国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2007/02/14



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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成19年(2007年) 2月15日(木曜日)  貳 
通巻第1706号  
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銭基深著・浜本良一訳『銭基深回顧録』(東洋書院)
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 中国の外交を十年に亘って司った銭元外相の回想録である。
 歴史的な証言という意味でたいそう意義が深い。この本の中国語の原文が出たのが2003年で、当時、小生も香港あたりで入手して、主要箇所をだけ読んだ記憶がある。
 なぜなら銭の在任中の天皇皇后両陛下の御訪中を、かれらは天安門事件以降、国際社会に孤立していた中国の立場を世界に広める政治或いは広報カードとして活用し、まさに「成功した」と自慢話がかかれていたからだ。
そういう表現には腹が立った。
 さて友人でもある訳者の浜本良一氏は、歳月をかけて、とうとうこの外交文書としては歴史にのこる書籍を全文翻訳した。翻訳文はやさしく訳注も随所に丁寧に施されていて読みやすい。
 1989年2月に先帝陛下が薨去され、東京に世界の指導者があつまる大喪の礼が粛々と行われた。
 米国からブッシュ大統領、フランスはミッテラン大統領、英国からはサッチャー首相。しかしながら中国は国際常識に逆らって二段階も格下の銭基深外相を「特使」として送り込んだ。
 銭外相はかれなりに張り切って日本にやってきた。
 しかも銭は日本の政治家と会見で「天皇の戦争責任」を政治的意図を十二分に含んで意図的に持ち出し、同時に北京での外交部談話は「軍国主義」「侵略戦争」を獅子吼した。
 失礼千万な話だが、銭外相の回顧録は、これさえも自慢話となる。
 嗚呼、共産党社会で出世しようとすれば、世渡りは難しい!
 しかも、この回想録を読んで分かるのは、銭は大喪の礼そっちのけで、この外交的機会に実にすばやく、ぬけめなく便乗して、インドネシア代表との国交回復交渉を東京の場で繰り広げていたのだった。

 興味深いはなしは他にもいろいろとあるが、89年天安門事件を「政治的風波」と言ってのける感性に、なにやら名状しがたい政治主義を感得する。
しかし、本書の中でも大きな関心のひとつは天安門事件直後にあれほど北京を攻撃してやまなかったブッシュの米国が密使を送り込んでいたことだった。
この箇所は外交史上でも十分に価値がある。中国の考え方をしる上で。
 キッシンジャーのパキスタン経由での北京秘密訪問よりも、このときのスコウクラフト補佐官(ブッシュ政権で安全保障担当大統領補佐官)の北京訪問は機密行動が徹底していた。
 だから「国籍不明機が上海上空に近づいたとき、撃墜命令の問い合わせが楊尚昆(当時、国家主席)にあった」とも言う。
 スコウクラフト補佐官の北京訪問は、北京にある米国大使館にさえ知らせず、通信は専門の要員をわざわざワシントンから二人帯同し、しかもリリィ大使の不在時を狙った。
米国が身内を騙したのである。
そのうえC141輸送機を「標識を塗り替えて一般商業機に偽造」させ、「連続二十二時間の飛行中を空中給油し、どこにも途中給油しなかった」という逸話まで興味津々と語られている。
 当時の会談の中身は、その後、スコウクラフト補佐官自身も、当時の上司ベーカー国務長官の回想録にも大筋が披露されているので、内容は旧聞に属するとはいえ、中国側の味方がこうも露骨に出たことも珍しいだろう。

 さて本書を通読したあとに残る最大の疑念とは何か?
 それは中国の積極外交を十年にもわたって司った銭自身が、殆ど外交戦略の最終決定権を保持していないという恐るべき真実ではないだろうか。
本書にたびたびでてくる「中央」というのは誰のことなのか? 逐一、裁断を「中央」に仰がなければいけないという中国の外務大臣って、操り人形。ピエロ?
決断のプロセスが曖昧模糊、青木湖の霧の樹海のごとし。
要するに中国外交は、本当はいったい誰が最終的に政策決定しているのか、闇の存在がそれとなく分かるだけで、読後感は「やはり闇の部分を銭基深が殆ど語っていない」というポイントだったのである。

(注 銭基深外相の「基」は下の「土」をとる。「深」は王編。)
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(サイト情報)
<< 米国の六カ国協議の総括とは? >>

(1)2月13日、朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議は核放棄に向けて各国が取るべき具体的行動を明記した「共同声明」を採択。2005年9月に発表された共同声明をもとに、行動計画が作成され、北朝鮮が60日以内に実施する核放棄の「初期段階の措置」と、日時を区切らない「次の段階」の措置にわけ、その見返りとしてのエネルギー支援を盛り込んだ。
核放棄に向けての行動計画 North Korea - Denuclearization Action Plan 、Office of the Spokesman, Department of State, February 13, 2007
http://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2007/february/80479.htm
(2)共同声明採択をうけてのブッシュ大統領の声明
 http://www.state.gov/p/eap/rls/ot/2007/80491.htm
(3)ヒル国務次官補のコメント
 http://www.state.gov/p/eap/rls/rm/2007/80499.htm
(4)米国務省国際情報プログラム局の解説記事
North Korea Nuclear Deal a “Breakthrough,” Rice Says、International Information Programs, Department of State, February 13, 2007
http://usinfo.state.gov/xarchives/display.html?p=washfile-english&y=2007&m=February&x=20070213150224esnamfuak0.8298456
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(読者の声1)台湾問題での李登輝さんの爆弾発言、つづいて馬英九の国民党主席辞任。まるで台湾政界、大荒れですが、貴誌の快刀乱麻を断つ筆捌き、明快なご分析に感服致しております。
貴誌とアンディ通信を併読していれば分かりにくいて流動的な台湾情勢は掌中のものとすることができます。まことに有り難く。
   (HN生、品川)



(宮崎正弘のコメント)ついでに申し上げておきますが、16日(金曜日)午後十時から、桜チャンネルの「爆弾」という番組で、小生と林健良氏、司会は水島総さんで、台湾問題をやります。一時間たっぷり。
 録画は終わりましたが、結構面白い番組になったのではないか、と思っております。
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<宮崎正弘の中国・台湾、北朝鮮関係著作>
 
『中国から日本企業は撤退せよ!』(阪急コミュニケーションズ刊、最新刊)
 『中国人を黙らせる50の方法』(徳間書店刊)
 『出身地でわかる中国人』(PHP新書、増刷出来)
 『中国よ、反日ありがとう』(清流出版)
 『朝鮮半島、台湾海峡のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房)
 『拉致』(徳間文庫、残部僅少)

<宮崎正弘の三島由紀夫論三部作>
『三島由紀夫“以後”』(並木書房、残部僅少)
『三島由紀夫はなぜ日本回帰したのか』(清流出版。絶版)
『三島由紀夫の現場』(並木書房、最新刊)
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http://www.melma.com/backnumber_45206/
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