国はその地下資源に狙いを付けています。アメリカが資源探査衛星で確認した所、軍需産業に欠かせないタングステンは世界の埋蔵量の半分が眠っているといわれ、アルミニウム、モリブデン、マグネサイトなども相当にあるようです。

希土類において中国は、世界の9割を産出していますが、6月から中国政府は希土類に輸出税を課し始め、ネオジウムが高騰しています。ネオジウムは主に磁石に使うため、モータのコストアップ要因になります。 身近ではパソコンのハードディスク、将来的には燃料電池車や電気自動車で使う自動車用のモータが直撃を受けるでしょう。
中国進出にあれだけ慎重だったトヨタが脱兎の如く、中国(ロシアも)というカントリー・リスクを踏み出しました。 侍大将のトヨタが中国大陸に出城を築くということは、家来・近習・職人たちも挙ってそこに出てゆかなくてはなりません。 
トヨタの中国進出は単に生産基地として安価な労働力を得ようとするものでなく、飽和した国内市場に代わって成長市場としての期待値も大きいでしょう。 
さらにそれ以外に、貴著を手にして、トヨタの中国・ロシア進出の密かな誘因にレアメタルの確保があるのだろうと思い至りました。
財だけでなく ”知” も危険に晒す泥濘の地なのに浅ましい所業です。

信越化学・金川社長は以下のように述べています。
「投資というのはどんな投資でもリスクはある。リスクは踏まざるを得ないリスクと、踏んではいけないリスクがある。
踏んじゃいけないリスクはカントリー・リスクです。
中国の場合はカントリー・リスクというと語弊があるかもしれないが、例えば我々の商品の基礎中の基礎の原料である石油とか電力を、政府が一番コントロールしている。
我々が下流、ダウンストリームでいくら努力して、事業を成功させても、上流で押さえられたらそれで一発で終わり。
つまり我々の経営努力ではできないものがあるところではやってはいけない、というのが私の考え方。
経営努力で克服できるものは経営努力で克服するが、できないものはやらない。」

 これこそ正眼の構えの経営姿勢であり、卓見であり、真っ当と云えます。
貴著に 「廃品回収、再利用だけではとても間に合わない」とありますが、レアメタル資源がない日本が出来ることは、まず資源のリサイクル、そして国家備蓄の積み増しです。
積極的な国家戦略は望むべくもありません。
    (しなの六文銭)


(宮崎正弘のコメント) 最新情報を有り難う御座います。
非常に有益なお話でした。
 ついでながら、8月3日夜の日経CNBC(テレビ)の「生島ヒロシ、三原淳雄のマーケットトーク」に宮崎が生出演し、この資源問題を15分ほど語ります。

      ▽  ▽    
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<< 宮崎正弘のロングセラーズ >>
 『世界新資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊)。
 『2008 世界大動乱の予兆』 (並木書房、1680円)
『中国から日本企業は撤退せよ!』(阪急コミュニケーションズ刊)
 『中国人を黙らせる50の方法』(徳間書店刊)
『出身地でわかる中国人』(PHP新書)
 『拉致』(徳間文庫)
          ◇ ◎ ○ ◎ ○ ◎
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宮崎正弘の新ホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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http://www.melma.com/backnumber_45206/
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(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2007 ◎転送自由。ただし転載は出典明示のこと。
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  1. It's a plaseure to find such rationality in an answer. Welcome to the debate.

    KVlqmrTaRumX 2013/4/2

  2. 小沢一郎はトラファルガーのネルソン提督。自民党を破ったが自らは頓死。そんなところじゃないですか。

    napoleon 2007/7/31

  3. ロクナ資源はないと思っていた中国。
    貴重な資源があるとは驚きだ。
    それに引き換え、
    文字通り資源のない日本は
    相変わらずの、
    バラマキ政治のオンパレード
    やはり、この国は終わるしかないか。

    遠からず去る老人。 2007/7/31

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発行者プロフィール

宮崎 正弘

宮崎 正弘

http://www.nippon-nn.net/miyazaki/

国際情勢の裏情報を豊富なデータと人脈から解析してゆく。独特な方法と辛辣な批判精神によるニュースの裏側で織りなされている人間模様に興味を持つ。筆者の人生観と執筆を継続する動機の基軸は同じ。ホームページは http://miyazaki.xii.jp/

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