国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2007/06/08


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成19年(2007年) 6月8日(金曜日)  貳
通巻第1828号  <<臨時増刊号>>
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李登輝前総統の講演要旨
「2007年とその後の世界情勢」
    (08年6月7日、オークラ)
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(下記は7日に行われた李前総統の講演要旨です)


 ▼イラクの泥沼が米国を弱体化させ、中国とロシアの台頭・復活を許した

昨今、東アジアの環境は大きく姿を転換しつつある。
日本も新しい安倍政権のもとで継続的に想像力を発揮していくべきであり、戦後の物質だけを追いかけてきた段階は去り、改憲の動きにみられるように新しい創造力を甦らせつつある。
中国は無期限に金融危機の処理に忙殺されるだろう。
台湾情勢は必ずしも楽観を許さない。

さて世界情勢の基調は、米国がイラク戦争で身動きがとれなくなって泥沼に落ち込み、その間隙をぬって中国とロシアの台頭が顕著なことである。
米国はイラクに深入りしたことにより、イランとの対決が目の前に出現し、国際政治における影響を減退させるサイクルに入った。
ただしイラクから米軍が撤退すれば、ペルシア湾一帯がイランの影響下にはいり、米国はそうした新情勢を受け入れがたい。
したがってイラクへの増派は少なすぎる。

一方でイランは、危険なほどに自己の能力を超えた過剰さを示している。イランは米国の限界を知っており、米国の戦略的野心を阻むことは可能であり、同時に政治的妥協も可能ということも認識できている。
イランと米国の行動をみているとお互いが阻害し合うばかりでなく、解決の方法が同時にあることを示唆している。
どちらか一方が勝つというかたちでの終幕はあるまい。

2008年に選出される米国新大統領が、いまの停滞期を脱しようとするまで、米国の政治的影響力が低減されたままの局面が続くだろう。
ともかくブッシュ政権の弱体化によって、ベネズエラからアジアに至るまで、米国に挑発的な国々が侵略的な行動にでる危険性を出現させてしまった。

つまりイラク戦争からテロリストとの戦争に収斂していく過程で、原理主義との戦いという新局面に陥った米国を横目に、ロシアは威厳を取り戻して、再びの版図恢復を目指して動き出し、中国は深刻な金融危機を回避するための時間稼ぎをする一方で、共産党の独裁体制が脅かされないように努力している。

イラクの泥沼からテロリズムとの戦いで、中国とロシアが政治的パワーを拡大した。
東アジア各国は選挙の年をむかえ、内政に焦点が移るため2007年は比較的安定した時期となるだろう。
 ロシアは米国にこれ以上の介入余力(たとえばカザフ、ウズベク、トルクメニスタンなどへ)がない実態を見透かしており、イランが米国に挑戦してくれる間にウクライナ、ベラルーシに介入した。資源をテコに旧ソ連影響圏の恢復が目標。米国の弱体化の継続は望ましいことになる。
だからプーチン政権はイランを側面から支援するだろう。


 ▼韓国大統領はまたもや南北会談の開催に動く

 中国経済は嘗ての日本のバブルや台湾やアジアをおそった通貨危機と同じ経済危機直前の様相を呈している。

中国の問題は国内金融である。
GDPの40−60%もの不良債権。これは96年の台湾における金融危機、97年からのアジア通貨危機を上回る規模の危険性を示してあまりあるもので、いずれ爆発は回避できまい。

 いまの中国経済は輸出拡大志向だが、利益の殆ど無い輸出に依存せざるを得ないのは、キャッシュ・フローの維持にこそ、その目標があるからだ。
しかしこの経済金融政策は失敗している。
輸出一途の拡大路線は、健全な経済運営とはいえず、むしろ問題を悪化させている。
 
韓国は12月に新大統領が誕生するが、ノムヒョン大統領はそれ以前に北朝鮮とさらに緊密な関係をすすめ、同時に韓国軍との修復も企てようとするだろう。
野党ハンナラ党が勝利すれば、米国との関係修復が可能だが、ノムヒョンは朝鮮半島の歴史に名前を刻むために、今年下半期に南北会談を実現するだろう。

台湾は年末に国会議員選挙、来年三月には総統選を迎えるが、中国は従来のように国民党のみに影響力に浸透しようとするのではなく、民進党にも影響力を浸透させよう。

ベトナムはWTO加盟に対応するために人事刷新を断行して上層部の権力構造を変革するだろう。
タイは軍事グーデタ以降も政治の仲介者として機能しており、フィリピンは米国との安全保障関係を改善することを企図し、オーストラリアも年末には新首相がでてくる。

こうみると東アジア各国は、今年は内政にエネルギーが注がれるから、比較安定期にはいると言えるのである。


▼中国からカネが流出しているのが現実だ!

