国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/10/31

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成17年(2005年)10月31日(月曜日)
     通巻第1278号 
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呉善花『日本浪漫紀行』(PHP新書)
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 本書は月刊誌『VOICE』に過去数年に亘って分載された日本各地の紀行を集めたエッセイ風的なものだが、通底しているのは日本各地の神秘の場所への尽きない興味のようだ。
 小樽、飛騨高山、高野山、伊勢、半田・常滑、恐山、伊豆半島北部、富士吉田、熊野と、偶然なのか、評者(宮崎)も呉さんの行かれた場所のなかで、訪れていないのは瀬戸内海の海賊の島・武士の信仰をあつめたという大山津見神社くらいだ。
 そこで、この箇所の記述を拾うと、日本は往時「東アジア諸国が全体的に衰退に向かい、国内では律令体制が弱体化してゆくなかでの、海上交通路の発展がある。海賊達は群をなして往還の船舶を襲」った、と時代環境と歴史的背景の説明がある。
 こうした時代環境の中で平家の興隆があり、「西海の海賊追補に活躍する」が、一方で「瀬戸内海沿岸の国守を歴任し、西国や九州の海の武士を組織し」たのだ。
 そのことは日本人には常識だが、呉さんはここで、韓国からきた外国人の目で、異なった歴史家の視点から、これらの事態を意外な角度で把握する。
 「(源平の武士らは)祖父や父の闘いを子や孫が引き継いでいこうとするのではなく、逆にかっての敵を味方にしてゆく」。その「精神的な出所が朝鮮史的な観点からはよく見えてこない」と正直に告白し、次のように纏める。
 「どんな倫理や社会性や秩序の意識がそこにはあったのか」。
 ミニ中華思想のくにである朝鮮半島は、歴史的に中国の子分であり、日本は同様に東の夷で蔑視の対象だから、まともに日本史を学ぼうという精神性、客観的科学的態度は、こんにちの韓国にはない。
徒な反日に耽り、態度は寛容でもない。
 中華のくにぐには「敵はあくまでも敵」であり、徹底的に殲滅し、その墓も暴く。
 ところが日本は敵もいくさが終われば味方になり、墓を暴くことは滅多にない。敵をも赦すのが、わが精神史であり、たとえば毛利は敵だった陶晴方が滅ぼした大内氏を、ともに祀って、その墓碑に「追う人も追われる人も皆ともに」と記して一緒にお参りしている。
 呉さんは精神史に興味をふかめ、神々との関連の中で歴史的由緒のある場所を訪ね歩いたのだった。
 外国人として新鮮な驚きをいまも持ち続ける呉さんの記述は素朴であり、やさしさに溢れるが、基本に流れる文章は力強い。


