国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2007/03/06



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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成19年(2007年) 3月6日(火曜日)  貳
通巻 第1726号  
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 胡錦濤は軍の宇宙衛星破壊実験を事前に知っていたか
   軍内に共産党トップの意思を無視する強硬派が台頭しているのでは?
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 予兆はあった。

 2000年と2002年版の中国「国防白書」には「宇宙の軍事利用はあってはならないし、国際間で軍事利用の禁止を協議するべきである」と謳っていた。
 それが2004年版で「宇宙は国際的な空間であり、人類共通の財産」と記されるようになった。 さらに2006年版には、この記述が欠落していた。
 
 ASAT実験は2007年1月10日、米国が公表したのは1月18日。
 米欧日露が総立ちになって詳しい事情説明を中国にもとめてもナシのつぶてだった。
 北京が、やおら「中国の軍備はすべて防御的である」としたのは同月23日、そして中国外務省が「中国はいかなる国際条約にも違反していない」と白々しいコメントをだすのは、じつに2月8日になってからである。

 詭弁を弄する天才である中国は、「白を白」と言って、慣れない正義漢を気取り、やがて「白は灰色」と言い換え、いまや「白は黒だ」と開き直っているのである。

 米国の有名なチャイナ・ウォッチャーの一人、ジェイムズ・マルビナン博士が謂う。
 「第一のシナリオは、胡錦濤主席に宇宙衛星破壊のミサイル実験は知らされていなかった。シビリアン・コントロールがまるで体をなしていない懼れがある。
第二のシナリオは、概要だけは胡主席に知らされていたが、具体的日時が知らされていなかった。
第三は、胡錦濤にすべてが知らされていたが、世界からこれほど強い反応があるとは予測していなかった」。

これら三つのシナリオのなかで、マルビナンは、「第二のシナリオの蓋然性が一番強いのではないか」と言う(フーバー研究所『チャイナ・リーダーシップ・モニター』、07年冬号)。

 かりにも胡錦濤は、党と国家の「中央軍事委員会」主席ではないか。
その軍のトップが実験の詳細を軍から知らされていなかった疑念が残るほどに、こんどのASAT実験は、軍に強硬派の台頭と、それを完全に制御できない胡執行部の内部の確執を同時に暗示しているのではないか。

いずれにしても、中国のASAT実験の成功は、日米が開発中だったMD構想を根底から吹き飛ばした。
MD(ミサイル防衛構想)では、もはや中国の宇宙からの通信網攻撃におぼつかないという分析が軍事評論家の間に多くなった。
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<< 今週の書棚 >>

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川口マーン恵美 『ドレスデン逍遙』(草思社)
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 絢爛豪華なバロック建築群が、基本的な都市計画のもとで、華麗に集中する都市がドレスデン。もと東ドイツ。
ドレスデンはナポレオン戦争の舞台にもなり、アウグスト強王の砦や城や、側室のひとりで権勢をきわめ、晩年幽閉された美女、ゴゼットの塔もある。
第二次大戦のどさくさにはソ連が侵入し、強奪、強姦の限りをつくした。歌劇座、銅像、ドーム、教会、美術館。そうした歴史的建物が、整合された美のコンセプトで町全体がつくられている。

 ドレスデンは第二次大戦で米英の凄まじい空爆で廃墟となった。
石つくりの建物が殆どなので、数千噸の火薬で、文字通り瓦礫の山と化した。
ところが、
「エルベの北側にはドイツ帝国の中でも有数の大きな軍事施設があったが、不思議なことに、ここは爆撃の目標に入っていなかった。そして、戦後、無償のまま速やかにソ連の手に渡り、そのあとは東ドイツに譲渡され、軍事施設として引き続き利用された」
と著者は指摘する。
 東ドイツにあった世界的な名画数百点も、戦争のどさくさに杳として行方不明になったが、そのうち数百点が、ある日突然、ソ連からでてきて、一部が東ドイツに返還された。
 この本は、そのような波乱に富む歴史を辿った美の都、ドレスデンの物語である。

 残念ながら評者(宮崎)は、ドレスデンに行ったことがない。東西ドイツ統一直前に東ベルリンとポツダムへ行った。それ以前にはハンブルグ、スタッツガルト、フランクフルトにも行ったが、この美の都に行くチャンスがなかった。
 ポツダムではツェツェリンホフ宮殿(ポツダム宣言が書かれた)を見ることが目的だったが、サン宮殿もついでに見て、驚いた。荘厳華麗豪華絢爛壮大な大伽藍が拡がっていた。
貧困に喘ぐイメージしかなかったポツダムになぜドイツの人々は、福祉や建設にまわすカネを、こういう宮殿のために使うのか?
 対照的に日本の惨状を見渡せば、歴史を破壊する都市の銘々。「西東京市」、「白山市」、「南アルプス市」。。。。
行政主導の“平成の大合併”には「国家百年の計」も無ければ、ひとつの美意識も感じない。
そこには土地の因縁も沿革も歴史もない。土地のひとびとの臭いがしない。伝統を無視する愚かな行為なのに、なぜか国民の多数には反省の色さえない。
 式年遷宮の伊勢神宮は例外だが、国家行事ではない。明治維新のとき、全国の城が壊されたが、姫路城の破却を私財を投じてまもった民間人がいた。だが、ほかの城は、熊本、彦根などをのぞき、棄却され、鹿鳴館時代の西洋化に突っ走る。

