国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2007/01/20


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成19年(2007年) 1月20日(土曜日) 
通巻第1685号  
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 (随筆)
 山奥へ逃げた漢族の末裔ら
                              宮崎正弘


 ▼楽山大仏の麓で

 中国四大料理と言えば北京、上海、広東そして四川料理。ならば前者三つに「経済圏」があって「四川経済圏」がないのはおかしい。
 これまで四川省が経済発展に遅れをとった理由は至極簡単。港湾に遠すぎるうえ海運の構造的脆弱性が影響したのだ。

 日本の旅行客は四川料理を食べて、「この麻婆豆腐、日本より辛くない」などと呟きながら、武侯祠(劉備玄徳の墓に隣接、諸葛孔明の陵)、杜甫草堂(詩聖杜甫の庵)、都江堰(古代中国のダム)などをみて満足して帰ってくる。
 時間が余れば蛾眉山、楽山大仏(岩磐に掘られた巨大な大仏を川から眺める)、大足(石仏彫刻)などを廻り、最近発掘がすすむ古代農業文明の「三星堆遺跡」に感動したり。これだけでたっぷり一週間の時間が必要だ。

 それほど四川省が独特な理由は、食と水が豊かで昔から「蜀」とも「天府」とも言われた「独立国」だったからだ。

 『三国志演義』における「蜀」は後漢の末裔をなのる劉備玄徳のもとに集まった張飛、関羽、そして参謀の諸葛孔明が織りしたという架空の話、実際の「蜀」は、孫権の「呉」、曹操の「魏」とつばぜり合いを続けた。

  諸葛孔明とて作戦全てがうまくいったわけでもなく、軍師としては過大評価である。
 劉備玄徳の息子も孫も能力が薄く、蜀なる国はやがて滅ぶ。杜甫は後年、この地に流れ着いて、「国破れて山河あり 城春にして草木深し」と歎ずる。

 峻険は山々を越えて、長安から北京から軍隊がやってきた。王朝が滅びるたびに山奥へ逃げ込んで南下したのが漢族の非主流派、すなわち「客家」である。中国版平家落人だ。

 かれらは唐、隋の時代から四川省へ入った。だから客家人の代表格、トウ小平への尊敬、敬愛の念の強さに四川人の篤い思いが籠もっている。四川華僑が独自性を誇る所以だ。


 ▼いま、四川の山奥では

 いまや四川省もクルマの洪水、自転車よりバイクが増えた。山道へ入るとダンプが路を凸凹にしていくために揺れが激しくなる。
 ダム工事が多く、古いコンプレッサー、地域住民の基礎工事、コンクリートミキサーも古い。途中の広告塔は「パンダの故郷へようこそ」。送電線も山奥へちゃんときている。
 
さらに奥地に進んでいくと川にミニダムと思われる仕掛けが方々にある。最初は養魚場かと思ったが、なんとセメント用の川砂の集積池であり、中洲は潰されて岩場は沙を掬い、工事現場の宿舎はパイプを組み合わせ、テントをかぶせただけの掘建て小屋。何年も着替えていないような汚い作業着、共産党地区委員会だけがピンクの立派な建物だ。
 
水が豊かだから四川省が独立経済圏的に動くことが可能だった。農地も豊饒でミカン、なす、リンゴ、サトウキビ、小麦。山岳地帯へ入ってもそれなりの農業を営んでおり、チャン族とチベット族が漢族の客家と共存している。
 山奥へ逃れた華僑の末裔たちである。

(この文章は『力の意思』に寄稿した拙文を転載したものです)。

   ♪
(後注 いまNHK大河ドラマは山本勘助。ところで、四川省の成都と山梨県甲府市が「姉妹都市」関係にあります。共通は「海がないから?」。小生は、「諸葛孔明と山本勘助」が両市を結んだ、と考えております)。
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(読者の声1) 中国の死刑制度に関して記事がありましたが、中国人の友人に聞きますと、ここ数年判決が出てから死刑にするまでが早いそうです。
死刑判決が出ても在獄中から“友達の友達の友達”とツテを伝って幹部連中に辿り着き、コネで出てしまう人が多いらしいのです。
中国が法治国家であることをアピールするために即死刑にするんだと聞きました。
強烈なコネ国家ですから江青もなかなか死刑には出来なかったのではないでしょうか。
政治権利終身剥奪というのもここらへんと関係があるかと思います。当時江青は死刑であっても政治権利終身剥奪がなかったのではないでしょうか。
一読者(KYO)


