国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/10/13

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成17年(2005年)10月13日(木曜日)貳
       通巻 第1254号  臨時増刊号
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 村上ファンド、つぎはTBSに照準
  阪神にひきつづく、この投機集団の狙いは?
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 日本ではこれまで珍しかった敵対的なM&Aは、新世代の男達が旋風をひろげて、日本の経済界の性格をさえ変えようとしている。

 ここに再録するのは『正論』五月号に掲載された拙論だが、今日的状況を予告する内容となっているので、再吟味に値すると考え、再録します。

  ♪
 『M&Aの本質を見誤っていないか』
      (ライブドア騒動の教訓)
               宮崎正弘


 
  ▲マスコミ買収劇は80年代から

 ニッポン放送株をめぐる「ライブドアvsフジテレビ」のM&A攻防戦を見ていて友人の一人が「『青の時代』ではなくて『@の時代』ですね」と呟いた。言い得て妙である。三島由紀夫がモデルとした東大生山崎某は戦後新世代、当時は「価値紊乱のチャンピオン」と騒がれ、やがて破滅した。
 ライブドアvsフジテレビの株式攻防戦の経過は周知の事実であり、時間外取引など合法すれすれの「@の時代」のチャンピオンの行為は日本的倫理観、伝統的美意識とひどく乖離したものであることに多くの人は不快感を募らせた。
 冒頭に私事で恐縮だが、筆者が『M&Aの研究』(エムジー出版)という本を出して、これから敵対的な企業買収が日本で流行すると警告を発したのは二十年近く前、1986年のことである。
 80年代のM&A(企業買収・合併)は、日本では主に業界再編型か救済型だったが、本場のアメリカでは「乗っ取り屋」たちが大活躍の時代だった。 
 個人の投機家らが投資銀行、法律家と組んで、合法すれすれの新手法を講じ、大手企業をがぶりと飲み込む「活劇」に世界の投資家たちは手に汗を握って息を呑み、投資銀行はブームに乗ってありとあらゆる試行錯誤を繰り返した。個人投資家の一部は乗っ取り屋に便乗して当該株式を購入し、おおいに儲けた。
 この時期にハリウッドが作成した『ウォール街』(マイケル・ダグラス、チャーリー・シーン)という映画も、実は企業乗っ取り、あざとい手法やらインサイダー取引という多彩な活劇を舞台とした作品だった。
 小糸製作所の筆頭株主に躍り出て株主総会に乗り込んできたブーン・ピケンズは、当時のアメリカがうんだM&Aの花形選手。日本では「黒船来航」と大騒ぎをした。実はこのときも筆者は東京の宿舎でピケンズに直撃インタビューをしている。かれは「日本の株主はおとなしい」と笑った。
  なにしろピケンズはテキサス州の中型の石油企業「メサ石油」の社長でしかないのに次々とメジャーにM&Aを仕掛ける豪腕で、84年の全米長者番付では、かのアイアコッカを抜いて堂々の一位だった。
 TWA航空を乗っ取って自分で経営したカール・アイカーンやジャンク・ボンド(高利回り債権)を発明してビジネススクールの学生たちから英雄視されたマイケル・ミルケンなど多くのスターが誕生した。これらの主人公の活劇を筆者は『ウォール街、凄腕の男たち』という本に纏めた。
 結末だけ一言付け加えておくと、合法すれすれのあざとさを見せつけた投機家たちは殆どがユダヤ人で、しかもアイバン・ボースキーに代表されるあくどい手法が後に暴かれ、多くが塀の中にはいった。逮捕を免れたのはピケンズくらいだった。
 そういう沿革を記録した筆者としては、今回の「ほりえもん」のニッポン放送急襲とフジ・サンケイ・グループを敵に回しての立ち回りは興味深いものだった。その過程で筆者はアメリカで86年に起きた或る買収劇との酷似をふと思い出したのだ。
