国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/10/21

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成17年(2005年)10月21日(金曜日)参
     通巻 第1263号  臨時増刊号
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中国は「アフリカの角」でも“死の商人”ぶりをいかんなく発揮
 エチオピア、エリトリア双方に武器を供与しながら国連決議に賛成という偽善
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 国連の停戦監視団がエチオピアとエリトリアの国境へ監視ヘリコプターを派遣すると言いだしたところ、エリトリア側によって拒否された(10月19日)。この報道はNYタイムズに小さく出ている。

 エリトリア?
 首都はアスマラ。英語、アラビア語のほかにアファ語、ビレン語、ヘダレブ語、クナマ語など、360万人口という小国なのに十数もの部族の言語が飛びかう。
 かつてエリトリアはオスマン・トルコ帝国の版図。やがてイタリア植民地。戦後、エジプトに併合され、それからしばらくはエチオピアと連合を組んだ。
 歴史は想像以上に古い。
 日本外務省はエリトリアの一部地域に「退避勧告」を出している。物騒なところである。
 http://www.pubanzen.mofa.go.jp/info/info4.asp?id=139


 93年にエチオピアから独立し、数年はアジスアベバと緊密な関係が続いたが、やがて国境紛争、部族闘争を熾烈に展開。およそ十万人が死亡し、数万が行方不明、十数万の難民が出ている。凄惨な殺戮現場の写真は日本のテレビも少しは報じたことがある。
 国連は治安維持平和ミッション部隊(UNMEE)の3300名を当該地域に派遣している。
しかし一帯に地雷が無数に埋められており、武器とともにロシア製、中国製が主である。

 エリトリア大統領のイサイアス・アフォルキは、中国で軍事訓練を受けた。
アフォルキ大統領自身、朱文泉(南京軍区司令)と顧文根(南海艦隊司令員)がアスマラを訪問したときに親しく懇談している。(『ニュー・ストレート・タイムズ』、05年7月14日付け)。
朱と顧は、直前にアジスアベバにも行ってエチオピアの首相と会見している。

 中国は「アフリカの角」と言われるソマリア、ジブチ、エチオピア、スーダンそして、このエリトリアに国連の武器禁輸決議にも拘わらず、秘密裏に兵器を供与し続けてきた。とくに武力衝突が続くエチオピア、エリトリアの双方に総額10億ドルもの武器を供与しているため国際社会は、「中国が武器商人の典型」と非難している(日本ではこういう情報を大手マスコミは一切伝えない)。

 さて問題はこれからである。
 国際地政学的に枢要な要衝である「アフリカの角」を重要視したのはレーガン時代の米国である。特にソマリア内戦時、米国は深く介入した。ソ連は地位を失墜し、この地域から影響力をうしなう。
 
ところがクリントン政権になって、この地政学的要衝に米国は突如として関心を失った。ジブチに監視のための米軍基地があるとはいえ、僅か1400名の兵士と民間人が駐留するのみ。
その緩み、油断がエチオピアの内戦へと発展したとする分析もあるくらいだ。

 そして今や「アフリカの角」は「中国の角」に化そうとしている。

 中国が最初に派遣したのは例によって「特別医師団チーム」である。やがて低利融資、借款、インフラ整備のための経済支援、技術支援をおこない、橋梁、道路、病院を建設。その一方では武器、兵器システムを大量に供与して緊密な関係を築き上げた。
 
種々のプロジェクトの入札は「政治価格」で行われ、多くが中国側の赤字とまで言われる。
 前にも書いたように、中国は合計200億ドルもの投資をアフリカ諸国に行っており、アフリカの主要25ヶ国とのあいだには「中国―アフリカ協調フォーラム」を主宰(2000年に設立、03年にはアジスアベバで総会)。
また胡錦濤以下、多くの高官が手分けしてアフリア各国を歴訪するという熱の入れようである。

債務救済、特恵関税協定なども締結し、貿易でも中国製品が「アフリカの角」に位置する諸国に溢れる。
また中国は珈琲豆、皮革原料、石油を輸入している。

こうして国連でもアフリカの票をまとめあげ、日本の国連常任委理事国入りを阻んだときはAU(アフリカ連合)が強力な応援団となった。
 AUの多くは、国連で中国の人権侵害非難決議のときも中国側にたって反対した。エチオピアは3月の「反国家分裂法」も支持したほど中国贔屓である。
 (日本はこういう反対した国々への援助を減らすべきだが)。。
 
 エリトリア財務相の国連演説(9月21日)。「我々は領土防衛のためにいかなる手段をも行使する。戦雲が近づいている」。
 前月の八月に中国人民解放軍の高官が両国を訪問していたことは冒頭に書いた。両国は中国からの武器供与の約束を得たと推定できる。

 アフリカの角の、もうひとつの要衝はジブチ。
 この地は米軍が駐留し、東アフリカからサウジ半島のイェーメンを睨む。このジブチへ中国人民解放軍の曽剛川・国防部長、梁光烈・総参謀長が訪問し「近未来の協調路線」を謳った。米軍基地の目と鼻の先である。