(宮崎正弘のコメント)江青は「執行猶予」つきの「死刑」でした。最後は独房の中で首をくくって自殺しましたが、ああいう烈女が中国を壟断し、同衾を命じた男がつぐつぎと異例の出世、ようするに江青とりまきの「四人組」が、政治を牛耳った、これは恐怖政治でしたね。
 ヒラリーが来年晩秋に当選したら、どうなりますかね。あの大国も。


   ♪
(読者の声2)先日の宮崎正弘さんの講演を聞きました。
そのなかで、二点ほど。感想です。日本の製鉄会社の自動車用鋼板の質は現在中国の製鉄企業よりはるかに上であると考えます。
ただし、世界一となったのはそんなに最近のことではありません。自動車のボディー用の鋼板の不良品率は1980年頃には米国の専門メーカーより一桁近く高く、追いつき追い抜いたのは1990年頃です。
1980年代初めには既に日本車の品質の良さが世界的に喧伝されていました。しかし、これは組立工程や他の部品の品質さらに生産ラインでの検査を含めた全工程を経て出荷された自動車の品質です。自動車用鋼板の質だけではまだ負けていました。
また、鉄にはさまざまな種類があり、最先端の兵器用の特殊鋼の分野ではおそらく米国は世界最高のものを未だに多く持っていると思います。

2.レバノンで初めて中国が国連軍に参加した。
PKFということでは初めてかもしれませんが、PKOということでは、自衛隊も参加した10年以上前にカンボジアの選挙監視のためのPKOに中国も参加しています。
参加したある陸上自衛隊三佐から聞きましたが、威張っていてしかも子供のような弱いものをいじめるといことで中国兵はフランス兵とともに現地できらわれていたそうです。
逆に子供たちに好かれていたのは自衛隊員とセネガル兵だったそうです。
平成14年のワールドカップでセネガルがフランスに買ったのはこれの因果応報かもしれませんね。
  (ST生、神奈川)


(宮崎正弘のコメント)中国が十人とか数十の単位ではなく、PKOに千名という大規模な参画は、レバノンが初めて、という意味でした。



(読者の声3)18日に行われた「立ち上がれ日本!ネットワーク」の公開講座で宮崎さんの講演を拝聴させていただきました。
 機知に富んだ話しぶりが抜群に楽しく、また丁寧なレジメもあり、たいへん有益でした。
中国は「国家」ではない。
果たして国民国家になれるのか、5年から10年後に別の方向に走り出すのか。などなど興味が尽きません。
「2008年8月の北京オリンピックまでは、中国は日本に対してニコニコしているだろう」とのご指摘をいただきましたが、オリンピック後のリセッション期入りを契機に日本へのバッシングが復活する可能性を予見されていらっしゃるのでしょうか。
現在の上海での日本企業への理不尽な立ち退き要求どころではない、さらに厳しい現実が日本企業に降りかかってくる可能性があるのでしょうか(←まさに『中国から日本企業は撤退せよ!』ですが)。
この点について再度伺いたく存じます。
もうひとつ、講演でもすこし触れられましたが、台湾の奇美電子は液晶ディスプレイの生産ラインで高価な製造装置を要するフォトプロセスを含む前工程の部分は、中国には展開していません。
現地に展開しているのは今のところ人海戦術が有効な後工程の部分だけです。
なお、パソコンやテレビの生産に有利な最先端の生産ライン(ガラス基板サイズが1000×1200ミリ以上の第5世代と呼ばれるクラス以上)を擁するメーカーは、世界に12社あります。日本に2社、韓国に2社あり、中国と台湾ではそれぞれ次のようなメーカーが参入しています。
中国:
BOE OT(北京京東方光電科技)
IVO(昆山龍騰光電)
SVA-NEC(上海廣電NEC) 
台湾:
AUO(友達光電)http://www.auo.com/auoDEV/?ls=en
CMO(奇美電子)http://www.cmel.com.tw/CMELWEB_EN/index.asp
CPT(中華映管)http://www.cptt.com.tw/
Hannstar(瀚宇彩晶)http://www.hannstar.com/index.html
Innolux Display(群創光電) http://www.innolux.com/
現在このセグメントで、シャープが某中国メーカー(上記以外)との共同生産を画策していますが、やがて難問山積の状況に引きずり込まれることになるかも知れません。
    (TT生、文京区)


