国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2007/01/15


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成19年(2007年) 1月16日(火曜日) 
通巻第1678号  (1月15日発行)   
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 アゼルバイジャンがロシアとの対決姿勢を強めている
  ガスの一方的値上げ通告が資源戦争の火蓋を切った
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 アゼルバイジャンの先代大統領は米国詣でが好きで、とうとう米国の病院で治療を受け、かの地で死んだ。
いまのアゼルバイジャン大統領は先代の息子。名前もおなじくアリエフ・ジュニア。

 さて先にも報じたように、グルジアに対してのロシアのいじめはガス代金をいきなり四倍に吹っかけたことだが、このグルジアの急場をすくったのがアゼルバイジャンだった。

 アゼルバイジャンは石油基地バクーをかかえるが、ロシアからのガス供給を断るという挙にでた。ガスプロムが「アゼルバイジャン向けのガス料金を1000立法メートル当たり、110ドルから235ドルへ値上げする」と通告、しかもアゼルバイジャンの頭越しに位置するアルメニア向けは、いままで通りの料金に留める」と発表したからである。

 アゼルバイジャンは、すぐさま報復措置を講じた。ロシア領海側(黒海)のノボロシスク港への石油輸送を止めたのだ。
 アゼルバイジャンは「国家の威厳を死守し、最低限度の損出をも避けるためにも、ロシアの恐喝には屈しない」とした(日本の政治家諸兄、この言葉、どう思いますか?)。

 ロシアはグルジアの背後地にあるアゼルバイジャンの地政学的地位を重視して、これまでにアゼルバイジャンと、これほど決定的な対立をすることはなかった。
それが、昨年から資源リッチで外貨準備高も上昇し、経済が潤ったことを背景にすっかり自信を深めたロシアは、資源を「政治武器」として駆使し始めた。
このためロシアの外交的誤算がつぎつぎと南カフカスの不安定な地域を覆い始めたのである。

 だがアゼルバイジャンの強気も、いつまでも続くはずがない。
 「なぜならロシア領内に、およそ200万人のアゼル人が出稼ぎに行っており、かれらの送金によってアゼルバイジャンがかろうじて経済的自立を果たしているからだ」(ISNニュース、07年1月12日付け)。
 仕送りが外貨収入の過半を占めるフィリピンの外交的脆弱生を類推すれば状況が、よく理解できるだろう。

 強権政治を強めるプーチンのロシアは、いざとなれば二百万人のアゼル人を強制送還することなど、平気でやってのける独裁スタイルの政治が得意。
 ましてアゼルバイジャンの背後に位置するアルメニアはロシア正教の源流「東方教会」であり、嘗てはナゴルノカラバフをめぐって戦争を展開した。

イスラムのアゼルバイジャンが最終的に頼るのは南と国境を接するイランしかない(イランのヤスドにも拝火教神殿が残るが、アゼルにもイスラム以前の拝火教神殿跡が残っている)。
 チェチェン、オセチア騒動がおさまったかと思いきやカフカスの南で、ふたたび外交的緊張が走り始めている。
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(読者の声1)先週、アメリカではブッシュ大統領が、イラク占領政策に関する新政策を発表しましたが、今回は、知り合いの2人のアメリカ人学者(中東、国際関係専門、リヴェラル派)Sと(アメリカ政治専門、保守派)Dの見解について書かせていただきます。
 どうか、お目汚しいただければ、幸いです。
 1:今回のアメリカ政府の決定は、ニクソン政権時代のカンボジア侵攻と同じだ。完全に、アメリカは、ヴェトナム戦争の時と、同じ事を繰り返している。(S談)
 2:今回の米軍増派は、イラクの混乱を収めるためのものというよりは、むしろイランに対する牽制、圧力的な意味合いの方が強い。イランとの間で、戦火が、飛び火する可能性もある。(S談)
 3:アメリカ政府が、日本に対して、対イランへの自衛隊の派兵要請(つまり、更なる軍事協力)を行なうかどうかは、私には分からない。(S談)
 上記3に、関連して、別の学者Dの見解。
 日本には、対北朝鮮用の戦略要地としての役割が在る。その為、自衛隊への派兵要請は、無いと思う。ただ心配なのは日本が、核開発の方向に突き進むことだ。
これを行なえば他の国々(韓国、台湾)も核開発を行なうだろう。そうなれば、この地域は、確実に不安定になり、我がアメリカの国益に反するだけでなく、日米関係は、確実に悪化する。だから核開発は考え直して欲しい。(注:アメリカ人の多くは、北朝鮮の核開発問題を日本の核開発問題として捉えている)
 4:かつてニクソンが中国との間で行なったような行為(頭越しの秘密外交による国交正常化と安全保障確約、その後の経済支援)は、ブッシュ政権下においては、行なわれないだろう。
なぜなら北朝鮮は中国ほどアメリカにとっては重要な国ではないからだ。(D談)
 上記4つが、彼らの見解です。

