国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/07/16

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成17年(2005年)7月17日(日曜日)
          通算1185号  増刊号
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<<今週の書棚>>

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ラルフ・タウンゼント著、田中秀雄・先田賢紀智訳『アメリカはアジアに介入するな』(芙蓉書房出版)
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 先にベストセラーとなったタウンゼントの、戦後における二冊目の邦訳である。
最初の『暗黒大陸 中国の真実』は、各紙が書評でも大きく取り上げたが、口コミで拡がり、またたくまに版を重ねた。真実が書かれていたからである。
中国人の暗部、本質をこれほど鋭利にえぐった作品を70年も前にアメリカ人が観察していたこと自体が驚きで、その鋭い観察眼は、当時の芥川龍之介の『江南遊紀』などと読み比べても、文学畑と外交畑との差違はあるにせよ、また文章力はともかくとして、裏の裏をみているという感動をおぼえたのである。
 タウンゼントは周知のように米国の対日政策の間違いを堂々と進言し、しかしそれが筆禍事件となり、真珠湾攻撃から一年間牢獄に拘束されて沈黙を余儀なくされた。
 米国は日本と戦争をしたくて、したくて溜まらず、その分、中国の無謀、インチキ、デタラメ、横暴の数々を見てみない振りをしてきた。外交官として現場にいたタウンゼントは勇気を奮って日本を弁護した。
 要するに米国はボルシェビキが好きで、革命幻影に染まり、反ボルシェビキだった日本には、すべて逆らったということである。背後にあったルーズベルトの謀略を傍証する意味でも、この書は貴重である。
 本書には当時の新聞に貴重な切り抜きも多く、また日系アメリカ人二世らが将来を心配して、しきりにタウンゼントと連絡をとっていたことなども分かる。現代史を専攻している学者学生はもとより、一般の読書人が読むべき書物である。


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黄文雄『大日本帝国の真実』(扶桑社)
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 ご存じ黄文雄節、本書でもこれまで以上に高らかに冴え渡る。
 小生が高校生時代、新聞広告に林房雄『大東亜戦争肯定論』を見いだしたとき、なぜか体が震えたことを奇妙に思い出す。戦争を肯定する人がいる、教科書で悪とおそわった世代の一員として、素直に興奮した。最初は恐ろしいという違和感だった。
 大学へ入って、左翼暴力学生の横暴を目の前で目撃したとき、小生のあたまのなかでガラス細工のように構築されていた平和、概念としての平和、空虚な念仏としての平和は、音立てて崩れ去った。そのとき林房雄の『大東亜戦争肯定論』を読み直した。そしてようやく理解できた。
あの戦争は正しかった、欧米列強の植民地支配に立ち上がった日本人は、なんと世界史的な勇気を発揮し、世界秩序を白人の優位から解放し、しかし武運つたなくいくさには敗れたものの、もののふの精神は残った。亜細亜各国は独立を果たし、日本に感謝した。
 黄さんの本書は日本人に勇気を与えてくれる。林さんの延長線上にある史観が展開されているが、本書の肯綮は以下の部分であろう。
 「大日本帝国興起の世界史的意義は、それまで大陸から見れば東方海上のさいじの島、栗散(ぞくさん)の国であり、『半人半獣』の東夷として文化的にさげずまれてきた日本のような国でも、近代化を遂げて国民国家となれば、富強をはかることができるということを、世界の諸民族に知らしめたことである。大日本帝国は英米との世界新秩序構築を賭けた闘いで敗れ、崩壊はしたものの、ここまで西欧列強の対抗勢力として奮戦した日本という「衝撃」は、非西欧文明圏の諸民族に大きな自信をもたらし、世界植民地体制は打ち崩され、二百におよぶ主権国家によって構成される今日の国際社会が出来上がったのである。大日本帝国によって、世界史は新局面を迎えたのだ」。
 そして戦後しばらく中華帝国は沈みつつけ、「華夷秩序」が逆さまの「夷華秩序」になった。それに我慢できない中華思想が再び、アジア各地で、狂気の扉を開いた。それが昨今の「反日」だが、いまはそのことまで触れる紙幅がない。



