国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/05/07

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成17年(2005年)5月7日(土曜日)
通巻第1116号  
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<< ミャンマー取材日記 前編>>

(某月某日)成田へ向かうJRの「成田エクスプレス」が観光客で満員である。
(そうか、ゴールデンウィークは明日からで、その前から海外へ出る人が夥しいのだ)。
 北京や上海での「反日暴発」の所為で中国行きは五千人ものキャンセルがでたというが、出国者総体としては関係がないのだろう。
それにしても日本人は情緒的反応が強すぎる気もするが。。
(中国行きの航空券は6月までディスカウントが続くそうな)。

ミャンマーへ、ところで日本から直航便はない。バンコックかシンガポール経由、あるいはペナンから第二の都市マンダレーへ入るという手もある。
 当方は初めての国だから、夕方のJALで飛んで、前泊はバンコックにした。ミャンマーはビザ取得も難しく、写真も三枚が必要。当初、自分で撮影したものを提出したらはねられた。仕方なく写真館へ行って撮影し直し、ようやくパス。某新聞社の友人はビザを申請したらやんわり断られてしまったという。

さて出発前まで、じつはガイドブックを読む時間もなかった。
詳しい知識、最新情報は白紙に近い。というのもJR車内、空港の待合室、JALの機内と合計六時間ほどのあいだ、何をしたかというと、持参した新刊のゲラ校正をえんえんと続けたのだった。隣に座った日本人カップルは「へんな叔父さん」という視線を向けてきたが無視。着陸寸前にようやく256ページ全部を校正終了。ウィスキーを一杯。
 (それにしてもJALは、最近サービスがいいですね)。
 バンコックのホテルへは空港から30分。午前一時半だが、まだスーパーも食堂もやっている。ネオンがきらめき不夜城の様相だ。
二年ぶりのバンコックだが、車の渋滞は相も変わらず、だが町並みが綺麗になり高層マンションが増えた。経済発展は中国に劣らずタイも凄まじい勢いにある。
 33年前、始めてきたとき、女性はサンダル履きか、素足、粗末な装いだった。いまや、資生堂、カネボウで武装している。


(某月某日)早朝にホテルで食事を摂って、そのまま飛行場へ。午前11時発のバッコック・エアウェイ。新興の飛行機会社だ。
機内サービスはなかなか。軽食もでた。一時間20分で到着。
 ヤンゴン国際空港は、どういえば良いか。田舎の飛行場という風景である。入国管理ロビィも荷物のベルトもお粗末。外へでると風が熱い。湿度が低いので不快感はないが、ともかくヤンゴンは猛暑である。
長いスカート(「ロンジー」という)を腰にまいたミャンマー独特の民族衣装の地元民が、空港ロビィに屯している。警官など係官だけはズボンだ。

連日四十度近いが早朝にスコールがあったという。意外にもヤンゴンの都心部はクルマの洪水、なかでもおんぼろ中型トラックを改良した通勤バスが目立つ。
緑が豊か、信号が滅多にない。しかも人口が550萬人もいるというのに、町はゴミゴミしていない。町のど真ん中に湖がふたつもあり、市内にはゴルフコースも五つもあるというではないか。
しかも湖のほとりに浮かぶ水上レストランは連日満員の盛況。
(ずいぶんイメージと違うなぁ)
広大な面積にせいぜい二階建てか三階建ての建物が並ぶわけだから、町の広さは東京の数倍はあるかもしれない。ロスアンジェルスのような印象を受けた。
(これならクルマで移動する以外、方策はあるまい)。

ともかくうだるような暑さでも通勤バスは早朝からすし詰め、屋根にも若い男らが乗っている。(バンコックでは都心部に地下鉄が開通して、むしろ渋滞が緩和されたのに)。
もちろん、僧侶の姿が目立つが若い男、こどもが多い。僧侶はバスも観光施設の入場料も無料。

 ミャンマーの通貨単位はチャットという。
西側から見れば紙くず同然の紙幣だが、公式レートは一ドル400チャット。以前、外国人は入国に際して200米ドルの両替が義務つけられていたのだが、筆者がついたときは両替処に寄りつく人もなく、うるさいことは要求されなかった。
聞けば、闇市場では一ドルが1000チャット、ホテルのフロントでも1ドルが950チャットで交換してくれる。
しかし政府の為替政策は朝令暮改、要するにデタラメなため買い物はどこでもドルを歓迎。
この話は前から聞いていたので細かいドルをたくさん持参した。トラベラーズ・チェックは使えないとも言うので、現金だけである。