さて西側のエコノイストの多くは目前の中国の経済繁栄に幻惑され、高度成長に惑わされているが、中国の金融危機は「いま、そこに存在している」のであり、救いようがない。
当局から発表される経済データではない。社会と政治の混乱がデータの裏にある真相を暗示している。

現実には中国からカネが海外へ流出している。その半面、香港とバミューダから投機用のカネが入っているが、外資は減少傾向にある。直接投資の減退傾向が見抜けないエコノミストが多いから中国経済を誤断するのである。
そのことを世界がいつ認識できるか。

 中国の宇宙開発、オリンピック、日本の歴史教科書への容喙などは、国内の都市と農村の格差是正や農民暴動に対応できないためのすり替えであり、このように危機回避の努力が中国の政権にとって無期限につづくことになる。

 胡錦濤政権は当面、人事と綱紀粛正、汚職摘発をテコに地方政府の権力を弱めつつ中央権力の絶対化を企図し、その後、経済権力をふたたび地方政府に任せるだろう。

さて台湾の危機を避けるパワーがあるのは米国と日本である。
中国は台湾の選挙において国民党の勝利を望んでいるとは言え、民進党にも影響力を広げている。
米国は一時的に東アジアにおいて主導権を失うだろうが、新しい政治周期を迎える2009年からパワーの恢復の必要性に迫られる。
日本は靖国問題で北京に白旗を掲げるのではなく、短時日裡に中国と対等な力を保持する努力をしなければならないだろう。


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(( 解説 ))

 米国の停滞と東アジアの内向き周期を大局的に描写
                            宮崎正弘


 李登輝氏の国際情勢認識は極めて鋭敏で,かつ明快である。
 とくにイラク戦争からテロリズムとの新しい戦争情況に陥って以来、世界の警察官だった米国の政治が麻痺状態となった。その間隙を突いてのイランの躍進。そのイランを支援することによって版図恢復に裨益するロシア。
 このような荒掴みではあれ、正確な国際情勢の認識が出発点である。

また中国の金融危機の恐ろしさを警告している。
 たとえば次の指摘。
 「イラク戦争からテロリストとの戦争に収斂していく過程で、原理主義との戦いという新局面に陥った米国を横目に、ロシアは威厳を取り戻して、再びの版図恢復をしめし、中国は深刻な金融危機を回避するための時間稼ぎをする」。

 だから昨年九月、上海派のボス陳良宇を政治的に葬った。
 李氏はつづけた。
「胡錦濤政権は当面、人事と綱紀粛正、汚職摘発をテコに地方政府の権力を弱めつつ中央権力の絶対化を企図し、その後、経済権力をふたたび地方政府に任せるだろう」。
したがって李氏は、胡錦濤の政治力は高まる、と予測するのである。
 またロシアは李氏がいみじくも指摘した通りに「威厳恢復」をはかって、旧ソ連圏の親欧米化路線に露骨に介入し、チェコ、ルーマニアへのミサイル配備を牽制している。強い対抗姿勢だが、なるほど、考えてみれば米軍の「イラン・シフト」という軍事力の配置換えをロシアは妨害し、間接的にイランを支援し、そのイランがますます暴れることによって米国が弱体化していけばいくほどにプーチンのロシアは、ウクライナ、ベラルーシへの捲土重来と、バルト三国への締め付けを強化していけるのだ。

 混沌として、しかも世界が何処へ行くのか曖昧な情況で、誰もが羅針盤を必要としている。
日本へも歯に衣着せず、しっかりしろと激励する。そのカリスマ性からくる近未来への方向の提示は、ある意味で興味深くもあり、また示唆に富んでいる。講演を聞きながら、筆者も何回か、膝を打つのだった。
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  ○◎み◎や○○ざ◎き◎◎ま◎さ◎◎ひ◎ろ○◎
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(読者の声1) 台湾の立法委員選挙の投票日ですが、通例では十二月の第一週末ですが、次回は来年一月上旬となりそうだと、昨夜のオークラのパーティー会場で聞き及びました。
少し前、総統選を三月から前倒しして立法委員選挙と同日投票になるという噂が飛んでいました。両者の投票日が近接した方が民進党に有利との読みで政権サイドで画策されていると観ます。実態はどうなのか。
どう成り行くのか、貴台のコメント、予測を拝聴致したく。
    (有楽生)



(宮崎正弘のコメント) 拙著新刊の『2008 世界大動乱の予兆』(並木書房)のなかでも書いておりますが、立法院選挙(国会議員)と総統選挙を別個ではなく、いっそのこと、一緒に実施しようという案は、かなり以前から存在しております。
 次ぎの選挙で定数が半減するため、立法院選挙は、日本の衆議院議員選挙同様にフィーバー。直後にまた大狂騰の総統選がつづくとエネルギーが使い果たされてしまいますから。
 
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 『出身地でわかる中国人』(PHP新書)
 『中国よ、反日ありがとう』(清流出版)
 『朝鮮半島、台湾海峡のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房)
 『拉致』(徳間文庫)
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宮崎正弘の新ホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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