国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/09/15

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成17年(2005年)9月15日(木曜日)
       通巻1233号 
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注目の劉亜州・空軍中将が連戦訪中のシナリオを書いた
 李先念の女婿。「太子党」だが、軍の人気が高く米国が瞠目
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 空軍の戦略家であり、不思議なことにエッセイを書いて小説もものにするという風変わりな軍人論客が劉亜州・中国人民解放軍中将だ。
かれは李先念の女婿で53歳。海外留学、外国体験が豊富であり、かつ本音を語る強硬派としても知られる。
現在「空軍副司令」(つまり空軍のナンバー2)。

 劉が著した戦略論『忠節と志気』では、対米、対日、対台湾などの問題を網羅していて、タブーを軽々と突き破り、党と軍の腐敗を摘発し、大胆な内部改革を提唱し、過去の軍のデマゴギーを排斥している。
 軍の戦略はふるくて、従来的な軍人のメンタリティが改革の足を引っ張る、というのだ。

 49年の金門砲撃戦についても、劉亜州が昨年インターネット上に配信した論文では、軍の指導の不手際を告発し、侵攻計画の杜撰さを槍玉にあげて糾弾した。
 90年代の台湾政策も、この金門の体験をいかせず、台湾への強硬な態度を維持したことは失敗である、と総括した。

 劉は「リアリストにして同時にナショナリストである」と自らを定義し、台湾問題などより、中国の長期的目標は「強い中国、強い軍」である、と臆面もなく言う。

 米軍が台湾防衛に出てくる現在の国際情勢という文脈では、むしろ台湾の複数政党制を梃子として、民進党にさえ食い込みを図ればよいと提唱した。
これが胡錦濤の決断を促した。つまり、国民党の連戦主席や親民党の宋楚諭らを北京へ招待した、戦後中国共産党の基本姿勢の変更をもたらした。

 胡錦濤は、こうして軍の強硬派の意見をとりいれながらも、じつは政治的にもっと老獪な行動をとっている。
11月20日に予定されている胡耀邦生誕90年記念式典がそれだ。
胡耀邦の復権のみならず、国民的な人気の高い趙紫陽元総書記の名誉回復も視野に入れており、過去半年のあいだに趙紫陽の側近だったブレーン、軍人ら10余名を復権させている。
これは胡の権力基盤である共産主義青年団の団結強化をはかって、上海閥の追い落としを本格化させる長期展望に立脚しており、党の若手からの支持が拡大しているという(ウィリー・ラム『チャイナブリーフ』、9月13日号)。
 

 ▲江沢民の追い落としに胡錦濤は劉亜州の強硬論を梃子に利用

江沢民の右腕で、胡の最大のライバル曾慶紅の影響力低下は甚だしく、最近は新彊ウィグル自治区へ派遣されての儀礼式典出席やら、香港のディズニーランド開園に共産党を代表して出席するなど、一連の軍関係の決定からは完全にはずされている。

くわえて江沢民派の呉邦国、黄菊の出番もすくなく、上海派に連なった企業家、銀行家らの「汚職」「不正」を名目としての逮捕も、胡の権力基盤の基礎固めに利用されている。一方で共産主義青年団からの抜擢があまりに露骨なため、たとえば河南省の暴動とAIDSの広がりから逃げて、遼寧省書記に転じた李克強(前河南省書記)に対して依怙贔屓人事との悪評さくさく。

 しかし国内政争におかまいなく、劉亜州は続ける。
 「ハンチントンの儒教とイスラムの同盟は、偉大な機会である。西側とイスラムの対決こそ、中国にとって絶好のチャンスではないか」。
「西側が懼れるのはイスラムの勃興であり、そのイスラムとの関係改善こそ中国の外交的課題としなければなるまい」

 ならば露西亜とどうくむのか、詳しい提言はないのだが、このあとに続く言葉が面白い。
 「しかるに中国の外交政策も軍事戦略もインテリがつくっておらず、インテリでない人達が策定しているのは、中国の悲劇である」として大胆に軍の再編を提唱しているのである。

 また劉亜州は熊光楷や朱成虎とならんで「対日強硬派」の頭目だが、「日本は日米安保条約から離れて独立した場合、中国にとって扱いやすい隣人であり、中国の世界戦略の緩衝地帯として活用できる」などと侮蔑の態度を露わにしている。
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(休刊のお知らせ)小誌は明日(9月16日)から25日まで休刊になります
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(読者の声1)今回の選挙結果についての「読者の声」に対する宮崎先生のコメント,「選挙結果の中味は、前回のイケメンが民主党への風をバックに出てきたように、こんどは「小泉旋風」を後ろ盾にマドンナが輩出しただけのはなしです。むらっけの多い「カミカゼ」は、どちらへでも吹く。」
全くその通りであると思ひます.
 そもそも国民は今回郵政民営化の得失についてきちんと考へた上で投票したのではない.おそらく大多数は「“民営化?いいんぢやないの”」と言った程度の認識で,私などもさうだが,民営化しようがしまいが自分の朝夕には殆ど関係がない,と思ってゐるであらう。
退屈してゐた国民,特に無党派層が首相が演出した“民営化ゲーム”に“これは面白い”とばかりに飛びついた。さうなると演出者の意向になびくのは当然であり,小選挙区制の鋭敏な増幅作用と相俟ってかくも一方的な結果になったわけである.従って自民党の勝利の中身は空疎であり,逆風が吹けばいとも簡単に反対方向に流されてしまふであらう.

