国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2007/03/28



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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成19年(2007年) 3月29日(木曜日)  
通巻第1753号  (3月28日発行)
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 胡錦濤の“皇帝”としての力量はどれほどのものだろうか?
  プーチンは“イワン雷帝”に似てきて、希有の独裁権力を手中にした
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3月26日、中国の胡錦濤主席がロシアを公式訪問した。
プーチン・ロシア大統領との会談で「北朝鮮やイランの核問題で対話を通じた解決を目指す」という表向き、国際社会向けの宣伝方針が確認され、「軍事やエネルギー分野の協力強化で合意」などと発表された。

 会談後、プーチン大統領は「度重なる会談で両国の信頼とビジネス面での協力関係が強化された」とし、「貿易、経済、投資での協力を優先することで一致した」と意気軒昂。
商売繁盛がよほど嬉しいらしい。

一方、胡錦濤主席は「パートナーシップの強化と安全保障面で協力することで合意した」。
 両首脳が署名した「共同声明」には、「北朝鮮の核問題を巡る六カ国協議の合意を実行する」というリップサービスに加えて「イランに対してはウラン濃縮の停止を求める」など、国際協調ぶりをアピールしている。
北制裁は口だけ、イランには直前までたっぷりと武器輸出していたのがばれたばかりなのに。

また胡主席は中ロの10年間におよぶ“戦略的パートナー”関係は「正しい方向だ」と強調した。
モスクワでは名門「1948中学」を訪問し、熱烈歓迎を受けた。
 
胡錦濤にはビジネススーツの方が似合っている。アフリカでも何処でも、いまや「中国からは外交官よりさきにビジネスマンが現れる」(南アの新聞)。

今回も胡錦濤に金魚の糞のようにビジネス使節団が大挙して中国からロシアへ押し寄せた。
胡の訪露に合わせて、モスクワでは中国企業二百社による大規模商談会「中国国家展」の開幕式が行われ、胡主席とともにプーチン大統領も出席した。著名企業からも11人がついていった。
開会式典に臨んで、「ロシアの産業界が中国の産業や技術の進歩状況を観察できる機会」とプーチンが持ち上げれば、答礼に胡主席は「中ロの伝統的な友好協力関係の発展を示す祭典だ」と述べた。ビジネス感覚のほうが優先順位の上らしい。

 モスクワの「中国国家展」には自動車、石油、情報など1万5000の最新製品を出展し、ロシア企業と商談を展開した。これは中国が海外で開催した商談会として過去最大規模。中国商務省によるとおよそ43億ドルの商談が成立したそうな。
もっとも中国唯一の国産車「奇瑞」は年間三千台を“輸出”しているが、全部がロシア向け、西側で中国産自動車を買う国はまだない。昨年アフリカの一部にサンプル程度の出荷が見られたようだが、本格展開からはほど遠い。

ついで胡錦濤は、石油産業のメッカ、タタルスタン自治共和国の首都カザンを訪問し、石油関連施設を見学した(多維網、3月28日付け)。

BBCの報道は日本の報道ぶりとやや趣が異なり、胡主席は第一に「日本向けパイプラインを先に中国方向へ敷設する約束の確約をプーチンに迫った」とある。
またロシアに拡がる認識は親中感情が稀薄化しており、近年、中国人が夥しくロシアへやってきて住み着き始めた事実を脅威視している。
「いずれロシア人の人口をこえるんじゃない?」とたいそうな懸念が拡がっていると伝えている(BBC、3月26日付け)。

 プーチンは石油、ガスおよび武器輸出の軍需産業をほぼ一手に自派閥で独占し、たとえ次の大統領が子飼いのメドベージェフかイワノフに替わろうとも「院政」になるだろう。
政敵ホドルコフスキーから「ユコス」をもぎ取って、次のステップは石油独占企業体「ロスネフツ」とガスの独占企業体「ガスプロム」を合併させ、その大企業の総裁に納まって、事実上のロシア経済の皇帝に君臨するというシナリオも現実味を帯びてきた。


 ▲ プーチンが「雷帝」なら、胡錦濤は?

