国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2007/01/06


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成19年(2007年) 1月6日(土曜日) 貳
通巻第1662号    
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日暮高則『沖縄を狙う中国の野心』(祥伝社新書)
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 元時事通信北京特派員、香港特派員を経験した日暮さんは現場重視のジャーナリスト。「ネクスト・チャイニーズ・リーダーは胡錦濤だ」と、早くから予測を的中させてきた人物でもある。
 評者(宮崎)も氏とは香港返還前からの知己であり、香港で台北で、よく取材先が重なって酒杯をあげたものである。
 さて本書は尖閣諸島問題を中心に、日本が逃げ腰のままに、この問題への対応を誤れば、いずれ中国は朝貢してきた記録が沖縄にあり、だから「沖縄も中国領だ」と言って侵略行為にでてくるだろう、と強い警告を発している。
それが本書の命題だが、日本固有の領土である北方領土、竹島、それから沖の鳥島などの諸問題の沿革、歴史、経緯を丁寧に拾っている。
 それにしても反日運動がいみじくも露見させた中国内の領土要求の原点とは、在外華僑とくに香港の民主陣営と台湾の統一派の複雑な心情が醸し出した不思議な論理的主張にある事実を筆者はみごとに喝破してみせる。
 「保釣運動(尖閣は中国領だと主張する奇妙なナショナリズム)は、米国からやがて中国人が住む地元である台湾や香港に伝播した」。05年四月の「反日運動は米国西海岸の中韓系人によるインターネットでの呼びかけが大陸の中国人を刺激した」。
 70年代まで文革の後処理やら、石油どころではなく、中国は尖閣の領有など主張していなかったのである。
 92年、中国は突如「領海法」なるものを制定し「尖閣諸島は中国領だ」と宣言した。
 及び腰日本は最初から常識では考えられない譲歩をくりだして、「中間線」などという馬鹿げた案を示してしまった。
最初からボタンの掛け違いだった、と筆者は分析する。
 尖閣へ上陸しようとして海に飛び込んでおぼれ死んだ男は“英列”として祭られ、香港の民主活動家のあいだにおいてさえ「烈士」となった。
 日暮氏はこう言う。
 かれらが「保釣運動に熱心なのは、共産党独裁に反対するものの祖国を愛することは本土の人と変わりないという証を見せることにあった。言葉を換えれば愛国心を示すことで民主派は返還後の香港で、北京政府に容易に弾圧の口実を与えない」策略からああした行動にでたと分析するのである。
 また台湾で騒ぐ「外省人の政党・新党は、島内で民進党が躍進し台湾独立への機運が高まる中で、自らのレーゾンデートル(存在理由)をかけて中国人の同胞意識を強く示す狙いがあったのであろう」
とも言う。
 言うこととやることが必ず違う中国人の深層心理、これほど複雑奇妙ではある。
 香港の民主活動家も台湾の統一派も、やっぱりシナ人である。
 領土問題を通して中国人の深層心理をえぐりだす力作。



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元銘『共産中国にしてやられるアメリカ』(草思社)
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 副題にあるのは「台湾の孤立を招いた歴史のあやまり」とあって、このことからも内容が推察できるだろう。
本書は元中国共産党のエリートだった筆者が赤裸々につづる北京の陰謀とそれにうち負かされそうなアメリカの外交的失敗を暴露し、あやまった歴史解釈の本質に迫る。
通読して第一印象は、なんと大上段にふりかぶった正攻法な論理であろうかと感嘆したことである。
履歴をみるとなるほど胡耀邦のブレーンだったが、疎まれて中国から米国へわたり、台湾へ亡命。その後、台湾国籍を得ている人物。
筋金入りの反共の闘士である。
おそらく、こうしたきまじめな、或いは愚直ともいえる中国戦略分析は、いまの台湾にあってさえ台湾独立運動関係者や台湾団結連盟につどう諸氏にしか通じないだろうと思われる。
それほど台湾の政治的緊張感が弛緩しているのである。
著者はヤルタ会談でルーズベルトがいかに騙されたか、というところから論考を始めている。
たとえば下記の記述。
「ブッシュ大統領は、ラトビア共和国の首都リガでの演説のなかで初めて、『ヤルタ協定』がヨーロッパの半分をソ連共産帝国の奴役の下に陥らせたという過ちを認めた」(154p)。
「しかしながら天安門の虐殺と東欧の第二次解放があいついで起こったとき、アメリカの政治リーダーが考えたのは、自由の火で奴役制度の最も暗い隅を照らすことではなく、奴役制度国家の暴君と協力関係を保ち、その暴虐統治下の「偽りの安定」を維持することだったのである。アメリカの政治リーダーは、表、裏二つの手法を撮ったのだ。一方で、公衆にむかって、虐殺を譴責し、暴政を制裁すると良いながら、もう一方ではひそかに虐殺者によしみを通じ、協力関係を探り、その「安定」と助け、自由の大国と奴役制度の大国との「バランスオブパワー」を維持した」(同p)。
(ここで使われる「奴役制度」とは筆者独特のターム。独裁共産主義を指す)