 そうだ。マスコミをめぐるM&A攻防戦は、すでにこの時代のアメリカに顕著だった。
 最初の異端児はテッド・ターナー。言わずと知れたCNNの創始者にして女優ジェーン・フォンダの夫君。ターナーは三大ネットワークのひとつCBS乗っ取りに動いた。
 その直前にマスコミ王のルポート・マードックが、あちこちの地方マスコミを買収して一大マスコミ王国を構築し、英国でも新聞王といわれたマックスウエルと大衆紙をめぐって熾烈な買収合戦に競り勝って、最後にはマックスウエルを自殺に追い込んだ(これは後日、人気作家のジェフリー・アーチャーがモデル小説を書く)。
 そしてマードックは三大ネットワークのABCを買収したが、国籍問題で揉めて(当時マードックは米国席を取得していなかった)、また手放し、ついに彼は香港の名門紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」も諸般の圧力によって北京寄りの華僑に手放す。日本ではテレビ朝日株買い占め。
 マードックはその後、全米三大ネットワークの偏向に挑戦するメディア「FOXテレビ」を立ち上げ、いまや圧倒的な視聴率を誇るメディアに育てた。M&Aの苦い経験が教訓となったのである。
 ところがそのマードック王国を狙うのが「リバーティ・メデイァ」というインターネット関連の新興勢力。昨今、マードックが採った行動はニッポン放送同様の新株発行という防御策である。
 テッド・ターナーはマードックを師範と仰いだが、準備不足でCBS乗っ取りに失敗、挙げ句に週刊誌TIMEが映画のワーナーと合併し「タイムワーナー」となった新会社の傘下に入った。さらに同グループはAOL(アメリカンオンライン)に買収される。これがマスコミの新コングロマリット型といわれる最強企業「AOL・タイムワーナー」の誕生である。
 ことほど左様にアメリカでは外国人以外のマスコミ買収は日常茶飯に行われていたのである。
 もう一つ。ほりえもんvsニッポン放送の買収劇をみていて筆者の脳裏に甦ったのは「ユノカル」(全米メジャー9位)をめぐる攻防戦だった。
 85年、突如乗っ取り王ブーン・ピケンズにTOBによる買収を宣言されたユノカルは冷静に着実に防衛策を次々と講じた。
 第一に増資である。ニッポン放送が新株予約券をフジテレビ向けに発行するとして裁判になった手法の原型がここにある。
 ユノカルは36億ドルもの新株をSB(スワップ債権)で発行。これは全株式の30%弱にあたり、当然ながら株価は下がる。企業価値が低まれば攻撃側にとって買収の魅力が希釈化する。これが「ポイゾンビル」(後述)の典型である。
 第二にユノカルが打った手は議会工作と株主対策だった。
 85年5月13日、ロスアンジェルスで開催されたユノカルの株主総会は、その時点で14%弱の株主になっていたピケンズの取締役会入りを拒絶した。フジサンケイ・グループはこの方面では政官界に働きかけ、「時間外取引規制」の曖昧さを衝いて、証券取引法改正を世論に載せた。
 第三は法務対策で、ユノカルは防戦の裁判の舞台をデラウェア州に選んだ。なぜならデラウェア州の法律は敵対的買収に極めて厳しく、過去の判例で乗っ取り屋が勝訴したことはなかった。したがって保守的な企業は登録をデラウェア州でしている例が多い。
 ニッポン放送のケースは、こうしたアメリカ的な裁判所の選定ができないだけに被買収側は不利である。まして東京地裁にライブドアが仮処分を申し立てたが、東京地裁は世論の動向をみて態度を決める偏向判決のメッカである。
 第四にユノカルは専門チームを発足させて株式市場対策を徹底させた。
 ピケンズは最初、ユノカルの51%の株式買収のTOBに54ドルを提示した。ユノカルの増資による防戦で株価は46ドルに下落、この時点でユノカルは72ドルでの買い戻しを発表した。慌てたピケンズは乗っ取り屋仲間を誘い、57ドルにTOB価格を上げて徹底抗戦の構えを見せた。ここまでの過程はライブドアvsニッポン放送のケースに酷似している。ただし、ユノカルの場合、この時点で勝敗が見えた。全米の投資家は義理人情やしがらみがないから高い価格を提示した側に売るのが常道である。乗っ取り屋が敗退した典型例となった。