 「賢帝」といわれたピョートル大帝と比肩できるのはペレストロイカをやってのけたゴルバチョフだが、後継のエリツィンは「民主」を装って西側を騙し、結局、改革はなにもしなかった。
かれはロシア政府庁舎に戦車が押し寄せたときに、西側のテレビカメラの前で戦車の上に載って「民主化」の演説をし、党大会で真っ先に党員証を破って退場して、派手なパフォーマンスだけが得意だった。

 プーチンはエリツィンと取り引きして皇帝を引き継いだが、民主化よりも、改革よりも、まずなしたことはチェンチェンを強硬に武力鎮圧して、ナショナリズムを煽り、大国の栄誉を取り返すポーズで国民に印象づけには成功したものの、じっさいにやったことは改革ではなく、政敵の暗殺、議会の大政翼賛会化、マスコミの操作懐柔と支配による独裁体制の構築だった。
 資源を巧妙に抑えてナショナリズムをさらに高揚させ、結果的には権力を裏付ける金力を掌握しただけではないのか。


 ▲「第四世代」は党のテクノクラートであっても革命の修羅場を体験していない

 他方、胡錦濤は、どのていどの皇帝たりうるか? 
 『開明派』という西側の期待はとうに失せている。
 「親民派」なる宣伝臭の強いスローガンも、テレビカメラを前にしての演技でしかなく、じっさいには「改革」から遠い。軍の強硬路線に歯止めをかけられず地方幹部の汚職も、数人の犠牲の山羊をだしただけで、抜本的な党の腐敗体質の除去からははるかに遠く、所詮は党のテクノクラートの限界を示して余りあるだろう。

 暴虐の皇帝毛沢東、改革に踏み出したトウ小平、軍事を後ろ盾に反日をテコとして上海派で権力を固めた江沢民の後継として「第四世代」の皇帝は、修羅場をくぐってこないだけに、文革の悲哀をなめた経験はあっても、それは老人キラーと太子党に媚びる権力構造の安定化ではあっても、庶民の願望とは無縁のものではないのか。

 いまのところ、全土から嫌われた上海派の退治をしている模様にも映るが、人事の矢継ぎ早やの発表を一覧しても、上海派が完全に干されているわけではない。

 「太子党」の利権がつづく中国では、共産党最高幹部の息子らがやっている腐敗。たとえば、温家宝首相の息子は平安保険(中国の生保第二位)の4000万株の筆頭株主。曾慶紅副主席の息子は700億元の不動産王だが、公金600億元を転用疑惑がもたれている。
庶民からは怨嗟の的、いつまでも自分たちの悪政を「反日」で事態をすり替えることは出来ないだろう。

 こうした太子党に次の人事の過半を依拠せざるを得ないというのは党内の基盤固めであり、その政治権力のパワーは、率直に言って比較不安定、すなわち異常な脆さを胚胎している。
 胡錦濤もまた、エリツィンていどの疑似皇帝。権力の掌握がなければ、改革の断行が出来ないのも、かの国の宿命ではあるが。。。。
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(読者の声1)アメリカの下院のいろいろな反日的決議案や、そのほかに目を通しましたが、やはり慰安婦問題は圧倒的に突出しています(殆どが 賞賛声明のようなものです)。

