国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/07/06

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成17年(2005年)7月6日(水曜日)
第1175号  
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親露路線に急旋回の胡錦濤政権
 反分裂、テロ防止の暴力装置「上海シックス」にイランも加える動き
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 胡錦濤がモスクワを訪問する直前、カザフスタンに居た。

  「国家主席就任以来、じつに36回の外遊、77ヶ国を訪問した胡錦濤だが、米国にはただの一回しか訪問していない」と米国専門筋が分析した。
 「つまり親米路線を歩んだ前江沢民路線とことさらの差違を見せつけるかのように、或いは軍部の強硬派に接近するために、胡政権は親露路線を突き進んでいる」(ウィリー・ラム、『チャイナ・ブリーフ』、05年7月5日号)。

 中国が主導し、ロシアおよび中央アジア4カ国(カザフスタン、ウズベキスタン、キリギスタン、タジキスタン)で構成する「上海協力機構(上海シックス)」の首脳会議は7月5日にカザフスタンの首都アスタナで開かれた。この会議にはオブザーバーとしてモンゴルも参加している。

 とくに注目するべき決定は「加盟国の拡大」で、米国と敵対するイランと対米関係の微妙なインド、パキスタンなど3カ国を新しく”オブザーバー”と認めたことだ。

 プーチン大統領はこの会議でブッシュ政権との距離を意図的に演出し、「力で強引に制度を押し付けるのではなく、多様なモデルの発展に敬意を払い大切にしなければならないという加盟国の共通認識を示した」と民主主義拡大に動く米国を批判した。

 アスタナ会議では「テロ・分離主義・過激主義に対する戦いに関する協力の理念」と題する決議など3文書も採択し、「現代の脅威」とは「テロ、分離主義、過激主義」だと謳っているが、現実との認識に乖離がある。

 反ファシストを呼号するロシアとカザフ、ウズベクなどは、どちらかといえば強権独裁国家である。
反民主朱主義で一致しており、「中国はナチスがめだしたファシズムを完璧なかたりで実現しつつある最初のモデル、本物のファシスト国家」(ビル・ガーツ『ワシントン・タイムズ』、6月26日付け)。

こうして、中・露両国を軸に米国排除の姿勢を鮮明にし始めた上海シックス。
 世界への民主主義拡大に動き始めた米国を牽制する目的が鮮明となった。


 ▲反米、反民主を鮮明にした上海シックスの大会宣言

 またアスタナの大会宣言には
(1)「内政干渉を行わず、平等と相互尊敬の理念をもつ国々との関係を強化し、国連との関係を最優先にしながら発展させていく」。
(2)「アジア太平洋地域において、いかなる分断線が引かれることにも反対する。」
(3)「地域の安定化に貢献する。そのために、外交、治安、保安、国防機関などが協力し、地域の不安定化を阻止するために、ともに行動できるメカニズムを構築し、反テロに向けた共通行動を実施していく。」
(4)「アフガニスタンで作戦行動を行う反テロ連合国を支援してきた。だが、作戦が終了しつつあることを念頭に、連合国側が速やかに軍事基地の使用終了期限を明示することを望む」。
(5)「上海シックスは第三国を敵視したものではなく、ブロックの創設を目指したものではない」
などと注目するべき文言が挿入されていることに留意しなければならないだろう。

中ロはもちろん同床異夢、されど反米は両国の共通認識であり、胡錦濤の反米路線の深化が顕著である。
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(読者の声1)。総合商社に勤務しており、担当はロシア。ですから中国ビジネスには疎いのですが、同じ新興国市場として 中国の動きには注目しており、いつも大変興味深く拝見させていただいています。 
 今回のメールマガジンも興味深く拝見させていただきました。 羅先のような都市は、世界中にたくさんあるのでしょうが、 その実態の経済活動に対する中国の抗議、及び観光禁止令という措置は、 自国民のだらしなさを自ら認める行為そのものように思えました。 また、こんな目先の対応だけで、問題を解決できるわけはなく、ちょっと措置が安直過ぎるのではないか、とも感じました。 
 もしかすると、ずっとこのような対応を続けてきており、これが中国の一般的なやり方なのかもしれませんが。。。 
  あと一点気になった点があります。北朝鮮人のウラジオストックでの収入の換算についてですが、 12000ルーブルであれば、現在の対US$レートでは400ドル強となります。 ルーブル価もしくはドル価のタイプミスだと思いますが、僭越ながら一応ご指摘させていただきます。 
   (YM生、モスクワ)