  ▲日本の防衛的M&Aは「商法改正」を睨む

 90年代のアメリカの企業買収・合併は「戦略的企業改革」が多くの動機である。十年遅れで日本はその軌道にある。
 しかし現在の日本でのM&Aは大半が2006年の「商法改正」を睨んだ業界防衛が目的である。この特徴は諸外国のパターンと完全に異なる。
 たとえば国内製薬二位の三共と六位の第一製薬が持ち株会社を設立して経営統合する。
 山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して国内二位となる「アステラス製薬」も秋に発足するが、空前の大型合併が続き、やがて日本の製薬業界は首位の武田薬品工業に続き、三共・第一連合、アステラスという三強時代に突入する。
 さらに製薬12位の大日本製薬と15位の住友製薬が、06年秋を目処に合併する。理由は両社合計の連結売上高を合算すると新薬の開発費用が1500億円になりファイザーなどの新薬開発競争に伍せるからである。
 大合併直前まで業界四位のエーザイは「売上高一兆円を目指せば、研究開発費の激増に繋がる」として、内藤晴夫社長は国内大手の再編について「何番になることに意味はない。製薬企業の根源はいかに創薬し世に問えるかだ」と合併・買収に否定的だった。
 銀行を一瞥しても東京三菱、みずほ、三井住友、UFJの四大グループに再編されている。これがさらに東京三菱とUFJが合併し、日本の金融は三強時代にはいる。
 こうした業界再編は、根幹の動機が「商法改正」対策である。なぜなら外国企業の買収が06年から比較的容易になるため今のうちに予防対策を厳重に講じようとするわけだ(三菱東京と米メリルリンチが合弁証券会社を設立するケースは富裕層に的を絞った新証券会社でM&Aとは関係がない)。
 06年改正の「商法」では、企業買収に「株式交換」という荒っぽい手法が合法化されるからだ。
 これは日本企業にとって最大の脅威である。優良企業といわれる日本企業でも株主対策がおろそかにされたため(総会屋対策ばかりあったが)、株式の時価総額が極めて少ない欠点を抱えている。
 たとえばSONYの時価発行総額は4兆円ていど、キャノンは5兆円、武田薬品工業が4兆円である。
 かたやアメリカ企業を一瞥すると、マイクロソフトは時価発行が33兆円、シティ・グループは24兆円、ファイザーは30兆円もある。ウォルマートは時価総額が24兆円、対するセブンイレブンは3兆円である。
 仮定の話だが、もしファイザーが武田薬品を買収しようとすれば時価総額のうち一部の株式を、ターゲットとする企業の株式と交換する、と発表するだけの手法で、実際のM&Aに現金が動かないのである。
 これらに対抗するために日本企業がいまさら単独で時価総額を増やすという予防手段を講じるには遅すぎる。
 そこで定款を改定し、ポイゾンピルなどの毒薬条項を入れながら、一方において業界の再編を急ぎ、少しでも合計資本を増やし、時価総額をつり上げる努力をしているのである。銀行再編、製薬再編など殆どのM&Aは、こうした事由による。
 また外資による買収を避けるのなら出光やサントリィのように私企業化することである。近未来には上場廃止に動く企業も出てくるであろう。

