国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/08/31

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成17年(2005年) 9月1日(木曜日)
        通巻1218号 
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胡錦濤訪米前に、北京のあせり
 ロビィストに大金を支払ってマスコミ工作も展開
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 胡錦濤訪米は「公式訪問ではない」とホワイトハウスが言明した。

 中国は米国マスコミ、議会に拡がる急速な「反中感情」にいささか懼れをなしたか、直前に19名の米国連邦議会議員を北京に招待した。
しかも直前のタイミングを選んで、ボーイング社に50機のジェット機を発注した。おりから訪中を予定していたデニス・ハスタート上院議員はイリノイ出身だからほくほく。総額60億ドル!

 ついで中国はパットン・ボッグス社というワシントンDCで有名な外国ロビィストに毎月22000ドルを支払い、議会工作を依頼していたことが判明した(ブルームバーグニュース、8月30日付け)。

 北朝鮮核武装の影で、中国が北のアドバイスしているフシが濃厚だが「中朝両国はチームプレイだ」と交渉当事者のヒルズ国務次官補が言っている。ロビィストは、工作が円滑にいっていない証拠である。

 NY選出のシューマー上院議員は「それでも中国に対する米国の貿易赤字は今年、2000億ドルを越える。我々の不満はそれくらいのことで収まるはずはない」と言明している。
シューマーは金融が得意のユダヤ人。先月の人民元2・1%切り上げは欺瞞であり、さらなる人民元切り上げを要求していた議員の急先鋒である。
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(読者の声)先日、小倉の法人会で宮崎さんの講演をうかがいました。演題は「中国のいま、三年後、五年後、十年後」でした。まことにはじめから終わりまで、目から鱗の連続でした。それにしても、どうして日本のマスコミは、こうした正確な中国情報を伝えないのですか?
古森義久さんや、黄文雄さん、宮崎さんらのお話を聞かない限り、日本人が中国の実像を把握できない危険性があります。
NHKはじめ、大手マスコミの中国報道と宮崎さんの分析のあまりの乖離に慄然、暗然となりました。
         (NN生、北九州市)


(宮崎正弘のコメント)国交回復前後、日中間には記者協定が秘密裏に結ばれ、中国のくらい報道はしない、と日本のマスコミ各社は協定をしました。これをすっぱ抜いたのが衛藤瀋吉、三好修の「中国報道の偏向を衝く」(日新報道、絶版)でした。
 以後、天安門事件でかなりの報道の自由を回復したとはいえ、産経、読売いがい、北京の顔色を依然としてうかがっての紙面作りをしています。日経がとくに酷いのですが、行間を読むと、経済の深刻さはちゃんと伝わります。ですから受け取る側としては行間を読む工夫が必要でしょうね。
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 <<高千穂、壱岐紀行>> 
                      宮崎正弘

 △高千穂、遙かなり

 名古屋の熱田神宮で講演を済ませた私は、会場に足を運んでくれた友人・知己と神宮会館の喫茶店で懇談したあと、新幹線に飛び乗った(8月20日)。炎天下、境内には蝉が喧しく鳴いていた。
 何人かから近くのレストランで、「李登輝友の会・名古屋支部結成準備会」を開くのでと誘われたのだが、おつき合いできる時間的余裕がなかった。
 大阪へ急いだ理由は会食予約と翌朝早くに熊本へ飛ぶためである。
 ホテルで朝五時に起床、食事も摂らず飛行場へ。チェック・インのあと、ようやく落ち着いて鮭弁当を食べた。

 高千穂へ行こうと思ったのは次の講演先の博多、小倉までの日程に48時間の空きを見つけたからで、太古の昔より神々のやどる神秘な渓谷、天の岩戸、古典的な神楽を鑑賞したいという欲求は以前からあった。
 紀元節の歌は♪「雲に聳ゆる高千穂の」で始まる。

 高千穂へは延岡から鉄道に乗ってのアプローチと熊本空港から二時間バスに揺られるルート。もう一つは博多からの高速バス。ただし後者が一番便利なため予約がとれない。
 台風が近づいていて小雨がけぶる高千穂の町へはいると爽やかな風がおきた。町中はひなびた温泉地という風情だ。

 バス停に隣接する宿が運良く空いていて、そこに荷物を預け、地元の居酒屋で昼飯もそこそこにして高千穂渓谷へおもむいた。
 この渓谷の入り口に雄坤(ゆうこん)な滝がある。「また会おうぜ、滝の下で」と言った松枝清顕の台詞を思い出した(『春の雪』)。深緑色に鬱そうとした渓流は溜め池のように淀んでいる。
そこにボートを漕ぐ音が不気味な木霊を広げていた。

 夜は高千穂神社へ。伝統的な神楽を見物するためだが高千穂町あげての観光支援態勢が組まれている。
  重要無形民俗文化財の指定の高千穂神楽は、天照大神が天の岩戸にお隠れのおり、岩戸の前で天細女(うずめ)命が面白く舞ったという謂われがあり、この地では毎年十一月から三十三番の神楽を夜通し行うという。

