国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/12/10

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成17年(2005年)12月11日(日曜日)
   通巻第1326号  臨時増刊
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松花江へ流れ込んだ猛毒ベンゼンは事故から一ヶ月が経っても希釈されず
 ハルビン、ジャムスを過ぎて、ロシアのアムール川へむかっている
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旧満州のジェムスには日本人町があり、靖国神社分社もあった。満州族の土地を開墾し、都市をつくり、水がきれいだった牡丹江に近い都市である。

いまのジェムス市は人口50万。筆者はハルビンからバスで五時間、豪雨のなかを駅前旅館に宿泊した記憶がある。
エレベータもないホテルで各フロアに鍵おばさん。夜中にビールを冷蔵庫からだしてもらって、汽笛の音を聞きながら、なぜか地球の果てにきたような感慨に浸った。

満州時代は、この松花江の水で日本酒が醸造できた。
それほど美しい自然が残っていた。
いまや漢族の入植おびただしく、ジェムスは漢字で「佳木斯」と当てる。外見上は美しい町で河畔には瀟洒なホテルも建てられている。だが河川はすっかり汚染されてしまった。

南へバスで二時間半、牡丹江ともなると河畔には高層のリゾートホテルが軒を競い、ロシア人の姿もちらほら(国境の町「すい分河」に近いため)。
抗日女性兵士八人が川に飛び込んだという「革命伝説」をもとに河畔には巨大な抗日英雄のモニュメントがあるが、市民はそんなことはお構いなく、広場でバドミントンや体操に興じ、夏には川へ飛び込んで水泳を楽しむ風景も。
川は茶褐色に濁り、小生なんぞ、とても泳ぐ気持ちになれない不衛生なところだが。。

この牡丹江にソ連兵がなだれ込んで多くの日本人が虐殺され、一部は逃避行を始める。向かった先はハルビン、しかしそこで待っていたのは地獄だった(なかにし礼の『赤い月』、山崎豊子の『大地の子』の舞台である)。

さて吉林で11月13日に起きた石油化学工場(SNPCの子会社「石林石化分公司」)の爆発事故では六人が死亡、数万人が避難した。工場から流失した有毒物質ベンゼンが100噸、松花江に流れ出した。
当局は、この流出情報を伏せた。SARSの情報隠匿と同じである。

吉林から同吉林省の北端、松原市にかけては生活用水を井戸に依拠するため、さかんに河川の汚水検査をしていたが、9日間も情報を漏らさなかった。
しかし口コミによって、パニックは次第に流域の庶民に拡がっていった。
 吉林省の北方にひろがる黒龍江省の省都でもあるハルビンは400万人の大都会、しかも井戸水ではなく、水道が生活用水。


▲やがてハバロフスクから日本海へ汚水は注がれるが?

ハルビンは12月22日から四日間、水道水が使用禁止され、ここで初めて流出事故を当局は認めたものの、被害は軽微と嘘をついた。
 市民はミネラルウォーターの買いだめに走り、一部の金持ちは飛行機でほかの地方へ逃げた。
この時点でようやく温家宝首相が現地を視察した。

 一方、松花江はくねくねと蛇行を繰り返しながら、いずれアムール川へ注ぎ込み、ロシアのハバロフスクへと達する見通しとなった。
あわてて李肇星外相はロシアへ謝罪し、応急措置の支援を約束した。活性炭を50噸、緊急にロシアへ運んだ。
この間、同様な事故が河南省と重慶でもおこり流域住民の避難騒ぎが頻発した。

 ようやく12月2日になってCNPCは緊急会議をひらき、対策を協議したほかに、石林石化分公司の干力社長を更迭したが、これはロシアのハバロフスク中国領事館前にロシア人環境活動家が押し掛けて抗議し、問題が国際化した為である。

 流出した100噸の猛毒ベンゼンはハルピンで80噸に減少したが、12月5日に冒頭のジェムスに到達したのだ。
ジェムスでは生活、工場用水を市当局は使用禁止とした。

翌日、吉林副市長の王偉が自殺していた、と発表された。

 汚染された河川の水は、クリスマス頃に日本海へ達する。蟹など、ベンゼンの猛毒に汚染された魚介類が、ロシアや北朝鮮から日本に輸入されることも考えられるが、対策を急いでいるのか?

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(読者の声1)貴誌1325号(12月10日付け)で、広東省汕尾市の「ミニ天安門事件」(土地立退きの補償を受けられない農民の抗議行動を武力で排除し多数の死傷者を出し、かつその事実を隠蔽した事件)をご紹介になっておられましたね。
 もう10年ちかく前になるでしょうか。まさにこの広東省汕尾市の発電所計画の情報を追っていたことがあります。けっきょく中国国産プラント採用ということになったのか、情報が来なくなりました。
 今回のニュースを読んで思ったことは、今後中国でプラント建設を行う海外の企業は、その用地確保が完全にコンプライアンスを満たしているか(厳格に法令にのっとって用地買収が行われ、賠償も行われているか)を確認するべきである、ということです。
用地確保は基本的に「中国側」の役目とされ、プラント輸出者ないし海外からの投資者は用地をあてがわれるだけですが、世の中のコンプライアンス重視の流れからいえば、用地確保のコンプライアンス遵守確認は必須といえます。
最悪の場合、プラント完工直前になって、中央政府から「用地確保が法令にのっとっていなかったので、建設中止」と言われる現実的リスクを回避するためですね。
現実に、完工寸前の製鉄所が農地買収の手続違反を理由に建設中止になったケースがあります。
これを業界の常識にすべきだと思います。
  (YI生、商社マン)


(宮崎正弘のコメント)過日、蘇州の工業団地を買ったという或る社長から聴いたのですが、中国側の売り込みが激しく、ま、買っても安いし、うっかり予定工場の倍くらい買っちゃったと笑っていました。
小生がそのときアドバイスしたのは、土地の強制収容を怨んで、逆恨みの工場襲撃があるやも知れず、某大手が分譲している蘇州の或る工業大団地ですら、法律的問題の前にある農民と土地収容の経緯をよく調査してからのほうが良いのではと返答したのですが。。。
何清漣のいった「権力の市場化」のマジック最大の手法がこれですからね。
さて、広東省汕尾市における虐殺は「死者20名、行方不明数十」として、NYタイムズも、ロスアンジェルスタイムズも、大きく報じております。日本のマスコミの扱いは、殆ど目立たないほど小さいのは、小生の気のせいでしょうか?
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<< チャンネル櫻 出演予告 >>

「何を狙う中国? 中国、本当の姿」
パネルディスカッション
出演 青木直人(ジャーナリスト)、潮匡人(評論家)、金田秀昭(元海上自衛隊護衛艦隊司令官)、川村純彦(元海将補)、佐藤守(元南西航空混成団司令、空将)、鈴木邦子(外交問題研究家)、宮崎正弘 司会 水島総
 放映日 12月17日(土曜日)午後9時―午前零時(三時間特別企画)
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(速報)女性天皇容認の答申をした首相の諮問会議「有識者会議」の暴論に対して、本物の有識者が「民間有識者会議」(渡部昇一、小堀桂一郎氏らが代表)を設立し、答申を出します。併せて国民集会が、平成18年1月14日に日比谷(野外音楽堂もしくは公会堂)で開催される予定です。
 詳しい時間、場所など、追ってこのページで告示します。
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