 M&Aはやや専門的に言えば、つぎのような五つのタイプに分類できる。
 (1)水平合併(双方の企業が同一の市場を持つ場合に多い)。
 製薬、金融業界の再編はこのタイプ。最近の典型例は05年3月、米最大デパート「フェデレーテッド」が業界二位の「メィ」を170億ドルで買収し、いきなり全米店舗数を1000店近くに積み上げる。
 (2)垂直合併(双方が潜在的な売り手と買い手である場合)。
 たとえば米農業化学大手モンサントは種苗会社の買収に乗り出した。大豆、トウモロコシなどの遺伝子組み換え作物から野菜、果物などの種苗事業へと多角化を進め、将来、消費者意識の変遷にともなって遺伝子組み換え野菜、果物への参入を容易にする準備である。
 (3)市場拡大(大手銀行の地場銀行買収など)
 最新例は楽天の国内信販買収。また「アパマン」の小倉興産買収だ。表面的には救済支援型だが、市場拡大が目的である。失敗例は米国HP(ヒューレットパッカード)だ。
 (4)製品拡大(取り扱い商品の多角化)
 アデランスはフォンテーヌ買収によって、男性かつら専門メーカーから女性用かつらにまでレンジを拡大した。キャノンの日本タイプライター買収もこのタイプといえよう。
 (5)コングロマリット(商社が新しいメーカーやベンチャーを次々と呑み込んでいくパターン)
 だがこうした学問的分類より、M&Aを動機による目的別に分けて考えた方が、『@の時代』の買収攻防戦を理解する早道である。
  M&Aの動機を分類してみると!)名声もしくは売名目的の企業買収!)事業多角化のための合併、買収!)異分野への進出!)のれん、伝統を買収によって獲得!)市場シェア拡大が目的!)経営改善のため!)その国の権益を確保するための買収!)二つ以上の企業統合!)学習のための買収!)愛国的防御などに細分化されるだろう。
 ライブドアvsフジテレビのケースでは堀江社長の動機は!)!)が強い。ニッポン放送の防衛理由は!)であり、大義名分が前面にでるため、法律的な防戦に緒戦段階では手抜かりが目立ったのだ。

 
 ▲ポイゾンピル、ホワイトナイト

 M&Aゲームに頻繁に登場する専門用語はなかなか馴染みのないものが多い。
 次のいくつかの基本的な用語のなかでいくつご存知だろうか? いずれも新奇のことばで、どことなく好戦的な迫力があり、且つビ
ジュアルな感覚に富んでいる。だから「ほりえもん世代」に受ける。
 (1)パックマン・ディフェンス
 パックマンは往時のTVゲームの大ヒット作だが、次々に餌に食らいつく「仕掛け人(ライダーズ)」と、それを含む企業側との息詰まる攻防をいう。たとえば「ライブドア」の体力が落ちた時点で、ひゅっとして楽天が逆TOBを仕掛けるシナリオもあるだろう。
(2)ゴールデン・パラシュート
 「黄金の落下傘」は、巨額な退職金を貰って買収側の人間に経営権を渡すこと。当時、最大の退職金と騒がれたビル・エイジー元ベンディックス社長は、アライドに買収された後、ほんの数日「アライド・ベンディックス」のナンバー2としてとどまっただけで、城を明け渡した。ベンディックスから身を引く見返りとして、エイジーは400万ドルの退職金を手に入れた。経営権を掌中にするために、巨額のマネーを渡したというわけだ。
 (3)シャーク・リペルメント
  鮫の駆除と直訳でも分かるように乗っ取り屋を撃退するために定款を複雑にして防御しやすくする手段などを意味する。
 (4)ホワイト・ナイト
 絶体絶命のピンチに陥ったとき、背後から救済顔して新しい買収主が登場する。これも仮定の話だが、もしニッポン放送が窮地に陥ればフジテレビの株式を「理解ある、友好的」な企業へ突如、売却する手段も考えられる。
 (5)グリーン・メイル
 買い占めた株式を高値で被買収企業に買い戻させる手段。80年代にはいちばん儲かった手口である。
 高値で買いもどさせる行為、あるいは最初からそれを狙ってTOBを仕掛ける投機家をグリーンメイラーと呼ぶ。
 (6)TOB(テーク・オーバー・ビット)
 株式公開企業が株の買収価格、株数、買収期間を新聞紙上に公開し、株の買い占めを通じて企業の支配権を握る方法。こんかいのケースではフジテレビがニッポン放送の株式をTOB方式で買い増して応戦し、成立させた。
 (7)LBO(リバレッジド・バイ・アウト)
 これは法律的にも複雑高度な手法で、被買収企業の資産を買収前に担保と仮定して、次の事業計画を発表し、そのビジョンのもとに資金を集める遣り方。90年代に廃れた。
 (8)ジャンク・ボンド
  LBOに似ているが、日本では依然禁じ手。かわりに「私募債」発行という手段がある。要するに買収対象の企業の資産を仮定担保に、事前に高利回り債権を発行し、投資家を募る。高利回りは確約されているわけではなく、買収が失敗すればただの紙切れとなる。この方式を発明したのが「ドレクセル・バーナム・ランベール」という投資銀行にいたマイケル・ミルケンだが、後日インサイダー取引がばれて御用となって服役、同社は倒産に追い込まれた。アメリカでさえあまりにあざとい手法は法的な制裁を受けた。
 (9)ポイズン・ピル
 直訳すれば「毒入り錠剤」。乗っ取りに遭った場合を考えて、既存の株主に半額で新株を発行できることなどを定款のなかに毒条項として盛り込むなど防御側の戦術をいう。米国では州の裁判所が支持するかどうかでその乗っ取りが有効か否かが決まる。だから目標とする企業が何州で企業登録をしているかが、準備段階の法律家たちの対策になる。
 (10)レブロン義務
 いったん、企業を売却する決定を出した場合は、好き嫌いに関係なく取締役会は最高額を提示したところに売らなければならない。株主を優先するアメリカならではの新判例で、85年にデラウェア最高裁が出した。化粧品の名門レブロンは、これで乗っ取り屋にやられた。
 こうしてアメリカでおきた実例は今後の日本で大いにおこりうるだろう。