 今回、話を聞いた学者連中はヴェトナム戦争を青年期に体験した世代であり、彼らと同じ世代の多くはアメリカの現在の姿を、かつてのジョンソン、ニクソンの時代に、重ね合わせる傾向が強いようです。
そのため、ニューヨークタイムズなどのリヴェラル派マスコミの反戦的論調や話し合いによる平和主義?に騙される、またはすんなりと、それらを信用してしまう傾向があります。(日本で言う「団塊の世代」に考え方が近い人が、多いのです。)そして、この世代の左罹った連中の中には、教育の現場や講演などで反戦教育?を行なう人間もいるのです。
 またこの世代の多くは、同盟国としての日本に対する信頼感がいまいち薄く、関心もあまり無いためにアメリカ左翼マスコミの論調を、自身の専門分野以外に関してはすんなりと受け入れる、または、信用する傾向も有ります。
 こういうことを考えました場合、アメリカにおいては、今後ヴェトナム戦争後期のような大規模な反戦運動と左右両陣営の激突による国内世論の分裂やそれによる国策の漂流が、起こる可能性があるように思います。(つまり、ニクソン時代に、起こった事と似たような事が起こる可能性です)。
 さて宮崎先生のメルマガ第1610号で、小生の使う”リヴェラル”という表記について、誤使用ではないか?とご指摘していただきました印尼爺、在インドネシア様。大変、貴重なご指摘ありがとうございました。
 ただ、小生が在住しておりましたテキサス、カンザス、そして、現在の在住地ユタでは、Liberalの発音は、「リベラル」よりも、「リヴェラル」に発音が近く、そのため、表記としてはリヴェラルの方を使用いたしております。
   (ST生、在米)


(宮崎正弘のコメント)アメリカの空気の一端が実感として伝わりました。有り難う御座います。
 イランへの牽制云々は、日本のマスコミの分析にも散見されております。



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(読者の声2)貴誌1月15日(月曜日)付け第1677号に、広州市当局が胸をはって「一人あたりのGDPが10000ドルを超えた」と発表し、その舌の根も乾かぬうちに「7800ドル」と大幅に下方修正されたというヘラトリの記事が紹介されていました。
 誤謬の原因は、広州全体のGDPを、登録されて人口の750万人で計算したからで、広州戸籍がなくとも、広州で労働している流入した、出稼ぎ労働者350万人の所得を含めていなかったからとやら。
これを読んで思い出すのは、北京から山西・河南・湖北・湖南の各省を経て広東省の広州に至る鉄路で目撃した「盲流」です。
この鉄路の、広州駅とそこから6時間弱かかる河源市のひとつ先にある龍川という小さな町の駅の間を、数年前に何度か業務で往復しました。
龍川とは、金正日が爆殺されかかった北朝鮮にある駅とたまたま同じ名前で、河源市からはSARSという「中国型致死性肺炎」の発症第一号患者が出ました。 
丁度その頃、現地に赴いていましたので、危うく難を逃れたといえましょう。
広東省の龍川駅や河源駅から広州駅に向かう列車にはいつも、貧しい湖南省あたりから乗り込んできたと思しき人々が、大きな荷物を抱えて窓から溢れんばかりに乗り込んでいました。 
私は、同行者と”軟臥”という四人一部屋のコンパートメントを使いましたから、彼らと一緒くたにならずにすみました。
広州駅に着くと、この「盲流」の群れは列車からドッと吐き出されて、街中に散って行きました。
更に、順徳、東莞、深せんに流れていく者もいるようでした。
彼らは農民籍者で都市籍はなく、特殊技能を持つものなどいません。 
彼らは待遇条件で贅沢はいえませんから、横になる場所と飯にありつければ、どんなわずかな給料でも働く人々です。
 無給でも寝食だけで御の字の輩も大勢います。 
一人あたりGDPが7,800ドルだって、マユツバだと思います。
中国の貧しさの闇は広く深く、これに起因する無教育・無道徳が誘発する無統制と無節操が、中国人の凶暴性と犯罪を生むエントロピーを日々・年々増大させているのです。
   (品川商社マン)


(宮崎正弘のコメント)「盲流」とはすこし古い言葉で、その後「民工潮」、最近は「労潮」とか、「民潮」とか、中国もつぎつぎと今風の言葉に変えています。実態は同じなのに!