 自民党議員で最近アメリカにぶらりと行く人は殆どいません。
みな中国です。
 もっともアメリカに行って向こうの議員と親しく雑談できる話題と英語力のある人は殆ど見当たらない。日常の多面的な接触の中で「毒(?)」を盛りに行くほどの才覚のある人は見当たりません。
 さて都知事選の浅野史郎は遠くで見ていると、マニフェストとか情報公開と人畜無害の普通のことを吠えているだけと思っていたのですが、選挙戦が進むにつ入れ、その本性が露呈してきました。
 彼の考えは殆ど過激派のそれと対して違わない。これが露呈してきた意味は小生にはたいへん大きいです。彼にとって北朝鮮は、(日本にとって)単なる外国の一つあってインドやタイとも同格であること、中核派も市民の一形態であること、国旗・国歌への対応は個人の自由であり、掲揚も斉唱も自由であるが、踏みつけても居眠りしてもそれも自由、いかなる強制も排除、北朝鮮の拉致は日本の強制連行と相殺。彼にはそれらのコスモポリタン・リベラル・反日が肉体化しています。
 思えば、塩崎官房長官という人も 基本的に変わらないのではないか。立場上、保守を装っていますが。。。要するに人の本質は外見や所属からは分からないのみならず、敗戦後遺症は一見マトモな顔をしている人でも 心の細胞にちゃんと深く静かに入り込んでおり、どうにも動きが取れない、というのが日本の実情ではないか。
都知事選では人のココロの底が見えてくるいい機会であった。 
浅野史郎の登場による最大の発見はそういうことでした。自民党員の半分ぐらいはそういう精神構造でしょう。
靖国や女系天皇問題などよりはるかに深刻な問題です。
このような精神構造で出来上がった人が、外国人と争って道理と利益を保っていくのはたいへんです。岡崎久彦や中西輝政は慰安婦問題で何をしているのでしょうかね?
彼ら2人は日本を巡る国際環境(反日動向)に対してはきわめて楽観的でした。
安倍首相にキチンとガイドしないと大変なことになりかねない。アクセスがあるのだからと憂慮しております。
    (TK生、世田谷)



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(読者の声2) 貴誌1751号の近衛本の書評、及び1752号の読者投書(1)における都留重人の件。興味津々で読みました。そこで、かねてから気になっておりながら追求しなかった件について、貴台や読者のお知恵拝借したく投書しました。
 都留が米議会非米活動委員会で証言した内容記録を最短距離で手に入れる方法を知りたいのですが。公文書館まで出かけるところまでいかないので。
 彼は、「容共であったのは若気の至り」風の発言をしたのを新聞で読んだ記憶がぼんやりあります。
 さて、ノーマンと都留を尾崎とゾルゲとだぶらせた連想は宮崎さんならでは、です。 
   (SJ生) 


(宮崎正弘のコメント) どなたか、御教示下さい。アーカイブへ行かなくても済む方法は?
 念のため、ご存じでしょうがアメリカンセンターは下記サイトです。
http://tokyo.usembassy.gov/j/tamcj-main.html
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<< 宮崎正弘の近刊予告 >>
 『2008年 世界大動乱の予兆  (中国発世界大暴落の足音)』 (並木書房、予価1600円 四月下旬刊行予定。四月上旬に特典付き予約販売をネット上で行います)
    
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<< 宮崎正弘の近著 >>
『中国から日本企業は撤退せよ!』(阪急コミュニケーションズ刊)
 『中国人を黙らせる50の方法』(徳間書店刊)
 『出身地でわかる中国人』(PHP新書)
 『中国よ、反日ありがとう』(清流出版)
 『朝鮮半島、台湾海峡のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房)
 『拉致』(徳間文庫)
http://www.amazon.co.jp/s/ref=sr_st/503-5227451-0680731?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&page=1&rh=n%3A465610%2Cp_27%3A%90%B3%8DO%81_c+%8B%7B%8D%E8%2Cn%3A466282%2Cn%3A492048&sort=daterank&x=8&y=8
(上記以外、入手可能な拙著は下記を含めて、ほとんどが上のサイトから注文出来ます。↑)
    
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<< 宮崎正弘の「三島由紀夫論」三部作 >>
『三島由紀夫“以後”』(並木書房)
『三島由紀夫はなぜ日本回帰したのか』(清流出版)
『三島由紀夫の現場』(並木書房)
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  • アキレスの踵2007/03/29

    竹村健一で検索して、氏の「これだけプログ」というのをときどき見ています。慰安婦問題を取り上げている評論を読んだのですが、どうもおかしな意見です。昔のような歯切れのよさがない。保守派だったはずなのに、もうろくされたのか、竹村先生。朝日新聞が圧倒的権威だった頃でも、喧嘩を売っていた人とは思えない。最近、テレビでお見かけしても、お年を召されたなあ、という印象しか受けません。ファンだったのに残念です。