 最初の目的地はモン族の築城したバゴーという町である。ここが『ビルマの竪琴』の舞台。ヤンゴンからバスで二時間ちかくかかった。
 チャイブーン四面仏という有名なパゴダもあるが、一番興味があるのは巨大な寝釈迦像。シェタリャウン寺院にある。ミャンマーのような敬虔な仏教徒のくにでは、あらゆる寺院には素足で歩かなければならない。
この寝釈迦は全長60メートル近く高さも16メートルはあるという。タイ、ビルマ、カンボジアそして中国にも寝釈迦像があり、そのうちの何体かをみたことがあるが、これほど巨大な寝釈迦は初めて。お釈迦様の顔がやさしい。裏へ廻ると仏足にミャンマー独特の八曜日カレンダーが掘り籠められ、さらに金箔が調密に塗り込められているので、輝くほどだ。
こうした伝統的宗教儀式と日常生活が融合したくに、ある意味で羨ましい。精神生活は、おそらく日本人より豊かであろうから。


(某月某日)ヤンゴンからバガンへ向かう。飛行機で80分かかる。
バガンは昔の王都で、イラワジ川のほとりに古色蒼然と往時を偲ぶことができる。
ヤンゴンの都心部では、すでに数年前からマンションから高層ビルまでをカネをもった華僑が進出して買い占め、中国同様に新興ビジネスの広告業が盛んである。これも意外だった。看板でビルマ語と漢字が併用されている店やビルは華僑系列とすぐにわかる。それほどチャイナの存在が顕著である。
 華僑の商業独占を心良しとしない「ミャンマー・ナショナリズム」が確かにあがっている。しかしおとなしい国民性を反映してか、巨大な国民の声というわけでもなく、批判の目は法の網をかいくぐって太るばかりの一部の金持ち、その背後にいる軍部に向けられている。
 (政策の貧しさで政府に向けられる不信は往々にして爆発力をともなう)。

 欧米はスーチー女史ばかりに肩入れして経済制裁を実施したためにペプシコーラは98年にせっかく作った工場を閉鎖した。
いまではコカコーラのほうが、よく売れている印象。またハイネッケン・ビールも一時は輸入禁止となった。スーパーには売っていない。ところが制裁に一番厳しい米国のバドワイザー・ビールはちゃんと売っている。
欧米系のクレジット・カードは華僑の店以外では使えない。日本円はまるで通じない。これらも金融制裁の末端における悪影響だろう。

 しかし庶民レベルでは日本製への神話が残っており、とくに電化製品は東芝(TOZHIBAという偽ブランドも横溢)、オーディオはSONYに人気が集中している。停電が多いので冷蔵庫の普及率は悪いそうな。
 さらに脱線するとミャンマーの民族構成は主体がビルマ族、これにカチン族、カレン族、チン族、シャン族、モン族がいる。民族は混淆せず、それぞれがかたまって集落を形成、だから部族間の啀み合いが静かに続いている。
       (明日の後編へ続く)
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(読者の声)貴誌「通巻第1072号」に関して、私の友人でバンクーバー在住のW氏が「ホリエモン騒動」に関連して、伝統にこだわりすぎる保守派の見方を批判していました。
私にはこの批判の基礎になる「市場至上主義」というか「株主優先主義」というか、マクロ的なものの見方ができず、日本社会に入り込んだマネーゲームの危険性の方を強く感じていました。
 私が社会文化的側面から「日本型資本主義」は欧米論理とは違うのだと主張するのに対し、彼は経済理論を駆使して(これが私には苦手)「だから甘い」と笑います。
  実は私には彼の論理に奥深いところで納得できないものがあるのです。
  しかし、(宮崎正弘のコメント)として、
「ご指摘のこと、保守論壇にとって耳が痛いでしょうね。或る保守の集まりがあり、まさにご指摘の論法でほりえもん批判が展開されました。小生は『かれが突破口を開いた日本的経営路線への転換という意義』についてのべ、むしろ保守側経営者の「油断」について演繹しました。「企業防衛」を愛国と論理的に結ぼうとすると、司法での劣勢は覆ることが出来ませんので」。
 と書かれていたので「これが日本的経営路線の変更点になるのか?」と、わからないなりになんとか意義を見つけなくては思い直したりしていました。
  先生もコメントの最後に「マックス・ウェーバーの指摘した『プロテスタントの倫理と資本主義の精神』に照らせば、あくどい遣り方がいずれ社会的制裁を受けたという流れも重要です」。
と書いておられますので、マネーゲームの行方を警戒していると思います。
私は現在の日本の法体制が「欧米に学ぶ」段階でつくられたまま、その後、日本文化の取り込みを法社会の中に一切してこなかったことが、特に経済や人生観の混迷を生んでいるのではないかと思います。
とりわけ中国になだれ込んでいる経済界の見ると、商売のためなら敵国に軍艦をも売った「ペイラントの自由」の危機を思い出します。
このことは李登輝さんも台商の蒙昧と指摘しています。
  今、最大の懸案は、連戦・宋楚瑜招中を突破口にして台湾取り込みを進める中国に台湾人が大勢として「一国二制」的な「合邦」や「連合」に踏み切り、インド洋への進出とあわせ中国が”海洋国家”としてアジア支配を実現するのではないかという惧れです。
 ところで先日のさくらちゃん得るの「真悟十番勝負」に出演された先生は、存じ上げているはずの先生の知識の蔵から次々に歴史を読む意味が繰り出され、西村真悟氏も圧倒されて、さすが一流同士の対談というのを感じました。渡部昇一先生のときにも同じことを感じ、痛快でした。
        (HS生、豊橋)