 さるにても、川口マーン恵美さんは、どうして本書を書こうと思ったのか。
 ドレスデン空襲で廃墟となった、その「映像を目にするうちに、心の中にある疑問が生じた。そして、その疑問は私の心にヒルのように食い付き、どうしても追い払うことが出来なくなった。つまり、なぜドイツ人は、この気の遠くなるような瓦礫の大海原に立ったとき、これをまた元のように建ててやろうと考えたのだろうか」。
 そして執筆の動機がうまれた。
「そう思った途端、初めてドイツ人が怖くなった。ドイツ人とはいったい何ものだろう?」

 女性の感受性と、特有のきめ細かな観察は、庭園や屋敷の樹木、古城や由緒ある公園などの草花の美しさの描写を得意とするのは当然にしても、景観のディテールに囚われず、著者はドレスデンの華麗な、それでいて残酷な歴史を骨太に活写する。
 本書は優雅な旅行記の体裁を借りた、日独文化比較論ともとれるが、流麗なタッチの歴史物語を繰り広げる方法、その巧みな語り口の、その端々にでてくる柔らかさとやさしい語彙。それでいて歴史の本質に横たわった人々の不幸と残忍さをえぐる。
この人の文体はなかなかのものなので、略歴を拝見すると小説もお書きになっている。「路の会」で講演を聞く機会があったけれども、彼女の著作、本書が最初だった。
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(読者の声1)ビーバーズ氏のホームページの紹介を載せていただきありがとうございました。ところで、一番肝心なURLが抜けているようですが。
http://www.occidentalism.org/?p=445
   (HM生、港区)


(編集部から)編集部が受け取った原文にこの箇所が抜けておりました。


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(読者の声2)「北京オリンピックに反対する地方議員と市民の会」というHPがあります。
http://mid.parfe.jp/kannyo/2008/top.htm
    (MY生)


(宮崎正弘のコメント) 一方で、「北京オリンピックを支援する会」というのが、河野洋平、野田毅ら親中派の政治家が中心となって出来ていますね。



    ♪
(読者の声3) 「エルオネス」3月号。先生の「華南を往く」を真っ先に読みました。
先生の書かれるレポートは、「正論」3月号の「プーチンが仕掛けた資源戦争」でも同様ですが、至近のニュースを読む時に必ず過去の事象の意味が深く抉り出されていて、過去時点に於けるわが国の対応の鈍さや拙さが現実を招いているのが大変よくわかります。
  その意味で、北朝鮮問題を協議するという名目の六者会議は12年前の米朝協議の繰り返しに過ぎず、問題はどうやら米中露の東アジア戦略再確認が行われたことに収斂するように思えます。端的に言えば「日本に核を持たせない」「弱い日本の継続で金を貢がせる」政策が大国間の共通利益として確認できたということではないだろうかと疑っています。
 いま「戦後体制の見直し」が掲げられていますが、戦後体制なる基本はヤルタ合意による戦勝国支配そのものであり、敗戦国日本の未来永劫にわたる弱体化が眼目とされます。
  2005年、プーチンの呼びかけでモスクワで開かれた対独戦勝60年記念式典に参加するブッシュ大統領は、直前にロシア占領地のラトビアに立ち寄って演説し、「ヤルタ合意は史上最大の過ちのひとつ」と批判しました。
戦勝国の中心アメリカが自ら批判した演説に、しかしわが日本は無反応だったのです。それより先1997年、ロシアを先進国首脳会議に参加させるかどうかを問われた日本は、何の条件もつけずに応諾しました。
当時、ソ連崩壊後の経済混乱でロシアは自国の原潜を日本海に放棄し、原子炉の放射能もれを防ぐ処置もできずに、日本に資金援助を頼んでいた。
不法に北方領土を占拠し続けることの理非をこのとき指摘する見識もなかったのです。
残念なのは、このように肝心なチャンスが来たときに立ち上がる勇気や智慧が、わが国の政治には無さそうだと繰り返し思わされることです。
          (HS生、豊橋)


(宮崎正弘のコメント)まったく、満腔の賛意をあらわしたい、と思います。
ところで、御覧いただいた雑誌『エルネオス』は、書店で殆ど売られていない会員制の雑誌のため、発売期間が済んだ時点で、華南旅行記は、小生のHPにカラー写真とともに掲載したいと考えております。
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<宮崎正弘の近著>

『中国から日本企業は撤退せよ!』(阪急コミュニケーションズ刊、最新刊)
http://item.rakuten.co.jp/book/4115513/
 『中国人を黙らせる50の方法』(徳間書店刊)
 『出身地でわかる中国人』(PHP新書、増刷出来)
 『中国よ、反日ありがとう』(清流出版)
 『朝鮮半島、台湾海峡のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房)
 『拉致』(徳間文庫、残部僅少)

<宮崎正弘の三島由紀夫論三部作>
『三島由紀夫“以後”』(並木書房、残部僅少)
『三島由紀夫はなぜ日本回帰したのか』(清流出版。絶版)
『三島由紀夫の現場』(並木書房、最新刊)
http://www.amazon.co.jp/s/ref=sr_st/503-5227451-0680731?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&page=1&rh=n%3A465610%2Cp_27%3A%90%B3%8DO%81_c+%8B%7B%8D%E8%2Cn%3A466282%2Cn%3A492048&sort=daterank&x=8&y=8
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宮崎正弘のホームページ http://www.nippon-nn.net/miyazaki/
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