 アフリカ資源をめぐる国際的緊張はこれから本格化するだろう。
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◎アフリカ関連の一連の拙稿ですが、これらは「アフリカをめぐる新グレート・ゲーム」として近く雑誌論文に纏めます。
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(読者の声1)宮崎さんの新著『朝鮮半島・台湾海峡のいま、3年後、5年後、10年後』を拝読しました。
いやぁ面白いです。興味津々たる事実が、コンパクトに詰まっていて、それぞれは短いご文章なのに解読に時間が要る感じです。
それにしても入念な取材を日々重ね、たゆまず発信されるご努力と精進には、毎日拝見しつつ、敬服するのみです。あんなに貴重な情報を「タダ」で配っていいのだろうか、と「台所」も心配になります。どうかお身体に気をつけて。   
(ST生、世田谷)



(宮崎正弘のコメント)台所のご心配まで有り難う御座います。単行本につめこむデータ、下書きのつもりで書いておりますので。
 一部の読者に有料になっても付き合うと言ってくださってますが、それなら単行本になってときに是非ご購入を!(苦笑)。


   ♪
(読者の声2)久しぶりに三島由紀夫研究会の「公開講座」に出席しました。
『仮面の告白再読』の演題で白百合女子大の井上隆史先生のお話しでしたが、とくに『仮面の告白』には幾つかの先行する作品群があって、この作品に収斂していることを説き明かされていて興味深く拝聴しました。
一般人の目に触れない三島さんの創作ノートや身辺メモを丹念に追っておられ実証的なお話し振りは好感でした。教え子のお嬢さん方も来ていて、女子大の先生が講師だと楽しい華やぎをもった会になります(いつぞやは女子学生から花束贈呈された講師先生がおられましたね)。
三島さんが11月25日を自決日にしたのは「仮面の告白」の起筆した日だからとの説は寡聞にして初めて伺いました。
吉田松陰の処刑日より信憑性があると思います。
 一緒に行動した「楯の会」志士の思いは測りかねますが、三島の私兵として動いたのですからそうだとしても異存はないでしょう。また三島が勧業銀行を受験して落ちていたとは知りませんでした。 世俗的挫折も経験しているのですね。
井上氏に、「三島の一高受験失敗説」を、市ヶ谷駅に向かう道すがら伺いました。同氏は、「村松剛氏が、三島の母親(倭文重)から直接聞いた話としてその件を書いていますが、どうですかね? 学習院は中等科から高等科に上がるのが当たり前でもし外を受けるとなると学籍を抜かなければならず、一高を落ちたら学習院に戻れなかった筈です」と疑問を呈しておられました。 母堂がままならない進路を採らされた三島への憫情をフィクションに仮託して村松氏に話したのでしょうか? 思春期青春期の三島のデリケートな個人的な身辺事を知ることは作品理解に繋がりますから、その意味でたいへん楽しい一夕でした。
  (しなの六文銭)


(宮崎正弘のコメント)あれほど女性の参加者が多い会も久しぶりでした。次は11月3日、山中湖の三島文学記念館で「レイクサロン」があります。その次は「憂国忌」没後35周年記念シンポジウムが開催されます。
 http://www.nippon-nn.net/mishima/index.html


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(読者の声3)貴誌1262号「読者の声」の”日中がんばれ”氏のとおり、中国(共産王朝)が簡単に崩壊することは考えられない。
とすれば歴代王朝の例をみるまでもなく、中国は周辺諸国を威圧し朝貢を強制するのも間違いない。歴史は何度も繰り返すからである。
僕は日本が奈良朝以降遣唐使を廃し、国家間の公的交渉を断絶した理由がようやく納得できた。国交は途絶えたからといって民間の貿易交流は絶えることなく存続した。相互に利益があったからだ。つまりいわゆる”政冷経熱”は既に1300年前から発生し、存続してきたのである。 
「石平」氏が指摘したように、明治以降日本はこの”政冷経熱”の知恵を捨てて交流に乗り出した。その結果が朝鮮半島を介在して日清・日露・の大戦争である。日中戦争は日本は”満蒙”を国家の生命線と盲信し、結果は全てを失った。しかし戦後は”満蒙”はおろか、中国本土無くして高度成長を遂げた。現在日本人の過半数は中国無くして日本の存在はあり得ないと感じているが、それは妄想である。むしろ蘇我氏、聖徳太子、神宮皇后、平清盛、豊臣秀吉、大日本帝国のように”政熱”を推進した政権は、大陸・半島の巧妙な外交術によって、政権崩壊に追いやられている。 
思い込みは身を滅ぼすというが、正に歴史が証明している。
    (MI生)


(宮崎正弘のコメント)石平さんは、日本滞在18年、四川省出身、北京大学卒業の哲学者兼歴史家です。最新刊『日中友好は日本を滅ぼす』(講談社α文庫)は、じつに読み応えがありました。
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(お知らせ)地方講演旅行のため小誌は10月24日付けを休刊します。
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はやくも売り切れ店が続出!  
『朝鮮半島、台湾海峡のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
http://www.nippon-nn.net/miyazaki/saisinkan/
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『中国のいま、三年後、五年後、十年後(改訂版)』(並木書房、1575円)
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円プラス税)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
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◎宮崎正弘のホームページ http://www.nippon-nn.net/miyazaki/
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