    ♪
(読者の声3)佐藤優氏の『自壊する帝国』の第四章 (リガへの旅立ち)に、バルト三国について要領を得た簡明な記述がされていますので、以下かい摘まんでおきます。

エストニアは人口200万(佐藤氏がソ連に駐在していた1990年前後)で50%以上がエストニア人。エストニア人はフィンランド人に近く、通訳なしで会話ができるほどエストニア語はフィンランド語に似ている。
宗教はプロテスタントで、工業国。

ラトビアは人口300万(佐藤氏駐在当時)だが、 半分以上はロシア人。多数のロシア人労働者が流入している首都リガは70%以上がロシア人。ラトビア語はリトアニア語とともにバルト系で、ロシア語・ドイツ語とかけ離れ、文法はサンスクリット語に近い特異性を持つ。
戦前日本はここに大きな大使館と領事館を構え、戦後ここが結婚宮殿として地元民に使われた。 戦前リガには600人の邦人がいた。
宗教はプロテスタント。 工業国で労働者が強く、ロシア革命時、リガの狙撃兵は、ボルシェビキの味方をした。

リトアニアは人口400万(同上)。 人口の80%以上はリトアニア人で残りがロシア人とポーランド人。農業国で保守的な国民性。
ドイツに同化したプロイセン人と同じバルト系語族。
地中海まで勢力を展ばしたリトアニア=ポーランド連合国の時代に誇りを持っている。戦中、本国外務省の訓令を守らず6千人のユダヤ人に通過査証(トランジット・ビザ)を発行したのが、(当時の)首都カウナスの臨時領事代理の杉原千畝。
バルト三国は第一次世界大戦後独立し、親英米国となりその庇護のもとにあったが、1930年代ドイツ・ナチ勢力下に入るとドイツと同盟した日本と親しくなる。
1939年独ソ間で結ばれた、「モロトフ・リッペントロップ秘密協定」で(1988年のゴルバチョフ政権下になってようやくこの秘密部分の全貌が明らかになった)、ポーランドの分割とバルト三国のソ連への委譲が約された。
リトアニア正教会が置かれ、リトアニア公国の首都であったビリニュスの帰属を巡るリトアニア・ポーランド間の紛争で、スターリンはリトアニア民族運動を利用して、うまくソ連に併合した。
第二次大戦後、駐ソ・米国大使館員はソ連の許可を必要とするバルト三国へは入国せず、 消極的にソ連の支配を承認しなかった。
三国の間は整備された高速道で繋がれている。 
 交通の便というより、万が一の場合の軍事目的の為である。 (以上)

職場の同じ部署の者が、今月モスクワ駐在員として旅立ちましたが、その前に、読んでくれることを期待して、「私が知っているソ連・ロシアの知識は『自壊する帝国』ぐらい」と伝えました。 
ちょっと前の彼の地の状況を述べていますが、インテリジェンスに関わった特異な才を具えた仁の手になる書で、ロシア人とその隣国人の本質と彼らの関係を掴んだ類書にない深みがあります。
   (HN生、神奈川)


(宮崎正弘のコメント)佐藤優氏の分析は面白いですね。はじめから脱線しますが、昨年佐藤さんには無理をいって小生の友人の会でも二回ほど講演を御願いしました。
 大変な反響でした。
 さて、小生の旅行中のことに話を飛ばしますと、リトアニアで宮殿の庭を散歩中ににゅっと顔をだした大男、そのとき一緒に行った小生の知り合いの医者が、ドイツ語で話すと完璧なドイツ語で応じてきた。
(嗚呼、ドイツ語が通じるのか)と思いました。
 いまの首都のビリニュウスは、ドイツの臭いがして、カウナスとの途中にある古城で有名なトラカイとも人種が違う。そもそもトラカイには二万人ほどのタタール人が住んでいます。
 杉原千畝ゆかりの古都カウナスでは、そういえば喫茶店で、熱砂のうえで湧かす王朝風情の珈琲を飲んだことがあります。
 蛇足ながら逃亡するユダヤ人にビザを出したとして、杉原神話が美化され、英雄扱いを受けていますが、外務省の意向に個人的に反発した外交官が、そのご何故出世したのか。根本的疑問がある。
 あれはやはり日本政府の秘密の了解の元に、政府が知らないという表向きのポーズでのやらせだったと考えられます。

 エストニア語はフィン系で、ようするに膠着語です。
昔、突厥あたりか、中央アジアの言語でしょう。冷戦時代に竹村健一さんはフェリーでスエーデンから入って、美人の多いことに驚いたという話をしていたものです。

 ラトビアは建物の風情からして北のエストニア文化と似てもにつかず、奇妙な位置関係ですね。
 さて、ご指摘のほかにバルト三国は、ロシアにとっては飛び地カリニングラードへの通過点。とくにリトアニアの、モスクワにおける地政学的重要性があります。
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(休刊のお知らせ)小誌は地方講演のため1月21−22日を、また海外取材のため1月27日から2月4日までをそれぞれ休刊します。
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<宮崎正弘の中国・台湾、北朝鮮関係著作>

 『中国から日本企業は撤退せよ!』(阪急コミュニケーションズ刊)
 『中国人を黙らせる50の方法』(徳間書店刊)
 『出身地でわかる中国人』(PHP新書、1月中旬増刷出来)
 『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房)
 『朝鮮半島、台湾海峡のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房)
 『拉致』(徳間文庫)。
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