(宮崎正弘のコメント)極東は為替レートもデタラメ、もう一つは偽札レートがあったり、ロシア・マフィアが北朝鮮へ特別レートを適用していたり、ともかく換算レートがわかりませんが、情報源の表示をそのまま用いました。ご指摘有り難う御座います。


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(読者の声2)以下に掲げる引用文は『正論』00年5月号で紹介された「リンドバーグの衝撃証言」からの抜粋です。 チャールズ・リンドバーグ(1902〜74)はニューヨーク・パリ単独飛行や息子の誘拐・殺害事件で有名なあの彼です。日米開戦後、彼は軍の技術顧問として南太平洋で戦闘任務についた。
この間の日記の邦訳版が昭和49年新潮社から新庄哲夫氏の訳で出版されたが現在絶版になっているものを訳者の了解を得て正論に抜粋を載せたものです。
(リンドバーグ日記からの抜粋)・・・・・・・・
*各地の太平洋戦線で日本人捕虜の数が欧州戦線に比し異常に少ないのは捕虜にしたければいくらでも捕虜に出来るが、米兵が捕虜を取りたがらないから。手を上げて投降してきても皆殺しにするから。
*あるところでは2000人ほど捕虜にしたが本部に引きたてられたのはたった100か200だった。残りの連中にはちょっとした出来事があった。それを知った戦友は投降したがらないだろう。
*捕虜を取らないことを自慢する部隊がいる。
*将校連は尋問の為捕虜を欲しがる。捕虜1名に付きシドニーへの2週間の休暇を出すとお触れが出た途端に持て余すほどの捕虜が手に入る。懸賞を取り消すと一人も手に入らなくなり、つかまらなかったと嘯くだけ。
*一旦捕虜にしても英語が分かる者は尋問のため連行され、出来ない者は捕虜にされなかった、即ち殺された。
*捕虜を飛行機で運ぶ途中機上から山中に突き落とし、ジャップは途中でハラキリをやっちまったと報告。ある日本軍の野戦病院をある部隊が通過したら生存者は一人もいなかった。
*2年以上実戦に参加した経験がない兵が帰国前にせめて一人くらい日本兵を殺したいと希望し、偵察任務に誘われたが撃つべき日本兵を見つけられず捕虜一人だけ得た。捕虜は殺せないと嫌がるくだんの兵の面前で軍曹がナイフで首を切り裂く手本を示した。
*爆弾で出来た穴の中に皆四肢バラバラの状態の日本兵の死体を投げ込みその後でトラック1台分の残飯や廃物を投げ込む。
*捕虜にしたがらない理由は殺す楽しみもさる事ながらお土産を取る目的。
金歯、軍刀はもとより、大腿骨を持ち帰りそれでペン・ホルダーとかペーパーナイフを造る、耳や鼻を切り取り面白半分に見せびらかすか乾燥させて持ちかえる、中には頭蓋骨まで持ちかえる者もいる。
*日本人を動物以下に取扱いそれが大目に見られている。我々は文明のために戦っているのだと主張しているが、太平洋戦線を見れば見るほど、文明人を主張せねばならない理由がなくなるように思える。事実この点に関する成績が日本人のそれより遥かに高いという確信は持てないのだ。
*リンドバーグはドイツ降伏後ナチスによる集団虐殺現場を見学した時の日記で「どこかで見たような感じ、そう南太平洋だ。爆撃後の穴に日本兵の遺体が腐りかけ、その上から残飯が投げ捨てられ、待機室やテントにまだ生新しい日本兵の頭蓋骨が飾り付けられているのを見たときだ。ドイツはユダヤ人の扱いで人間性を汚したと主張する我々アメリカ人が、日本人の扱い方で同じようなことをしでかしたのだ」と。(以上で抜粋終わり)。
   (AN生)


