国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/10/10

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成17年(2005年)10月10日(体育の日) 
       通巻 第1251号 臨時増刊号
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連休中につき、今号もニュース解説はありません。

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<<今週の書棚>>

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近藤伸二『続・台湾新世代』(凱風社刊)
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 近藤伸二氏は毎日新聞前台北支局長。いまは大阪本社勤務だが、台湾滞在中、わき目もふらずに台湾全島をかけめぐり、路地裏の奥まではいって庶民の暮らしを克明に取材した。大晦日、新年にかれらはどういう行事を行い、なにを食し、たとえばお年玉をどうするか、生活レベルでの具体的記述が面白い。
 「台湾通」(?)を勝手に自負する評者(宮崎)とて、台湾へ取材旅行の回数こそ特派員なみだが、実際に台湾で暮らした経験はないから、あの料理をつくるときに、この酢をつかう、などと言われると新鮮かつ衝撃的に驚くのである。台湾の土着的信仰は、道教と仏教徒がこきまざった独創的色彩があるが、海女(馬祖)信仰の根源も各地の廟に訪ね歩いている。
 また近藤さんの視点はハイテク台湾の技術立国の宿命を精力的に追求するという姿勢、経済記者として政治を観察するグローバルな視点のユニークさがある。
あまりに政治偏重な、ほかの記者達の紙面つくりとは一線を画しているが、それでいて台湾政界トップの政治家、エコノミスト、閣僚の多くにインタビューを試みている。
 2008年の北京オリンピックの年に台湾は次の総統を選ぶ。
 国民党、親民党、民進党、台湾団結連盟の有力政治家たちを本書はルポ風に意外な角度で、しかしながら公平に紹介している。
 次期総統に誰がなるのか、政治イシューとして最大の喫緊事について淡々と客観的に、しかし台湾への愛情のあふれた観察をしている。
これは台湾独立支持派からみれば、若干の不満が残るかも知れない。だが国際情勢を冷徹に見る複眼的分析は、むしろ熱烈な独立支持派に必要であろう。
 さて膨湖島にカジノを作ろうなど、現地でのこまかなトピックなどは、本書にあたっていただくことにして、評者がもっとも興味を抱いたのは軍事要塞「亀山島」のことだ。
評者は金門、馬祖、膨湖諸島には何回か行っているが、この亀山島へは行ったことがない。そもそも最近まで立ち入り禁止だった。
同島は台湾の北東海域に浮かぶ、ちっぽけな島で、嘗て七百名の漁民がいたが、蒋介石軍がはいって「戦略拠点」としたため、集団移住させられた。
爾来、半世紀に亘って軍が占拠し、先年、一日350名だけに制限して観光が許可となった。
 広さが285キロ平方しかない火山島だが「軍事管制下におかれ」て久しかったのだ。
「島には原生林など手つかずの自然が残っている。珍しい植物や昆虫、鳥類、魚類などの宝庫」。温泉も噴きだしているそうな。
 ここが戦略拠点とされた理由は「中国軍が東海岸から台湾本島に上陸しようとした場合、亀山島が地理的に重要なポイントになるからである。台湾軍は海に面した断崖にトーチカをつくり、島の先端には機関砲を設置するなど、竃山島を軍事要塞化した」。
 周囲の水深が2000メートル。潜水艦が近づいても発見が難しいため、いまも特別の警戒をしている。
じつは昨年秋に突発した「中国原潜、日本領海侵犯事件」の際にも、台湾がこの情報を日本に伝えた。そうした軍事要塞の現在を本書ではいきいきとレポートしている。
 台湾に興味のある読者は必読の書。