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山本一郎『俺様国家、中国の大経済』(文春新書)
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 勢いが良いが、ドライな世代の投資家の論理らしく、五センチの厚さに切ったぶつぎり刺身を剥き出しに、手づかみで出されたような読後感が残る。
 最初に断っておくと筆者は中国をどぎつく痛罵しているものの、かといって、それが保守とか愛国とか、或いは戦略的な安全保障の観点からの物言いではないことである。
 つまりこの本の著者は靖国神社参拝問題はどうでもいいことであり、日本に損になるのならやめておけば良いし、台湾が独立しようが、どうなろうが、日本には関係がない、という戦後アプレゲールよりも愛国心に対しての理解が欠けるようだ。
 ま、これがブログ世代の心情なのだろう。
 しかし、そんな保守でもない人が、客観的なデータをあつめて、中国経済の真相、ようするにブラックボックスに手を突っ込んだ。「目くら、蛇に怖じず」の構図だ。
科学的常識とか、客観的データでは計り知れない罠、闇、いやそれが中国って国じゃと、著者の山本氏はあちこち調べている過程で深刻に気付いらしい。
 以下、インターネット時代の「論客」なる人種が、情緒に乏しいレトリックをいかように駆使しているか、若干の見本を並べる。
 「中国においては政府発表のデータ」は、「100億円単位で違う。どこかにお金が消えていることになるが札束に薬効が認められて漢方薬にでも化けた」
 歴史改竄だけではなく、経済統計の改竄は日常の風景であることは本誌の読者なら先刻ご承知ではあろうが。
 「禁酒法やぶりで大儲けしたシカゴのギャング団よろしく、為替統制には必ず抜け穴をブチ開ける奴らがいる。地下銀行である」。
そのマネー・ロンダリングの場所の一つが著者によれば「ラオス」で、「パチンコの景品交換所のような情景になっている」そうな。
 「中国経済の生命線」は、「外資系がいかに中国投資に積極的であり続けられるか」にある。
そのために粉飾決算の連続をやっている、という。
 ともかく勢いの良さ、啖呵の切れ味は新鮮ではあるが、随所に勘違いや誤断がみられる。ま、それにしても専門家でもない人が、よくぞここまで中国の闇を透視したものである。
 結論的に著者が予測している事態とは、中国は経済破産を免れたいあまりに、日本からの投資を必要とし、かつ「戦略として、日本から資産を引き出して中国に投資させることで、日本経済における中国の破綻リスクを最大にする方法論を採ってきたと考えられる」。
投資家としての冷徹な論理構築は、こういうレベルでは異様に冴えるものらしい。
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(読者の声1)いつもメルマガを読み勉強させて頂いています。最近のテレビ局の買収について、この問題の危険な点についてあまり世間で指摘がないように思い、初めてメールさせて頂きます。
この問題の最大のポイントは思想であると思います。
 企業はテレビコマーシャルにどれだけお金をかけるのでしょうか。テレビに30秒間、コマーシャルを流すためには、何億というお金がかかります。しかし、それでも企業は広告をやません。それでも十分メリットがあり、費用対効果におつりがくるからです。
 企業活動において、世間の思想は経営を左右する最も重要なファクターです。
それに影響をもっとも与えるのがテレビです。あっという間に韓流ブームが起こったことからも想像されるように、テレビの影響力は非常に大きく、日本のどの家に行ってもテレビのない家はないし、テレビを見ない人はいないと思います。
 世の中を支配しているもの→思想(宗教)、イメージ、心それにもっとも影響を与えるもの→テレビ(メディア)そのテレビ(メディア)を買収するということは、その社会を支配したのと同様なのではないでしょうか。
テレビを私物化することは或る企業(団体、国、民族)にとって有利な思想をおりこめたコマーシャルをつくり、番組をつくり、そういうタレントをつかい、都合の悪いニュースはカットする。知らず知らずに見る人は、影響を受け(洗脳され)、支配される。こういうことが可能になります。
これが良い思想であればいいのですが、残念ながら、悪意に満ちた思想に狙われることが容易に想像できます。ここに目をつけるのは、やはり外国政府やそのスパイでしょう。朝日新聞は戦前から外国の工作員に利用されています。
中国政府は世の中を支配する急所を、長い歴史から学習しよく理解していると思います。
 だからこそ中国に言論の自由はないし、テレビ(メディア)は政府の支配下にあります。最近でも今回の選挙では小泉首相はテレビをうまく利用し、勝利しました。いくら技術を磨き、いい商品を作っても人に購買欲(良いイメージ)がなければ買いませんから、企業はつぶれます。繰り返しますが、日本を支配しているのは実質、テレビ(メディア)だと思います。従って、それが良い方向に使わればその社会は良くなりますが、悪意に使わればその社会はすぐに崩壊します。
 それほど影響力が大きい存在は、多くの人に監視され、公衆のために使用されるよう最大限努力するのが、平和で幸福な社会をめざす、現代を生きる人間の知恵なのではないでしょうか。
 これまで幸運にも、テレビの影響力を悪意をもって利用しようと狙われてこなかったため、その危険性についてあまり認識されていないように思います。一企業に買収されていいものではないと思います。
(滋賀県 会社員)


(宮崎正弘のコメント)ほりえもんの発言のなかに、産経の正論路線は要らない、と明言し、さらに憲法で天皇制は不要、大統領制にすべきだと記者会見で発言しています。大前研一とおなじ感覚ですが、このような危険思想の持ち主がテレビを支配する可能性が、これからは何時でもあるという時代です。