(宮崎正弘のコメント)第一に日本型資本主義と欧米型のそれとの違いですが、株主優先社会と「会社がコミュニティ」「経営者も労働者も資本家も一緒に仲良く」という違いですから、所詮融合することはないでしょう。
 キプリングがいったように「東と西は融合しない」のです。
ほりえもんの会社は新人類の巣窟、ところが同じ世代でも「楽天」は、新エスタブリシュメントを求める新新人類のごとくに見えます。
全体として日本人がどちらを受け入れるか、明治維新直後にちょんまげを維持した国粋派のような観なきにしもあらず?
 第二にマネーゲームとしての側面を強調して捉えれば、これまた小生が『正論』に書いたように『青の時代』のヒーロー山崎某と『@の時代』のヒーロー「ほりえもん」との比喩が描けます。
 ご指摘のように「私は現在の日本の法体制が「欧米に学ぶ」段階でつくられたまま、その後、日本文化の取り込みを法社会の中に一切してこなかったことが、特に経済や人生観の混迷を生んでいるのではないか」。
まことに正鵠を得たものです。
福沢諭吉の「脱亜入欧」のメンタリティが、依然として日本人のメンタリティを浸食しつくし、たとえば海外旅行の人気がいまもフランスやらイタリアに集中している現実の嘆かわしさに通底しています。法体系はドイツが淵源であり、憲法はマッカーサー。この源を粉砕しないで、商法の解釈をしたら、欧米優位の判例がでるに決まっていますからね。
しかし法律万能の米国ですら社会的制裁がじわりと出てきます。
 米国でも合法すれすれなら、なにをやってもかまわないとして奇襲を得意にM&Aを展開した人達はピケンズをのぞいて、殆どがユダヤ人です。しかも殆どが法律に触れて監獄へ入りました。
 第三は「ベイラント」理論ですが、台湾の危機はいよいよ修羅場を迎えている。連戦は頭脳明晰の男ですが、やっぱり大陸産まれ、ああやって北京を操るつもりで、逆に操られてしまった。
  日本企業はこれを他山の石とすべきでしょうが。。。。
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(拙著新刊のお知らせ)宮崎正弘の新刊『瀕死の中国(ドラゴン)』(阪急コミュニケーションズ刊)は5月25日、また『中国よ、反日ありがとう』(清流出版刊)は6月初旬に全国一斉発売。詳細は追ってこの欄で御案内します。
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     <<宮崎正弘のロングセラーズ>>
http://www.nippon-nn.net/miyazaki/saisinkan/index.html
『中国のいま、三年後、五年後、十年後(改訂版)』(並木書房、1575円)
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『ネオコンの標的』(二見書房、1600円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円) 
 (宅配便による注文は下記サイトでも取り扱っています)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-form/ref=s_b_rs/250-2645852-0546630
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◎宮崎正弘のホームページ http://www.nippon-nn.net/miyazaki/
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