錦三郎『飛行蜘蛛』(笠間書店)
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 蜘蛛が織りなす科学と文学の世界が悠然と、しかも雅やびに拡がる。
蜘蛛の糸が晩秋の青空を細くて白い糸の群れをなして静かに飛ぶ。この蜘蛛たちの神秘の営みを「雪迎え」という。
 新雪の高嶺から降りてくる、この不思議な現象は、半世紀ほど前まで山形県の一部の地方で見られた。飛行蜘蛛が織りなす「雪迎え」があらわれると麓にも雪が降り始め、冬ごもりに入る。
 「新雪の高峯がかがやいて、盆地にもまもなく雪が降るころ、白いものがふわりふわりと青空を飛んでくる。『雪迎え』は、まさしく雪の前触れであった。人々は、『雪迎え』を仰いでは、いよいよ長い冬ごもりがはじまるのだという、諦観のような、反面、郷愁にも似た複雑な気持ちになって『雪の世界』へはいってゆく」と冒頭から文学的描写。
 飛行蜘蛛の雪迎え現象は遠くアリストテレスの時代から世界的にしられ、シェイクスピアの戯曲にも、同様な台詞が出てくる。ファーブルの昆虫記にもでてくる。
中国では『遊糸』と書く。日本でも永井龍男、山本健吉、辺見庸ら幾多の文学作品で表現されたが、嚆矢は「かげろう日記」の陽炎ではないか、という説もある。
 この不思議な雪迎えを世界で初めて具体的に科学的に解明したのが本書である。ながらく幻の名著とされてきた。ようやく復刻された。その前に著者は『蜘蛛百態』という本を出され、第12回エッセイストクラブ賞を受けた。
著者の故錦三郎氏は、小生の友人で国文学者・錦仁の父君。実は「雪迎え」の話は過去二十年、ときに会津若松の温泉で、或いは喜多方の熱塩温泉で、あるいは芦牧の露天風呂で銘酒「栄川」を呑みながら、錦仁(現在は新潟大学教授)から何回もきかされていた。
 著者の次男にあたり、また近年は中世の和歌や黒川能の研究としてしられる錦教授の名解説が読者を神秘の世界に誘う。