近年はレーガンをのぞいてカーターは世界戦略を読み違えて台湾との断交へとといたり、先代ブッシュ、クリントンも中国にまんまと騙された。毛沢東からトウ小平の代理人に成り下がったのがキッシンジャーだった。
江沢民政権初期には北京の代理人に成り下がって中国の論理を買弁したのがブレジンスキーと、クリントン大統領自身だった。アーカンソー知事時代のクリントンは台湾贔屓であったのに巨額を示されるところりと転ぶのだ。
反中国派にみえたブッシュ・ジュニアにも、北京はその外交路線を修正させるために巧妙に近づき、米国内に於ける“中国の代理人”を発掘するために、胡錦濤がつかった人物は鄭必賢(中国改革開放論壇理事長)であった。
この箇所は注目である。
この鄭必堅となぜか馬があって、突如米中関係は「ステーク・ホルダー」などと言いだしたのがゼーリックだった。
鄭必賢こそは、一頭一尾、日和見主義の典型的文章家で、じつに華国峰、トウ小平、胡耀国、趙紫陽、江沢民につかえて時代を特色付ける理論とスローガンを考え出した。
もちろん胡錦濤の「和平くっき」なるスローガンも、この鄭の発案とされる。
天の配剤か、ゼーリックは国務副長官を辞任し、後任にネゴロポンテが指名されたのは、この1月4日の出来事だ。
民主党が多数をしめる議会の承認を得やすいようにとの配慮で、国連大使だったボルトンも辞任に追い込まれ、これで米国政権のトップに中国とコトを構えようとする戦略家は不在となった。
 またもや米国は中国に「してやられている」のだ。
次期大統領の呼び声高いコンドレーサ・ライス国務長官はイラクの泥沼から抜け出すために北朝鮮問題を中国に丸投げし、旧敵・北京と握手して「戦略的パートナー」と賞賛しはじめた。もともと彼女はロシア専門家であり、アジア問題の対応はネグロッポンテの所管に移る。
かくて台湾の味方は米国に不在状態となり、危機はますます高まっていると著者は警告している。

(注 筆者の「元銘」の「元」には“こざと”扁が付きます。
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(休刊のお知らせ)連休中の7−8日、小誌も休刊です。
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(読者の声1)貴誌第1661号(1月5日発行)にLT貿易について書かれていますが、あの協定に基づき、日本から鉄と化学肥料が当時の国際市場での価格の4割引で輸出されていたのはご存知のことと思います。
八幡製鉄の稲山社長がミスター・カルテルといわれ、鉄鋼市況が悪くなると、カルテルを結ぼうと公に発言していたのは有名なことです。
そんなことをしても独占禁止法で処罰されなかったのは、日本政府の変わりにこういう形で中国へ経済援助金ないし「賠償金」を支払っていた代償としての特例でしょう。
国交回復後数年経ってもこの合意は生きていたようで、1970年代後半に新聞で当時の新日鉄社長が、もういい加減に25%引きくらいにならないかと嘆いていた発言を読んだことを覚えています。
おそらく今ではこの特約は廃止になっていると思いますが、その後の経緯をご存知でしたらご教授ください。
現在の貨幣価値にすれば、おそらく総計で一兆円以上になるかと思います。
しかし米国政府がよくもこんなことを傍観していたものですね。それとも米国政府も合意の上のことだったのでしょうか。
   (ST生、神奈川)


(宮崎正弘のコメント)もうひとつ強大なカルテルがありました。
造船です。
香港経由で契約さえあれば、前金を受け取らずに日本は船を次々とつくり、殆ど延べ払いで香港の海運業者などに輸出した。それを日本政府が奨励し鉄鋼不況を克服したのですが、その恩恵を最大に享受して、ぶくぶくと大きくなったのが寧波財閥の包玉剛(東洋のオナシスといわれた)、台湾の長栄海運(いまのエバグリーン)などです。日本に足をむけて寝られない筈ですよ。
 新日鐵はよほど、中国に弱みがあるのか、くずのような宝山製鉄に梃子いれし、ついには特殊鋼から自動車鋼板技術を供与します。
いずれ特殊鋼は、建材、マンション素材を越えて中国製戦車の精度向上に役立ち、自動車鋼板を中国がつくるようになれば中国製自動車の廉価版が世界市場を席巻することになって日本の自動車メーカーを脅かすでしょう。
 日本の大手企業の行為は馬鹿としか言いようがありませんね。
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<宮崎正弘の中国・台湾、北朝鮮関係著作>
 『中国から日本企業は撤退せよ!』(阪急コミュニケーションズ刊)
 『中国人を黙らせる50の方法』(徳間書店刊)
 『出身地でわかる中国人』(PHP新書、1月中旬増刷出来)
 『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房)
 『朝鮮半島、台湾海峡のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房)
 『拉致』(徳間文庫)。

(宮崎正弘の三島由紀夫関連三部作)
 『三島由紀夫の現場』(並木書房)
 『三島由紀夫“以後”』(並木書房)
 『三島由紀夫はいかにして日本回帰したのか』(清流出版、絶版)。
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