国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/12/25

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成17年(2005年)12月26日(月曜日)
         通巻第1339号  
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(下記の書評は『正論』一月号に掲載されたものです)

 書評「中国農業調査」(文藝春秋)

 実名入りの汚職告発のド迫力
                   宮崎正弘

 中国が「農業大国」というのは幻想である。
貧しい農民が八億五千万人(本書では九億人)。胡錦濤・温家宝コンビが最も力をいれている「三農問題」とは農業、農村、農民問題の解決である。
 なにしろ農民は革命主体、中国共産党が一等重視したはずだった。
であるのに、かぜかくも阻害され、近代化と繁栄から取り残され、月収百ドルどころか年収が百ドルにも及ばないのか。
 しかも沿岸部の発展によって出稼ぎが続いたため家庭も農村の共同体も崩壊の危機に瀕し、さらに農業全体がWTO加盟以後、競争力を失った。
 悪政だけが原因なのか?
最近の中国では農村の惨状と地方幹部の腐敗を告発する幾多の報道がなされた。
 なかでも世界的ベストセラーとなったのが本書『中国農民調査』だ。中国で発禁処分、だが地下出版で数百万部が印刷され、数種類の海賊版もでた。
 私は香港で原書を昨年購入しているのだが、浩瀚であるため日本語翻訳の刊行はさぞ難儀だろうと予測していた。というのも原文を忠実に訳しても四百字の原稿用紙で1200枚を越える大作、しかしルポルタージュ文学として上出来の質が漂う。
 作者の陳桂棣は胡錦濤と同じ安徽省生まれ。魯迅文学賞に輝く有名作家でと夫人の春桃(本名呉春桃。湖南省生まれ)と三年間、農村の奥地を取材した。とくに安徽省で党幹部の想像を絶する腐敗の現場、農民への「税費」の疑惑を鋭く衝いた。
 地方政府、共産党による農民虐待や虚偽報告の実態、被害者、加害者の実名を暴露したため大センセーションを引き起こし、ウェッブ上でも全文がながれた。
 たとえば次のような党幹部の腐敗、暴行事件が本書で報告されている。
 ●安徽省利辛県の路営村に住んだ丁作明(農民)は、共産党県委員会に幹部の恣意的な内部保留金徴収や農民の過重な負担を訴えた。ところが村幹部に呼び出され、暴行されて死んだ。
 ●固鎮県小張荘村で、村民が当局に徴税疑惑ありとして、財務資料の公開を要求したところ、村委員会副主任の張桂全が村民5名を殺傷した。 
 ●臨泉県王営村では党幹部の王俊彬が税金という美名の下に強制的な醵金を求めた。その上、恣意的な罰金を徴収した事実を糺したところ、突如公安が鎮圧に乗りだし、千名の農民が逃亡生活に追い込まれた。
 ●江沢民が98年に鳳陽県小崗村を訪問したところ、県委員会と県政府が突貫工事で小学校を建て水道を敷設し、トイレも付けた。また全戸に電話を設置し、党支部の建物も改装された等々。
 中国の悲惨極まりない農業実態をあますところなく描いた初めての作品となり、ドイツでは「ロンリシス文学賞」を受賞(04年10月)、欧米のメディアがこぞって取り上げる。
 ともかく中国の農民一人あたりの農地面積は国土が日本の十倍というのに農地は20%以下であり、僅かな耕地を九億人が奪い合う。
 農村に充満した不満をたとえ警察と軍隊で暫時抑圧できても、或いは「反日」を梃子としたガス抜き行為を巧妙に行っても、やがて農民の大規模な暴動と叛乱は本格化し、近未来には未曾有の爆発を起こすだろう。
        ☆ ★ ☆

(後記)このあと、広東省仙尾では、発電所建設反対の農民のピケを軍隊が急襲し、多数の農民が虐殺された。それでも北京はGDPを17%ちかく、突如嵩上げし、英国、フランスを抜いて世界DGP第四位に食い込んだなどと胸を張っている。雲南省には世界最大のダム建設を本格化するとも発表があった。
 疎外されつづける農村の貧困と貧窮にあえぐ農民の未来は、これからも救われない。
      ○
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(休刊のお知らせ)小誌は年末年始休刊です。◎
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(読者の声1)12月22日の「三浦重周さんとのお別れの夕べ」に参加しました。
三浦重周氏が民族派の理論家ということは知っておりましたが、会場で夥しい花輪の数にも驚かされました。とくに飾ってあった三浦氏の見事な書です。これは入選した作品の由ですが、立派な書はともかくとしてなんと書いてあるのでしょう?
 当日いただいた冊子にも、この書の写真はありましたが、解説がありませんので。
   (DY生,さいたま市)


(宮崎正弘のコメント)三浦さんの「書」は友との別れの歌でした。
原題は有名な「送元二使安西」で王維の書からです。

渭城朝雨潤軽塵,
客舎青青柳色新,
勧君更尽一盃酒,
西出陽関無故人。

「書き下し文」に関して友人の解説を引用します。
「元二(げんじ)が安西(あんせい)に使するを送る」。(王維)
 「渭城(いじょう)の朝雨(ちょうう)輕塵(けいじん)を潤す。客舎(かくしゃ)青青(せいせい)柳色(りゅうしょく)新たなり、君に勸む更に盡くせ、一杯の酒、西のかた陽関(ようかん)を出ずれば故人なからん」