  ♪
石井公一郎・萩野貞樹編『小学校国語副読本』(PHP研究所刊)
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 この本は、私家版の国語教育「副読本」と銘打たれているが、戦後みだれにみだれた教育のなかでも歴史教科書、道徳、地理と並んで、いやひょっとして一番みだれたのは国語教育であり、これを如何にただすかの一つの大きな試みでもある。
 要するに国語が乱れ、敬語がデタラメになり、テレビの発言を聞いていても、ときおり宇宙人かと思うようなタレントの繰り出す「日本語」に、小生など「通訳」が欲しいと思うことがある。
日本人のこころの豊かさ、寛大さ、おくゆかしさを育んだのは短歌、俳句、漢文調の素読、教養溢れる文語文、詩歌、唱歌だった。
それらが国語教科書から消えて、替わりに大江健三郎とかの「縦に書いたフランス語」やら反戦平和の無味乾燥な散文が意味もなくならび、驚くなかれ、夏目漱石も森鴎外も、日本の文化伝統をつたえる川端も三島も、殆どの国語教科書から消えてしまったのだ。歴史教科書から楠木正成や東郷平八郎がきえてしまったように。
足利尊氏が英雄になり、大塩平八郎がゲリラの首魁の視点で共産革命風にさかさまに評価されるようになり、日本人が日本人として誇りを持つ要素が損壊された。
国語教科書もまた自虐史観で横溢し、わかき日本人から誇りを奪うという副作用の弊害が、こんにちの国語の乱れに繋がっている。
本書にならぶ童謡、唱歌は「春がきた」「さくらさくら」「良寛さん」「浦島太郎」から、芭蕉、一茶の俳句。本居宣長の和歌。
日本ばかりではなく世界の名著、名言を羅列したなかには、李白の詩、孔子の教訓、キリストの山上の垂訓も選ばれている。
私事にわたって恐縮ながら、編者のお二人にも参加してもらった「日露戦争勝利百周年を祝う青年のつどい」で、愛国的な若者が1600名参集したときに、だれもが知っている筈と「海ゆかば」を最後に二回合唱したところ、半数の若者が知らなかった。情けないと考える前に、「嗚呼、これぞ悪しき戦後教育の成果」と慨嘆せざるを得なかった。
本書には「水師営の会見」もちゃんと挿入され、♪「乃木大将はおごそかに。。」「庭にひともと棗の木、弾丸後もいちじるく」。。。
選択された文章(唱歌をふくみ)は、皆、秩序あるリズムの乗っ取っていることが分かる。
本書の工夫は最終ページにも至り、昨今の音楽教科書からも消えた、あの「仰げば尊し」を脳裏に甦らせて、閉じる仕組みになっている。
あの時代はよかった、などと感慨に耽っているだけではすまされない。
これは大人が読むと若き日々の懐かしさにつながるが、戦後教育への悔恨の情が同時に湧いてくる。本書を読んだ後、子供や孫や、周辺の若者に寄贈しよう。
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(読者の声1)雑誌『諸君!』に「祖国再建」を連載中の田中卓氏(皇學館大學名誉教授)が10月号で三島事件について論評しており、三島が暴力で自衛隊総監を脅迫して目的を達そうとしたことを批判されていますが、文章中に宮崎先生に関する言及が少なからずありました。
「この点、注目すべきは森田必勝氏の言動で、同氏の(略−遺稿集)をまとめて出版した宮崎正弘氏の解説や鈴木邦男氏の(略)論旨が、よく正鵠を射ています」とあります。当方、事件当時は高2でろくに詳細を知らず(後年、猪瀬直樹氏の著書によって全貌を知りました)、今回の田中氏の論評をきわめてもっともなものであると考えましたので、宮崎さんがかなり早い時代から正当な評価をなさっていたことを知ってたいへん心強く思いました。
この田中氏、ご高齢ですが論旨は明晰でよく腑に落ちます。その言わんとする骨子は次の文章でしょうか。
−「それにしても、なぜ三島氏は将来有為の学生を道連れにしたのでしょうか。決死であれば、むしろ単身で出向いて、総監もしくは佐藤首相に檄文の趣旨を直訴すべきではなかったか。そして遂に聴かれなかったその時は、脅迫や危害の暴挙に出ることなく、その場で従容と自決したとすれば、これこそ三島美学の見事な散華と讃えられ、自衛隊員も三島精神に限りない感謝と感激をいだき、おのずから奮起するところがあったでしょう」。

同文には宮崎さんが編集長をされていた「日本学生新聞」の重要な記述もありますし、次の文章などは宮崎さんのスタンスと姿勢をよく表わしていると思われます。
「ところが三島氏は、当時の学生運動の実態に疎く、自説に賛同する学生は皆、純粋に「楯の会」一本に結集させようとしたため、思いがけない混乱がおこったのです。森田必勝氏が「日学同」の全日本国防会議議長でありながら、「楯の会」の専従となったことによって「除名」された事情は、前掲の「森田必勝・遺稿集」の解説を書いた宮崎正弘氏の、苦渋にみちた文章(250頁)からも十分に察せられましょう」
 この文章によって宮崎さんが当時の貴重な同時代の証言者の一員でおられるということを知りました(おそらくは三島氏はじめ同文中登場人物のほとんどと面識がおありかも?)。三島文学が血肉化されたとしても首肯できます。当方など育った環境は労働左翼系で、三島文学に接したのも大学以降ですから、その差には大きいものがあります。

今回こういう文を書きましたのも、あの江ノ島水族館の「みなぞうくん」死去の報に接したからかも知れません。当方以外にだれか三島のことを思うひとはいないだろうかと思ったのでした。
年齢12才ということでしたから三島が目にしたのと同一の個体ではありませんが、「江ノ島水族館のミナミゾウアザラシ」と言えば三島がえんえんと描写して「これこそ文学の理想的なもの」といった表現をしておりましたので、いったいどのように巨大な海獣かと思っていたものです。
おそらくこの海獣が文学者によって活写されたのは後にも先にも三島の文章以外ないのではないでしょうか。ご存知と思いますが、その自決まで新潮社「波」に連載していた「小説とは何か」の一節です。
いろんな意味で三島文学の真髄が含まれていると思われるエッセイでした。単行本で持っておりましたが、いま手元にないので引用できないのが残念です。学生時代を思いだして駄文草しましたことご寛恕願います。
     (RS生)


(宮崎正弘のコメント)『諸君』先月号発売直後に同様のご質問をほかの読者からも頂戴し、一応回答済みです(バックナンバーの9月2日付け参照)。
http://www.melma.com/backnumber_45206/
(拙メルマガの全バックナンバーが閲覧できます↑)。
 というわけで、せっかくの長いご質問に短い回答で恐縮ながら、これらはすべて、拙著『三島由紀夫以後』(並木書房)に書きました。
 また小生の三島文学論は、『三島由紀夫はいかにして日本回帰したのか』(清流出版)で、論じております。それを簡潔に凝縮した拙論は、近く発売の『日本文化』(拓殖大学日本文化研究所編、展転社発売)に寄稿しておりますので、以上を参考にしていただきたいと思います。
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「憂国忌」(11月25日)の割引チケットの受付を開始しました。
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『朝鮮半島、台湾海峡のいま、三年後、五年後、十年後』
(並木書房、1575円)
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<<宮崎正弘のロングセラーズ>>
『中国よ、“反日”ありがとう』(清流出版刊、1400円+税)
『瀕死の中国』(阪急コミュニケーションズ刊、1600円+税) 
http://deserveit.jp/am/asin/4484052083.html
『中国のいま、三年後、五年後、十年後(改訂版)』(並木書房、1575円)
http://deserveit.jp/am/asin/4890631704.html
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円プラス税)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
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