しかしその一方で、小泉首相のやり方は今後に大きな禍根を残した.首相は民営化に反対した,と言ふだけで真っ当な保守派の議員を切り捨てる一方,凡そ自民党に相応しくない人物を刺客として送り込むだけでなく比例名簿の上位に据ゑてその殆どを当選させてしまった。
全くやることが無茶である.郵政民営化法案は早々と成立するであらう.しかし郵政民営化以外にも,と言ふよりそれ以上に重要な課題が多くある.小泉首相は「小泉チルドレン」に民営化以外にどのやうな貢献を期待してゐるのであらうか.下手をすれば,先生の言ふ通り極めて厄介な存在になるであらう.首相はそんなことは一向に意に介さないやうであるが.今回の選挙のやり方,特に候補者の人選,拉致問題,靖国問題に対する煮え切らない態度,二度にわたる謝罪声明,などを見るにつけ,小泉さんはとうていまともな保守主義の政治家とは言へない.こんな小泉首相に全自民党が平伏し,石原慎太郎氏などまでが首相を持ち上げる.つくづく今回の選挙はポピュリズム民主主義の怖さを思ひ知らせた.小泉さんは首相公選論者ださうであるが,今の日本でそんなものを導入したらとんでもないことになりかねない。
また今回の選挙で政治家の質,といふものをあからさまに見せつけられた思ひがする.参院の造反組12人のうち,荒井議員を除く11人が民営化賛成に転じると言ふ.なんたる無節操か.彼らの行動を弁護して,これは保身ではなく,民意に從ふのだ,と言ふ人がゐるが,冗談ではない.これほどあからさまで醜い保身行為はない.中曽根弘文は,「自分は信念に基づいて民営化に反対しました」とはっきり言ったではないか.大勲位中曽根康弘は“風見鶏”の異名を取ったが,この親父にしてこの息子あり,と言ふところか.
 また衆院の造反組みで刺客を退け当選を果たした議員の何人かも,民営化に賛成するから自民党に復帰させろ,と言ってゐると言ふ.これまた唾棄すべき変節ぶりである.もし郵政民営化反対が信念に基づくものなら,「民営化に反対しただけで自民党を追はれる謂れはない,復党させろ」と言ふべきであり,それが認められないなら小泉退陣まで待つか,きれいさっぱり復帰を諦めるべきである.「小泉チルドレン」の多くもさうだが,これらの変節議員も根本的に信用できない.
 今回の選挙における民主党の惨敗自体は小気味よいし,亀井一派の凋落にも同情はしない。しかし今度の自民党の大勝利が内容空疎なだけに,自民党自身が心配してゐるやうに,その揺り戻しも大きいであらう.怖れるべきは,奇怪なマニフェストを掲げる民主党が形勢逆転し,一気に政権をとってしまふことである.さう言ふ心配をしなくてもよいやうに早く政界が再編されることを望む.安部晋三氏は今隠忍自重のときかも知れぬが,機会を見て自民党を割って出て,民主党の一部と合同して真の保守新党を作るべきなのではないか。
(横浜市NN生)


(宮崎正弘のコメント)ですから小泉さんがもし「信長」であるのなら「信長は高転びに転ぶ」と安国寺恵瓊(あんこくじえけい)がいったように、あのひともドタンと転ぶでしょう。
小泉さんは「派閥解体」などと嘯いて敵対派閥(橋本、堀内、亀井)を壊滅させたが、自分の派閥だけはぬくぬくと太らせました。そのうえで次期後継レースから有力だった亀井、平沼をみごとに排除し、高村をコーナーへ追いやって、麻生、谷垣などと、戦力にもならない二級を浮上させつつ党内を強く統御し、じつは巧妙に次期本命の安倍晋三を排撃したのですね。
だから八木秀次さんが『正論』で預言したように「ポスト小泉は、小泉」だった。
 郵政民営化反対から「民意」だと言って、参議院でも賛成へまわった多くの人たち?
 信長に反対したり賛成したりした松永弾正、三好入道、筒井に細川。背後にあって政局をかきあらした陰謀将軍足利。まったく似ておりますよ。小泉信長の周辺は!
 明智光秀が誰になるのか、次の見所はそれでしょう?
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