安西:甘粛(かんしゅく)省の安西県ではなく、安西都護府が置かれていた、 今のウイグル自治地区である。渭城:長安の北、今の陝西(せんせい)省咸陽(かんよう)の東にある町。渭 水にのぞんでいる。漢代に渭城県を置く。
陽関:甘粛省敦煌の西南の所にあった関所で、玉門関の陽(みなみ:阜は山側 の意を示し、日光のあたる方の側面の意)にあたるので陽関と名づけた。
故人:死んだ人。古い知り合い。昔なじみ。
「通解」:渭城の早朝の雨がちょうどよく軽く舞いあがる塵をしずめ、また旅館の前の柳 の色も雨に洗われて、今朝はとりわけ新鮮に見える。渭城まで見送ってきたが、 いよいよここで君とお別れだ。酒はもう十分だと言うかもしれないが、最後に もう一杯だけ飲みたまえ、これから西に旅して陽関を出たならば、共に杯をか わす親しい友人もいないだろう。
この詩は、友人の元二がはるか西のへき 地まで使者となって行くのを見送った詩。「陽関三畳(ようかんさんじょう)」 といって、送別のときには、この詩を3回繰り返して詠うならわしとなった。
  以上が友人による解説です。自決を覚悟していた時代からの書です。


   ♪
(読者の声2)「三浦重周氏を想う」。
22日市ケ谷で行われた三浦重周氏の追悼会に参加し、改めて三浦氏の壮烈なる人生に涙を流しました。
三浦氏の生涯追求してきたもの、それはまさに国体の本義を明らかにすることであり、真の国体を回復することであったと思います。世に愛国を叫び、民族派を名乗るものは多かれども、三浦氏ほど国体の本質を究めた人はいませんでした。
昭和20年8月の終戦前夜、「真の国体護持」を叫んで決起した陸軍の畑中健二少佐、椎崎次郎中佐らは決して戦争継続を望んでいたのではなく、ポツダム宣言の受諾は国体護持の保証が唯一の条件であることを求めて、ついには自分達の行動が天皇陛下の大御心に反したことを悟り、見事、宮城前で自決して果てました。
また阿南陸相然りです。
この時をもって日本の国体観が分裂し、皇統が維持されればそれで国体は護持されるとか、象徴天皇制でも国体は護持されているのだとかいう戦後保守派の誤りと誤魔化しの始まりでもあったのです。
象徴天皇制をそのままに残す自民党の憲法改正案はその証です。彼らは何も分かっていないのです。今はもうマッカ−サ−もGHQもいないのに、です。我々は三島由紀夫の「文化概念としての天皇」論により戦後思想の迷妄から目覚め、今また三浦氏の生涯と思想により、国史に対する信念と国体への思いを一層強くするものです。三浦氏の魂魄が永遠に我らとともにあることを確信します。
維新革命は永久革命でもあります。
(武蔵国分寺住人)


(宮崎正弘のコメント)文化概念としての天皇論をぶつ三島由紀夫氏と夜中まで激論をかわした堤堯(元『文藝春秋』編集長、当時34歳)氏が、来週発売の『WILL』で、こまかな記憶をたどって書いています。国体護持についてです。
 はじめて聞く証言がでてきます。


  ♪
(読者の声3)三浦さんの会に感動し、それから若い方々13人と会場近くの飲み屋で二次会をしました。普段、会っている人は別として、十数年振りの人は向こうから声を掛けられるまで全然分かりませんでした。
「若い」などといっても、皆さん、おじさん、おばさんになっていました。話しているうちに、顔と名前が一致してきて、当時のことを思い出し、皆さんと語らってきました。
三浦さんにこのような機会を作っていただき、これから皆と力を合わせて、“何とかせいと”言われているのかも知れません。
     (HS生、杉並)


(宮崎正弘のコメント)およそ三十年以上、あるいは二十年ぶりで合う昔の仲間がたくさん、それも北海道から九州まで、多くの人が駆けつけてくださった。それは何よりも衝撃の大きさ、彼の自裁は日頃の安逸にふける人に心底の衝撃をあたえたからだと思います。今ごろ天国で笑っているのかもしれませんが。


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(読者の声4)三浦氏のスライドを何枚か見ました。初めて霊前の遺影にお目にかかりました。心から「普遍焔満清浄熾盛思惟寶印心無能勝總持大随求陀羅尼」(ふへん・えんまん・しょうじょう・しじょう・しい・ほういん・しんむのうしょう・そうじ・だいずいぐ・だらに)を誦し供養しました。
また新潟の岸壁のあとが鮮明で、あらためて三浦氏の死の意味を深く考え、ご冥福をいのりました。
   (NN生、長野)
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<<宮崎正弘のロングセラーズ>>
『朝鮮半島、台湾海峡のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4890631925/ref=ase_ritoukijapan-22/250-0520816-2194622

『中国よ、“反日”ありがとう』(清流出版刊、1400円+税)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4860291239/africa07-22/ref%3Dnosim/250-0800565-9441848
『瀕死の中国』(阪急コミュニケーションズ刊、1600円+税) 
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円プラス税)
『拉致』(徳間文庫、590円+税)
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