国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2007/07/09


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成19年(2007年) 7月9日(月曜日) 
通巻第1856号  
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 わたしは台湾政治の理想の伝道師、総統選挙は台湾人が勝つ
    葉菊蘭女史、大いに台湾政治を語る
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 葉菊蘭女史が来日した。
 彼女は鄭南容烈士の未亡人。現在、台湾の国会議員(民進党)。元高雄市長。閣僚経験者。世情では、次期総統選挙で、「副総統」候補に推されるだろう、と言われている。
すでに一部の台湾マスコミは「葉菊蘭副総統候補で決定」と報道を流している。

鄭南容烈士は「台湾の三島由紀夫」と言われ、外省人ながら台湾独立に挺身し、当時制約のあった雑誌に改憲論文を掲載(その改憲試案を書いたのが現駐日大使の許世楷氏だった)、官憲が踏み込む前に事務所に火をはなって壮烈に自決した。
最愛の夫をなくした葉菊蘭は台湾政治の理想のために政治家になった。

 さて謝長廷・民進党公認候補(元高雄市長)は8月15日までに副総統の候補を決めるとして党内調整に入った。

民進党の党内事情から言えば、派閥均衡、党内統一の文脈からも蘇貞昌(前首相)が有力。しかし国民党が馬英九・粛万長の正副チケットで走り出した以上、世情にもっとも人気の高い人間を選ぶことになるだろう。

 7月8日、葉菊蘭女史はホテルオークラで講演した。 葉菊蘭女史の講演要旨は以下の通り。


 ▼台湾国民はなぜ政治に冷淡になりつつあるのか

 台湾国民が政治に冷淡になったのは与野党それぞれの内部抗争に嫌気しているからだ。あの喜ばしい政権交代(2000年)のあと、なぜ新しい国家に台湾は生まれ変われなかったのか。
国民の「台湾人意識」はどう変わったのだろうか。

 台湾2300万国民のうち、外省人300万人は竹の中に住む。公務員が多い。客家が400万人いるが、ホーロー語がわからない(ホーロー語とは福建語の台湾化した現地語。台湾語ともいう)。
 最近、ベトナム、インドネシアからの花嫁も増え、新しい台湾人の母親にもなっている。

 十八年前、私が立法委員(国会議員)となったとき、台湾人意識が薄く、自身を台湾人と認識している人は5%もいなかった。
いまでは台湾人と自己認識している国民が70%。しかし同時に中国人であると認識している国民も多い。
 かように台湾人のアイデンティティは複雑多様。

 蒋経国も馬英九も「台湾は中国の一地方」という認識は同様で、台湾を独自の文化圏とは認識していない。
 もともと日本植民地時代の抗日を通して台湾人意識が芽生え、二二八事件でクライマックスとなった。
この国を守ろうというアイデンティテイが産まれた。


 ▼台湾も「普通のくに」をめざす

 孫文を支援していたころの日米欧は、かれの中華ナショナリズムをも支援したわけではなかった。

 しかし、今後台湾を正常な国家、普通のくににしてゆくためには旧敵とも『和解』しなければならない。
民進党が和解を主唱しているのは、与党としての自信であり、外省人にも手をさしのべて、政治に冷淡だった客家にも呼びかけ、台湾のために「共生しよう」と言っているのだ。
 わたしは台湾政治の理想の伝道師である。

 共生のあと、問題は中国である。
武力による威嚇、軍事的脅威である中国といかに台湾政治は対応していくのか。
民主、法治の台湾は脅威を拒絶する権利があり、わたしたちは犠牲を恐れず、この台湾の国民、生命、財産を守るべきである。正義を守るべきである。私は理想の伝道師、私心はなく、国家に尽くしたい。

 多数が少数を尊重し、強者は弱者を救わなければならず、また経済成長が環境を破壊してはならず、人と人とは多元的価値を尊重し、まごころで当たらなければならない。

 台湾は国際的に孤立している。
 国際間のコミュニケーションのネットワークを確立することも台湾の安全保障に繋がる。
国連から追い出された中華民国の幻の体制を脱却し、濃い孤独感を克服し、国際社会に正義を問うべきである。

    ♪
 講演のあと、質疑応答が一時間以上も続けられ、聴衆は熱心に聴き入った。許世楷大使夫妻も最後まで席を離れなかった。
 その後、懇親会が開催され、小生も出席。なごやかな雰囲気となって金美齢、林健良、宗像隆幸の各氏から挨拶があった。小生も指名されたので簡単なスピーチをした。