 私の見たのはそのうちの四つで、手力雄(たちからお)の舞い(力ずくで天の岩戸をこじ明ける)、うずめの舞い(面白く踊って天照大神を岩戸から導き出す)、戸取りの舞い(手力雄命が岩戸を排除し、恭しく天照大神を迎える)、御神体の舞い(イザナギ、イザナミが酒を造って呑み、かつ抱き合う。夫婦円満の舞いとも言う。)
  むろん踊り手たちはプロではない。地元の農民らが誠意を込めて、しかし無骨に舞い、のびやかに太鼓を叩くのである。それが神妙であり且つ爽やかなのだ。

 外国人観光客を含めて三百人近くが高千穂神社の神楽殿に集まってくる。ピーク時には二回に分けて神楽を舞うというから感動的である。伝統が廃れていないことに勇気つけられる。

 神楽がはねて、かねてからの知己、高千穂神社の後藤俊彦宮司の応接間へ招かれた。恩賜のタバコのお裾分けを頂いたりして夜まで懇談した。もの静かな後藤宮司は神道や伝説に造詣が深く、語彙は古典的であり、秘めた熱情がほとばしる会話になった。

  △壱岐の神秘な場所

 壱岐にも前々から行きたかった。
 対馬へは昨年行く機会に恵まれ、元寇の古戦場跡地を見た。
 壱岐も元寇の古戦場跡があり、また秀吉の朝鮮征伐の拠点となった城跡もある。博多での所要を終えた私は、次の予定地、小倉での講演までの間隙をぬって日帰りで壱岐へ行くことにした。
 フェリーだと二時間、ホバークラフトだと一時間ちょっとで着く。

 郷ノ浦港は意外に観光客が多い。船から吐き出された観光客を地元のレンタカー、民宿が勧誘に来ている。フェリーのターミナルも立派である。私はクルマの運転が出来ないのでタクシーを雇い、ざっと全島を一周して元寇遺跡に絞り込んで見ることにする。ウニの名物弁当も食べたい。

 最初に北へ国道382号線を直進、およそ三十分で勝本漁港へついた。古い映画に出てくるような、ひらべったい家屋の密集する港町だが、由緒ある神社や祠も密集し、運転手の説明では後年の朝鮮通信使一行が最初に上陸したのもこの地であるという。
 なんとなくそれらしくもあり、他方では裏寂れたたたずまいを見て、脈絡もなくフーテンの寅さんの一場面を思い出したり。

 この周辺には勝本城跡がある。
もちろん私は急坂(きゅうはん)な石垣跡を登った。
 鬱然として風がおこり、木々が揺れ、緑は古色蒼然、城砦の石垣の一部が残っていて時代を感じさせる。これが朝鮮出兵時の秀吉の前衛拠点である。

 △地元からも省みられない元寇の遺跡

 次に芦辺港へクルマを走らせた。途中、農道に張ってある選挙ポスターはY氏。「あ、壱岐は長崎県だった」と改めて驚く。
 近世には壱岐は捕鯨の拠点としても栄えた。紀州から多くの鯨漁師がやってきた。鯨が禁止されるまで港は鯨で活気があった。その拠点の一つが芦辺港だったのである。

 芦辺にも「弘安の役」の戦跡があり、石碑が一つ、ふたつ。
 こじんまりと公園になっているのは壱岐神社。ここには護国神社を兼ねて、戦後に忠霊塔が建立された。元寇では壱岐の島民の大半が虐殺された。
 しかし元寇そのものの展示がない。対馬も同じ、呼子の名護屋城趾に至っては展示が「反戦史観」で大変不愉快になる。
(これじゃ元寇という中国・朝鮮の日本侵略の史実はねじ曲げられる)

 帰路に立ち寄った「原の辻」という遺跡は、かの『魏志の倭人伝』にでてくる「一支国」の王都と推定されている遺溝だ。弥生時代の原風景がかすかに息づき、当時の船置き場の跡が復元展示されていた。

 それにしても壱岐は、対馬同様に内外からの観光客で俗化され、元寇の痕跡は稀少であり、地元からも打ち捨てられている。
 日本の自虐史観の横溢という現状を象徴していた。
        ◎
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(今週の拙論)
(1)「エネルギー覇権を狙うパラノイア」(『WILL』10月号、発売中)
(2)「カネなくなれば縁もうすくなり」(『月刊日本』九月号、発売中)
(3)「国家崩壊の可能性を露呈した中国の資源“爆食”」(『正論』10月号。1日発売)
(4)「挫折した中国のユノカル買収劇と米中間の石油戦争」(『ディリー・タイムズ』、10月号、発売中)。
(5)「最近の読書から」(『自由』10月号、九月十日発売)
         ☆
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<<宮崎正弘のロングセラーズ>>
『中国よ、“反日”ありがとう』(清流出版刊、1400円+税)
『瀕死の中国』(阪急コミュニケーションズ刊、1600円+税) 
『中国のいま、三年後、五年後、十年後(改訂版)』(並木書房、1575円)
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円プラス税)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
         ◎
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