(宮崎正弘のコメント)貴重な情報と鋭いご指摘、有り難う御座いました。
 オリンピック以後の日本企業への対応は、もうしばらく事態を見極める必要があるように見えます。
 日本企業への仕打ちに関しては、来月一日発売の『正論』で、25枚ほど書きますので、ご参照くだされば幸いです。


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(読者の声4)「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」1月19日(金曜日)貳。第1684号に中国での死刑について書かれていますが、ちょっと気になる情報がある米国で発行されているある健康雑誌に書かれていました。
ヨーロッパ製の化粧品でコラーゲンの入っているものの内約5%は中国から輸入したコラーゲンを使っている。中国から輸出されるコラーゲンは、死刑になった人間の皮膚から採られたものである。
ウィルスは通常宿主が同じ種に属しないと感染しません。
したがって、牛から採ったコラーゲンの中に牛ウィルスが入っていても通常人間には感染しません。死刑になった人間の皮膚から採ったコラーゲンを使った化粧品を皮膚につけると、材料になった人間が感染していたウィルスに感染する可能性があります。
たとえば、エイズとか。ヨーロッパ製の高級化粧品には注意しましょう。
一昨年大連に行って観光バスに乗ったら、バスガイドが「われわれの観光旅行会社は、共産党が所有している。したがって、市の警察よりえらいので、交通規則を守らなくても警察に捕まらない」といっていました。
   (ST生、神奈川)


(宮崎正弘のコメント)コラーゲンについては、昨年春頃だったかに、英国メディアがまっさきに大書して報道、小生も或る雑誌に書いたことがあります。
 SK!)不買運動は、そのときの報復ではなかったか、という観測が先月上海に行ったおりに聞かされました。嗤って済ませましたが、あり得るかも。
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ポーツマスネットワークでは2月4日に評論家・石平先生をお招きして講演会を開催します。

「なぜ中国は日本を憎むのか」というテーマです。
 石平先生は共産中国の民主化の旗手として、言論界でご活躍されておられます。是非ともご参加ください。

演題  「なぜ中国は日本を憎むのか」
講師   石 平先生(評論家)
日時   2月4日(日)午後2時〜4時(1時半開場) 
会場   九段上区民集会室1F(靖国神社のすぐ側です)千代田区九段南2-9-6 
定員   60名(要予約、先着順) 
会費   一般2000円、学生1000円(要学生証) 

参加申込先→https://secure.mynetworks.co.jp/formmail/00061299/
詳細確認:http://www.nichiro-pn.com/meeting4.html
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(サイト情報)
(1)米上院予算委員会は長期的な予算の見通しや財政課題を審議する公聴会を開催した。
1月18日に行われた公聴会:Senate Budget Committee Hearing on Long-Term Economic and Budget Challenges 、January 18, 2007
(2)バーナンキFRB議長の証言
 http://www.federalreserve.gov/boarddocs/testimony/2007/20070118/default.htm
(3)開会声明
Transcript of Opening Remarks by Senator Kent Conrad (D-ND)
http://budget.senate.gov/democratic/statements/2007/hrngstmt_Bernankehearing011807.pdf
Opening Statement from Senator Judd Gregg (unofficial transcript)
http://budget.senate.gov/republican/hearingarchive/2007-01-18BernankejgOpening.pdf
(4)1月11日に行われた公聴会:Senate Budget Committee Hearing on Long-Term Budget Outlook, January 11, 2007でのウォーカー政府説明責任局長の証言
Long-Term Budget Outlook: Saving Our Future Requires Tough Choices Today、Statement of David M. Walker, Comptroller General of the United States
http://www.gao.gov/new.items/d07342t.pdf
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(休刊予告)地方講演旅行のため明日1月21日から22日まで小誌は休刊です。

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<宮崎正弘の中国・台湾、北朝鮮関係著作>

 『中国から日本企業は撤退せよ!』(阪急コミュニケーションズ刊)
 『中国人を黙らせる50の方法』(徳間書店刊)
 『出身地でわかる中国人』(PHP新書、増刷出来)
 『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房)
 『朝鮮半島、台湾海峡のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房)
 『拉致』(徳間文庫)。
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http://www.melma.com/backnumber_45206/
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