  ○◎み◎○や◎○ざ○◎き◎○ま◎○さ◎◎ひ○◎ろ◎○◎
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(読者の声1) 先日の名古屋でのご講演拝聴いたしました。国際情勢,中国情報についての生き字引のような知識量と洞察力に今更ながら感嘆しました。 その翌日は,三ヶ根山(さんがねさん)へ行かれた由。 
 その昔,宝飯郡(ほいぐん),額田郡(ぬかたぐん),幡豆郡(はずぐん)の3郡に接していたため「三ケ根」と言ったそうです。 
 東条,広田、松井石根(南京攻略戦の司令官,陸軍大将。愛知県出身)のほか、土肥原,板垣,木村,武藤の7人の遺骨が「殉国七士廟」に祀られています。
いずれもいわゆる東京裁判で『A級戦犯』として処刑された方々です。
境内には支那大陸関連の陸軍部隊の記念(慰霊)碑が多く建立されており,独特の雰囲気です。(高野山…言い得て妙だと思います。武勲の証,鎮魂の碑という 意味で。) 
 余談ながら,稜線に沿って走るスカイラインを500メートルほど行ったところに『比島観音』があります。眼下に三河湾を望むとそれがフィリッピンのル ソン島付近の眺めと似ているということで,こちらはフィリッピンで戦った部隊の記念碑が,同じように夥しく建っています。 
 私の子どもの頃,この2つの場所は,お墓のようで,何か薄気味悪いところでした。 
 現在も,戦友会や遺族の方はおみえになるでしょうが,殉国七士の方は,なぜか街宣車系の右翼の方々や暴力団の面々の参拝が多く,ちょっと近寄りがたい感じでした。 
 今では,戦友,ご遺族ともに高齢になって,頻繁に参拝するというわけにはいかなくなっています。
しかし最近は,仏教教団・阿含宗の方々 が,清掃奉仕や法要を定期的に営んでくださっているからか,雰囲気が以前より明るくなってきたように思います。 
 交通は不便なところですので,車でまわるのがよろしいかと存じます。 
 三ケ根観音,殉国七士廟に通じる三ヶ根山スカイラインは有料ですが,朝8時までにゲートを通過すれば無料です。夕方6時以降も無料。お泊まりは,三ケ根グリーンホテルか,「かんぽの宿」がいいでしょう。 駅からの送迎が,あると思います。 
ちなみに,三ヶ根山頂のこれらの場所は,幡豆郡幡豆町(はずぐん・はずちょう)であります。何かの参考になれば,うれしく思います。 
(S.O生、愛知)


(宮崎正弘のコメント)詳細にわたるガイドをいただき、有り難う御座います。実は名古屋の講演会の実行事務局の方々の御案内で、三ヶ根にはクルマでのぼりました。
現地ではもちろん、比島観音も、すべてじっくりと現地の墓守り役の伊藤弘さんの解説を伺いながら、ほぼ全てを拝見しました。
山小屋から東条由布子さんに電話をかけた伊藤氏に替わって、彼女ともすこし会話しました。三ヶ根は参詣客ばかりか、ヒッチハイクやあじさい見学などのヒトの出入りが絶えず、石碑だけでも数百。一種壮観でもあります。



    ♪
(読者の声2)貴誌1846号(6月30日付け)に宮崎さんのコメントとして、
「五一五事件前夜より情況がひどいのが中国です。売春宿に少女を売り飛ばし、拐かしてきた14歳の少年ら千名が奴隷として売られていた山西省の炭坑。毒入り風邪薬。ダルフール。一億のホームレス。農地のない農民が都会に溢れている。なぜ、中国人民解放軍にクーデタをおこす気概のある軍人がいないのか! この一事をもっても、かの軍人どもの精神的堕落は自明です」とあります。
もうすこし分かりやすく、この意味を解説して頂けませんか?
    (HI生、静岡)


(宮崎正弘のコメント) 日本では五一五事件も二二六事件も軍事クーデタに見えながら、じつは軍事クーデタではない。日本的な、じつに日本的な諌言、もくしは諫死事件と言ってよいのかも知れません。
諸外国にはほとんど例がない。クーデタを首謀する軍人は必ず、政権奪取をはかろうとし、失敗すれば処刑される。
 日本では戊辰の役から佐賀の乱、秋月の乱、萩の乱、神風連の乱、そして西南戦争と流れますが、神風連は言うに及ばず、西南の役にいたっても西郷さんは軍事クーデタを企図したのではなく、明治政府への諌言的行動でした。
 そこには一片の政治的リアリティを追求してはいないのです。愛国精神のほとばしる情念が、彼らを行動に駆り立てた。
 ところで、中国軍はといえば、軍人は人民解放軍の兵士であって、共産党に所属する、共産党にだけ忠誠を誓うプライベート・アーミィでしかなく、「国軍」ではない。
軍はクーデタというより、裏切りをやらかすことによって政権を奪取することを狙いますが、日本のように国のために立ち上がる、無償の行為に走る軍人は出ません。
 この点が決定的に違うのです。
 「国軍とすべき」という議論はありますが、それは中国政治においては、単なる行政改革ではなく、革命を意味することであり、そうして議論を人民解放軍は内部で放置するはずがないでしょう。

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  • 名無しさん2007/07/09

    大陸の支那人は「詐欺師」だけが本当のことを言うらしいのですが、現在の「台湾語」を遣う人々は、その傾向は全くないのでしょうか。

    外省人を除けば、皆、李登輝氏のような立派な人格を発揮する傾向にあるのでしょうか。

    台湾とは、軍事を含めて親密度を増すべきだと思いますので、今後の参考の為に。