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(読者の声2)自民党は憲法9条を改正して”自衛軍”を創設するらしい。世間では中国や韓国がどうの思うの、アメリカがどうのなどと騒ぐがそれは次ぎの問題で、先ずは何と言っても日本国民が何を考えるかが第1である。
与党も野党も事実上自衛隊の軍隊組織の存在を是認しておきながら、単に”軍”という名称にこだわり歪んだ憲法解釈をしてきた。これは明らかに憲法(前文、9条)無視の姿勢である。憲法を事実上無視しておきながら護憲とはこれ如何?明らかに自他ともに欺瞞である。
ところで自衛軍とは一体何を”自衛”するのであろうか?
まさか自由民主党を自衛するための軍ではあるまい。端的には侵略者から国民と国土を防衛することにある訳である。あくまで国民主体の軍組織でなければならない。国民と国土とは即ち国(家)であり、それなら当然”国家防衛軍”であり、”国防軍”でならなければならない。思うに自衛軍では自衛隊の延長の印象が強く、国民にとっても隊員にとってもインパクトに欠け、いわば誰も飲まない気のぬけたビールの観を免れない。
それに単に自衛隊(庁)を軍(省)に昇格させる程度であり、何も憲法改正の騒ぎを要しないはずだ。もし日本が正規の軍隊を持ち国家防衛の強い意志を表明すれば、これまでのように勝手気ままにミサイルを撃ちこんだり、領海に原潜を送り込んだり、果ては国土を占領したりの傍若無人な態度はとれなくなるであろう。
名は体を表す。新国軍は”国家防衛軍”ないし、”国防軍”でならなければならない。
(MI生)
   

(宮崎正弘のコメント)自民党の案はあくまでも「案」ですが、期待はずれは否めないと思います。


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(読者の声3)台湾の李登輝前総統が10月20日にワシントンのナショナル・プレスクラブで行った演説の要約(英語版)は下記サイトです。
http://taiwansecurity.org/News/2005/NPC-201005.htm
   (UT生、京都)


(宮崎正弘のコメント)帰路、日本に寄りたいと希望されていましたが、日本政府は誰も本気で李登輝閣下を迎えようとはしなかった。日米の台湾をめぐる態度に、これほどの彼我の差があるのは、日本に「外交」がないからでもありましょうけれど。
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(お知らせ1)11月25日は「憂国忌」です。
http://www.nippon-nn.net/mishima/index.html
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(お知らせ2)小誌は取材旅行などにより11月3日―4日が休刊の予定です。
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(お知らせ3) 平河総合戦略研究所から講演会のご案内

 (同所パンフレットより)「宮崎正弘氏は豊富な現地調査と鋭い視点より冷徹な国際分析をされており、数々の著作を発表されています。『ザ・グレート・ゲーム―石油争奪戦の内幕 小学館文庫』では、イラク戦争の前には、開戦か否かで国際世論を二分した列強各国。そこには、イラクに埋蔵される石油採掘権を睨んでの熾烈な駆け引きがあった。地球上の石油はあと79年で枯渇するといわれている。イラクの石油を掌握し世界の覇王たらんとするアメリカ。エネルギー輸送の要衝として膨大な権益を握るロシア。世界有数の石油消費国として経済発展を続ける中国…。戦争に絡む各国の思惑、資源獲得工作を孕んだ外交の本当の狙いなど、権謀術数渦巻く各国のエネルギー戦略に迫った刮目の分析をされています。このような世界的視点から最近の石油価格の暴騰はいったい何なのか?その舞台裏を下記講演会にて大いに語っていただくことになりました」。
      記
日 時  11月13日(日曜日)午後12時半より3時まで
テーマ  石油戦争の舞台裏(暴騰元凶は中国のパラノイア的資源戦略)
場 所  学士会館(神田錦町)
     http://www.gakushikaikan.co.jp/
会 費  3000円 学生 2000円  
講 師  宮崎正弘 評論家
定 員  80名 申し込み先着順  info@hirakawa-i.org
(なお終了後、同会場で宮崎氏を囲み4時までティータイム。お一人1000円を追加でいただきます。当日受付において参加ご希望の方はお申し出ください)。
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<< 宮崎正弘の最新刊 >>
『朝鮮半島、台湾海峡のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
http://www.nippon-nn.net/miyazaki/saisinkan/
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<< 宮崎正弘のロングセラーズ >>
『中国よ、“反日”ありがとう』(清流出版刊、1400円+税)
『瀕死の中国』(阪急コミュニケーションズ刊、1600円+税) 
http://deserveit.jp/am/asin/4484052083.html
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『中国のいま、三年後、五年後、十年後(改訂版)』(並木書房、1575円)
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円プラス税)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
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◎宮崎正弘のホームページ http://www.nippon-nn.net/miyazaki/
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