  ▲時代を先取りするシティグループ

 M&Aはメリットも多い。とくに欧米においては、迅速な企業再編効果をもたらす。
 再編効果、経営合理化としてM&Aを活用する典型例を世界最大金融企業のシティグループに見てみよう。
 1998年に保険主体のトラベラーズと合併し、世界一の金融機関となったシティグループは、最近、国際的な保険業から静かに撤退を決めた。
 メットライフに115億ドルで保険などのサービス部門を売却、その中には傘下に収めていた名門スミス・バーニーのブローケージ部門も含んだ。
 シティグループが日本で鳴り物入りの宣伝をかけて、これからの銀行の新形態だとしてきた「プライベートバンク」部門は対照的に挫折した。顧客数も五千そこそこ、預金量も8400万ドルと世界の富豪を前にして日本の富豪があまりに小規模に見えるのは国民性の所為もあるだろう。
 シティグループは不採算部門を片っ端から売却する一方で、アメリカでは堅実な地銀を買収している。
 ”金融のスーパーマーケット”を目指すという98年以来の路線が変更されているのである。
 日興コーディアル証券の持ち株比率を21%から12%に下げ、サウジのサンバフィナンシャルの持ち株を売却。シティグループの再編は世界的規模で同時になされた。アジアにおける金融拠点も急増させ、あらたに5000名を雇用した。ATMを千台増やし、この拡大路線を今年は日本、ロシア、インドにも広げる。こうした文脈から大手「ナイト・トレーディング」社のデリバティブ部門、老舗ABNアモロ証券のバックオフィスなどを電光石火の早業で買収した。
 米国内でもフロリダ、テキサス州の優良な地銀を買収し、ワシントンの不動産担保金融の大手「ミューチアル・ファイナンス」も12億ドルで買収した。シティグループが海外で増やした支店の数は昨年だけで203,クレジット・カード保持者も500万人の顧客を主としてアジアで増やした。このシティの「アジア重視戦略」は前駐日大使ハワード・ベーカーを顧問に迎えたことでも分かる。
 「2004年にシティバンクは4%の経常利益を日本で伸ばしたが、さらにATM24時間稼働をめざし、テレフォン・バンキングでもトップに躍り出る勢いだ」(ビジネスウィーク、05年2月14日号)。
 時代に合わないとなるとさっさと退却し売却し新しい路線を突っ走る。しかも前任者の信任が厚い。こういうドライで奇妙な関係はアメリカの企業物語にはつきものである。
 しかし日本企業が同じ道を歩むか、どうかは未知数であろう。
 日本で議論されなかった重要な視点のひとつは国家安全保障だ。マスコミの外国人への買収を認めないのは世界共通だが、欧米企業は「国防技術を保有する企業」の外国人の買収も「認めない」のである。
 中国の新興パソコン「レノボ」のIBMのパソコン部門買収にしても、米国議会が総立ちで反対したのはIBMのサウスカロライナの工場が国防産業だったからだ。国防部門を切り離して買収許可となるだろう。
 日本でも国防技術をもつ富士通、NEC、三菱重工など、外国企業からの買収を波打ち際で拒絶できる法律が必要である。
 金融審議会(首相の諮問機関)は3月3日になって「金融分科会」を開き、金融庁が示した、立会外取引による企業買収の規制案を了承した。こうした法規制も必要だが、率直に言って本筋の問題とは思えない。
 最後に投資銀行に煽られて買収ゲームを展開すると火傷するケースが多いことを指摘しておきたい。
 M&Aの仲介業務は投資銀行の収益向上に最大に貢献する花形部門で、ゴールドマンサックス、JPモルガン、シティ、モルガンスタンレー、メリルリンチなど錚々たる投資銀行が法律家、専門家を擁して企業に「あの会社を買ったら如何?」とセールスをしている。日本でこれからM&Aが大流行すると聞いてアメリカから多くの法律事務所、会計事務所が大挙上陸済みである。ついでに言えば今回の買収騒動で「仲介役」のリーマンブラザーズがライブドア側から受け取る手数料は百億円と推定される(『WILL』、4月号)。