(宮崎正弘のコメント)終戦から十数年ほど、まわり中に兵隊経験者や引き揚げ者がいて、すくなくとも小生らの世代は、こういう話は耳にたこができるほど聞いていました。どこかで、そうした真実の話が聞かれなくなりました。
「路の会」で数回にわたって、この問題を論じたのが西尾幹二編『日本はなぜ戦後たちまち米国への敵意を失ったのか』(徳間書店)です。
ご参照いただければ幸いです。


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(読者の声3)先日、向陽舎の三島由紀夫原作「燈台」(久保あつ子主演)を観劇してきました。
 戦後日本の激しい世間の潮流の中で、不安定な精神状態の日本人の有り様をテーマに、家族という最小共同体を通して描いた作品でした。習作的な感じで、判り易い内容でした。昭和24年、丁度「仮面の告白」の書き下ろし時期に平行して描かれたものです。
 ばらばらに砕け散ろうとする家族の中で、それを少しも気付いていない暢気な父、後妻としてその家庭に入った有閑婦人、後妻に心囚われる出征帰りの息子、友達の家で破廉恥な目に遭う情緒不安定の娘、その4人が織り成す一夜のドラマ。大団円で娘が、私だけが、眠らずに何時沈むかしれないこの家族を、燈台のように見守っていなければいけないんだわ!と不平等な自分の不幸を恨む科白で終わります。
台湾帰りの息子はアパシーに陥り、男に相手にされないバージンの娘は情緒不安定、後妻は義理の息子と不倫を犯そうとする程閑を持て余し、仕事人間の父親は酒とシャンソンとジルバに享楽し、と現代の若者と奥様・父親族の有り様に通底していて聊かも古びていません。 
舵を失って波間を彷徨う日本丸、周辺国が起こす荒波にいままでの安逸は失われ、私だけ不幸だと嘆き叫ぶノンシャランな日本人。今の日本への優れた風刺劇に巧まずなっているのです。21世紀劈頭の日本の世相を見事なまでに見通した三島の眼力を感じずにはいられません。と、云うより戦後60年経っても、日本は少しも変っていないと観ずるべきなのでしょう。
父が後妻とデュエットする時に掛るシャンソンはかなり古い時代物の録音で懐かしい気持にさせてくれ、父と娘が踊るシーンで掛るジャズは心地佳い気分にしてくれました。しかしこの一幕物の劇を観るものは、知らず知らず、登場する家族のカウンター・パートに自分を置き替えて、身に詰まされる仕掛けが密かに用意されています。三島劇独特の「毒」はこの習作にも組み込まれています。各演者は好演していました。特に娘役は、思春期の焦燥をよく演じていました。


(宮崎正弘のコメント)拙著『三島由紀夫はいかにして日本回帰したのか』(清流出版)では、当時の時代背景を如実に書き込みながらも、その時代のデカダンスを描いた三島さんの傑作は『鍵のかかる部屋』だろうとしました。
 ところで『近代能楽集』。NYでまた、上演の様子です。
 http://www.yomiuri.co.jp/hochi/geinou/nov/o20041123_10.htm
 さて11月25日の「憂国忌」は五、六人のスピーカーによるシンポジウムを考えておりますが、直前の11月22日に拓殖大学の「新日本学」連続公開講座で、小生が上記演題で担当する予定です(この講座の募集要項は近く、この欄でもお知らせします)。
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(お知らせ)?発売中の『正論』(8月号)に靖国問題と中国のプロパガンダを論じた拙文「中国の工作外交に陥落寸前の日本」があります。
?西尾幹二・責任編集の『新・地球日本史2』(扶桑社)に拙論「孫文に裏切られて日本人」も収録されております。
?『エルネオス』巻頭論文に拙論「強まる米国の圧力に根負けか?じわり人民元切り上げの足音」があります。
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<<宮崎正弘の新刊>>
『中国よ、“反日”ありがとう』(清流出版刊、1400円+税)
『瀕死の中国』(阪急コミュニケーションズ刊、1600円+税) 
『中国のいま、三年後、五年後、十年後(改訂版)』(並木書房、1575円)
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)

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