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石平『日中友好は日本を滅ぼす』(講談社α新書)
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 政治は冷えすぎたが、経済は熱いまま、という日中関係はこれで良いはずがないが、ではどうしたらいいのか。
その回答は過去の日中関係の歴史にあるという。
 古代から多くの国が経験してきたように「治世」と「乱世」が周期的に交替する。日本の場合、戦国時代のあと、ながい鎖国、徳川の泰平があった。しかし、この日本の「治」と「乱」には「不思議な傾向」がある。つまり、「交替には、中国大陸との関わり方が強く影響している」のだという。
 聖徳太子は中国と平等の関係をうちたてたが、これは「日本民族による国作りの歩みは、中国王朝を頂点とする冊封体制によって組み立てられた中華世界から脱出していくという、『脱・中国』の道のりでもあった」。
 (なるほど。中国的視点から描くと確かにそうなる)。
 直前まで、「中央集権制の創出と並んで大和朝廷が抱えていたもう一つの課題、すなわち中国大陸の巨大帝国に対し、日本はいかにすれば対等な外交関係を保ちつづけることが出来るのか」とする国外に向けた国家の自立が喫緊時であった。
聖徳太子は、有名な「日出ずるところの天子、日没するところの天子に」云々と書を送ったが、それは随王朝に驚天動地の衝撃を与えた。
 しかし「日本使節の口上の背後に隠れた、大和朝廷の対中国戦略思考の一端」があり、それは「普遍性のある仏教という世界宗教のなかに身を置くことによって、中国文明ならびに王朝の権威を相対化し、中国と対等の外交関係を確立していく、という」隠し種があったという。
 また同時に「儒教より広がりのある世界宗教を中軸に据えることによって、日本文明はその母体である中国文明より多くの普遍性を」獲得できた。その意味でも、「かな文字の古今和歌集の登場こそは、文化における脱中国の象徴である」という。
 (この古今和歌集の評価、大賛成)。
 日本人なら当然の常識だが、これを黄文雄氏ならともかく、中国大陸からきた著者がいうのだから、この意外性だけでも本書をよむ値打ちがある。
 中国にのめり込んだ天智天皇の近江、平家、足利、秀吉の朝鮮出兵などは悉くが短期政権に終わった。「中国と没交渉か関係の薄い平安時代、江戸時代において、日本史上、もっとも平和な“繁栄の時代”を享受できた」。
 明治文明開化から日清戦争まで、維新政府の日本は、文明の利器に集中し、欧米に関心はあっても中国大陸にはなく、ロシアの南下を目撃し、ようやく重い腰をあげて満州事変へといたる。
 この近・現代史となると著者の批判の矛先が、すこし斜めに変化し、微妙にターゲットが替わる。
共産主義ドグマが潰えた後の「愛国統一」は、共産主義の失敗を糊塗しうる魔法だが、経済繁栄以後の中国では「民族の偉大なる復興」が「唯一のコンセンサスとなった」のだから、台湾侵犯はありうるとする予測は予測の範囲内としても、それが「唯一のコンセンサス」とは評者(宮崎)には到底思えない。中国の民度がそれほど低いはずがないからだ。
同時に台湾問題を北京が熱心に獅子吼するのは、背後のイスラムのテロ、モンゴルの大モンゴル主義、チベットの独立問題が横たわっているからだが、これらの難題は本書ではネグレクトされている。
 「東アジア共同体」への疑問も大いに共感するが、『反日』が中国共産党の失政のすり替えではなく、ライバルとして日本への対抗戦略からあみだされて構造的なパターンと総括して、すり替え議論には触れていないのも一面的。まして現代となると、歯切れがやや鈍るあたりが気になった。
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(サイト情報)米下院国際関係委員会アジア太平洋小委員会で、「北朝鮮の核交渉:戦略と成功の見通し」というテーマの公聴会が開かれた。
?Hearing: North Korean Nuclear Negotiations: Strategies and Prospects for Success Subcommittee on Asia and the Pacific, Committee on International Relations, U.S. House of Representatives  July 14, 2005
http://wwwc.house.gov/international_relations/aphear.htm
?Statements: James A. Leach, Chairman of the Subcommittee on Asia and the Pacific
http://wwwc.house.gov/international_relations/109/lea071405.pdf
?Donald P. Gregg, President and Chairman of the Korea Society
http://wwwc.house.gov/international_relations/109/gre071405.pdf
?Scott Snyder, Senior Associate, The Asia Foundation/Pacific Forum CSIS
http://wwwc.house.gov/international_relations/109/sny071405.pdf
?William M. Drennan, Consultant  (Colonel, USAF (retired)) 
http://wwwc.house.gov/international_relations/109/dre071405.pdf
?David Albright, President, Institute for Science and International Security (ISIS)
http://wwwc.house.gov/international_relations/109/alb071405.pdf
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<<宮崎正弘の新刊>>
『中国よ、“反日”ありがとう』(清流出版刊、1400円+税)
週刊文春、週刊新潮などでも大きく取り上げられました! 主要書店で売り切れ!
http://www.seiryupub.co.jp/

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『瀕死の中国』(阪急コミュニケーションズ刊、1600円+税) 
  アマゾン中国本で第四位! 三刷出来!
http://www.hankyu-com.co.jp/books/_ISBNfolder/ISBN_05200/05208_hinshi/hinshi.html

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<<宮崎正弘のロングセラーズ>>
『中国のいま、三年後、五年後、十年後(改訂版)』(並木書房、1575円)
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-url/index=books-jp&field-author=%E6%AD%A3%E5%BC%98%2C%20%E5%AE%AE%E5%B4%8E/250-6226573-5690658 (以上は上記アマゾンからも購買できます)

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