 元大蔵省財務官の榊原英資・慶応大学教授はリーマン・ブラザーズ証券のアドバイザーを辞任した。一月に就任したばかりで、この迅速な辞任ぶりは明らかにライブドアの行儀の悪さが影響したと推測される。
 リーマンはライブドアの下方修正条項付新株予約権付社債(CB)を引き受け、しかも同社株を空売りした。 
 日本企業はアメリカ的企業風土に馴染まない文化的特徴があり、これを一部のM&Aが破壊する危険性について最後に付言しておきたい。
 アメリカ人にとって企業とは株主のために存在する。利益は株主配当に一番の重きが置かれ従業員へのボーナスは付け足しでしかない。
 日本はながらく終身雇用、年功序列という「運命共同体」的な伝統があり、それが会社への忠誠心を育んできた。
 しかしIT産業など、スカウトの多い新人類主体の企業は、儲かればそれで良し、会社は全人生を賭ける場所ではないと割り切っているが、大半のメーカーや歴史のある企業はそうではない。日本の企業は従業員と経営者と株主が一体となった調和にこそ存在するのであり、いまの「カネが万能」という『@の時代』の風潮が蔓延することは歴史と伝統を破壊することに繋がりかねないだろう。
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(サイト情報)スノー米財務長官が来日し、都内で記者会見。小泉政権が進める構造改革や、中国の人民元改革などに関するコメントを発表した。スノー長官は、10月15日から北京で開催される20カ国財務相・中央銀行総裁会議 (G20) に出席する。
 PRESS CONFERENCE(記者会見):Japan's Economic Reforms "A Guide for Other Nations," Snow Says
http://japan.usembassy.gov/e/p/tp-20051012-72.html
 G20のオフィシャルサイト
http://www.g20.org/index.htm
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ドキュメンタリー映画「みやび 三島由紀夫」上映中!
 http://www.pan-dora.co.jp/shinsaku/index.html
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山中湖の三島文学記念館
 http://www.fujigoko.co.jp/yamanakako/bungaku/mishima.html

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三島由紀夫没後35周年「憂国忌」は来月に迫りました !
http://www.nippon-nn.net/mishima/
        記
 とき    11月25日 午後6時―9時(5時半開場)
 ところ   九段会館 大ホール
 参加費   おひとり 2000円(会場分担金として)
 当日のプログラム 開会挨拶(発起人代表 松本徹)、神道儀式による鎮魂祭(乃木神社宮司による)、「薔薇刑」秘蔵スライド上映と解説(細江英公)
 (記念シンポジウム)「三島事件から35年、現代日本はどうなったのか?」
     井尻千男、入江隆則、サイデンスティッカー、西尾幹二、村松英子
 ●「憂国忌」(11月25日)の割引チケットの受付中。
http://www.nippon-nn.net/mishima/index.html
(↑このサイトから申し込めます )。    
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『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
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  • dQDBJhQtKxtNub2013/02/17

    Your story was relaly informative, thanks!